
老人ホーム・介護業界のM&A動向
老人ホームとは、高齢者に食事サービス、入浴・排泄・食事などの介護サービス、洗濯・掃除などの家事サービス、健康管理の中から1つ以上のサービスを提供する居住施設である。
代表的な老人ホームとして「有料老人ホーム」と「特別養護老人ホーム」が挙げられるが、その中でも「有料老人ホーム」は「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3つに分類される。
入居条件や提供するサービス、居住費などは老人ホームによって異なるため、入居希望者は生活条件にあった施設を選択することになる。

有料老人ホームは、「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3つの種類に分かれており、以下の基準がある。
■介護付有料老人ホーム
介護が必要であれば、介護サービスが提供される老人ホーム
■住宅型有料老人ホーム
介護が必要であれば、外部の介護サービス事業者と契約し、その事業者から介護サービスが受けられる老人ホーム
■健康型有料老人ホーム
介護が必要であれば、退去しなくてはいけない 介護付有料老人ホームに関しては、介護保険法における特定施設入居者生活介護に係る指定基準を満たし、都道府県知事等から「特定施設入居者生活介護」の指定を受ける必要がある。
また、2006年4月の介護保険法の改正により、各地方自治体は介護保険事業計画に基づいて、有料老人ホームの新規開設を制限することができるようになった。上記のほかにも、老人福祉法、高齢者住まい法など、施設の種類や入居希望者の状態によって、様々な規制がある点が業界の特色である。
介護付有料老人ホームなど介護サービス事業者の収入の1つに介護報酬がある。これは被保険者に提供したサービスの対価として、原則としてその1割が被保険者本人から、そして残りの9割が市町村などの保険者からサービス事業者に支払われる仕組みである。これは公定価格であり、3年ごとに改定される。
デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社の調査によると、国内施設系介護サービス市場と住宅系介護サービス市場を合わせた市場規模は、2020年に約4.7兆円になると予測されている。2014年の実数値である約2.8兆円から約1.7倍の伸びた数値となっている。
少子高齢化が進む日本において、高齢者人口の増加は著しい。
2025年には団塊の世代が75歳以上になり、日本の人口の2割弱にあたる約2,200万人が75歳以上という超高齢化社会を迎えることが予測されている。そのため、しばらくは国内の介護業界、老人ホーム業界に対する注目や市場規模は今後も拡大し続けるだろう。
業界内の売上高を企業別に比較すると、2017年の売上高1位は株式会社ニチイ学館の介護部門で約1,481億円、2位はSOMPOホールディングス株式会社の介護・ヘルスケア事業で約1,250億円、3位は株式会社ベネッセホールディングスの介護・保育カンパニー事業で約1,118億円となっている。

老人ホーム・介護業界の課題として、まず第一に深刻な人手不足があげられる。
市場規模が拡大の一途をたどるなかで、人材の争奪戦は激しくなっている。人材不足の要因として賃金の低さや業務にかかるストレスが大きいという声があがっている。対高齢者という仕事柄、些細なことが事故につながるため、職員にかかる精神的、肉体的な負担は比較的大きい業界といえるだろう。 また、3年ごとに改定される介護報酬の変動も、懸念点としてあげられる。
2018年度の介護報酬の改定率はプラス0.54%となったが、市場規模が拡大している状態は、介護報酬の増加につながり、それが政府の財政を圧迫することになる。そのため、今後は介護報酬のマイナス改定ということも大いに考えられるため、各企業は十分に備える必要があるといえるだろう。
老人ホーム・介護業界では、同業同士による事業基盤の拡大やノウハウ獲得、人材確保のためのM&Aが行われている。また最近では、成長市場にあたるため、飲食業界や保険業界、不動産業界、小売業界などの異業種から参入するためのM&Aが活発化している。
―主な事例―
・2018年12月、株式会社ソラストは東京都内を中心に有料老人ホーム7ヶ所を運営している株式会社オールライフメイトの株式を取得し子会社化した。このM&Aにより、事業展開エリアの拡大とエリア内で提供できるサービスの充実が図られた。
・2018年11月、株式会社global bridge HOLDINGSは大阪府にて主に住宅型有料老人ホームの運営を行っているYUANの株式を取得し、子会社化した。このM&Aにより、事業展開の充実が図られた。
・2018年11月、株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティは、神奈川県茅ケ崎市を中心に事業展開する株式会社ホームライク湘南の発行済株式を全て取得し、完全子会社化した。このM&Aにより、介護人材の育成におけるノウハウの共有を含めたシナジー効果が期待され、介護人材の確保・育成や社員の定着率の向上、また複合型介護施設の運営力と収益力の更なる強化が図られた。
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