事業承継とは? 引き継ぐ経営資源と実施する方法をわかりやすく紹介

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事業承継とは、会社の経営権を人材・ノウハウ・資産などを含めて後継者に引き継ぐことです。

従来、事業承継は、経営者である親から子へ引き継ぐ親族内で行われる方法が一般的でした。しかし、少子化や働き方の多様化などによって親族内での引き継ぎが難しくなっている現状があります。

近年は、第三者へのM&Aなど、親族以外に会社を引き継ぐ方法も増えています。廃業や倒産を避けるためにも、将来的に事業の引き継ぎを考えている経営者は、事業承継について理解を深めて早期に検討を進めることが重要です。

この記事では、事業承継の定義や、引き継ぎを行う具体的な経営資源、実施する方法をわかりやすく紹介します。

事業承継とは

会社の経営権を後継者に引き継ぐ

事業承継とは、会社の経営・事業を後継者に引き継いで事業をこの先も長く継続していくための基礎を築くことです。

特に高齢の中小企業経営者や個人事業主では「オーナー社長の人脈と経営手腕」が会社の存在そのものになっている場合がたくさんあります。経営者しか知らないことが多いという点も次世代への引き継ぎを難しくしている要因になっているのです。

早くに後継者を見つけて充分な事業の引き継ぎができるかは重要な経営課題ですが、多くの経営者が一向に進まない事業承継に悩んでいます。

事業承継の定義

事業承継には実は決まった定義はありません。というのも事業承継はその手続きのなかで「後継者選び」や「会社売却」や「相続税の節税」などいろいろな側面があるため、解釈する方によって言葉の意味が異なるからです。

中小企業における課題

中小企業が抱えがちな課題を以下で見ていきましょう。

子どもが継がない脱ファミリー化

帝国データバンクの調査によると、後継者候補として最も多い属性は「子ども」で38.5%、前年から減少しています。子どもを後継者として検討している割合は、調査開始以来初めて全体の40%を下回りました。

本来なら子どもを後継者にする割合が最も高い「創業・同族企業」でその割合が大きく低下したことが影響しています。

後継者には「非同族」や「内部昇格」「外部招聘」「M&Aその他」の割合が高まったことから、事業承継の脱ファミリー化が顕著になってきたといえるでしょう。

中小企業経営者の高齢化

2000年時点において中小企業経営者で最も多い年齢層は50〜54歳でしたが、2015年時点においては65〜69歳と、経営者の年齢のボリュームゾーンが約15歳高くなっています。しかし、2020年時点においては突出して高い年齢層はなく、60〜74歳の経営者が多くなっています。

最も新しい調査結果によれば、平均引退年齢は中規模企業経営者で65歳以上、小規模事業者経営者では70歳を超える状況です。

2025年時点で引退年齢を迎える中小企業経営者は約245万人で、すべての中小企業の60%以上です。アンケートではその約半数にあたる127万人が後継者未定であるという結果が出ました。

事業承継を実施する意味・目的とは

事業承継は、後継者に会社を引き継ぐこと以外にも、さまざまな目的があります。ここでは、事業承継の代表的な目的を紹介します。

後継者問題の解決

中小企業が多くを占める日本では、近年、少子高齢化や働き方の多様化などの影響を受けて、主に親が子に事業を引き継ぐ親族内での事業承継が難しくなっています。

帝国データバンクの調査によると、親族以外の「非同族」が後継候補になっている割合は全体の36.1%で、2022年に初のトップとなりました。そのうちM&Aによる事業承継は20.3%を占めており、今後も増えていくことが予想されています。

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後継者不足の実態~中小企業における事業承継の問題を解説~

廃業・倒産の回避

適切な後継者が見つからない場合、経営者は廃業を考えなければなりません。日本政策金融公庫は、中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)で、中小企業のうち、後継者が決定している企業は全体の10.5%、廃業を予定している企業は全体の57.4%という調査結果を公表しています。

