晴ればれ 「病院と院長である夫を支え続ける。」 地域医療を未来へ繋げるためのM&A

矢幅 乃理子様

「病院と院長である夫を支え続ける。」 地域医療を未来へ繋げるためのM&A

出演 医療法人聖心会 三沢聖心会病院 矢幅 乃理子 夫人

医療法人聖心会 三沢聖心会病院 院長(元理事長) 矢幅 啓孝 様の奥様・矢幅 乃理子 夫人

地域の精神科医療に貢献してきた医療法人聖心会 三沢聖心会病院。2025年、同院は医療法人社団正心会とのM&Aを行いました。患者に寄り添う診療を続ける矢幅啓孝理事長を公私にわたり支え、病院経営を担ってきたのが元常務理事の矢幅乃理子夫人です。後継者不在、経営難という現実に直面し、M&Aによる事業承継を決断するまでの経緯、そして地域医療への思いを伺いました。


尊敬できる医師との出会いから結婚を決めた当時の心境

まずは乃理子様のこれまでのキャリアについてお聞かせください。

矢幅 乃理子 様
矢幅 乃理子様(以下、乃理子夫人):

私は弘前市(青森県)出身ですが、静岡県の大学に進学し、栄養士の資格を取りました。研究職には就かず大学院に進み、その後、青森の保健大学で1年間、助手として勤務していました。

啓孝様とは、どのように出会われたのでしょうか。

乃理子夫人:

夫とは、仕事関係で知り合いました。その後、私自身が少し体調を崩してしまったのを機に、こちらの病院で事務員として雇っていただくことになったのです。最初は普通の事務員として働かせてもらっていました。

結婚前の啓孝様の印象はいかがでしたか。

乃理子夫人:

当時から医師として非常に尊敬していました。しかし、お金のことはあまり考えませんし、患者さんが困っていれば何としてでも助けようとするのが夫です。今となって思いますが、若かったからこそ結婚できたのかもしれません。

経済的な面など、現実的な将来設計についてどのように考えていましたか。

乃理子夫人:

当時は、「ふたりでなんとか食べていければいい」という考えでした。一度体調を崩した経験もあってか、贅沢を望んでいたわけではありませんし、多くを望まず「健康に生きていければ、それでいいか」という感じだったのかもしれません。


予期せぬキャリアパス。事務員から病院経営の中枢へ

事務員からどのように経営に関わるようになったのでしょうか。

乃理子夫人
乃理子夫人:

転機になったのは、平成18年頃だったと思います。看護基準の算定方法が変わり、病院としてどう対応していくのか、という状況になりました。当時は今ほどインターネットも普及していなかったので、情報交換や収集は簡単ではありませんでした。

その際に、事務職の上司から、医師会が出している分厚い点数表の本を渡されて、「これを読みなさい」と言われたのです。診療報酬なんて初めて見る世界で、本当に戸惑いました。でも、やるしかないので、必死に勉強しながら書類を作成し、診療報酬の入院基本料の届け出を行いました。

そこから徐々に経営に携わるようになっていったのでしょうか。

乃理子夫人:

そうですね。次第に事務長のような仕事をするようになっていきました。入職してから5、6年経って院長と結婚し、事務長代理という肩書きになりました。振り返ると、ひたすらその場その場で「やらなければならないこと」をこなしてきたら今に至った、という感じです。最初から経営をしようと思っていたわけではありません。


「人を信じる心」を守るために。“見極め役”と“防波堤”を担う

乃理子様から見た啓孝様はどのような方ですか。

乃理子夫人
乃理子夫人:

夫は、患者さんに寄り添って丁寧に接します。そのため患者さんには好かれています。院長が病気になったり背骨を骨折したりしたときには、泣いて心配する患者さんもいたほどです。その一方で、面白い面もあります。 背骨を骨折した際にコルセットができるまで座らないように言われていたので、ソファに寝転がりながら診察をしていたことがありました。「斬新なスタイルですね! 先生らしい!」と患者さんが感激していました(笑)。

