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近年、日本企業の廃業件数は増加の一途をたどっています。2023年の休廃業・解散企業数は、過去最多となる約5.9万件を記録しました。経営者の高齢化や後継者不足、コロナ禍での支援策終了、物価高などが主な要因とされています。
本記事では、廃業の意味や、関連用語との違い、メリット・デメリット、具体的な手続き方法までを詳しく解説します。
このページのポイント
~廃業とは?~
廃業とは、法人や個人事業主が自らの意思で事業をやめること。廃業する理由として最も多いのは「業績が厳しい」であるが、後継者問題や将来性への不安に起因する廃業もその次に多い。
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目次
廃業とは
廃業とは、法人や個人事業主が自らの意思で事業をやめることです。廃業と似た意味を持つ言葉に、倒産や解散、休業、閉店などがあります。
これらの用語は法律上では定義されていませんが、一般的に異なる用語として用いられることが少なくありません。ここでは、廃業と、倒産・解散・休業・閉店の違いを解説します。
廃業と倒産の違い
倒産とは、債務超過や業績不振などにより経営活動の存続が難しくなり、やむを得ず経営を断念することです。
廃業は、経営状況の悪化などではなく、自主的な判断によって経営をやめるというイメージが一般に強い言葉であるのに対し、倒産は債務超過などによって経済活動が困難になったために経営を断念する点で異なります。
債務の完済能力の側面からも、違いが現れます。廃業は債務を完済できる場合を意味するケースが多い一方、倒産は債務を完済できない場合に選択されるのが一般的です。
廃業と解散の違い
解散とは、一般的に事業を停止し法人格を消滅させるための手続きを指す用語です。廃業手続きを行う際の開始地点を指して用いられることもあります。主に、業績不振や後継者不足で事業継続が困難な場合に、解散が検討されます。
解散の決定には、相応の理由が必要です。一例を挙げると、会社法では次のような解散理由を定めています。
- 定款で定めた会社の存続期間の満了
- 定款で定めた解散事由の発生
- 株主総会の決議
- 合併による会社の消滅
- 破産手続の開始決定
- 裁判所による解散命令
- 休眠会社におけるみなし解散
一般的には、株主総会の決議で解散を決定することが多く、外部株主がいない場合には経営者が解散を決定します。
解散が決定されても、法人格はただちに消滅しないことに留意が必要です。債権回収や債務支払いなどの清算手続きを行う必要があります。
廃業と休業の違い
休業とは、企業自体の完全な消滅ではなく、一時的に経営活動を停止させることです。廃業は事業を断念し企業も消滅させますが、休業は企業自体を存続させて事業を停止する点で異なります。
休業するには、税務署や各自治体などへ休業届を提出する必要があります。なお、休業中は事業に伴う売上が生じないので、一部の法人税や所得税は発生しません。
休業について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
廃業と閉店の違い
閉店とは、経営中の店舗を閉めることを指す用語です。一般的に、店舗に限定して使われますが、実店舗だけでなくECサイトを閉じる場合も閉店の言葉が用いられます。
なお、複数の店舗や事業を運営しているケースでは、一部店舗を閉める場合にも閉店と表現します。廃業はすべての事業をやめることを指す一方で、閉店は一部の店舗を閉めることを指すため、閉店が廃業を意味するとは限らない点に留意しましょう。
近年の廃業に関する動向
近年、コロナ禍での支援策終了や物価高などの影響で、多くの業種が廃業に追い込まれています。ここでは、廃業数の推移や、組織形態別の廃業の意向、廃業が増えている理由について、それぞれ見ていきましょう。
廃業数の推移

帝国データバンクの調査によると、2023年の休廃業・解散件数は59,105件に達しました。この数字は前年比10.6%増で、2019年以降では4年ぶりの増加となります。
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|---|
建設業 | 7,368件 |
7,037件 |
6,903件 |
6,936件 |
7,628件 |
製造業 | 3,112件 |
3,081件 |
2,882件 |
2,734件 |
3,012件 |
卸売業 | 3,909件 |
3,675件 |
3,383件 |
3,143件 |
3,527件 |
小売業 | 4,712件 |
4,261件 |
3,672件 |
3,419件 |
3,807件 |
運輸・通信業 | 598件 |
664件 |
657件 |
606件 |
652件 |
