DDSとは? 目的やメリット・デメリット、手順を解説

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DDS(デット・デット・スワップ)は、会社を再建する手法の一つです。

DDS(デット・デット・スワップ) イメージ画像

DDSの実施によって、金融機関からの借入金を別の種類の債務に変更することが可能になり、返済が一定期間猶予されるなどのメリットがあります。しかし、基本的に金融機関にとってはメリットが無く、経営者に負荷がかかることも理解しておく必要があります。
この記事では、DDSの目的やメリット・デメリット、手順をわかりやすく解説します。

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1. DDS(デット・デット・スワップ)とは

DDSは「Debt Debt Swap」の頭文字を取ったもので、債務の種類を交換することを意味します。DebtとDebt(債務と債務)をSwap(交換)することを略してDDSと呼びます。一般的には、金融機関などの債権者からの借入金(=債務)を、劣後ローンなど別の条件の債務に変更します。
DDSによって、会社が倒産した際に、債務の返済が一定期間猶予されるなどの支援を受けられます
通常、会社が倒産すると、次の順番で返済が進みます。

  1. 税金や従業員への給与支払い
  2. 取引先からの仕入れや外注にかかったお金、銀行からの借入金
  3. 劣後ローン・劣後債

劣後ローン・劣後債は、ほかの債務よりも返済の優先順位が低い貸付金・債券のことです。例えば、ある銀行からの借入金を、他の一般債券よりも返済の優先順位が劣後する借入金に変更した場合、この借入金のことを「劣後ローン」といい、会社に万が一のことがあった場合に、借入金の返済を他の一般債券よりも先延ばしすることが可能になります。また、「劣後債」は普通社債よりも弁済順位が低い債券を指します。

2. DDSを行う目的

DDSによって、会社が倒産した場合に債務の返済が一定期間猶予されます。債務の返済が先延ばしになれば、その間に会社を立て直せる可能性があるため、再建の足がかりとして活用されます。金融機関側が、会社の事業再生を主導するための手段として用いることもあり、特に中小企業の再生を図るうえで有効です。
また、DDSには資金繰りを改善する効果もあるため、会社を次の世代に引き継ぐ「事業承継」においても活用されます。資金繰りを改善したうえで、新しい経営者に会社を引き継ぐことで承継がしやすくなり、事業を軌道に乗せるまでの時間も短縮できます。

3. DDSのメリット・効果

DDSには、次のようなメリットや効果があります。

3-1. 安い金利で融資を受けることができる

DDSが行われると、通常時よりも安い金利で融資を受けられる可能性があります。
再生局面にある企業が借り入れを行う場合、金利は上がるのが一般的ですが、DDSは抜本的な業務改善を目的としていることから、金利が1%以下になる可能性があります。ただし、金利が下がっている間に業績が回復し、利益が増えると金利も上がる可能性がある点には注意が必要です。

3-2. 金融機関の融資が受けやすくなる

DDSが行われた借入金は、資本性借入金として金融機関の債務者企業に対する審査では自己資本の一部とみなされるとされています。債務者企業にとってはDDSが行われた借入金の分だけ(金融審査上は)負債から自己資本へ振り替わることで、バランスシートが改善し、金融機関からの信用が回復します
借入金を自己資本として、債務者区分(債務者の資金繰りなどをもとにした評価)を金融機関に決め直してもらうことも可能で、債務者区分が上位へ移ると、新たに融資を受けられる可能性もあります。

3-3. キャッシュフローの大幅な改善が見込める

DDSを行うと金利が下がることで金融機関の融資を受けやすくなり、キャッシュフローの大幅な改善が見込めます。債務超過の状態ではキャッシュフローの改善が困難であっても、DDSによって改善できるため、それだけでもDDSを実施する意義は大きいといえるでしょう。

