インターネット(IT)業界のM&A動向
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日本では2000年以降、M&Aの件数が増加傾向にあります。そのうちIT業界が関与するM&Aは、全体の約4割を占めています。IT業界は急速な変化と進化を遂げており、M&Aは重要な経営戦略の一つです。
本記事では、IT業界におけるM&Aの動向や活用するメリット、成功のポイント、具体的な事例を紹介します。M&Aの課題と展望についても触れていますので、今後の経営戦略に活かしたい方は、最後までご参照ください。
M&Aの前に押さえておきたいIT業界の情報
IT業界のM&Aを検討する前に、この業界の基本的な情報を理解することが必要です。まずは、定義や特色、代表的な企業を把握しましょう。
IT業界の定義
IT業界とは、情報技術(Information Technology)を活用したサービスを展開する企業の集合体です。多様な職種があり、必須のスキルは各種で異なります。
IT業界の分野は大きく分けて、以下の5つです。
- ・ソフトウェア
- ・ハードウェア
- ・情報処理サービス(SI)
- ・インターネット・Web
- ・通信インフラ
これらの分野をまたがって、事業を展開する企業も存在しています。
代表的な企業
IT業界における代表的な企業は、以下のとおりです。
- ・富士通株式会社
- ・日本電気株式会社(略称:NEC)
- ・株式会社NTTデータグループ
- ・株式会社日立製作所
IT業界の特色
IT業界は広範で、インターネットプラットフォームの提供やオンラインショッピング、アプリでのデリバリーサービスなど、情報技術を活用した多様なサービスを展開しています。
IT業界は著しい実質GDP増加率を達成しており、2020年には2000年と比べて1.5倍を超えるまでに成長しました。近年はクラウド、AI、5Gなどの新技術が注目されています。特に、新型コロナウイルス感染症の影響でDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速し、さらなる成長が期待されています。
これらの特色は、IT業界でM&Aを成功させるために重要なポイントです。
IT業界のM&A動向・市場規模
2022年度の国内民間IT市場は、前年度比4.5%増の約14兆1,600億円となりました。多くの業界では、コロナ禍に伴い市場の縮小傾向が見られたものの、IT市場においては著しい減少が見られませんでした。
IT投資額の増加は、
- ・既存システムやサーバーの更新
- ・オンプレミスからクラウドへの移行
- ・法改正対応のシステム導入
- ・帳票の電子化
- ・新規業務システム導入 など
デジタル化の推進が、主な要因となっています。
次々に新たな技術が発展していくなかで、セキュリティへの意識も高まっており、IT市場は今後一層成長していくと見込まれています。市場動向を理解し、適切な戦略を立てることで、M&Aの成功が実現できるでしょう。
IT業界のM&A事例
IT業界では、M&Aによって事業の拡大や新たな価値創出を目指しています。以下に、具体的な事例を紹介します。
USEN-NEXT HOLDINGSとバーチャルレストラン
株式会社USEN-NEXT HOLDINGSは2022年、株式会社バーチャルレストランの全発行済株式を取得し、子会社化を実施しました。
バーチャルレストランは、本業で飲食店を経営する傍ら、既存店舗の厨房を活用してデリバリーサービス向けにフードブランドを運営する経営スタイルです。
USEN-NEXT HOLDINGSのDX事業と、バーチャルレストランのサービスを融合させることで、飲食店への新たな収益機会の提供と経営支援を狙いました。
ケイ・テクノスと西九州電建工業
通信インフラ事業等を展開する株式会社ケイ・テクノスは、西九州電建工業株式会社を買収しました。
佐賀県西部を中心に30年以上の歴史を築いてきた、西九州電建工業の事業を取り込むことで、通信インフラ事業の拡大および企業価値の向上を図ります。
アクモスとプライムシステムデザイン
ITソリューションサービスを提供するアクモス株式会社は、株式会社プライムシステムデザインを買収しました。
アクモスは自社の成長のために事業投資を推進しており、主に首都圏でM&A投資を行っています。プライムシステムデザインが営む、SES事業の拡大を通じた両社の経営強化を目的とし、買収を実施しました。
ソニーグループとバンジー社
ソニーグループ株式会社の米国子会社であるソニー・インタラクティブエンタテインメントは、アメリカのゲーム大手として知られるバンジーを買収しました。
