鉄道
業界別M&A動向

鉄道業界のM&A動向

更新日

監修者プロフィール

  • 企業情報部 部長 菊池 尚人

    企業情報部部長菊池 尚人

    大手証券会社にて未上場企業(大手・中堅)の資産運用や富裕層の資産運用コンサルティングに従事。
    当社入社後、M&A案件開発、M&Aアドバイザリー業務に従事。主に、物流・運送業界、飲食・ケータリング業界、建設コンサルタント業界を手掛ける。

鉄道業界は、その規模と影響力から、多くの人々の生活やビジネスに深く関わっています。鉄道業界におけるM&Aは、事業規模の拡大のほか、事業の多角化を目的として実施されるケースも少なくありません。

本記事では、鉄道業界の市場規模と動向、そしてM&A事例について詳しく解説します。

M&Aの前に押さえておきたい鉄道業界の情報

M&Aを成功させるためには、鉄道業界の基本的な定義と特色を理解することが重要です。以下では、鉄道業界の定義と特色について詳しく解説します。

鉄道業界の定義

鉄道業とは、鉄道事業法に従い、普通の鉄道(2本レール構造)、モノレール、案内軌条式鉄道(ゴムタイヤ走行)、トロリーバス(架線による電動バス)、ケーブルカー、リニアモーターカーなどを経営する事業のことを指します。

人や貨物を迅速かつ大量に運送でき、陸上輸送機関として重要な役割を担う鉄道は、人々の生活に欠かせない公共事業です。

鉄道業界の特色

鉄道業界は、経営母体によって、4種類に分けられます。

貨物列車については、JRグループが大半を占めますが、私鉄や専用鉄道も少数ではあるが、貨物を扱っています。

また、運営する駅を拠点として、ホテル・不動産・小売業・レジャーといった事業を手掛けたり、インフラ整備支援でグローバル展開を行なったりと、複数事業を運営するケースが多い点も、鉄道業界の特徴といえるでしょう。

鉄道業界の市場規模・動向

鉄道業界は、主にJR各社が市場の大部分を占めています。総務省の調査によると、2023年の鉄道業界の売上高は6113億8200万円となり、前年比121.8%でした。

2020年には新型コロナウイルスの影響で収益が落ち込みましたが、2021年以降回復しつつあります。今後は利用者数の増加と共に収益が増加していくと予想され、JR主力3社は収益予想を上方修正しました。一方で従業員数は少しずつ減少傾向にあり、後継者不足・なり手不足が課題です。

鉄道業 売上高(年平均)

参照:「サービス産業動向調査」2024年(令和6年)1月分(速報)

鉄道業界のM&A事例

鉄道業界でもM&Aは活発に行われています。ここでは4つの事例を取り上げ、背景や目的について詳しく見ていきましょう。

九州旅客鉄道株式会社と株式会社フジバンビ

2023年6月1日、九州旅客鉄道株式会社は株式会社フジバンビの全株式を取得し、子会社化しました。フジバンビは「黒糖ドーナツ棒」シリーズを中心とした菓子製造・販売を行う企業です。九州旅客鉄道株式会社は、地域に根差した高い企業価値を持つフジバンビを買収することで、流通・外食領域のさらなる事業強化をめざします。

長崎自動車と島原鉄道

2017年11月13日、島原鉄道は長崎自動車へ株式の90%を譲り渡し、長崎自動車の傘下に入りました。島原鉄道は鉄道のほか、乗り合いバスやフェリーを運営する企業ですが、雲仙普賢岳の噴火災害による鉄道の分断や観光客の減少により多額の借金を抱え、経営悪化に陥ります。

その後、自主再建を試みるも不可能と判断し、子会社化を決断しました。長崎自動車との連携により、早期の収益回復を目指すとしています。

南海電気鉄道株式会社と泉北高速鉄道株式会社

2023年12月、南海電気鉄道株式会社は完全子会社である泉北高速鉄道株式会社との経営統合を決議しました。この経営統合の目的は、経営力の強化・効率化と、より良いサービスの提供です。

南海電気鉄道株式会社は、2017年に旧大阪府都市開発株式会社の株式譲渡を受け、同社の社名を泉北高速鉄道株式会社に改めて子会社化しました。2022年4月にはさらなるシナジー効果を見込み完全子会社化したものの、以降のコロナ禍拡大や生活様式の変容、人口減少により需要縮小が長期化していました。

京浜急行電鉄株式会社と株式会社京急システム

2024年1月、京浜急行電鉄株式会社は100%子会社である株式会社京急システムを吸収合併を決議しました。京急システムの有するコンピュータ―ソフトウェア領域のノウハウ、スキルを獲得し、グループ全体のITCに関する機能の強化、および優秀な人材の確保を図ることが目的です。この吸収合併により、株式会社京急システムは解散しました。

箱根登山鉄道株式会社と箱根ロープウェイ株式会社

2022年4月、箱根登山鉄道株式会社は箱根ロープウェイ株式会社を吸収合併しました。両者は箱根エリアの観光ルート「箱根ゴールデンコース」において、「箱根登山電車」、「箱根登山ケーブルカー」、「箱根ロープウェイ」を運行しています。双方の経営資源を融合し、集中させることで、変容する事業環境への柔軟な対応や、サービスの拡充を目指すとしてこの取引は実施されました。