サービス業 | 7,019件 |
6,735件 |
6,758件 |
6,342件 |
7,015件 |
不動産業 | 1,888件 |
1,732件 |
1,740件 |
1,802件 |
1,818件 |
その他産業 | 30,619件 |
28,919件 |
28,714件 |
28,444件 |
31,646件 |
業種別で見ると、建設業が7,628件と最も多く、前年から10%増加して過去5年で最多となりました。次いで卸売業が3,527件(前年比12.2%増)、小売業が3,807件(同11.3%増)と続いています。特に注目すべきは、5つの主要業種で、前年比1割を超える大幅な増加が見られた点です。

廃業企業の経営者年齢を見ると、70代が全体の42.6%を占め最多となっています。これに80代以上の21.7%、60代の21.5%を加えると、60代以上で全体の約86%に達します。前年と比較すると、60代の割合は0.2ポイント減少したものの、60代以上全体の構成比は増加し、過去最高を更新しました。
組織形態別の廃業の意向

中小企業庁委託による「企業経営の継続に関するアンケート調査」(2016年11月 株式会社東京商工リサーチ)によると、組織形態(中規模法人・小規模法人・個人事業者)別に比較した際、廃業意向が最も多いのは個人事業者で、26.0%という結果が明らかになりました。
中規模法人において「廃業意向あり」と回答した割合はわずか2.1%に留まり、事業の規模によって意向に大きく差があるとわかります。従業員をはじめとする関係者や経営資源が増えるほど、廃業は大きな決断となります。事業規模が大きくなるほど、廃業を検討する企業は減少傾向にあるといえるでしょう。
廃業が増えている理由
近年の廃業増加の特徴として、資産が負債を上回る状態での「資産超過型の廃業」や、直前の決算が黒字であるにも関わらず廃業する「黒字廃業」の多さが挙げられます。
2023年に廃業した企業のうち、資産超過型の廃業は約6割、黒字廃業は約5割を占めました。その理由としては、経営者の高齢化、将来的な経営環境への不安が挙げられます。
将来的な経営不安の背景には、後継者の不在や、物価高騰や人手不足などがあります。また、コロナ禍での持続化給付金や雇用調整助成金などの支援策が縮小されたことも影響しているでしょう。
これらの要因から、大きな損失を被る前に事業の幕引きを決断する「予防的な廃業」が増加傾向にあります。
廃業するメリット
廃業を選択する主なメリットは、次の3点です。
- 経営に関する負担から解放される
- 倒産になった場合の破産手続きが不要
- 債務を返済したうえで会社をたためる
経営に関する負担から解放される
廃業を選択する一番のメリットは、経営に関する負担から解放されることです。
会社経営を続ける限り、雇用問題やキャッシュフロー、税金対策などビジネス上のさまざまな悩みが生じます。廃業すれば、このような経営に関するすべての負担から解放される点が大きなメリットといえるでしょう。
一方で、休眠(休業)の場合は、固定資産税や法人住民税の支払い、税務申告の義務が生じます。廃業に比べると一定の支出が生じるため、休業か廃業かの検討は入念に行いましょう。
倒産になった場合の破産手続きが不要
倒産に比べて手続きが簡易で済む点も、廃業のメリットです。
経営状態が苦しいまま事業を続けた結果、存続が難しくなり倒産する場合、破産手続きが必要となります。破産手続きでは、弁護士への相談や必要書類の準備、裁判所への破産申し立てなど時間と手間がかかってしまいます。加えて、中小企業においては経営者自身が会社の債務についての連帯保証人となっているケースが多いため、破産による経営者個人への影響は避けられないでしょう。
一方、廃業は株主総会での解散決議や財産の清算などが必要ではあるものの、破産手続きに比べて簡易的な手続きで済みます。また、計画的に廃業手続きを進めれば、経営者個人の資産を守ることも可能です。ただし、企業の有する資産や負債は清算されるため、会社にお金が残らない点は破産手続きと同じです。
債務を返済したうえで会社を畳める
廃業を選択する場合、従業員や取引先への債務を返済してから会社を閉じることになるため、関係者への迷惑を最小限に抑えられる点もメリットとなります。
例えば、従業員への退職金や取引先への買掛金の支払を満足に行えなかった場合、経営者は負い目を感じる可能性があります。このような資金面での精神的負担を軽減できることも、廃業のメリットといえるでしょう。
廃業するデメリット
廃業するデメリットは、次の5点です。
- 事業をめぐるこれまでの人的関係が消滅する
- 従業員を解雇しなければならない可能性がある
- 経営資源を消失する
- 資産に関する処理の問題が起こる
- 廃業のための費用がかかる
廃業を選択する際はデメリットを踏まえたうえで、廃業すべきか、それとも他の選択肢をとるべきかを検討することが肝要です。