ソニーグループはエンタメ事業とIT技術をかけ合わせ、事業の拡大を目指しています。具体的には、バンジー社が保有する優れたゲーム開発技術を活用し、プレイヤーがインターネット上で関わりあう「ライブゲーム」の品質向上、およびサービス強化を試みています。
カヤックとPapillon
eスポーツ事業の海外市場進出を目指す第一歩として、株式会社カヤックは株式会社Papillon(パピヨン)を買収しました。
カヤック傘下の株式会社eSPは、eスポーツの大会主催・運営ツールを提供しています。一方のPapillonは、eスポーツ大会開催ツール(トーナメントプラットフォーム)の開発・運営を行う企業です。
カヤックは、Papillonをグループに迎え入れることで双方のサービスを統合し、世界水準のeスポーツプラットフォームへ発展させていくことを狙っています。
IT業界でM&Aを活用するメリット
IT業界でM&Aを活用すると、多くのメリットがあります。それらは、企業の成長、競争力の強化、そして新たな価値創出につながります。
優秀な技術者の獲得が最大のメリット
IT業界におけるM&Aで、買い手の最大のメリットは、優秀な技術者を獲得できることです。IT・ソフトウェア領域が急激に発展するなか、豊富な知識や技術を持つ人材の需要が高まっています。
一から技術者を育てるには、多大な資金と時間が必要です。優秀な技術者を有するIT企業を買収することにより、M&Aのコストのみで経験豊富な人材を得られます。
IT技術を新規事業や新規営業に活用できる
自社がIT分野外の事業を展開している場合、IT・ソフトウェア企業をM&Aによって買収することで、新技術を活用した新規事業への参入や、買収企業の顧客を取り込んで営業ルートを拡大することが可能です。
目覚ましい成長過程にあるIT業界に新規参入する際は、既存の競合他社に負けない技術開発のために、膨大なコストと時間を要します。M&Aであれば、既存の技術を自社に取り込めるので、スピーディに事業を展開できます。
大手の資本を活用して成長を加速できる
M&Aによって大手の資本を活用できるようになることで、自社事業の成長を加速できる点もメリットです。バックオフィスなどの機能を拡充するには、採用活動から体制化、機能の拡充の実現まで、時間とコストがかかります。
先述のとおり、IT業界は人材難であり、技術者だけでなく管理人材の獲得も困難な状況です。M&Aを実施すれば、既に確立している機能を活用でき、市場の成長に伴う事業の急拡大にも対応しやすくなります。
IT業界におけるM&A成功のポイント
IT業界では、どの分野においても次々に新しい技術力が開発されています。IT業界のM&Aを成功させるためには、自社が有する技術・設備との融合で革新的な技術開発が見込める、シナジー効果を最大化できる相手を見極めることが大切です。
その際には、相手企業の債務状況も綿密にリサーチしておくことが重要です。IT業界では、開発や設備に多額の投資が必要となるため、債務を抱えているケースも少なくありません。
相手企業の抱える債務を把握しないままにM&Aを行った場合、買い手企業が弁済義務を負うリスクもあります。あらかじめ、徹底した調査(デューデリジェンス)を行うことが肝心です。
IT業界における今後のM&Aの課題と展望
IT業界におけるM&Aは、市場の成長と共に進化し続けています。特に注目すべきは、今後も伸びていくと予想されるIT業界のM&Aと、異業種とIT企業によるM&Aの活発化です。
今後もIT業界のM&Aは伸びていくと予想
日本では2000年以降、M&Aの件数が増加傾向にあり、2019年には年間4,000件を超えました。IT業界が関与するM&Aが特に多く、全体の約4割を占めています。
IT企業のM&Aは、2014年には年間600件程度でしたが、2018年には約1,000件に達し、2022年には1812件にまで伸びています。大手・中小企業を問わず、全国でIT企業によるM&Aが増加しており、市場の拡大と共に今後も成長していく見込みです。
異業種とIT企業のM&Aが活発
近年、異業種とIT企業のM&Aも注目されています。製造業などを展開する企業が、小規模なSIer(受託開発ソフトウェア業)を譲り受ける事例が増えています。
背景にあるのは、IT関連の開発で発生するコストやアジャイル型開発の難しさといった課題を、IT企業をまるごと自社に取り込み内製化することで解消しようという動きです。
新技術の開発のためにアジャイル型の開発が必要とされるなかで、異業種とのM&Aは今後さらに増加する可能性があります。
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