事業承継によって廃業や倒産を回避できれば、会社が培ってきた技術やノウハウ、人材といった資産を次の代に引き継ぐことが可能になります。

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事業承継で引き継ぐ3つの経営資源

事業承継で引き継ぐものとして柱となるのが下記の3つです。
それぞれについて解説します。

人(経営)の承継、知的資産の承継、資産の承継

人(経営権)

人とは事業を引き継ぐ新しい後継者であり、事業を運営するすべての人材でもあります。

事業承継では、これまで経営者が培った技術や蓄積した経験はもちろん取引先や金融機関との良好な関係など、すべてを次世代へ引き継がなければなりません。そのため、新たな経営者が見つかれば事業承継自体は成立しますが、事業を安定的に発展させるには後継者の経営手腕や人心把握の能力も人選では重要なのです。

事業承継の多くは先代の経営者が新しい経営者に寄り添って育成をしながら独り立ちを促しますが、引き継ぎに要する期間は一般的に5〜10年といわれています。

資産

資産とは、事業を行うのに必要な運転資金のほかにも事業用資産(不動産や設備)、経営権を示す株式などがあります。

資産の引き継ぎには時期や方法などの状況に応じた課税方式があるため、最適なタイミングを逃さないように専門家のアドバイスにしたがって早めの準備を心がけましょう。

知的資産

知的資産とは、その事業や会社の価値を決めるブランド力やサービスの質やノウハウなど形が無く換価が難しい資産です。

そして、この知的資産こそが世間から必要とされ、事業の存続を担保してくれる重要な無形資産なのです。

例えば、ブランドや特許や企業間のつながりや企業理念などが知的資産にあたります。

主な事業承継の方法

事業承継は、次期経営者を育てて経営権を譲るだけではありません。
事業承継の主な方法として下記の4つが挙げられます。

  • 親族への承継
  • 役職員への承継
  • 株式上場(IPO)
  • 第三者承継(M&A)

親族への承継

事業承継の方法 メリット デメリット
親族への承継
  • 後継者の人選に理解を得やすい
  • 親の意思を引き継ぐ使命感がある
  • 後継者教育を深く行いやすい
  • 経営者と相続人が同一になりやすい
  • 意志を継ぐ者がいない場合がある
  • 親族人事で人材を失う場合がある
  • 親族の重い期待に苦しむ場合がある
  • 経営権の偏重で親族が揉める場合がある
  • 経営手腕が充分でない場合がある

親族への承継とは、現行の経営者の親族に事業を引き継ぐ方法です。以前から代替わりの方法としてよくあるため、その人選にあたっての心情については周囲から理解を得やすいでしょう。

しかし、家業を継ぐという意識が薄れ人生の選択肢が増えた現代においては、親の期待を子が受け止められない事情も理解できます。

親族への承継は、ここ数年で減少傾向にあるとはいえ、昔も今も事業承継の方法として最も多くを占めています。

親族への承継のメリット

親族への承継のメリットは下記の4つです。

後継者の人選に理解を得やすい

昔からある代替わりの方法であるため、賛成者と反対者はいるものの心情的に受け入れやすいといえます。

親の意思を引き継ぐ使命感がある

長年かけてご子息のなかに事業を継ぐ意識が醸成されているれば、人並み以上の愛社精神で事業に打ち込みやすいでしょう。

後継者教育を深く行いやすい

私生活の時間を含め第三者よりもはるかに長い時間を共有し、親族だからいえることも伝えられるため後継者教育に向いています。またスキル習得のために他企業への修行や留学するなど、事業承継を見越した計画を立てて取り組みやすい面もメリットの一つです。