鉄道業界でM&Aを活用するメリット

M&Aは、鉄道業界においても重要な戦略の1つです。ここでは、M&Aにより得られる2つのメリットについて解説します。

事業規模を拡大できる

買い手にとってM&Aの主な利点は、事業規模の拡大です。M&Aを通じて、運転手など譲渡企業の経営資源を迅速に取得することで、売上向上や地域内でのシェア拡大を実現できます。通常、これら資源の獲得には多大な労力と時間が必要ですが、M&Aを活用すればコストと時間を節約し、効率的な獲得が可能です。

事業の多角化を実現できる

M&Aを実施することで事業の多角化を実現できます。鉄道業界は、人口の増減や生活スタイルの変容、災害などによって、収益が大きく変動します。

経営環境の変容に柔軟に対応し、経営基盤を確保するためには新たな需要に対応できるサービスの創出、および該当領域における収益拡大が必要です。自社の経営を補完できる事業を持つ企業とのM&Aを実施すれば、スムーズかつ効率的に事業を多角化できます。

また、シナジー効果により新たな需要の創出も期待でき、自社の鉄道業のさらなる収益性向上にも役立つでしょう。

鉄道業界におけるM&A成功のポイント

M&Aの成功には、買い手側と売り手側それぞれが留意すべきポイントがあります。それぞれの視点から見たM&A成功のポイントについて見ていきましょう。

買い手側がおさえておきたいポイント

買い手側は、対象企業が保有する車両の数量、使用年数、メンテナンス状態などの精査が重要です。また、事故歴や訴訟の有無を確認し、車両の老朽化がある場合は、修繕費を買収資金に含めて計画する必要があります。粉飾決算や未払賃金などの簿外負債が発覚した場合には、M&A前にこれらを解決することが必要です。

売り手側がおさえておきたいポイント

売り手側は、事前にスケジュール、費用、従業員の待遇保持の優先順位を設定して交渉することが重要です。従業員のスムーズな引継ぎを保証するため、慎重なコミュニケーションが求められます。

また財務諸表だけでなく、乗客数、単価、時間別売上、車両の稼働率などの詳細な情報を整理しておき、買い手の意思決定をサポートしましょう。

鉄道業界における今後のM&Aの課題と展望

後継者不足や異業種参入の増加など、今後の鉄道業界におけるM&Aの課題と展望を詳しく見ていきましょう。

今後も後継者不足は続いていく見通し

運輸業界全体として労働力は減少傾向にあります。鉄道業界も例外ではなく、ダイヤ改正による減便や始発列車時刻の繰り上げ、終電列車時刻の繰り下げが実施されています。

また、国内全体の経営者の高齢化も深刻化しており、鉄道事業のなり手不足、後継者不足は続いていく見通しです。後継者、人材不足を乗り越えるため、一層M&Aが活発化していくことが予想されます。

異業種への参入が増える

鉄道会社の異業種への参入は、今後より増加する見込みです。背景には、進出先業界の法体制への対応を事業拡大の契機とみなす動きや、世間の変容への対応が挙げられます。

例えば、エネルギー小売業の電力自由化をうけ、沿線顧客に対して自社のポイントを付与し、既存の電力サービスで利用・還元ができる仕組みの構築や、リモートワークなど柔軟な働き方への対応として、リアルタイムで運行状況や空席状況を確認できるシステムの提供などがあります。

異業種参入は、ニーズの多様化、新規収益獲得の目的から、いっそうの増加が見込まれるでしょう。

弊社のM&Aご成約実績

  • 成約年数
    2022年6月
    対象会社(譲渡会社)
    洋品雑貨小売
    地域:中部
    譲受会社
    鉄道会社
    地域:中部
    取引スキーム/問題点・概要
    55歳以上,株式譲渡
    譲渡企業は、東海圏で郊外型雑貨店を多数出店。豊富な品揃えと商品編集力により順調に業績を伸ばしていたが後継者不在であった。譲受企...
    実績詳細を見る
新着案件情報
  • 詳細業種 中古車買取・販売
    所在地 関東
    概算売上 2.5億円~5億円
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  • 詳細業種 ソフトウェア受託開発業
    所在地 関西
    概算売上 1億円~2.5億円
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  • 詳細業種 建築工事業
    所在地 関東
    概算売上 5億円~10億円
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  • 詳細業種 産業廃棄物収集運搬
    所在地 関東
    概算売上 5億円~10億円
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  • 詳細業種 土木工事、コンクリート製造販売
    所在地 中国・四国
    概算売上 10億円~30億円
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  • 詳細業種 建設機械器具賃貸・販売・修理・検査業
    所在地 非公開
    概算売上 非公開
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  • 詳細業種 建設工事
    所在地 関東
    概算売上 5億円~10億円
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  • 詳細業種 下着の卸売および販売
    所在地 関東
    概算売上 1億円~2.5億円
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  • 詳細業種 アパレル・雑貨EC通販
    所在地 関東
    概算売上 5億円~10億円
    案件詳細を見る

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