
家事代行業界のM&A動向
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家事代行サービスとは、「家事を代わりに行う」サービスを指す。ハウスキーパー・家政婦・お手伝いさんなど呼び方は様々だが、一般的な家事経験を持つスタッフが、利用者の代わりに掃除・炊事・洗濯をはじめとした一般的な家事全般を代行するサービスである。 家事代行サービスと同様のサービスとして認識されているサービスにハウスクリーニングがあるが、ハウスクリーニングは専門的な知識や技術を有した業者が専用の洗剤や道具を持ち込んで徹底的に掃除をする業態のため、家事代行サービスとは別のサービスである。

家事代行業界の特色は、年々増大する需要に供給が追いつかない構造である。
需要と供給がバランスしておらず、需要過多・供給不足に陥っている。「DMM okan」というアプリケーションで発注できる家事代行サービスは、2016年に市場参入して1年10ヶ月で撤退した。DMM.com によると「需要が圧倒的に高く家事代行スタッフの供給維持ができなかった」と撤退理由を述べている。また「スタッフ教育の体制が整わず、サービスの質を担保できなかった」とも挙げている。
また、家事代行業界は利用者側からすると「知らない人を自宅に入られるのに抵抗感がある」という発注障壁がある。
これに対して、First という家事代行サービス業者は、家事代行サービススタッフが持参したスマートフォンを使って作業中の様子を撮影して、利用者が遠隔地に居ても自分のスマートフォンで様子をリアルタイムでチェックできるシステムを採用している。家事代行業界という労働集約型業態でも IT 化を進める事によってサービスの質向上につながる事例といえる。 家事代行業界への参入障壁は低いため、今後も異業種からの市場参入が増加すると予想される。生身の人間(家事代行スタッフ)と IT / AI / Internet をどう 融合していくかに業界の成長はかかっている。
家事代行業界の市場規模は、2011年度で811億円。2012年度で980億円。事業者数は600社にのぼる。
2014年に経済産業省が公表した「家事支援サービスについて」という調査によると、市場規模は近い将来6000億円まで拡大すると推計している。市場拡大理由は次の5つが主なものである。
1) 共働き世帯の増加。共働き世帯が片働き世帯を既に上回っている。
2) 高齢者の増加。介護サービスがカバーできないところの補完機能になっている。
3) 単身世帯の増加。2035年には男性29%、女性19%が生涯未婚になると予想されている。
4) 民泊施設の増加。民泊向けの清掃代行サービスの業界受注量が急増している。
5) 社会の意識変化。ライフスタイルの変化にともなって、生活者の意識も変化が見られる。

生活シーンでは、シェアリングやアウトソーシングが進んでいる。家事代行に限らず、ペットの世話や墓参りなど様々な代行サービスがあり、家事は主婦がやるものという概念も崩壊してきた。かつては自宅は究極のプライベート空間だったが、自宅の一部を民泊にして外国人との楽しい時間を過ごす人々も増えている。
こうした意識の変化から「家事は家事が得意な人に任せて新たな雇用機会を創出しながら、自分は自分らしいスタイルのために時間を使う」という概念が根付くと経済産業省も見ているようだ。

家事代行サービスの認知度は高まっているものの、野村総研が首都圏と大阪に住む41,000人の25〜44歳女性に調査したところ、家事代行サービス利用経験者は3%であった。まだまだサービスの良さを、広く認知してもらうことが必要である。 家事代行サービスは労働集約業態。スタッフが商品であるため、スタッフの技術・能力・経験・知識・態度・人柄がストレートに顧客満足に反映される。飲食業などと違い、スタッフは本部が見えない利用者宅でサービスを提供するため個々のレベルをチェックができない。そうなると、いかにきめ細かな「教育」をできるかが事業拡大のキーになる。教育は手間・時間・費用がかかる割には成果がすぐに出ず計測もできないのだが根気よくやった事業者が成長する。
家事代行業界は歴史が浅く、業界が成長過程で再編のための目立ったM&Aは見られない。長谷川ホールディングス(売上高66億円)。ミニメイド・サービス(24億円)。カジタク(20億円)。ベアーズ(10億円)。などが家事代行サービス専業大手である。
―主な事例―
・2016年9月、英投資ファンドCVCキャピタルパートナーズは、「おそうじ本舗」「マイ暮らす」などのサービスを展開する長谷川ホールディングスを総額350億円でM&A。このM&Aにより企業価値を高め、将来のIPOを目指す。
・2016年11月、家事代行業界大手のベアーズとモバイルヘルスケアのFiNCが業務提携。FiNCが手がける「FiNC for Business」でベアーズが提供する家事代行サービスを利用できるようになった。
・2017年1月、物流大手センコーは、家事代行・サービスアパートメントの管理などを手がけるイエノナカカンパニーをM&A。このM&Aにより自社物流拠点を活用しながら家事代行サービスを全国展開することが図られた。
・2017年6月、不動産開発販売事業を手がけるプロパティエージェントと人材派遣大手のパソナは、パソナが展開する家事代行サービス「クラシニティ」をプロパティエージェントの管理物件である「クレイシア」「アランシア」などの入居者に提供するために業務提携した。
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