経営者と相続人が同一になりやすい

前経営者が亡くなって事業を引き継ぐ場合は、経営権と相続した株式が同一人に集まるため経営権の分離による問題が起こりづらくなります。

親族への承継のデメリット

一方で、親族への承継のデメリットは下記の5つです。

意志を継ぐ者がいない場合がある

ご子息が経営を継ぐだろうと親が期待していても、子にはやりたいことがあり事業承継を拒絶される場合があります。

親族人事で人材を失う場合がある

親族が継ぐのは理解できるものの、親族人事の不公平感などから事業の運営に支障をきたしたり人材が会社を離れたりする可能性があるでしょう。

親族の重い期待に苦しむ場合がある

前経営者が第三者にはいえないことも親族だからと次期経営者に厳しくするあまり、両者の気持ちがすれ違い、承継がスムーズに進まなくなる懸念があります。

経営権の偏重で親族が揉める場合がある

経営権が一人に集中するため親族間でもめ事が起きるかもしれません。

経営手腕が充分でない場合がある

経営者の親族であっても経営者としての適性や能力が備わっているとは限らず、代替わりしてうまくいかないこともあります。

役職員への承継

事業承継の方法 メリット デメリット
役職員への承継
  • 事業内容や対外折衝に詳しい方が事業を引き継げる
  • 実力・人望・実績が確かな方なら周囲が納得しやすい
  • 期待する候補者が次期経営者の推薦を断る場合がある
  • 自社株を購入できるだけの資金力が無い場合がある
  • 個人で会社の連帯債務を負うことに抵抗が出る場合がある

役職員への承継とは、全経営者の親族ではない役員や従業員へ事業を引き継ぐ方法です。

自社株を前経営者が保有したままで地位だけを譲る場合と、株式を渡してしまう場合があります。

実力も人望も実績もあり、取引先や取引銀行にも既に認知されているポストの方が選ばれることが多いため、事業や関係各所との安定した引き継ぎが期待できます。

役職員への承継のメリット

役職員への承継のメリットは下記の2つです。

事業内容や対外折衝に詳しい方が事業を引き継げる

既に長年働き実力と人望で出世してきた実績があるため、事業内容や対外折衝に詳しく特別に教育されずとも事業を引き継ぎやすくなることが期待できます。

実力・人望・実績が確かな方なら周囲が納得しやすい

社内でも社外でも周知された人物が事業を引き継ぐことについて、取引先や取引銀行含めた周囲が納得しやすくなります。

役職員への承継のデメリット

役職員への承継のデメリットは下記の3つです。

期待する候補者が次期経営者の推薦を断る場合がある

事業運営の補佐はしてきたものの、経営のポストと責任を背負うのは辞退する場合があります。

自社株を購入できるだけの資金力がない場合がある

経営権の掌握を示すに足るだけの自社株を取得しなければ、経営権が分散して事業運営が不安定になるが規定量の自社株を買い取るだけの資金力が無いことも考えられます。

個人で会社の連帯債務を負うことに抵抗がある

会社の債務を個人保証したために経営者が資産を無くすリスクを恐れ、会社の債務を個人名義で連帯して背負うことに抵抗を示す可能性があります。

なお、従業員承継についてのより詳細な解説記事はこちらをご覧ください。

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従業員への事業承継(MBO)とは?~会社を譲るまでの流れ~

株式上場(IPO)

事業承継の方法 メリット デメリット
株式上場(IPO)
  • 経営と資本を分離することでリスクを抑えられる
  • 株式の現金化が比較的容易になる
  • 人材の採用力や資金調達力が向上する
  • 証券取引所が定めるさまざまな条件を満たす必要がある
  • 上場すると株主が経営へ関与することになるため経営の自由度が下がる
  • 資本継承につながらない
  • 数年単位で時間を要する

株式上場(IPO)とは、親族以外に経営権(株式)を譲る手段として公開した自社株を売り出す方法です。

証券取引所の基準を満たすための上場前の準備は大変ですが、自社株式を公開すればそれ以降は誰でも自由にその会社の株式を売買できるようになり、資金調達が容易になります。

