事業承継とは? 3つの承継方法や実施の流れを解説

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事業承継について

事業承継は、経営権や資産を後継者に引き継ぐだけでなく、企業が長年にわたり培ってきた文化や信頼関係、ノウハウなどの「見えない資産」をも次世代に渡す、極めて重要な経営の節目です。特に中小企業においては、単なる世代交代ではなく、企業存続や地域経済への貢献とも直結する重大なテーマとなっています。

本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、事業承継の基礎知識から、親族・社内・第三者承継といった多様な方法、承継すべき経営資源、実施のステップ、注意点に至るまでを網羅的に解説します。事業承継を検討中の経営者にとって、実行への第一歩となるような情報をわかりやすくお届けします。


事業承継の定義

事業承継とは、会社の経営を後継者に引継ぎ、事業をこの先も長く継続していくための基礎を築くことです。経営権や株式などの目に見える資産だけでなく、経営理念や企業文化、顧客との信頼関係、独自のノウハウといった無形の資産も次の世代へと引き継がれます。これは単なる社長交代ではなく、会社が積み重ねてきた価値を守りながら発展させるための大切なプロセスです。
はじめに、事業承継と混同されやすい事業継承との違いや、事業承継が必要となるケースについて整理していきましょう。

事業承継におけるオーナー経営者の3つの選択肢のイメージ
弊社作成:事業承継におけるオーナー経営者の3つの選択肢とタイミング

事業承継と事業継承の違い

事業承継と事業継承は、混同されやすい概念ですが、厳密には異なります。事業継承は、前任者が所有していた事業や権利、財産といった、具体的なものを引き継ぐプロセスです。
一方、事業承継はより広範な概念を含んでおり、具体的な資産や権利、財産だけでなく、企業の精神や文化のような形の無い、抽象的な要素も含めて次世代に引き継ぐことを指します。
このように、事業承継は事業継承よりも包括的な概念であり、企業の持続的発展を考えるうえで重要な意味を持つものです。

事業承継が必要となるケース

事業承継が必要になる場面は、大きく三つに分けられます。

  • 経営者の高齢化や病気、急逝など、経営者自身の事情によるケース
  • 事業の多角化や新分野への挑戦に伴い、専門知識を持つ人材へ引き継ぐといった戦略的な理由によるケース
  • 人材不足や市場の変動、業界再編への対応など、外部環境の変化によるケース

いずれの場面においても準備が遅れると、相続トラブルや資金繰りの悪化、顧客離れといった深刻な影響を招く恐れがあるため、早めの対応が求められます。

事業承継で引き継ぐ3つの要素

中小企業庁「事業承継ガイドライン」によると、事業承継において引き継がれる要素は以下の3つとされています。

事業継承で引き継ぐ3つの経営資源
人(経営)の承継
経営者としての地位や経営権を移行すること
知的資産の承継
経営理念やステークホルダーとの信頼関係、ノウハウなどの無形資産を移行すること
資産の承継
株式や出資持分、不動産、設備、事業用資産などの目に見える資産を移行すること

人(経営)の承継

人の承継とは、後継者に代表取締役の地位や経営権を引き継ぐことです。ノウハウや人脈が経営者個人に集中しやすい中小企業においては、後継者の資質や人心掌握力が、将来の業績を大きく左右します。後継者の育成には一般的に5〜10年かかると言われており、現経営者が計画的に権限を移譲しながら伴走することが不可欠です。このため、早期の後継者選定と育成計画の策定は、事業承継を成功に導く重要なポイントといえます。

知的資産の承継

知的資産の承継とは、経営理念や企業文化、ブランド力、取引先や金融機関との信頼関係、従業員の技術やノウハウといった、目に見えない資産を次世代へつなぐことです。これらの無形資産は企業の競争力の源泉であり、承継が不十分だと、資産や役職を引き継いでも企業の強みが生かせず、ひいては業績低迷のリスクがあります。特に、経営者個人の人脈や信頼は会社の存続に大きく影響するため、意識的な引継ぎが欠かせません。自社の知的資産の棚卸し、強みを見える化して後継者へ体系的に伝えることが、承継後の組織の安定と成長につながります。

資産の承継

資産の承継とは、株式や出資持分、不動産、設備、事業用資産といった目に見える財産を後継者に移転することです。具体的な方法としては、贈与・相続・売買などがあります。それぞれ税金や手続きが異なるため、早めに検討しましょう。
特に中小企業では、経営者個人が事業用資産を保有しているケースも多く、名義変更や契約整理を怠ると承継後にトラブルを招きやすくなります。さらに、資産の評価額や税額は経営に直結するため、専門家の助言を受けながら節税策や資金調達方法を組み合わせ、計画的に進めることが重要です。