事業をめぐるこれまでの人的関係が消滅する
廃業により、これまで付き合いのあった多くの取引先・仕入先・顧客との関係が、基本的に消滅することになります。
従業員も概ね解雇しなければなりませんし、これまで確立してきた独自のノウハウ、ブランド、人脈特許、技術といった目に見えにくい経営資源を、後世に残すことができない点も重大な損失となります。
従業員を解雇しなければならない可能性がある
オーナー経営者自らの目で採用し、一生懸命働いてくれた愛着のある従業員が次の働き口を探さなければならない状況に陥ったり、後世に残すべき経営資源が自分の代限りで失われる可能性があるのは、心苦しいことです。
「自身の代でやめる」つもりのオーナー経営者も、廃業だけに選択肢を絞るのではなく、従業員への周知とフォローの過程で、従業員への引き継ぎや第三者への承継の可能性も検討する必要があります。
経営資源を消失する
廃業した際に残る財産についても、十分に考慮する必要があります。他のスキームより創業者利潤が少なくなる事業の清算・廃業の場合、残余の財産について株主に分配されますが、M&Aと比べ、利潤が少なくなるケースが多いです。
資産に関する処理の問題が起こる
主に異なる点として、清算・廃業時は事業停止を前提としているため「換金価値(=処分価額)」しか値がつきません。結果として「簿価上の金額」と「換金価値」に大きな差が生じることも多く、資産を簿価で売却して現金化し、借入金を返済して事業を続けることができると考えることができても、資産の売却が予想どおりに進まない可能性があります。
また、会社の帳簿上の資産をすべて換金処分したあとに、借入金等の債務を返済しきれないといったリスクも想定されます。
廃業のための費用がかかる
廃業に伴い、一般的に次のような費用がかかります。
- 従業員への退職金・退職手当
- 解散登記にかかる費用
- 清算人の選定費用
- 清算結了の登記費用
- 官報への解散公告の掲載費用
- 店舗や工場を営業している場合の設備・機械の処分費用
- 在庫商品の処分費用
- 店舗や工場などの原状復帰費用
廃業に伴う従業員の退職は、会社都合のため、退職金の他に特別手当を支給するケースもあります。
登記にあたっては印紙代が必要です。司法書士や弁護士に相談・依頼する際は、相談料や委託費用が生じる点にも留意しましょう。また、大がかりな設備や機械を処分する際は相応の費用が発生するため、処分費を確保しておくのが賢明です。
廃業(解散)の手続き方法
廃業にあたり解散を行う手続きの一般的な流れは、次のとおりです。
- 解散に向けた事前準備
- 解散決議(株主総会にて2/3以上の賛同が必要)
- 清算人や代表清算人の選任
- 解散・清算人の登記(解散決議より2週間以内に実施)
- 書類の提出(税金・社会保険関係の届出)
- 解散の公告
- 会社財産の調査・財産目録の作成
- 財産の分配・処分
- 確定申告(解散確定申告・清算確定申告)
- 債権者保護手続き
- 決算報告の作成・株主総会での承認
- 清算結了の登記(株主総会での承認から2週間以内)
解散に向けた事前準備では、まず取締役会などにおいて解散の意向を固めて解散予定日を決めます。
さらに、従業員や取引先などの関係者にも廃業する旨を伝えなければなりません。また、解散公告後は一定期間経過後まで債務弁済ができなくなるため、余裕をもって弁済を済ませておくことが肝要です。
廃業を回避するには?
ここまで解説したように、廃業にはデメリットがある他、所定の手続きが必要です。また、後継者問題により、やむを得ず廃業を検討する経営者は少なくありません。
しかし、M&Aを実施すれば、親族や従業員、第三者への引継ぎが可能となるため、廃業を回避できます。従業員の解雇や取引先との関係性の消滅、経営資源の消失といったデメリットを回避でき、経営者の事業に対する想いも残せるでしょう。
M&Aの実施にあたり、専門のアドバイザーや仲介会社と契約する場合は、買い手の選定・提案などを行ってもらえます。また、手続きに必要となる資料収集や調査も任せられるため、円滑な手続きの進行が期待できるでしょう。
M&Aキャピタルパートナーズでは、廃業回避のためのM&Aに関する新規の相談も承っております。M&A仲介実績を豊富に有する弊社にぜひ、ご相談ください。
まとめ
廃業は、企業が自主的に事業活動を終了する選択肢の一つです。しかし、従業員の雇用や取引先との関係、長年築いてきた経営資源など、失われるものも少なくありません。
M&Aキャピタルパートナーズでは、親族や従業員、第三者への事業承継など、廃業以外の選択肢もご提案しており、豊富な経験と実績を持つM&Aアドバイザーとして、お客様の期待する解決・利益の実現のために日々取り組んでおります。
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