株式上場(IPO)のメリット

株式上場(IPO)のメリットは下記の3つです。

経営と資本を分離することでリスクを抑えられる

株式上場を果たすと株主が増え、経営と資本の分離が進みます。上場会社であれば、経営者に万が一のことがあっても代わりの人材が確保しやすくなり、廃業や倒産を防ぐことが可能です。

株式の現金化が比較的容易になる

上場会社は常に時価で株価が決まっているため、複雑な算定が必要になる非上場企業の株式に比べて換金しやすいというメリットがあります。相続税の発生時など、まとまった資金が必要になった場合に株式が換金しやすいことは、経営者の一族にとって大きなメリットといえます。

人材の採用力や資金調達力が向上する

上場によって、企業の事業や業績といった情報が開示されることになり、注目が集まりやすくなります。それにより、知名度やブランド力が向上し、採用や資金調達の面で有利になります。

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株式上場とは?~仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説~

株式上場(IPO)のデメリット

株式上場(IPO)のデメリットは下記の2つです。

証券取引所が定めるさまざまな条件を満たす必要がある

株式上場(IPO)を実現するには、株主数や流通株式数など、証券取引所が定めるさまざまな条件を満たすことが必要です。新規上場する企業に厳しい条件を設けることで投資家が安心でき、活発な売買が期待できます。しかし、審査の要件を満たすことは企業にとってハードルが高く、準備に数年を要することがあります。

経営の自由度が下がる

上場が実現すると株式が公開され、一般株主が経営へ関与することになるため、上場前のように自由度の高い経営は難しくなるでしょう。

第三者承継(M&A)

事業承継の方法 メリット デメリット
第三者承継(M&A)
  • 外部から後継者候補を探せる
  • 現経営者がまとまった資金を得られる
  • 個人保証を行っている場合はM&Aによって解除が可能
  • マッチングや業務の統合に時間がかかる
  • 税務上のリスクが伴う

第三者承継(M&A)とは、親族や従業員以外の第三者を対象として事業承継を実施することをいいます。近年は親族や従業員に適切な後継者候補がおらず、第三者承継に活路を見出す企業が増加傾向にあります。

第三者承継(M&A)のメリット

第三者承継(M&A)のメリットは下記の3つです。

外部から後継者候補を探せる

第三者承継(M&A)の最大のメリットは、外部から後継者候補を探せることです。選択肢が広がることで、後継者不在による廃業や倒産を回避できる可能性が高まります。それにより、事業運営で培った会社の技術やノウハウだけでなく、従業員の雇用も維持することが可能です。

現経営者がまとまった資金を得られる

現経営者は、会社や事業を売却することでまとまった資金を得られます。それにより、勇退後の生活にゆとりが持てるでしょう。

個人保証を行っている場合はM&Aによって解除が可能

個人が保証人となって金融機関から融資を受けている「個人保証」を行っている場合、M&Aによって譲受側が肩代わりするか、保証を引き受ける形になるため、後継者の負担軽減になります。

第三者承継(M&A)のデメリット

第三者承継(M&A)のデメリットは下記の2つです。

マッチングや業務の統合に時間がかかる

M&Aの条件交渉や手続きは非常に複雑であることから、通常はM&A専門の仲介業者などの専門家にアドバイスを受けながら進めます。希望する条件の棚卸しから、お相手となる企業探し、条件交渉、契約手続きなどの一連の流れには労力がかかり、マッチング後も業務システムの統合や引き継ぎに時間がかかります。

税務上のリスクが伴う

譲渡側の企業が過去に行った税務処理の内容に誤りがあったことが、M&Aの実施後に発覚すると、譲受け側が想定外のリスクを負うことになります。実際にM&Aを実施する前には、譲渡側の企業に対して調査が行われますが、M&Aの実施後に問題が発覚する可能性もゼロではないといえます。

事業承継を進める際の注意点

ここでは、事業承継を進める際の注意点を解説します。事業承継では、企業が持つ人材・ノウハウ・資産をすべて次の経営者に引き継ぐことになるため、その過程でさまざまなトラブルが想定されます。

