
紙パルプ業界のM&A動向
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紙・パルプ会社とは、古紙・パルプ(木材)を原料に、各種の紙や板紙製品を製造する事業者のことを指す。これらに加え、紙から紙加工品を製造する事業所も紙・パルプ業界に含まれることもある。原料は、約6割が古紙、約4割がパルプ(木材)の割合で、主な用途は、印刷情報用紙や新聞用紙、包装用紙、トイレットペーパーやティッシュ等の衛生用紙などがあげられる。

紙・パルプ業界は、ペーパーレス化やデジタル化の時代背景から、紙の需要が低下し、業界全体が縮小傾向にある。そんな中で特徴的なのは、企業が活路を見出すべく、紙の製造以外の分野へ進出していることだ。例えば原料である古紙・パルプを紙の製造以外の用途として利用することがあげられる。
近年では、パルプの研究が進み、セルロースナノファイバーと呼ばれる素材が開発された。セルロースナノファイバーとは、パルプを1ミクロンの数百分の一以下のナノオーダーにまで高度に微細化した世界最先端のバイオマス素材である。この素材は、自動車の部品や、フィルター部材、家電や建材、鉄道などの交通インフラなど、多くの分野で利用されることが期待されており、商用化されれば、紙・パルプ業界にとって大きな収益源になる可能性がある。
また、原料が古紙・パルプであることから、森林などの環境と密接にかかわる産業であり、森林事業や環境対策事業なども注目されている。廃棄物の再資源化率を98%が以上であることや、温室効果ガス排出量の削減、自社林の生物多様性の保全や自社の資源と技術を活かした活動、古紙の利用拡大による循環型社会形成の実現のためにリサイクルが難しい種類の紙も利用できる技術を開発するなど、幅広い環境対策事業が行われている。

出典:https://www.jpa.gr.jp/states/global-view/index.html
これらのような取り組みもあり、日本の古紙リサイクルは、利用率・回収率ともに世界トップクラスといえる。
「2019年経済産業省生産動態統計年報 紙・印刷・プラスチック製品・ゴム製品統計編」によると、紙・パルプ業界の販売金額は、紙が1兆6,718億円でパルプが627億円の計1兆7,345億円であった。紙の内訳は、新聞用紙が2,650億円、印刷情報用紙が8,012億円、包装用紙が1,002億円、衛生用紙が3,340億円、雑種紙が1,713億円となっている。
紙・パルプの生産は、紙が1,350万2,275トンでパルプが837万3,969トンの計2,187万6,244トンであった。紙の内訳は、新聞用紙が242万2,120トン、印刷情報用紙が751万1,760トン、包装用紙が89万9,323トン、衛生用紙が183万1,023トン、雑種紙が83万8,049トンとなっている。
紙・パルプ業界は、王子ホールディングス株式会社と日本製紙株式会社の2強となっている。売上(紙・パルプ事業以外も含む)は、王子ホールディングス株式会社が1兆5,076億、日本製紙株式会社が1兆439億円であり、続いて大王製紙株式会社が5,464億円、北越コーポレーション株式会社が2,758億、三菱製紙株式会社が1,945億円などとなっている。
紙・パルプ業界は、人口減少や少子化、ペーパーレス化、デジタル化に伴い、国内需要は減少が続いている。日本製紙連合会の調査によると、紙・パルプを原料とする紙の国内需要は、2014年以降、前年比1.8%減、3.4%減、2.1%減、2.3%減、4.3%減、3.5%減と減少を続けており、深刻な課題になっている。
各事業者には、縮小する国内市場に対するアプローチに加え、需要増が期待できる海外市場や、原料である紙・パルプの研究開発から派生する別分野への事業拡大が求められている。
紙・パルプ業界では、海外への事業拡大のためのM&Aや、利益率向上のためのM&A、相乗効果に期待するM&Aなどが活発に行われている。特に、大王製紙株式会社は、2017年2月~2020年2月の間に5件のM&Aを成立させており、今後の動向に注目が集まっている。
2017年2月、大王製紙株式会社は、日清紡ホールディングス株式会社から日清紡ペーパープロダクツ株式会社の全株式を譲受した。このM&Aにより、家庭紙事業での売上確保と高級ブランドの取得による利益率の向上を実現できた。
2017年2月、大王製紙株式会社は、企業向けパンフレットやパッケージ印刷などの商業印刷を手がける三浦印刷株式会社をTOB(株式公開買い付け)で買収すると発表した。このM&Aにより、印刷事業の強化とともに、紙需要の拡大が図られた。
2019年12月、大王製紙株式会社の子会社であるダイオープリンティング株式会社は、通販業者向けのカタログ、ポスター、チラシなどの印刷を手がける株式会社千明社と事業の譲受に関する事業譲渡契約の締結した。2020年1月に、ダイオープリンティング株式会社の100%子会社である新会社を設立し、譲受した事業は新設会社が引き継ぐことになった。大手の優良顧客を多く抱えている株式会社千明社の事業を譲受することで、相乗効果が期待された。
2020年2月、大王製紙株式会社は、トルコの衛生用品メーカーであるウゼンの全株式を取得して完全子会社化した。トルコに衛生用品の生産拠点を持つことで、中東やロシアなどへの事業拡大が期待されている。
2020年2月、大王製紙株式会社および丸紅株式会社は、ブラジルの衛生用品大手サンテルの全株式を取得し、子会社した。このM&Aにより、衛生用品を軸に新興国を中心とする海外市場への事業拡大が図られた。
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