事業承継の種類

事業承継の種類

事業承継は、後継者の属性や組織構成によって3つの種類に分けられます。

親族内承継
血縁関係にある親族に事業を引き継ぐ方法
親族外承継(従業員・役員)
親族ではなく役員や従業員に事業を引き継ぐ方法
第三者承継(M&A)
親族や社内の人材ではなく、外部の第三者企業や投資家へ事業を引き継ぐ方法

それぞれの特徴・仕組み・メリット・デメリット・適したケースを整理します。

親族内承継

親族への承継とは、現経営者の子どもや兄弟など、血縁関係にある親族に事業を引き継ぐ方法です。後継者が事業理念や企業文化を理解しやすく、関係者からの理解も得やすいため、中小企業で多く採用されています。

特に、親族に経営資質を持つ後継者候補がいる場合や、家業の伝統や地域社会との結びつきを重視する企業に適しています。外部候補が見つからない場合にも現実的な選択肢となります。

親族内承継のメリット

親族内承継の大きな強みは、経営者が直接後継者を指名し、長期的な育成計画を立てやすい点です。
後継者は幼少期から経営理念や企業文化に触れることで、会社の価値観を自然と引継ぎやすく、従業員や取引先、金融機関といった社内外の関係者から心情的に受け入れられやすい傾向があります。結果として、経営の安定性向上が期待できます。
さらに、贈与や相続によって株式を移転する際には、税制上の優遇措置や特例制度を活用できるため、資金面でも効率的に事業承継を進められる方法といえるでしょう。

親族内承継のデメリット

親族内承継の主なデメリットとしては、後継者の資質や意思に起因するリスクが挙げられます。仮に後継者の経営に必要な能力が不足していたり、本人に事業を継ぐ意思がなかったりした場合、業績の悪化や従業員の離反につながる恐れがあります。
また、親族間での対立や相続財産の分配をめぐる争い、株式の分散による経営権集中の難しさといったトラブルも発生しやすいため、十分な話し合いと事前準備が不可欠です。

親族外承継(従業員・役員)

親族外承継とは、親族以外の役員や長年勤続した従業員に事業を引き継ぐ方法です。経営に精通し、社内外から信頼を得ている人材を後継者に選べるため、親族に適任者がいない場合には有力な選択肢となります。
なかでも、会社の文化やノウハウを熟知している社員がいる中堅企業などで活用されやすく、MBO(マネジメント・バイアウト)の形で後継者が株式を取得するケースもあります。

親族外承継のメリット

親族外承継の強みは、親族に適任者がいない場合でも承継の選択肢を広げられる点にあります。これまで培ってきた事業を次世代に残せる可能性が高まるほか、長年勤めてきた役員や従業員など、会社をよく知る人材が後継者となるため、経営をスムーズに引継ぎやすいことも利点です。
さらに、従業員や取引先からの信頼を得やすく、組織の結束力を維持しやすい効果も期待できます。

親族外承継のデメリット

資金面では、後継者となる従業員や役員が自社株を取得する際に、多額の資金が必要となる点が課題です。資金の準備が困難なことから、承継を辞退するケースにつながることもあります。
また、人材・組織の面では、後継者候補が複数いる場合に不満や対立が生じ、社内の派閥化や離職のリスクを伴うことがあります。さらに、個人保証や債務の承継といった責任の重さが後継者候補にとって大きな心理的プレッシャーとなり、推薦を断られるケースも少なくありません。

第三者承継(M&A)

M&Aによる事業承継は、親族や社内の人材ではなく、外部の第三者である企業や投資家へ事業を引き継ぐ方法です。株式譲渡事業譲渡会社分割など多様なスキームがあり、従業員の雇用や取引先との関係を守りながら事業を存続できます。
後継者不在に悩む中小企業や、買い手企業とのシナジー効果によって事業の拡大・多角化を目指したい企業には、特に適しています。また、国や自治体による支援も期待できます。

