
食料品業界のM&A動向
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食料品製造業は、食料品加工業者や外相産業への原料供給を主要業務とする素材型と、原料を調達して加工品を製造し小売業あるいは直接消費者に完成品を供給する加工型に二分類される。 素材型の生産品は、穀物・製粉・畜産素材品・水産素材品など。加工型の生産品は、缶詰・パン・菓子・惣菜などである。
商流(流通)から見ると、調味料・豆腐・冷凍調理食品などは食料品工場・外食チェーンおよびスーパーなど小売業にも卸売りされているため、両方に含まれる。

国内生産品に関しては、主に生モノである原料を農協や商社などから買い入れ「食料品を製造」。食料品製造業者は生産品を食料品卸売業に販売して、飲食業やスーパーなど小売業に納品されてからようやく消費者に届くという海外では考えられない多層階構造の流通経路になっている。この構造は今後IOTの一般化により解消されるものと思われる。 食料品製造業者の最も重要な使命として「食の安全」がある。例えば異物混入による自主回収などは消費者も頻繁に耳にしており、未然に防止することにより健康被害にまでは至ってないケースが多いが、日本では「賞味期限」と「消費期限」の2段階の食品衛生基準が存在している食料品が多い。複雑な流通経路と相まって原材料が海外からの輸入品などになると全体のリードタイムを緻密に計算した高度な生産計画が求められる。この計画に狂いが生じると大量の廃棄ロスになって経営を圧迫することになる。食料品製造業者は常に難しい経営の舵取りが求められている。
日本の食料自給率は、カロリーベースでカナダの258%に対して39%と先進国で最低水準。昭和40年は自給率73%だったため、食生活の欧米化により輸入食材が増え続けた結果である。個別で見てみると、ざるそばは24%であるが、おにぎりになると98%である。国産でまかなえる米飯が入ると一気に上昇する。今後TPP(環太平洋パートナーシップ)の施行により市場環境は更に変化する見込みだ。
食料品製造業界の市場規模は官庁および分類方法の違いで数値にばらつきがあるが30兆円前後になっている。
上場食料品製造企業数は92社。非上場35,572社である。事業所数は10年以上ほぼ毎年減少している。業種別では、畜産食料品製造業5.8兆円。パン・菓子製造業4.9兆円。水産食料品製造業3.1兆円となっている。 食料品価格の下落・人口減少・少子高齢化・景気後退による所得の長期伸び悩みなどのマクロ・ミクロ両環境の影響により市場は縮小している。原材料の多くを輸入に頼っている業界のため、原産国の都合による仕入れ価格の変動や為替変動の影響を受けやすく、また中国の国内需要拡大もマイナスに働き、それらの変動要因を最終価格に転嫁すると、上記国内市場要因でたちまち売上減少につながり市場は縮小する。 食料品の生産段階から廃棄まで追跡可能にするトレーサビリティは、既に牛肉・米・米加工品に義務付けられており、消費者の食料品に対する「安心・安全・品質・価格・鮮度」に対する要求レベルは今後アップすることはあるがレベルダウンすることは考えられず、市場環境を楽観視できるものは見当たらない。
一方「和食」が、ユネスコ無形文化遺産に登録され世界で和食が注目されている。食料品の分類に入ってないが日本酒やジャパニーズウィスキーの輸出が急増しており、今後の輸出拡大に期待する。

食料品製造業は、全産業の従業員1人当たりの付加価値額1200万円に対して800万円しかなく、労働生産性は平均値を下回っている。個別に見ると、漬物製造業・生菓子製造業が600万円。豆腐油揚げ製造業が500万円。寿司弁当調理パン製造業が400万円と生産性が低くなっている。
逆に乳製品製造業は2100万円。砂糖精製業3300万円と装置産業に近い製造業は生産性が高く差が大きいのが課題である。なお、ビール類製造業9600万円。蒸留酒混成酒製造業4000万円と、装置産業で最終商品製造者は非常に高い生産性である。 労働生産性を事業所の規模で見てみると、全製造業は従業員4~9人の事業所の付加価値額604万円に対して1000人以上の事業所は7946万円と一貫して上昇している。
ところが食料品製造業に関しては、従業員200~299人の事業所の930万円を頂点として規模が大きくなっても減少している。 つまり、規模の追求は経営面で必ずしも得策ではないという指標になり、M&Aの際の1つの検討材料になる。
大手食料品製造業においては、今後も国内の市場縮小を想定して積極的に海外にクロスボーダーM&Aを進めている。
中小規模の製造業においては、販売先からの価格下落要請と原材料価格上昇に 耐えきれず、付加価値の低い業種で事業再生型のM&Aが増加している。 食料品製造業は販路が全国にあるケースより地域密着型が多いため、地域の6次産業化ファンドによるM&Aも増加している。
―主な事例―
・2016年7月
山崎製パンは、アメリカのベイクワイズ・ブランデス社の全株式を取得し子会社化。同社は、ベーグルを製造して量販店で販売。また手づくりに近い食感のパンをホテルやレストランに子会社を通じて販売しており、アメリカでの事業拡大を目指している。また、両社が持つ製パン技術を両国の商品開発に生かすことも検討している。山崎製パンは、2006年7月に東ハトを172億円でM&Aしており製菓事業にも進出済み。
・2019年2月、亀田製菓株式会社は、株式会社マイセンの株式90%を取得し子会社化。マイセンは、玄米パンやベジタリアンミートなどグルテンフリー食料品の製造販売会社。健康志向の食料品需要が高まっており、亀田製菓は米菓以外の食料品事業強化策として玄米などを使った健康志向商品の開発を進める。
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