啓孝様が特に大切にされていることや、他の医師と違うと感じる点はありますか。

乃理子夫人:

高齢の患者さんの中には、「他の病院へは行かない」とおっしゃる方がいます。理由を尋ねると、「前の病院では娘の言うことばかり聞いて、私の話は聞いてもらえなかった。院長先生は私の話をちゃんと聞いてくれる」と。 その患者さんは認知症があったのですが、何も分からないわけではありません。そういう意味では、患者さんにとって安心できる医師だと思います。患者さんの数は多くありませんが、一人ひとりをゆっくり診ることができるのは良い点かもしれません。

患者さんは、心から啓孝様と病院を信頼しているのですね。

乃理子夫人:

そうですね。ただ、私が経営に関わるようになってから、いろいろと驚くことが判明しました。夫は人を疑うより、信じることから入るのです。世の中には悪い人もいるという感覚があまりないのかもしれません。その考え方自体は嫌いではありませんが、「この人はまだ信用できない」、という方と関わるときは私が入ります。私が嫌われればいいだけの話ですから。そして必要に応じて、私が勝手に話を断っています(笑)。

お二人のコンビネーションで乗り越えてこられたのですね。ご夫婦で揉めることはありますか。

乃理子夫人:

経営に携わるようになってからは、金銭面などで半年に一度くらいは衝突しますね。私が普通の事務長だったら、喧嘩別れして退職していたかもしれません。夫婦でなかったら、うまくいっていなかった部分もあるのかなと思います。他の職場ではありえないことですが、院長に対して「どうしてそんなことをするのですか!」と感情的になってしまうこともあり、これは私自身の甘えもあると思います。


苦難の連続だった経営。それでも見出した病院と自身の存在意義

経営に携わられて、ご苦労も多かったのではないでしょうか。

乃理子夫人
乃理子夫人:

正直に言うと、運営としては苦しいこと以外はなかったです。それしかありません。夫が困っている人を助けずにはいられないので、患者さんの自己負担分を「いらない」と言ってしまったり、業者の営業さんに頼まれて不要なものを仕入れてしまったり。「これからどうしようか.......」と思うことばかりでした。当然、経営は成り立ちません。

以前は、診断書料も非常に安く、自立支援のための診断書は無料でした。手伝いに来てくれた夫の先輩医師が、それを見て驚いていたほどです。私が経営に関わるようになってからは、診断書料などは適切にいただくよう改善していきましたが、それでも大変でした。

そのような状況の中、やりがいを感じられたことはありますか。

乃理子夫人:

大変なことばかりでしたが、この病院がこの町に必要だと感じる瞬間はたくさんありました。「最期まで入院ではなく、地域で生活しながらここで診察を受け続けられた」とご家族から感謝されたとき。院長のことが大好きで通ってくださる患者さんが、「この病院があるから社会で生活を送れている」とおっしゃってくれたとき。精神的に苦しかったり障害があったりして社会に適応できない若い世代の方々に、院長が根気強く向き合っている姿を見たとき。そんなときにはやりがいを感じましたし、私が「夫の健康を維持していくことが社会貢献になるのかもしれない」と思うことも多々ありました。

院内で意見の衝突などが起きた際に、間に入って調整されるような役割もあるのでしょうか。

乃理子夫人:

院長が患者さんを思うあまりに、感情的になって揉めてしまうこともあります。そういうときは私が呼ばれて、院長と患者さんの間に入って双方をなだめたりもします。「自分は取り扱いが困難だ」と夫自身が自覚しているくらいなので、サポートは大変です。ある看護師さんからは、「(乃理子夫人は)どうしてあんなに冷静なんですか、私だったら耐えられません」と言われたこともありますが、院長がこれまで起こしてきたことに比べれば、大したことない、慌てても仕方ない、と思えるようになったのかもしれません(笑)。


