
木材業界のM&A動向
木材業とは木材の生産・流通に携わる業種のことを指し、素材生産・製材・材木商という業種に分かれる。素材生産は立ち木を伐採し素材を作る。製材は素材を購入して使用目的に応じた製品を仕上げる。木材商は製材された製品を建築業その他中間業者に販売する。木材生産者と消費者、消費者と問屋の間に中間商人である仲買人がいる。
その他に木材輸入商・卸売り問屋・小売業などの業種があり、取り扱う商品により原木問屋・製品問屋・銘木問屋・市売問屋・センター問屋・付売問屋などがあり、これらを総称して木材業界と呼ぶ。

日本での木材用途は製材用(建築材)・パルプ用材・合板用・坑木用・その他となっている。製材用は外材が中心で規模が大きいが、パルプ用材・合板用を除けば零細企業がほとんどになっている。製材用の8割は建築用に利用され木造新築住宅着工数に需要が連動している。パルプ用材は紙や板紙の原材料となり、デジタル化の進行により需要は横ばいが続いている。合板用の6割も建築用に利用され製材用と同様住宅着工数に需要は連動している。他に燃料材として木炭・薪・燃料用チップおよびペレットの需要があり、近年は木質バイオマス発電エネルギーによる原材料としての利用が増加している。
中国での木材需要拡大に加え、フィリピンやマレーシアにおける伐採規制強化などを背景に、国産木材の中国・韓国・フィリピンへの輸出が2014年から増加している。輸出品目は、丸太・製材・合板などとなっている。新興国の森林資源枯渇問題を背景に将来的な調達難を見据え、林野庁は2020年木材自給率50%以上を目標設定している。2016年には30年ぶりに自給率35%を達成している。
伐採適齢期10齢級以上を迎える人工林は過半を占める一方、林業産出額は低水準に止まっており「林業再生」が急務となっている。
林野庁の「平成29年度 森林・林業白書 全文」によると、日本の木材輸出は中国の木材需要の高まりや、韓国でのヒノキ人気から2013年以降増加傾向にあることがわかった。2017年の木材輸出額は326億円(前年比37%増)であった。
出典:https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/29hakusyo/attach/pdf/zenbun-28.pdf
木材関連事業所数は32,433事業所。うち製材工場15,752事業所・合板工場473事業所・木材市売(いちうり)市場574カ所・木材センター50カ所・木材販売業者15,584社となっている。従事者数は93,272人である。
企業別の売上高は、住友林業株式会社の売上高が1兆3,088億円で最大手となっている。続いて大建工業株式会社が住友林業株式会社の10分の1以下の1,829億円。株式会社ノダが662億円。株式会社ウッドワン630億円。永大産業株式会社582億円。前田工繊株式会社367億円となっている。
住友林業は、別子銅山(愛媛県新居浜市)の公害対策での植林事業から派生して昭和23年(別子銅山周辺の立木利用開始は1691年)に創業した四国林業株式会社というベンチャービジネスであった。木を中心に川上から川下までの事業を展開する垂直統合に成功している。川上では日本の国土の900分の1(46,444ヘクタールで国内有数の土地所有者)に達する山林を保有して林業を営み、川中は木材建材の流通事業で国内首位。川下の木造注文住宅事業でも国内トップとなっている。
日本は世界トップクラスの森林率を有する森林国であるにも関わらず、森林保有者が相続等の課程で小規模な林業経営体に分散しているほか、所有者がわからない森林も多数存在しており林業再生に向けたボトルネックになっている。この問題を少しでも解決するため、農林水産省は2018年に小規模な林業経営の集約化を目的とする「森林経営管理法」を制定した。
また林業再生の財源を確保するため、森林環境税と森林環境譲与税を創設し、税収を各自治体に配付し、間伐・路網整備・木材利用推進等に利用するよう推進している。いずれにせよ人口・世帯数の減少により中長期的な木材の需要減は避けられず、市場の縮小に対応して建築(住宅)分野以外の需要創出に向けた取り組みを林業再生と並行して行っていかなければならない難しい舵取りが求められている業界といえる。
木材業界において、M&Aにより増収増益を達成し、M&Aという手法が事業に大きく貢献している住友林業の事例を紹介する。
2013年、住友林業株式会社はアメリカ合衆国テキサス州ダラス市のブルームフィールド・ホームズの株式50%を取得してM&Aを行い、2016年には65%に追加して子会社化M&Aした。ワシントン州・テキサス州を中心に住宅開発に着手している。
2014年、住友林業はテキサス州のギーエン・ホームズの株式51%を取得してM&Aし、2016年に残り49%を取得して100%子会社化してM&Aを実現した。ギーエンは年間1,000棟以上の住宅を着工する大手で、ヒューストン・オースティン・サンアントニオを中心にアリゾナ州にも進出している。
2016年、住友林業は、メリーランド州にあるダン・ライアン・ビルダーズの株式60%を取得してM&A。東海岸6州を事業領域としており、M&A時の年間販売戸数は1,200棟であった。
2017年、住友林業は、ユタ州ソルトレイクシティー市のエッジ・ホームズ・グループの株式70%を取得してM&A。
以上のM&Aにより住友林業のアメリカ合衆国での住宅販売戸数は、2016年の2,100棟から2017年には4,686棟に倍増、2018年には3倍増の5,900棟に達した。
住友林業はオーストラリアでもM&Aを成立させており、アメリカ合衆国と合
わせて両国の売上は2014年の330億円から2018年には3,000億円に上昇している。
特筆すべきは、2018年4〜12期の経常利益が国内の住宅事業部門が31%減の84億円に対して、海外事業部門の経常利益は35%増の156億円に達しており、国内の不振部門を海外のM&Aにより展開している事業がカバーする結果となっている。
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