第三者承継(M&A)のメリット

M&Aによる事業承継のメリットは、親族や従業員に適任者がいない場合でも、社外から幅広く後継者を探せる点です。経営力や資本力に優れた買い手とマッチングできれば、事業の存続や従業員の雇用維持に加え、新規市場参入や技術力強化といったシナジー効果が期待できます。
また、事業承継ファンドが株式を引き受けて資金提供や経営支援を行うケースもあり、経営基盤を強化しながら円滑な承継を進められる点もメリットです。
買い手企業にとっても、優れた技術やブランド、人材を獲得して自社の事業基盤を拡大できるというメリットがあります。このように、M&Aは現経営者・従業員・買い手の三者にとって利益をもたらす有効な承継手法といえるでしょう。

第三者承継(M&A)のデメリット

M&Aによる事業承継は有力な選択肢である一方、デメリットも存在します。
まず、希望の条件に合う買い手がすぐに見つかるとは限らず、相手探しや条件交渉、契約手続きには多大な時間と費用がかかる点です。さらに、企業理念や従業員との価値観のズレによって社内摩擦や人材流出が起こるリスクもあります。また、相手企業の調査過程で過去の財務・税務の問題が発覚すれば、想定外のリスクを負う可能性も否定できません。
このように、M&Aは多くの手続きを踏む必要があり、統合までに長期のプロセスを要するため、専門家の支援を受けながら慎重に進めることが求められます。
事業承継の主要スキームについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

事業承継の現状

中小企業における後継者不在率の推移のイメージ。2025年版 中小企業白書(HTML版) 第9節 事業承継
引用:2025年版 中小企業白書(HTML版) 第9節 事業承継

中小企業庁の2025年版 中小企業白書によると、後継者不在率は2018年に67.2%でピークを迎えたものの、その後は改善傾向を示し、2024年には52.7%まで低下しました。ただし、依然として半数超の企業が後継者未定であり、事業存続や地域経済への影響は大きな懸念材料となっています。
年代別では60代で38.1%、70代で27.7%が後継者不在となっており、特に60代のうちから準備を進めることが重要であるといえるでしょう。

中小企業の経営者年齢の分布(年齢別)のイメージ。引用:2025年版 中小企業白書(HTML版) 第9節 事業承継
画像出典:2025年版 中小企業白書(HTML版) 第9節 事業承継

経営者年齢の分布は、2000年が50代前半がピークだったのに対し、2024年は55~59歳が最も多くなっています。ただし、60歳以上が占める割合は依然として高く、70歳以上の割合も過去最高を記録し、分布の分散化が進んでいる状況です。

経営者の就任経緯の割合の推移のイメージ。引用:親族内承継に関する現状分析と 今後の検討の方向性について
引用:親族内承継に関する現状分析と 今後の検討の方向性について

なお、承継手法としては同族承継(親族内承継)が依然として主要な選択肢であるものの、割合は減少傾向にあります。代わって、役員・従業員への承継や、M&Aによる第三者承継が増加傾向となっています。2024年は、同族内承継が32.2%、内部昇格が36.4%、M&Aなどが20.5%、外部招聘が7.5%でした。
この傾向から、経営者年齢の分散化の背景には、国や自治体は事業承継税制や補助金などのM&A支援の拡充による、従業員への承継およびM&Aによる事業承継の浸透があるとみられます。

事業承継の流れ

事業承継ガイドラインによると、基本的な事業承継の流れは以下のとおりです。

  1. 事業承継に向けた準備の必要性の認識
  2. 経営状況・経営課題等の把握(見える化)
  3. 事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
  4. 事業承継計画の策定・M&Aの工程
  5. 事業承継・M&Aの実行

一連のプロセスには、長い時間と綿密な準備が必要となります。経営者自身が早期に承継の必要性を認識し、専門家の支援を受けながら、経営状況の可視化や経営基盤の強化に取り組むことが成功の鍵です。各プロセスについて、詳しく見ていきましょう。

事業承継に向けた準備の必要性の認識

後継者の育成および事業承継の実施には、一般的に5~10年の期間を要します。そのため、事業承継に着手した時点で、既に問題が深刻化しており、後継者への引継ぎが間に合わないリスクが存在します。
適切なタイミングで事業承継を実施するためには、まず現経営者自身が事業承継の必要性を自覚することが重要です。理想としては、現経営者が60歳を迎える頃までに事業承継の準備に着手することが望ましいとされています。同時に、従業員や支援機関などの周囲の関係者も、経営者に対して承継準備に取り組むきっかけを提供し、積極的に働きかけることが大切です。
このように、事業承継は長期的な視点と計画的な取り組みが不可欠であり、早期からの準備と周囲のサポートが成功のポイントです。

経営状況・経営課題等の把握(見える化)

