
物流・陸運業界のM&A動向
物流業は、製造業や流通業など他の業界内で「輸配送・荷役・流通加工・梱包・保管・情報管理」の役割を担っており、単体で独立したものではない、特殊な形態となっている。 物流業は、輸送・配送サービスを提供する「運送業」と、保管サービスを提供する「倉庫業」に大別される。
運送業は、その中でも輸送機関ごとに、トラック運送業、宅配便業、鉄道業、海運業、空運業に分けられ、日本の産業競争力の強化や豊かな国民生活の実現と地方創生を支える、社会インフラとされる。

物流業界は、多重下請け構造となっており、ユーザーとなる企業から大手企業へと受注されたのちに、子会社または中小企業に下請けがなされていく仕組みになっている。労働集約型であることから、個人が対応可能な業務量には限界があり、規模の優位性(=スケールメリット)が特に重要視される。 陸上・港湾などで行われる運送業は「陸運」と呼ばれ、主にトラック運送業や宅配便などの業務がそれらに該当し、物流業界の約7万5千の事業者のうち、8割以上をトラック運送業が占めている。
国内では、日本郵便や日本郵船、日本通運など大手の物流会社が全国に物流網を展開しており、小規模なものから大規模なものまで広範囲に物流サービスを提供している。しかし、その一方で、中堅以下の企業は特定の地域・荷主・貨物種別などに特化して事業を行なうことが多い。また、小資本でも業界参入が可能なため、零細企業も多いことが特徴として挙げられる。
宅配便市場は、1976年にヤマトホールディングスが取引を開始してから、広く一般の家庭にも普及し、2018年度には宅配便の取扱個数が4,307百万個、メール便の取扱個数が5,021百万個となるなど、規模を拡大し続けている。
宅配便市場の成長の背景には、楽天やAmazonなどの企業がEC市場をリードした点や、メルカリなどのフリマアプリを利用する消費者が増加したことでCtoC(=顧客間取引)の市場が拡大した点が考えられる。

国土交通省「平成30年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」によると、2018年度には、宅配便の取扱個数が前年比101.3%とと横ばい、メール便では95.2%と減少しており、市場が成熟期へと移り始めているとも捉えられている。今後さらに成長すると予想されるEC市場において、「宅配事業」は欠かすことのできない事業であるため、宅配便市場も順調に推移すると推測できる。

物流業界は、EC市場拡大による宅配需要の急増によって、順調に景気が推移している。しかし、大手ECサービスの台頭によって、配送会社は、消費者により良いサービスを提供するため、迅速な配送を目指そうとするなど、競合他社との差別化を図り、負担がますます増加している。
急激な宅配需要の増加は、現場に大きな負担をもたらしており、業務量や1人当たりの労働時間の増加など、労働環境の悪化が問題視されており、物流業界における労働人口の獲得は喫緊の課題とされる。賃金の引き上げによって、労働環境を改善することはできるものの、企業利益は減少してしまい、送料引き上げは賃金分の相殺は可能になるものの、顧客満足度の低下や、利用客減少に繋がりかねないのではないかという不安があり、多くの企業が課題を抱えている。
近年のEC市場拡大に伴って、利便性の高い宅配便輸送は消費者からの支持を受けており、運送業界の需要は増加し続けている。
EC市場は今後も成長が見込まれており、国内の貨物輸送量も前年比0.3%増と増加傾向にあるため、宅配便の需要は今後も継続して伸びていくと予想され、需要増加の解決策としてのM&Aが注目されている。
・安田倉庫株式会社(東京都)は、2019年7月、北陸3県を拠点に配送ネットワークを持つ大西運輸株式会社及びオオニシ機工株式会社の全株式を取得し、子会社化。さまざまな物流事業と不動産事業を展開する安田倉庫は、このM&Aによって、大西運輸グループの持つ物流網やノウハウを自社と結びつけ、輸配送網の更なる拡大とサービス向上が見込んでいる。
・日本通運株式会社(東京都)は、2016年4月、陸運事業を展開する名鉄運輸株式会社(愛知県名古屋市)の株式のうち、20%を取得し、資本業務提携を締結。 このM&Aを通じて、日本通運はその親会社となる名古屋鉄道株式会社に次ぎ、第2位株主となった。日本通運は、この資本業務提携によって、輸送網の相互利用や、物流の連携強化、仕入れや購買を共同で行うことによる原価削減を狙った。
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