「行き詰まり」で見つけた光。M&A決断の経緯

M&Aを本格的に考え始めたきっかけは何だったのでしょうか。

乃理子夫人
乃理子夫人:

やはり経営が苦しく、資金繰りの問題が出てきたことが大きいです。後継者はいませんし、院長は年を重ね、大きな病気も経験しました。将来のことを考えると、「病院をどう閉じるのか」ということを現実的に考えなければならない時期でした。

M&Aキャピタルパートナーズと接点を持つ以前から、M&Aを進められていたのでしょうか。

乃理子夫人:

4年ほど前からM&Aを考え始め、実際に動いていましたが、なかなかうまくいきませんでした。この地域は医師も少なく、経営が厳しい病院も多いのです。残念ながら引き受けてくれるお相手は見つかりませんでした。

M&Aキャピタルパートナーズとは、どのようにやり取りを始めたのでしょうか。

乃理子夫人:

本当に「どん詰まりだな……」と感じていたときに、「もし興味があればメールを」というダイレクトメールの一文を見て、連絡したのが最初のつながりです。それから経営状態を見てもらった方が早いと思い、過去3期分の決算書やこれまでの経緯もすべてメールで送りました。「後継者を見つけたいが、厳しい状況だとは思う」という考えを率直に伝え、もう山本さん(担当アドバイザー)にお任せするしかない、という崖っぷちの状況でした。

アドバイザーの方との相性も重要だったと伺いました。

乃理子夫人:

ええ、非常に重要だと思います。山本さんは、精神科病院の特殊性を非常によく理解してくれていました。精神科病院のM&A経験もおありで、医療保護入院の話や、一般の療養病棟との基準の違いなども分かってくれたので、話がしやすかったです。間に立つ方が専門知識を持っていないと、話が進みませんから。それに、院長が山本さんに好感を抱いたことも大きかったです。落ち着いていて、私たちの不安な気持ちを受け止めながら、的確に方向性を示してくれたので、安心して任せられました。

医療法人社団正心会とM&Aに至るわけですが、決断した最終的な要因は何だったのでしょうか。

乃理子夫人:

正心会の関口理事長と夫との相性がよいと感じました。「若い頃の私を見ているようだ」と夫が言うほど、似ているようです。信頼していた山本さんが「『一緒にやっていこう』というスタンスのこのお相手と、お話するべきです」と自信を持ってすすめてくれたのも大きかったですね。

成約して今のお気持ちはいかがですか。

乃理子夫人
乃理子夫人:

非常にほっとしています。ただ、これから職員に伝えなければなりませんし、新しい体制でうまくやっていけるか、という心配はあります。けれど、M&Aによって院長が安心して医療に専念できる足場が固まったと感じています。

夫は24時間、365日病院にいるので、ほぼプライベートの時間はなく、二人で病院に住んでいるようなものです。夫の肩の荷を少し下ろしてあげたい、楽になってほしいという思いもありました。それに、夫のサポートを私の体力で今後もやっていけるだろうか、という不安もありました。しかし、M&A後の新しい体制によって、夫が「まだ働きながら頑張りたい」と言うのであれば支え続けたいと思います。夫には、「私たちの老後資金がないのだから、頑張って働かないといけませんよ」と言っています(笑)。

当院には、昭和50年代からずっと入院されている方もいらっしゃいます。ご家族も高齢になり、帰る場所もないという方々が残っているのです。M&Aによって病院が存続できることになり、患者さんのためにも本当によかったです。このようなご縁を結べたことに感謝いたします。

担当アドバイザーが語る、
矢幅乃理子さんの素敵ポイント

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 企業情報部 主任 山本 宏司朗:

