
医薬品卸業界のM&A動向
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業界の定義
医薬品卸会社とは、医薬品をメーカーより仕入れ販売する専門商社を指す。
医薬品は、病院や調剤薬局などに販売する「医療用医薬品」と、ドラッグストアなどに販売する「一般医薬品」に分けられる。 医療用医薬品の9割以上は、製薬会社から「医薬品卸会社」を経由して医療機関や薬局に流通し、残り1割は製薬会社が直接販売する。 一般医薬品の5割は、製薬会社から「医薬品卸会社」を経由して薬局・ドラッグストアに流通し、残り5割は製薬会社が直接販売する。 医薬品業界の職種として、MSやMRという職種がある。MSは、Marketing Specialistの略で、医薬品卸会社の営業職のこと。MRとは、Medical Representativeの略で、製薬会社の営業職である。前者はマーケティングの観点から医薬品流通に携わり、後者はメディカルの観点から医薬情報の提供に携わることを職務とする。
業界の特色

日本医薬品卸売業連合会の会員数(本社数)は、1978年の615社から2022年には70社にまで再編により減少している。 しかし、再編によりスケールメリットが出ているはずが、医薬品卸の薄利体質は変わっていない。先の連合会の2023年3月期平均営業利益率は、何と1.07%だった。巨大化した大手4社も、メディパルが1.40%、アルフレッサが1.10%、スズケンが0.80%、東邦が1.00%にとどまっている。
地方の有力3社にいたっては、バイタルケーエスケーが0.40%、フォレストが0.60%、ほくやく・竹山が0.85%とすべて1%を切っている。新型コロナウイルスによる受診抑制があったことで、医療品卸業界の市場規模は縮小となり、元々低かった営業比率が更に低下することとなった。
納入価格を引き下げて、薬価との差額(薬価差益)を収入として確保したい医療機関・薬局と、薬価引き下げにつながるため販売価格の引き下げを極力抑制したい製薬会社との間に挟まれた医薬品卸会社は利益を確保できないというのが業界の特色になってしまっている。
医薬品流通には「未妥協・仮納入」「総価取引」など特異な商習慣があり、これを改善すべく厚生労働省が2019年「流通改善ガイドライン」の運用を開始。運用開始以降多少の収益改善が見られる。
市場規模
医薬品卸売行年鑑:2020年版によると、医薬品卸業界の2020年の市場規模は、9兆1,046億円と、前年比の横ばいになっている。
大手4社の売上は、メディパルが3兆2,420億円、アルフレッサが2兆996億円、スズケンが2兆2,327億円、東邦が1兆2,661億円である。営業利益は、メディパルが498億円、アルフレッサが290億円、スズケンが272億円、東邦が125億円となっている。従業員数は、メディパルが13,062人、アルフレッサが6,156人、スズケンが14,032人、東邦が7,785人である。
課題と展望

医薬品卸業界は、東日本大震災を経て、物流システムの重要性を再認識した。 また、後発医薬品の品質問題により、物流システムの改善が急務となった。問題のあった製品の回収と、代替品の確保や供給などで業務負担が増加しているからだ。さらに新型コロナウイルスのワクチンの供給業務も加わり、これからも業界の負担は増加をたどると予想できる。
しかし、物流システムの構築には大きな資本を必要とし、より高度に自動化されたシステムを構築することが求められてくる。今後も大手4社において競争は激化すると考えられる。システムの独自開発は時間を必要とするため、時間を買うハイブリッドなM&Aが発生する可能性がある。
また、医薬品卸会社による調剤薬局の展開も活発で、現在まで大手各社の調剤薬局の店舗数は、東邦が543店舗、スズケンは592店舗、アルフレッサは171店舗となっている。そのうち多数の店舗がM&Aにより取得したものと見られている。
調剤薬局は、医薬品卸売業界と比べても利益率が高く、業界最大手のアインファーマシーの営業利益率は4.4%と業界平均の約4倍である。
また、対物から対人へと変革を求められており、大手によるM&Aが非常に活発な業界でもある。
仮に、医薬品卸3社が持つ店舗数を合わせると、業界最大手のアイングループ店舗数を大きく上回る。この3社の一手により調剤薬局業界は大きく変わる可能性がある。
医薬品卸業界のM&A動向
上記の特色でも触れた通り、日本医薬品卸売業連合会の会員数(本社数)は、1978年の615社から2022年には70社にまで再編により減少している。
1992年日本医薬品卸売業連合会に加盟していた企業は351社だったが、2009年には114社に激減している。
この時点で大手4社に集約され、4社のシェアが90%を占めている。医薬品卸業界のM&Aはほぼ完了している。 医薬品はどこから買っても同じで商品の差別化はできない。納期・価格・サービスでも差別化はできず、もちろん品質での差別化も不可能である。そうするとM&Aを繰り返して規模を追求するしか生き残れなくなり、結果として4社に集約された。 では、規模の追求をしてどういうメリットが生まれたか。
1つは、流通網の確立である。安定供給のための設備を充実することができた。メディパルは、横浜市に最新の物流センターを稼働させることで医療機関から1箱の注文が入っても迅速に届けることができるようになり、患者を待たせない配送システムが整備された。こうした流通面の改革は、M&Aを繰り返して規模を追求することによって可能になった。
2つ目は、資本力がついたことにより水平統合によるM&Aから、垂直統合のためのM&Aを可能にすることになった。アルフレッサ・メディパル・東邦の3社は、3社共同で調剤薬局業界大手である阪神調剤薬局をM&A。また、スズケンと東邦はM&Aにより、中小の薬局を次々と傘下に収めている。
今後も水平統合から垂直統合へのM&Aは続くものと思われる。
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