
電気通信業界のM&A動向
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電気通信業者とは、通信機器の通信をつなぐための回線や機器本体を提供する事業者のことを指す。
人々の情報インフラを支えている業界であり、携帯電話やスマートフォンなどの「移動通信」、光回線などの「固定通信」、インターネット接続サービスを提供する「ISP(インターネットサービスプロバイダー)」の3つの役割に大きく分けられる。
「音声を運ぶ」という点や「データを運ぶ」という点から、通信キャリアや通信回線事業者と呼ばれることもある。

電気通信事業は、国民の財産である公共の電波の提供を受けて事業活動を行っている。そのため、高い利益率を維持し続けると、国からの圧力がかかってくる可能性もある点が特徴的である。参入障壁に関しては、通信自由化以降の業者数の大幅な増加から、高くないといえるだろう。今後は、政府の介入もあるとみられ、競争が激化することが予測されている業界である。
総務省の「平成30年版情報通信白書」によると、2016年の電気通信事業者の固定通信と移動通信の売上比率は、移動通信が51.4%で固定通信が31.4%と、移動通信が電気通信業界全体の半数以上を占めている状態である。

出典:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd251610.html
総務省の「ICTの経済分析に関する調査」によると、電気通信業界の2017年の市場規模は19兆9,440億円であり、直近5年間では21%増加している。1985年の通信自由化以降、電気通信業者数は大幅に増加している。

出典:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/h30_01.pdf
電気通信業界の再編により、近年までは電気通信業界はソフトバンクグループ株式会社、日本電信電話株式会社(NTTグループ)、KDDI株式会社の3強に集約していた。しかし、政府はこの状態を切り崩すために自社では通信設備を持たず、通信設備を借り受けた上で通信サービスを提供するMVNO (Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)を重要視したことで、電気通信業界へ多くのMVNO企業が参入した。
また、2019年10月1日に施行された「改正電気通信事業法」は、携帯電話会社の販売方法を規制する法律であり、電気通信業界に料金競争を促すことで、激しい価格競争が開始された。
東京五輪開催予定であった2020年は、第5世代移動通信システムが本格する「5G元年」と言われており、電気通信大手3社のソフトバンクグループ株式会社、日本電信電話株式会社(NTTグループ)、KDDI株式会社に加え、2019年に電気通信業界に参入した楽天モバイルが、2020年から5Gのサービスを開始している。各社それぞれの5G戦略で顧客へ電気通信技術を用いた新たなサービスの提供を開始しており、今後の業界内での競争がより一層激しくなっていくと予想される。
電気通信業界の課題としてあげられるのが、スマートフォンなどのモバイル端末の普及率が飽和状態であることである。総務省が発表した「平成30年通信利用動向調査」によると、世帯におけるモバイル端末の保有割合は95.7%にのぼり、スマートフォンの保有割合も79.2%と約8割にまで増加している。そのため、新規契約者が大幅に増加することは見込めないため、新たな収益源の確保が必要である。
また、2020年9月に首相に就いた菅義偉首相は、首相就任前から大手電気通信事業者の利益率の高さを問題視しており、この点も電気通信業界全体の懸念になっている。「大幅な引き下げの余地があると考える」との考えから、今後も電気通信業界に対する圧力は強まる可能性がある。
電気通信業界では、新規参入のためのM&Aや、事業拡大のためのM&A、新たな事業創出のためのM&Aなどが行われている。
2006年3月、ソフトバンク株式会社は世界最大手の電気通信事業者Vodafone Group(イギリス)の日本法人であるボーダフォン株式会社をM&Aした。携帯事業への新規参入を検討していたソフトバンク株式会社は、ボーダフォン株式会社のユーザーの獲得で素早く事業展開するためにボーダフォン株式会社のM&Aへと至った。また、一定以上の規模を持つことで、各種端末メーカーとの交渉も対等に行えるようになった。
2018年12月、KDDI株式会社は、ビッグデータ分析やAI活用コンサルティング、AIアルゴリズムの構築・運用、AIを用いた自社製品の提供などの事業を行う株式会社ALBERTと資本業務提携を締結した。KDDI株式会社は、電気通信業界における顧客数やニーズへの対応ノウハウを強みとしているものの、まだAIやビッグデータ分野には参入したばかりであり、顧客のニーズにAIなどの最先端技術で対応するのは難しいと考えられる。一方で株式会社ALBERTは高度なAIの技術力を持つものの、顧客数やニーズへの対応ノウハウはKDDI株式会社と比べると劣っていると考えられる。KDDI株式会社の持つ顧客ニーズへの対応ノウハウと株式会社ALBERTの持つ高度なAI技術が融合することで、既存のインターネットやスマホでは体験できない全く新しいサービスの創出が期待された。
2018年、KDDI株式会社は株式会社カカクコムをM&Aした。KDDI株式会社と株式会社カカクコム両社が有するアセットを組み合わせることで、新しい体験価値を創造し、相互の事業の発展と新規事業の創出を目指していくとしている。具体的には株式会社カカクコムの提供する「価格.com」「食べログ」など生活者視点から多様なニーズに応える各種サービス・メディアと、KDDI株式会社がau利用者に向けて提供する「auスマートパス」「au WALLET」の各種サービスとの連携を通じて、御客のライフスタイルにあわせた最適な商品・サービスの提供を実現するとしている。また、両者のアセットを融合し、デジタルマーケティングや広告商品の開発、新規サービス・メディアの開発など、新たな事業創出の推進も期待されている。
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