事業承継の準備において、経営者は自社の経営状況や課題を分析し、それらを関係者と共有できるよう文書等で可視化することが重要です。自社の強みと弱みを明確にしたうえで、強みを伸ばし、弱みを改善するための戦略を検討します。
同時に、事業承継そのものに関する現状と課題の把握も欠かせません。後継者候補の有無、その候補者の承継意思、経営者としての能力や意欲などを明確にし、円滑な承継の実現に向けて課題解決に取り組むことが求められます。
これらの状況および課題の可視化プロセスは、経営者自身で行うことも可能ですが、多角的かつ効率的に進めるためには、専門家のサポートを受けることが望ましいでしょう。専門家の知見を活用することで、より客観的な分析と実効性の高い計画立案が可能となり、成功裏に事業承継が進む可能性が高まります。
M&Aキャピタルパートナーズは、豊富な実績と専門知識を活かし、中小企業の事業承継を総合的にサポートします。
事業承継に向けた経営状況・課題の整理を含む相談や具体的な対策の検討など、お気軽にM&Aキャピタルパートナーズにご相談ください。



事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)

事業承継は、経営者交代を機に事業を飛躍的に発展させる好機でもあります。現経営者は、次世代に引き継ぐまで、事業の維持・発展に努め続けなければなりません。事業を分析し、問題点や改善点を洗い出したうえで、経営体質をより良くすることが必要です。
具体的な経営改善として、まず本業の競争力強化が挙げられます。自社の強みを活かした商品・サービスの拡充、技術力の向上、人材育成などを通じて、事業の核となる部分を強化していきましょう。
同時に、経営体制の総点検も不可欠です。ガバナンスや内部統制の向上、業務効率化、不要な資産の処分などを通じて、経営基盤を見直し、整備することで、より強固な企業体質を構築できるでしょう。
さらに、財務経営力の強化も重要です。適切な財務管理を行うことで経営判断の精度を高め、金融機関や取引先との信頼関係を構築することが、安定した経営基盤の確立につながります。
これらの取り組みを通じて、後継者が引継ぎたくなるような魅力ある企業へと磨き上げることが、円滑な事業承継の実現につながります。

事業承継計画の策定・M&Aの工程

事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)

親族内承継および社内承継の場合には、経営陣・従業員・主要な取引先・銀行などにとって最良な道を探りながら事業承継計画案を作成しましょう。
策定後は主要な関係者全員が内容を共有して、将来の事業承継で充分な協力が得られるよう意思疎通ができれば、結束が固まり事業承継が安定します。
事業承継計画の策定は後継者探しや計画書の作成だと思われがちですが、事業の関係者と想いをすり合わせて結束力を高めるためにあるのです。

M&Aの工程(社外への引継ぎの場合)

親族や社内に後継者が見つからない場合は、M&Aなどの第三者が選択肢となります。
M&Aを進める際は、まず専門機関に相談し、仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)など支援機関を選定します。続いて、企業価値評価(バリュエーション)や買い手候補の選定、条件交渉、デューデリジェンス(買収監査)などの工程を経て、最終契約に至ります。
手続きは多岐にわたり時間もかかるため、早期に計画を立てて段階的に進めることが重要です。

事業承継・M&Aの実行

事業承継・M&Aの実行段階では、これまでのステップで策定した計画に基づいて進めていきます。しかし、実際の状況は常に変化するため、計画を固定的にとらえるのではなく、臨機応変に修正・改善する柔軟性が必要です。
事業承継の実行および統合プロセスは多岐にわたり、法務、財務、税務など専門的な知識を要する複雑な作業が含まれます。
特に、M&AにおけるPMIでは、組織構造の再編、業務プロセスの統合、企業文化の融和など、さまざまな課題に取り組む必要があります。各課題を適切に管理し、ステークホルダーへの影響にも配慮しながら進めることが欠かせません。
そのため、M&A仲介会社や弁護士、税理士といった各分野の専門家のサポートを受けながら進めることが望ましいでしょう。
承継方法ごとの詳しい事業承継の流れを知りたい方は以下の記事をご覧ください。

