
バス・タクシー業界のM&A動向
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バス業とは、道路運送法の旅客自動車運送事業に従い、バスを運行する事業を指す。バスの運行形態は大きく分けて、決められた経路を決められた時刻で運行する乗合バス(路線バス)とチャーターし運行される貸切バス(観光バス)がある。
タクシー業とは、道路運送法の一般乗用旅客自動車運送事業に従い、タクシーを運行する事業を指す。タクシーの運行形態は一般的なタクシー業以外にも、介護・福祉タクシーや、運転代行業、荷物の運搬などがある。2019年末から流行しているコロナウイルス感染症による特例措置として、出前などを含めた物資の配送が一時的に認められている。

バス事業は、人件費が原価構成のうち57.9%を占めており、タクシー事業に関しても、人件費が原価構成の70%を超えているため、どちらも労働集約型の事業であり、優秀な人材の確保が重要である。
バス事業とタクシー事業は、共に移動手段として利用される。近年、移動手段の多様化により、顧客獲得競争が激化しており、カーシェアの台頭やライドシェアの登場は両業界にとって大きな脅威になり得るだろう。また、規制緩和により、相乗りタクシーも解禁されることが予想され、各事業者の顧客流出や、営業収入の減少が懸念されている。
また、バス・タクシーともに自動車を使用するという点から、環境への取り組みも他業界以上に事業者に求められている。エコドライブの徹底や、省資源活動、環境に優しい低公害車の導入など、もちろん環境に対して必要なことではあるが、事業者にとっては、コストアップにつながり、経営を圧迫する一因ともなっている。
バス業界は、2000年の規制緩和で免許制から許可制になり、事業者数は緩和前の2倍の約4,500社に増加した。急速に増加したバス事業者ではあったが、運輸局の管理も困難になり、重大事故が頻発する結果につながってしまった。それ以降、運行システムの見直しやITシステムの導入など、労働環境改善に積極的に取り組む姿勢がみられ、現在では労働環境は大きく改善されている。また、2017年4月1日より貸切バス事業の更新制が導入され、貸切バス事業を継続するためには、更新許可申請を行い、条件をクリアしないと更新できない仕組みになっている。
公益社団法人日本バス協会の調査によると、平成29年度のバス業界の営業収入は1兆5,262億円であり、輸送人員は46億3,958万人にのぼった。運行形態別にみると、乗合バスは平成4年度以降は営業収入が減少傾向にあり、前年比1.0%減の9,497億7,500万円であった。それに対し、貸切バスの輸送人員は長期的には増加傾向にあり、営業収入も前年比1.0%増の5,764億7,000万円と好調である。
近年では、高速道路網の発達に伴い、高速乗合バスが大きく実績を伸ばしており、平成26年度の輸送人員数は1億1,500万人を超えた。各事業者も利用者が快適に過ごせるようなサービスを展開するなど、今後も期待される分野である。

出典:http://www.bus.or.jp/about/pdf/h29_nba_brochure.pdf
一方で、平成28年度のタクシー業界の営業収入は1兆6,660億円であることが一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会の調査によって明らかになっており、輸送人員は14億5,197万人であった。リーマンショックによる企業の業績悪化から法人利用が減少し、タクシーの輸送人員数は大幅に減少したが、それ以降は大きな変化がなく推移している。また近年では、車両数に対して乗務員が足りていない状況に陥っており、車両稼働率の低下が営業収入が伸びない一因となっている。
バス事業の課題として挙げられるのが、地方での運営である。地方における乗合バスの主な利用者は高齢者か学生であり、人口の都市部流出や、少子高齢化、自家用車の普及により、輸送人員の減少が目立つ状況に陥っている。これらの問題に加え、バリアフリーへの対策や環境対策により、コストが増加していることから、経営破綻や路線の廃止等、生活交通路線としての役割を果たすことが困難な状況である。この課題を解決するためにも、バス事業者と地方公共団体、そして地域住民などが協力して、この課題に取り組んでいく必要がある。
タクシー業界は、過酷な労働環境や資格取得が必須であることなどから、若い入職者が減少している点が大きな課題になっている。これが車両稼働率の低下につながり、経営悪化の要因になっている。そんな中、都内のタクシー事業者では、労働環境の改善に取り組み、大きく新卒採用者数を増やすなどの実績もみられ、メディアなどでも注目を集めている。また、政府も、タクシー乗務員に必要とされる第二種免許の受験資格緩和などを検討しており、今後の展開に期待がかかる。
バス業界では、中小バス会社の高齢化とともに、慢性的な人材不足、特に運転手の人材不足解消のためのM&Aなどが行われている。一方のタクシー業界では、車両稼働率が低下しているなか、タクシー1台あたりの売上高は増加傾向にある。そのため、規模拡大のためのM&Aや、同業界内でのM&Aが活発に行われている。
2020年4月、大和自動車交通株式会社は、丸井自動車株式会社より事業を継承する株式会社丸井自動車の発行済株式を全て取得し、子会社化した。このM&Aにより、タクシー事業における業容拡大を行い、収益基盤の確保が図られた。
2019年3月、阪急バス株式会社は、阪急バスの100%子会社である阪急田園バス株式会社を吸収合併した。このM&Aにより、安定的な人材確保と柔軟な人員配置を行い、輸送の安全性向上とサービスの向上が図られた。
2019年2月、第一交通サービス株式会社は、有限会社広島合同タクシーの全発行済株式を取得し、M&Aを成立させた。このM&Aにより、広島におけるタクシーを18台増加させ、規模の拡大を実現した。
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弊社のM&Aご成約実績
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詳細業種 内装工事・フローリング工事 所在地 関東 概算売上 10億円~30億円 -
詳細業種 水産加工業 所在地 関東 概算売上 10億円~30億円 -
詳細業種 歯科医院 所在地 中部・北陸 概算売上 1億円~2.5億円 -
詳細業種 リース業 所在地 非公開 概算売上 非公開 -
詳細業種 映像制作 所在地 関東 概算売上 10億円~30億円 -
詳細業種 広告企画制作 所在地 関東 概算売上 5億円~10億円 -
詳細業種 ソフトウェア受託開発 所在地 中部・北陸 概算売上 1億円~2.5億円 -
詳細業種 ソフトウェア受託開発業 所在地 関西 概算売上 1億円~2.5億円 -
詳細業種 紙器製造販売 所在地 関東 概算売上 1億円~2.5億円
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