税金の発生

事業承継では、株式などの資産を引き継ぐ際に税金が課されます。

親族内承継の場合は株式を相続する形が一般的で、その際に贈与税と相続税がかかります。いずれも、税率が10%から55%までの8段階になっており、贈与税は財産の取得金額、相続税は基礎控除後の課税価格に応じて税率が決定されます。

また、役員への事業承継やM&Aの場合、株式を後継者に買い取ってもらうことになり、現経営者が売却益を得ることになるでしょう。株式の売却益には所得税(譲渡所得税)・住民税の納税が必要です。

譲渡所得税・住民税の税率は一律20%で、2037年までは復興特別所得税(基準所得税額に2.1%を乗じたもの)も発生します。

後継者の負担

事業承継は、どのような方法を採用しても後継者に大きな負担がかかります。

親族内承継の場合は贈与税と相続税が発生します。また、役員への事業承継やM&Aの場合は、株式を買い取るためのまとまった資金が必要となり、それなりの金額を用意しなくてはなりません。
借入金や個人保証もそのまま後継者に引き継がれます。M&A以外の手法で個人に会社を引き継ぐには、融資が必要になる場合もあります。

専門家のアドバイスを受けながら、現経営者と後継者の間で綿密にコミュニケーションを取りながら計画を進めましょう。

後継者の人選

後継者の人選は、事業承継を実施するうえで大きな課題です。

従来、事業承継は親から子へ会社を引き継ぐ親族内承継が一般的でした。しかし、昨今は少子化の影響で経営者に子どもがいないこともあります。子どもがいても会社を継ぐ意志が無い、もしくは経営者としての適性が無いなどの理由で、現経営者が事業承継を躊躇することもあります。また、承継後に後継者を育成するための仕組み作りも必要です。

後継者の人選によっては、承継後に事業がうまくいかなくなる恐れがあることを認識しておきましょう。

相続トラブル発生リスク

親族内承継は、現経営者の身内に会社を引き継げるというメリットがある一方、後継者以外の親族との相続トラブルを引き起こす可能性があります。

例えば、現経営者が自分の子ども以外の親族に会社を承継することになった場合、子どもが相続で受け取れる資産が減ってしまいます。親族が株式を分散して保有している場合は、事業承継の内容に不満や不公平感を持った親族の反対によって、手続きが進められなくなる可能性もあるでしょう。

事前準備の不足

事業承継では、後継者探し以外にも、金融機関との調整や、取引先・従業員への説明など、やるべきことが数多くあります。場合によっては反対意見が出て、調整が難航することもあるでしょう。

事業の引き継ぎまでには数年単位の時間がかかるため、それを見据えたうえで事前準備を綿密に行いましょう。会社の持つ資産の棚卸しを行い、何をどのような形で引き継ぐのかを明確にしたうえで計画を進めます。

事業承継の進め方

中小企業や家族経営の事業では、事業承継は家族単位の引き継ぎ問題を誰かに知られるのが恥ずかしくて相談しづらい気持ちになる方が少なくありません。

しかも、昨今では親族の承継が当然ではなくなり次期経営者を探さなければならないので悩みは尽きません。

しかし、親族でも第三者でも事業を引き継いでもらうためには経営課題や財務状況の問題を洗い出して改善策を見いだす必要があるのです。

実際に事業承継を進めるステップは下記の3つです。

  • STEP1自社の経営課題、資産や財務状況を把握する
  • STEP2経営改善して引き継ぎたくなる会社にする
  • STEP3 親族内承継・社内承継の場合:後継者探し、事業承継計画策定
    社外承継の場合:M&A仲介会社への相談