事業承継の注意点

事業承継には、主に3つの注意点が挙げられます。

円滑な承継を実現するためには、現経営者による計画的な権限移譲や、税務・法務の専門家を交えた早期対策、親族との丁寧な合意形成が欠かせません。

精神面・資金面で後継者に大きな負担がかかる

事業承継は、後継者にとって精神的・資金的な重圧が課題です。
経営経験の乏しい後継者が多く、承継直後から人心掌握や経営判断に追われ、強いストレスを抱えるリスクが考えられます。加えて資金面では、株式取得のための資金や、それに伴う贈与税・相続税の負担が大きな壁となり得ます。資金を十分に確保できなければ、経営権の安定的な承継が難しくなるケースも少なくありません。
こうした負担を軽減するためには、現経営者による段階的な権限移譲や、専門家を交えた資金調達・税務対策の事前準備が不可欠です。

承継する資産や譲渡益に対して税金が発生する

事業承継では、株式や資産の承継方法によって税負担が大きく変わります。
親族内承継では、相続や贈与によって株式を移転するケースが一般的で、相続税や贈与税が発生します。税率はいずれも10〜55%の累進課税となっており、取得金額や基礎控除後の課税価格に応じて税額が決定されます。
一方、役員や第三者への承継では株式を売却する形となり、現経営者は売却益に対して譲渡所得税・住民税(合わせて約20%)と復興特別所得税が課されます。株式の譲渡価額によっては多額の税負担を負うことも考えられるため、早めに税理士などの専門家に相談することが重要です。

親族間トラブルが発生するリスクがある

事業承継では、親族間の利害対立が大きな障害となるリスクがあります。例えば、現経営者が自分の子ども以外の親族に事業を承継した場合、子どもの相続分が減ってしまうことへの不満が生じやすくなります。また、株式が複数の親族に分散していると、一部の親族が承継内容に反対し、意思決定や手続きが滞る恐れも考えられます。
こうしたトラブルが長引けば、企業活動そのものに支障をきたし、最悪の場合は業績悪化や会社分裂につながる可能性も否定できません。
また、この問題は親族内承継に限ったことではなく、M&Aを進める際にも、親族の理解が得られずに反対されるケースがあります。早期の段階から情報共有を行い、合意形成を図ることが不可欠です。

事業承継を成功させるためのポイント

事業承継を成功させるための主なポイントは、次の4つです。

早期から準備を始める

事業承継の成功には、数年単位の長期的な計画が必要です。特に、親族内承継や親族外承継では一般的に5〜10年の準備期間が必要とされるため、早めに準備を進めることが欠かせません。
承継を実施するタイミングには、経営状況が安定している時期、後継者の準備が整った時期、業績が好調な時期、そして経営者が60歳前後になる時期などが目安とされています。
具体的な進め方は、承継計画書を策定して「何を・いつまでに」進めるかを明確にするほか、事業承継チェックリストなどを活用し、現経営者・後継者・専門家が共通認識を持ちながら準備を進めることが大切です。

制度や支援を活用して後継者の負担を軽減する

事業承継では、国や自治体の制度や金融機関のサービスを活用することで、後継者が抱える資金調達や納税リスクを減らせます。以下のような制度を積極的に利用しましょう。(2025年10月21日時点)

支援制度・手法 内容の概要
事業承継・M&A補助金補助金 企業の費用負担を軽減して事業承継後にも積極的な投資ができるよう支援することを目的とした補助金。
中小企業の事業承継や経営資源引継ぎに要する費用を一部補助する。
事業承継・集約・活性化支援資金 日本政策金融公庫が実施する融資制度。
後継者による株式取得や事業譲渡に活用できる資金を低利で借り入れできる。
事業承継特別保証制度 承継に伴う借入を信用保証協会が保証し、金融機関からの融資を受けやすくする制度。
事業承継税制 中小企業が事業承継を実施する際に、後継者が負担する相続税や贈与税などの税負担を軽減するための制度。
一定の要件を満たすと、自社株式の相続税や贈与税が猶予または免除される。
相続時精算課税制度 原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度。
年間110万円までは生前贈与加算が無いため、相続税を節税できる。
事業承継引継ぎ支援センター 全国に設置された公的な相談窓口。
マッチングやアドバイスを受けられる。
生命保険 納税資金や借入返済資金を準備するための手法として活用できる。
現経営者が突然亡くなってしまった等のケースでも後継者に十分な資金を残すことが可能。

制度・補助金の要件や期限年度で変わるので、自治体・関連機関のホームページで最新情報を調べておくと良いでしょう。

相続トラブルへの対策を徹底する

事業承継を円滑に進めるには、相続に伴う親族間トラブルの対策を徹底することが欠かせません。遺言書の作成や事業承継計画の明文化によって承継方針を早期に示し、株式分散や相続分をめぐる不満を未然に防ぐことが大切です。
また、事業承継信託を活用し、信託契約に基づいて株式を管理・承継するほか、持株会社を設立して株式を一元化すれば、経営権の分散を防ぎ、意思決定の停滞リスクを減らせます。
このように、多角的な対策を検討のうえで仕組みを早期に導入し、親族全員で合意形成を図ることが、スムーズな事業承継を実現します。