乃理子様の素晴らしさは、一言では表しきれません。院長先生のサポート、病院の事務長という立場を超えて、患者様の身辺整理や保険の解約、金銭管理など、非常に幅広く働いていらっしゃいます。院長先生と一緒に、常に前線で動かれている方です。
大変忙しいにも関わらず、私がいつ連絡しても合間をぬって返信をくださったり、「この日、電話できますか?」と丁寧に連絡をくださったり。私を含め、さまざまな人への配慮が行き届いていて、尊敬と感謝が尽きません。
ずっとご自身の身を削り、ときには法人に貸し付けまでして、従業員の方々の生活のために働かれていることは、最初に決算書を拝見したときから分かっていましたし、お話の中でも伺いました。乃理子様の責任感の強さを終始感じていました。
今回、素晴らしいお取り組みのお手伝いができ、大変光栄に思っております。本当にありがとうございました。

担当アドバイザー

企業情報部 主任 山本 宏司朗
2019年M&Aキャピタルパートナーズ入社し、後継者問題の解決や成長戦略としてのM&A仲介業務に従事。
現在は、主に医療法人を中心に数多くの成約実績を重ね、ヘルスケア業界M&Aプロフェッショナルチームメンバーに所属し、チームを牽引している。

夫婦で紡ぐ地域医療とM&Aの未来

「終わろうと思ったら、始まりだった。」
閉院の危機を乗り越えた72歳院長のM&A

精神科病院×経営権の承継

#115
譲渡企業
医療法人聖心会 三沢聖心会病院
院長(元理事長) 矢幅 啓孝
譲受企業
医療法人社団正心会

約60年にわたり地域の精神科医療を担ってきた医療法人聖心会 三沢聖心会病院。患者に寄り添う診療を続け、地域に不可欠な存在として信頼されてきた。2025年、同院は医療法人社団正心会とのM&Aを行った。M&Aの経緯と今後の展望について、医療法人聖心会 三沢聖心会病院 院長(元理事長) 矢幅 啓孝 様、元常務理事 矢幅 乃理子 様に伺った。

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成約事例インタビュー
晴ればれ

社長を公私共に支え続けた社長夫人について取材し、M&A譲渡やM&Aによって感じられた変化など、
“社長夫人の視点”からのインタビューを「晴ればれ」としてご紹介しております。

晴れ晴れインタビューイメージ

「挑戦したいことに、これからも。」
夫婦の二人三脚で歩んだ創業からM&A

出演
ピースオブシャイン株式会社
沼辺 亜利紗 夫人

創業から9年、化粧品メーカーとして独自の商品力と顧客からの高い支持を誇るピースオブシャイン株式会社は、2024年12月、業界大手の日本精工硝子株式会社との資本業務提携を発表しました。
創業者である沼辺大地社長を公私にわたって支えてきた、副社長の沼辺亜利紗様にお話を伺います。ご自身も美容が大好きで、SNSでの情報発信や商品開発にどのように関わってこられたかを語っていただきました。

晴れ晴れインタビューイメージ

「M&Aで見つめた家族の未来。」
家族と歩んだM&Aまでの道のり。

出演
株式会社Pros Cons
安部 恭子 夫人

AIを活用した外観検査システムを開発・提供する株式会社Pros Consの創業者・安部正一郎 様と公私ともに歩む安部恭子夫人です。 恭子様は企業に勤める傍ら、法務のプロフェッショナルとしてPros Consの法務や人事関連の業務も担っています。
「ラーメン二郎」をきっかけに出会い、起業してコアコンセプト・テクノロジーとのM&Aに至るまで、どのような思いで正一郎様を支えたのか。AIベンチャー経営の苦労や、M&Aを決断するまでの想い、そして今後の展望を伺います。

社長を支え続けた社長夫人へのインタビュー


M&A成約実績

累計成約数約10,000社以上

弊社では、創業以来、累計1,000組以上のお客さまをお手伝いしてまいりました。国内No.1の調剤薬局業界のM&A成約実績の他、多種多様な業界・業種において多くの実績がございます。


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