
病院業界のM&A動向
医療業の定義は、「医師又は歯科医師等が患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所及びこれに直接関連するサービスを提供する」事業のことである。
大きく、病院、一般診療所、歯科診療所、助産・看護業などに分けられる。
病院と診療所(クリニック)は、医療法によって「患者20人以上の入院施設を有する」か、否かで区別されている。

病院と診療所は、医療部門と事務部門に大別される。
医療部門には、医師を含んだ、看護師、理学療法士、薬剤師、放射線技師などの専門的な職種が含まれ、事務部門には、経営企画や人事、経理などの職種が設置されている。病院の収入源としては、患者が会計窓口で支払う「自己負担金」と、保険者から支払われる「診察報酬」に分けられている。診療報酬とは、全国で一律に定められた価格で、診療報酬点数表を用いて一点を10円として計算され、主に「基本診療料」と「特掲診療料」から構成される。 基本診療料とは、初診料、再診料、入院料などの基本的な診療行為や簡単な検査、入院サービスなどの費用を指し、診療に伴い必ず発生する料金である。
一方、特掲診療料は、検査や投薬、処置、往診など基本診療料に含まれない診療行為にかかる料金を指す。
国民医療費は、推計が始まった昭和29年度で2,152億円、国民皆保険が達成されて以後、昭和40年度には1兆円、昭和53年度には10兆を超えている。
日本の医療費は現在も増加が続き、直近4年間では、約4兆円の増加と毎年1兆円ペースで増額が続いている。
高齢化による医療費増加は今後も避けられないと考えられ、2025年には54兆円に達するだろうと見込まれている。

さらに、65歳以上の高齢者人口は、2014年で約3,300万人で、2042年には3,878万人に達すると推計される。年齢が高くなるに伴い、人口当たりの患者数が増加傾向にあるため、今後も患者数の増加が続くとされている。 昨今では、訪問介護・診療を行う診療所などが増え、医薬品業界でも監修を実施する医師の需要も増加しており、病院における、患者の治療以外の分野での働きが期待されはじめている。
その一方では、看護師により高度な専門性が必要とされ、これまで以上に厳しい業務になっているため、人材確保が困難な状態である。


医療業界の人材確保は非常に大きな問題とされている。
医師が無制限に増えることで、国民医療費総額が増え、国家予算を圧迫しかねないという考えのもと、国内では医師の数が厳格に管理され、制限されている。
その結果、医師不足を招いており、医師の総数は毎年3,000~4,000人ほど増えているにも関わらず、地域では医療が崩壊し、医療現場の過重労働は長らく改善されていない。
また、高齢化を原因とする医療費高騰の一方で、少子化は進行し、人口構造の変化によって保険医療制度は危機的状況に陥っている。高齢者は病気を抱えるリスクが高く、長期の治療が必要な場合や、寝たきりや認知症など、高齢者特有の問題によって、医療費を含む社会保障費は上がり続けている。
これらの医療費は20歳〜64歳の現役世代によって支えられているが、この層の人口は減少しつづけていることから、一人あたりの負担は重くなる一方である。
病院・診療所業界のM&Aは、事業会社と異なり株式を発行していないため、合併や出資持分譲渡、事業譲渡を基本とし行われる。
近年では、診療報酬改定・消費税増税を原因とするキャッシュフローの悪化、建替えによる投資コストの増大などで、多くの病院・診療所が経営困難に陥っている。これを機会に、大規模の病院は、規模を拡大しようと画策しているが、医療法人におけるM&Aは様々な規制が設けられているために、業界再編が順調に進んでいるとは言えない。
しかし、 現在では大手プレーヤーの市場占有率は低いため、今後、業界再編の可能性は残されており、行政も業界再編を進めるべく、制度の緩和や創設を進めている。
主な事例
・日本赤十字社グループ(東京都)は、2015年2月に県立柏原病院(兵庫県)と柏原赤十字病院(兵庫県)の統合再編計画を発表した。
両病院の施設の老朽化や手狭になった現状に加えて、丹波市域の今後の医療を検討し、これまでの医療事業を承継した新病院「県立丹波医療センター」が設立された。
・医療法人沖縄徳洲会(沖縄県)は、2018年8月に医療法人湯池会を吸収合併した。それに伴い、湯池会に所属する北谷病院は徳洲会に取得されている。
徳洲会グループは離島や僻地での医療を積極的に行っており、今回のM&Aで、北谷病院の医師の高齢化や人材不足に加え、徳洲会が持つ中部徳洲会病院が移転し、北谷病院へのアクセスがよくなったことから、両病院の連携を強化するため行われた。
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