専門家のサポートを受ける

事業承継には、相続税や株式の移転、親族間の調整、後継者育成など、多くの課題が伴います。準備不足や判断ミスがあれば、経営の安定や家族関係に深刻な影響を与えかねません。
そのため、法律・税務・財務・M&Aといった幅広い知識を持つ専門家のサポートを受けることが不可欠です。専門家に相談すれば、最適な承継スキームの選択や税負担の軽減策、補助金・保証制度の活用方法などを具体的に検討できます。
事業承継を成功させるためには、経営者と後継者だけで抱え込まず、早めに信頼できるパートナーを見つけ、計画的に進めることが望まれます。

事業承継の事例

後継者不足が深刻化するなか、事業承継は企業の存続を左右する重要課題です。ここでは、M&Aや資本提携など、多様な手法で未来を切り開いた3つの成功事例を紹介します。

株式会社ケーウェイズと株式会社Orchestra Holdings

2025年2月、株式会社ケーウェイズは、株式会社Orchestra HoldingsとのM&Aを実施しました。
RFIDなど自動認識技術に特化して成長してきたケーウェイズは、DX需要の高まりや後継者不在を背景に、さらなる事業拡大と人材確保を目指して外部パートナーとの連携を決断。
複数の候補の中から「独立性を尊重しながらシナジーを生む姿勢」に共感し、Orchestra Holdingsをパートナーに決めました。
Orchestra Holdingsの提案力とケーウェイズの技術力を融合し、これまで単独では難しかったトータルソリューションの提供を実現しています。

株式会社HTCと株式会社SYSホールディングス

2025年5月、株式会社HTCは、株式会社SYSホールディングスの子会社になりました。創業者の健康不安と後継者不在を契機に、会社と従業員を守るため「買収ではなく経営同盟」を掲げるSYSと組むM&A型事業承継を選択しました。グループの人材・ガバナンス支援を得つつ現場主導と自主性を維持し、より大きな挑戦で成長を図った事例といえます。

株式会社清水組とSBI地域事業承継投資株式会社

2025年7月、株式会社清水組は、SBI地域事業承継投資株式会社と資本業務提携を結びました。この事例は、清水組の5代目社長による伝統建設会社の事業承継です。業界再編や資本力強化の必要性から、SBI地域事業承継投資株式会社との資本業務提携を通じたM&A型事業承継を選択しました。地域事業と雇用を守りつつ企業成長を図った好例といえるでしょう。

まとめ

事業承継は、企業の資産や経営権とともに、理念や信頼といった無形の価値を次世代に引き継ぐプロセスです。承継方法には親族内、従業員、第三者(M&A)といった多様な選択肢があり、それぞれに適した準備と対応が求められます。成功には5〜10年単位の計画的な準備が不可欠で、後継者への精神的・資金的負担軽減や税制対策、親族間の合意形成がカギとなります。

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よくある質問

  • 事業承継とは?
  • 事業承継とは、経営資源(人・知的資産・資産)を次世代に引き継ぎ、企業の継続を図るプロセスです。文化や信用も含めた総合的な引継ぎを指します。
  • 事業承継とM&Aの違いは?
  • M&Aは事業承継の手法の一つで、会社の経営権を後継者に引き継ぐ方法です。自社株式を第三者に売却し、経営権が譲渡されます。
  • 事業承継で引き継ぐ要素は?
  • 大きく分けて「人(経営)」「知的資産」「資産」の3つの要素を引き継ぎます。
  • 事業承継の主な方法は?
  • 親族内承継、従業員や役員への社内承継、第三者へのM&A(外部承継)の3つがあります。
  • 事業承継の基本的な流れは?
  • ①準備の必要性の認識②現状の把握③経営改善④承継計画策定・M&A工程⑤承継実行の5ステップで進みます。
  • 事業承継で注意すべき主なリスクは?
  • 後継者への精神・資金面の負担、税金の発生、親族間トラブルなどのリスクが挙げられます。
  • 事業承継にかかる費用は誰が負担しますか?
  • 親族内承継では後継者が税金を負担、従業員承継やM&Aでは後継者や買い手企業が株式取得資金を準備します。

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