チャイニーズ・ウォールとは? 概要、ファイア・ウォールとの違い、具体的な目的、具体例について、詳しく説明します

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株式取引において、非公開情報を利用し不当な利益を得るインサイダー取引は重大な金融犯罪として規制されています。
しかし、インサイダー取引で告発された事例は過去から数多くあります。
そこで、このようなインサイダー取引を企業内部で規制しようと設けられた証券業界の自主規制がチャイニーズ・ウォール(Chinese Wall)です。
金融業界に関係ある人であれば誰もが知っている規制ですが、それ以外の人にとっては馴染みがない用語でしょう。
今回は、チャイニーズ・ウォールの概要、ファイア・ウォールとの違い、具体的な目的、具体例について、詳しく説明します。

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1. チャイニーズ・ウォールとは?

チャイニーズ・ウォールの本来の意味は、中国の万里の長城です。万里の長城は、当時の北方民族の侵入を防ぐ目的で建設されました。
これが転用されて、インサイダー取引の防止策の1つとして、企業内の異なる部門や業務間に情報の流れを制限する仕組みをいいます。
特に金融機関で重視され、証券会社におけるチャイニーズ・ウォールは、内部情報を手に入れる機会のある「引受部門」と株式売買などを行う「営業部門」の間に情報の「壁」とされています。
また、1987年、バブル景気の最中に起こったタテホ化学工業の財テク失敗(タテホ・ショック)を契機に証券取引法が改正され、インサイダー取引規制が強化されました。この際に証券業界の自主規制としてチャイニーズウォールが設けられました。

2. ファイア・ウォールとの違い

チャイニーズ・ウォールと混同されがちな用語にファイア・ウォール(Firewall)があります。
チャイニーズ・ウォールと同様に金融業界で重視される規制ですが、ファイア・ウォールは銀行と証券会社の間に設けられた「防火壁」を指し、「銀証ファイアウォール」とも言われています。1993年にそれまで銀行と証券の業務が厳格に分けられていたのを規制緩和し、相互参入が可能となりました。例えば、メガバンクは傘下に銀行と証券会社を持ち、両業務を行っています。このファイア・ウォールにより、銀行が融資業務で得た顧客企業の内部情報が証券会社の株式売買部門に伝わることで利益相反が起こることを阻止しようとしました。
つまり、チャイニーズ・ウォールが同一企業(証券会社)における「壁」なのに対し、ファイア・ウォールはグループ傘下の銀行と証券会社間の「壁」をいいます。

3. チャイニーズ・ウォールの具体的な目的

証券会社を含む金融機関がコンプライアンスを遵守し、クライアントや市場の信頼を損なわないようにするためにチャイニーズ・ウォールは不可欠です。ここで、チャイニーズ・ウォールの主な具体的な目的を紹介します。

3-1. 情報隔離

最も基本的な目的であり、チャイニーズウォールは同一企業内で異なる業務や部門の社員が特定の情報にアクセスできないようにします。

3-2. 利益相反管理

同一企業内の利益相反を管理することも目的の1つとしています。

3-3. 規制遵守

チャイニーズ・ウォールは証券業界の自主規制ですが、改正証券取引法の目的に合致するように設計されました。規制遵守により、潜在的な法的リスクを回避し、企業及び業界全体の信頼を守ることが目的の1つとなっています。

4. チャイニーズ・ウォールの具体例

同一企業内に設けられた壁であるチャイニーズ・ウォールですが、実際の運用について、主な具体例を説明します。

4-1. 物理的な隔離

交流を阻止した部門を物理的に隔離することで、例えば、営業部門の社員が引受部門に入室できないようセキュリティチェックを実施することが考えられます。

4-2. アクセス権の制御

情報システム上でのアクセス権を制御することは有効で、例えば、社員が顧客法人の情報へアクセスする際に権限を管理、制限することが考えられます。

4-3. 監査とコンプライアンス

社内に設置されたチャイニーズ・ウォールが正しく機能しているのか内部部門による監査やコンプライアンス部門が定期検査、抜き打ち検査を実施することが考えられます。監査や検査の結果、遵守に問題がある場合、規定やポリシーの見直し、追加研修の実施などが行われます。

5. まとめ

同一企業内で情報の流れを制限するチャイニーズ・ウォールは、インサイダー取引の阻止や公正な取引の確保と市場からの信頼性確保に不可欠な役割を果たすものです。
物理的、技術的な様々な方法を組み合わせてチャイニーズ・ウォールを設けることで不正を未然に防ぐことができます。
チャイニーズ・ウォールが正常に機能しない場合、行政機関からの多額の罰金や顧客、市場からの評価失墜という事態を招きます。
コンプライアンスが重視される時代では、中小企業でも社内の情報管理にルールを設け、意図せず金融犯罪を犯すことを未然に防ぐ仕組み作りが大切です。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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