それぞれのステップについて解説します。

自社の経営課題、資産や財務状況を把握

良好な事業承継のために、まずは経営状況や経営課題を正確に把握する必要があります。

自社の強みと弱みを知るために、下記の課題を深掘りすると良いでしょう。

  • 現在の市場の可能性や事業の継続性はどうか
  • 自社の現在の商品力や企画開発力はあるのか
  • 無駄なく利益が生まれる体質になっているか

これら経営課題の分析は経営者だけで行うのではなく、公平な視点で判断できる方々や金融機関などに協力を仰いで多角的な分析にすべきです。

また、経営者として想像したくはありませんが、将来起きるかも知れない環境変化とそれに伴う経営リスクも想像しておく必要があるでしょう。

なお、経営資源については貸借対照表に現れない知的資産・ブランド力・社風・経営理念など、目に見えない無形資産も含まれることを覚えておきましょう。

経営改善して引き継ぎたくなる会社に

事業承継とは、今まで省みたことのない視点で事業を改めて分析して問題点や改善点を洗い出し、経営体質をより良くするという大きな命題があることを忘れてはいけません。

つまり、経営者の交代をきっかけとして事業を発展させ、引き継ぎたくなる会社にする絶好のチャンスなのです。

ですから、後継者が親族であっても第三者であっても関係なく、最後の陣頭指揮の日までは経営改善に尽力し、次の経営者に最高の状態で事業を引き継ぐ姿勢を貫くべきです。

後世に「老舗(しにせ)」と呼ばれる100年企業はいずれも、世の中が変わろうとも創業当時の想いを大切に受け継いでいるという共通点があります。

事業承継の本質とは、世の中に価値を提供する現経営者の理念や想いを、次世代でもブレない基盤として伝えていくバトンパスではないでしょうか。

親族内承継・社内承継の場合:後継者探し、事業承継計画策定

親族内承継および社内承継の場合には、経営陣・従業員・主要な取引先・銀行などにとって最良な道を探りながら事業承継計画案を作成しましょう。

そして策定後は主要な関係者全員が内容を共有して、将来の事業承継で充分な協力が得られるよう意思疎通ができれば、結束が固まり事業承継が安定します。

事業承継計画の策定は後継者探しや計画書の作成だと思われがちですが、事業の関係者と想いをすり合わせて結束力を高めるためにあるのです。

社外承継の場合:M&A仲介会社への相談

社外承継でM&Aを利用する場合には、社外の関係者や事情が交錯し専門的な知識やテクニックが要求されるため、経営者が自力で完結させるのは困難です。

そのため、M&Aを利用するならM&A専門の仲介会社へ相談を持ちかけましょう。

会社間の実務はM&A仲介会社が滞りなく行いますので、経営者は事業や会社の売却条件に組み込まれる下記についての希望をまとめます。

  • 従業員の雇用について ⇒例)従業員は解雇せず雇用条件もそのままで雇用継続したい
  • 現材の社名とロゴについて ⇒例)社名とロゴはそのまま残したい
  • 現在の事業の存続について ⇒例)特定の事業だけは現状のまま残したい
  • 契約や引渡し時期について ⇒例)契約や引渡し時期を指定したい
  • 個人保証の解除について ⇒例)現社長の個人保証を抜いて(解除して)欲しい
  • 社屋の移転について ⇒例)社屋を創業地から移転しないで欲しい
  • 現在の取引先との関係について ⇒例)現在の取引先とは一定期間取引を継続したい

事前にこのような希望をM&A仲介会社に伝えておけば、条件に合った相手先を見つけてくれます。

事業承継を成功させるためのポイント

事業承継を成功させるために、次のようなポイントを押さえておきましょう。

早期から準備を始める

事業承継は、現経営者の引退時期から逆算して準備に着手することが重要です。

2017年版中小企業白書によると、後継者の選定を始めてから了承を得るまでかかった時間について、「3年超」との回答が全体の37%に上っています。

また、2019年版中小企業白書では、後継者が決定してから実際に事業を引き継ぐまでにかかった期間を、約半数が「1年以上」と回答しました。

関係各所との調整に時間がかかることも想定し、なるべく早めに準備を始めましょう。

国や自治体の制度を活用する

事業承継で活用できる制度には、次のようなものがあります。目的に合わせてうまく制度を活用しましょう。

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターとは、後継者不在に悩む中小企業の事業引継ぎを支援するために平成 23 年度から開始した公共事業です。

