
電子部品業界のM&A動向
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電子部品業界は、自動車やスマートフォンなどに組み込まれている電子部品などを製造している業界のことを指す。
電子部品とは、電子回路に使用する部品のことを指し、「能動部品」「受動部品」「機構部品」に分類される。能動部品とは、入力部と出力部を持っており、与えられた指令によって特定の電力を出力する電子部品を指し、トランジスタ・IC・ダイオードがこれに該当する。受動部品とは、電力を消費・放出・貯める機能を持つ電子部品を指し、コンデンサ・抵抗・コイルがこれに該当する。機構部品とは、部品自体に電気的な機能はなく、スイッチ・コネクタ・基板などの電子部品がこれに該当する。

日本の電子部品業界は高い技術を誇っている。海外へのシェアを広げており、現在では世界シェアの30~40%を確保している。電子部品業界は、モノ作りの根幹である組立メーカーと密接に関わっており、この最終製品メーカーの新製品登場や新技術台頭に大きな影響を受ける業界である。
電子部品業界はスマートフォンの普及とともに堅調に成長を遂げることができたが、昨今は海外の格安スマートフォンの登場とともに生産量と利益率の下降が目立ってきている。しかし、自動車の自動運転技術の台頭や、人手不足に対応した工場の自動化によるスマートファクトリー化など「IoT=Internet of Things」向けの需要が拡大している。IoTにより新たな市場が生まれ、電子部品業界は現在新規市場開拓に取り組んでいる。完成品メーカーに向けた新商品提案営業や、製品設計段階からの組み込み提案など、これまで取引がなかった業界へのアプローチを含めた需要を開拓している。
電子部品業界にとっての今後の有望市場と言われているのが、5G無線通信サービスである。スマートフォンのインターネットコンテンツ大容量化にともなう機能向上とともに、自動車における5G無線通信による自動運転では、車載機器の需要の増加が予想されているため、電子部品業界にとって大きな需要増が期待できる。
ロンドンに本社拠点を置き、グローバル情報プロバイダーとして実績のあるIHS Markitの日本支社である、IHSマークイットジャパン合同会社が発表した「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子デバイス産業及びその関連産業における市場動向及び政策動向調査)報告書」によると、2017年の電子部品業界の市場規模は約24兆円であった。
出典:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000020.pdf
市場を牽引する企業は株式会社村田製作所や日本電産株式会社、TDK株式会社、オムロン株式会社、日東電工株式会社などがあげられる。売上高は、株式会社村田製作所が1兆2,108億円、日本電産株式会社が1兆1,782億円、TDK株式会社が1兆1,522億円、オムロン株式会社が8,336億円、日東電工株式会社が7,930億円となっている。
世界の電子部品市場に対して、日本の電子部品市場は約7%と縮小傾向にあるものの、日系電子部品メーカーの世界におけるシェアは38%と依然として高い海外売上比率を維持している。また上述したように、自動運転技術の発達に伴い、車載機器の需要の増加が予想されているため、日本市場のシェア縮小が止まり、回復が見込まれている。
電子情報技術産業協会は、隔年で電子部品業界を取り巻く環境と電子部品の現状、技術動向や将来展望をまとめた「電子部品技術ロードマップ」を発表している。これによると、2028年までの技術進化を牽引する4大領域は、「ヒューマンライフ」「モビリティ」「インダストリー」「6次産業」であり、これらの4領域に共通するのは、2050年を見据えて描かれる超スマート社会「Society5.0」である。
日本はこのSociety5.0を実現するために、IoT・AI・ビッグデータ・ロボット・センサーの活用によって社会システム全体の効率化・全体最適化を推進することに国を挙げて取り組んでいる。電子部品の技術進化は、このSociety5.0を支える礎になる。なおこのSociety5.0は、2015年の国連サミットで採択されている。
電子部品業界におけるM&Aは、自社より大幅に規模が小さいが「特定の技術を有する企業」をM&Aするケースが多い。規模の拡大を目的とするM&Aはほとんどなく、必要な技術を自社に取り込むM&Aが今後も主流となっていくことが予測されている。
日本電産株式会社は「企業成長の原動力として早期よりM&Aを戦略的に活用する」、「当社のM&Aは『回るもの』『動くもの』に特化し、技術・販路を育て上げるために要する『時間を買う』という考え方に基づき行っている」と自社ホームページで発信している。
1984年に始まり2019年まで、国内外で66件のM&Aを成立させ、M&Aを中心に連結売上高500億円から1兆5,183億円まで成長した。さらに1件の失敗以外はすべて成功させている。その失敗内容は、コンプレッサーメーカーであるエンブラコのM&Aにともない、ドイツの家庭用電子部品大手セコップのコンプレッサー事業売却を欧州委員会から求められたものである。セコップの売り先企業や売却条件などについて欧州委員会は厳しく指導したM&Aであったため、2020年3月期に198億円の損失を出した。セコップのM&Aに関して日本電産株式会社の永守会長は「競争法関連でこれほど1つのM&Aに欧州委員会が介入していいのかというほどの介入があった」「信じがたいおかしな裁定であったが、裁定条件をすべてのむ決断をした」「長年M&Aをやってきて独禁法についても慎重にやってきた。このM&Aについても深い調査をして専門家から問題ないと結論をもらっていた」と述べている。
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