全国にある事業引継ぎ支援センターにおいて、事業承継についての幅広い相談の対応・ダイレクトメールによる事業承継診断・M&Aの企業マッチング支援サービスを提供しています。

事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金とは、下記の事業主を支援する公的制度です。

  • 事業承継に伴い新しい取り組みを行う中小企業・小規模事業者等
  • 事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業・小規模事業者等

活動内容は、企業の費用負担を軽減して事業承継後にも積極的な投資ができるように、中小企業の事業承継や経営資源引継ぎに要する費用を一部補助しています。

事業承継税制

事業承継税制とは、中小企業が事業承継を実施する際に、後継者が負担する相続税や贈与税などの税負担を軽減するための制度です。一定の要件を満たすと、自社株式の相続税や贈与税が猶予または免除されます。

また、平成30年度税制改正では「事業承継税制の特例」が10年の期限付きで創設されました。納税猶予の対象となる非上場株式等の制限が撤廃され、納税猶予割合が80%から100%に引き上げられるなど、さらなる税負担の軽減が実現しています。

事業承継税制によって事業承継のハードルが下がり、承継後に事業が軌道に乗るまでの時間が短縮できるなどの効果が期待できます。

専門家のサポートを受ける

事業承継を必要とする中小企業によくある課題が、事業承継に関心があっても具体的な進め方がわからず、時間だけが経過してしまうことです。

事業承継を実行するうえでは、法律や税金に関する高度な専門知識が必要です。そのため、一般的には専門家のサポートを受けながら必要な手続きを進めていきます。特にM&Aは手続きが複雑になるため、なるべく早い段階で専門家に相談することをおすすめします。

当社は、東証プライム上場の信頼性と確かな実績で、お客様の事業承継を親身にサポートいたします。まずは無料のご相談から承りますので、お気軽にお問い合わせください。

まずはお気軽にご相談ください。
秘密厳守にてご対応いたします。

まとめ

事業承継は、現経営者と後継者間の問題と思われがちですが、従業員の私生活や取引先の事業にも大きな影響を与えます。また、M&Aの場合は、相手先企業の取引先や従業員にまで影響が及ぶことになります。

関係者にとって満足のいく事業承継にするためには、余裕を持って準備を開始することが何よりも重要です。自社の資産の棚卸しから引き継ぐ資産の選定、円滑な引き継ぎ方まで、専門家のアドバイスを受けながら綿密に計画を立てましょう。

将来的な展望やリスクも踏まえたうえで、自社にとって納得のいく事業承継はどのような形なのかを考えてみてはいかがでしょうか。

よくあるご質問

事業承継に関するよくある質問と回答をまとめました。
  • 事業承継と事業継承との違いは?
  • 事業承継は、会社の資産のみならず、ビジョンや経営理念といった思想まで引き継ぎ、事業を発展させることを意味します。一方の事業継承は、経営権や財産、地位などを引き継ぐことです。

  • 事業承継とM&Aの違いは?
  • M&Aは事業承継の手法の一つで、会社の経営権を後継者に引き継ぐことをいいます。具体的には、第三者へ自社株式を売却することで経営権が譲受け側の会社に移ります。

  • 事業承継と相続の違いは?
  • 相続は、死亡した人の資産や負債といった財産を相続する人が受け継ぐことです。事業承継は、経営者が存命しているか死亡しているかに関わらず行われます。

  • なぜ社長交代ではなく事業承継なのか?
  • 「社長交代」は、単に経営者が交代することを意味します。一方の事業承継は、経営者の交代に留まらず、会社が持つ人材・ノウハウ・資産をどのような形で次の世代に引き継ぎ、事業を発展させていくかを考える点が大きく異なります。

まずはお気軽にご相談ください。
秘密厳守にてご対応いたします。
監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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