4. DDSのデメリット

DDSは財務面で大きなメリットがありますが、次のようなデメリットもあります。

4-1. 経営者への負担が大きくなる

DDSは、金利の引き下げやキャッシュフローの改善など、債務者である企業にとってメリットがあります。しかし、債権者である金融機関にとって、DDSを行うメリットは基本的にありません
金融機関は、債務不履行を避けるため、経営者に対して個人保証を求めることがあります。それに応じた場合、経営者個人が会社の負債を返済する義務を負います。個人資産の提供を求めることもあり、経営者退任のリスクも生じるなど、経営者への負担が大きくなる点はDDSのデメリットといえるでしょう。

4-2. 特約事項の取り決めが生じることがある

DDSを行っても企業再建がうまくいくとは限らず、金融機関は貸付金を回収できなくなるリスクを負います。そのような事態を防ぐため、DDSを行う際に金融機関が特約事項を設定することがあります。
特約事項の設定により、企業は資金繰り表などの形で経営状況を報告することになります。また、赤字決算ができなくなるなど、経営に制約が付く点もデメリットです。
企業再建がうまく進まない場合は、借入金の一括返済を求められることもあるので注意しましょう。

4-3. 財務状況によっては受けられない可能性がある

DDSは会社の信用を回復するうえで有効な手段であり、金利が下がることでDDSの実施前よりも、好条件で融資を受けられるかもしれません。
しかし、会社の財務状況が悪すぎる場合は、DDSを受けられないことがあるので注意が必要です。たとえ金融機関の審査に通っても、特約事項やほかの条件で経営に制約が付く可能性があります
DDSによって借入金を劣後ローンに変更できたとしても、負債に変わりは無いという点は認識しておく必要があるでしょう。

5. DDSの一般的な手順・流れ

ここでは、DDSの一般的な手順・流れをステップに分けて解説します。

5-1. 会計の専門家に相談する

まずは、DDSを実施する妥当性について、顧問税理士や公認会計士などの専門家に相談します。企業側がDDSを実施すべきだと考えていても、専門家から異なる意見が出ることもあるためです。
専門家はDDSについて深い知識を持っているため、制度やメリット・デメリットなどについて疑問点があれば聞いてみましょう。

5-2. 金融機関にDDSを申し込む

DDSを実施するためには、金融機関への申し込みが必要です。DDSを実施する方向性が固まっても、金融機関などの債権者から同意を得なければ実施できません

5-3. 銀行側による審査

金融機関に申し込みを行ったあとは、DDSの申請時に作成した書類をもとに審査が行われます。審査では、決算書や事業計画書といった資料の確認が行われ、金融機関が定めている財務指標の水準に達しているかどうかもチェックされます。

5-4. 債務種類の変更

審査に通過すると、債務の種類の変更が可能になります。具体的には、借入金を劣後ローンにするなどの変更が行われます。
債務の種類を変更するには、金融機関に納得してもらえるような事業計画書を作成し、粘り強く交渉することが重要です。

6. まとめ

DDSは、企業にとって多くのメリットがありますが、金融機関にとっては貸付金が回収できなくなるリスクがある手法です。実施にあたっては審査が行われ、財務状況が悪い場合は審査に通らず、DDSが実施できないこともあるでしょう。
DDSを考え始めたら、まずは顧問税理士や公認会計士といった専門家に意見を求め、慎重に判断することが重要です。
会社を存続させるための方法として、DDS以外にM&Aも考えられます。第三者に株式や事業の一部もしくはすべてを引き継ぐことで、会社の持つノウハウや技術、人材といった資産を守ることが可能です。
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DDSに関するよくある質問

DDSに関する、よくある質問と回答をまとめました。
  • DDSとDESの違いは?
  • DDS(デット・デット・スワップ)は、借入金などの債務を別の種類の債務に変更することです。一方のDES(デット・エクイティ・スワップ)は、債務と株式を交換することをいいます。

  • DDSの金融機関側のメリットはある?
  • DDSは企業再建が主な目的で、基本的に金融機関にとってメリットはありません。貸付金が回収できなくなるリスクがあるため、経営状況の報告を義務化し、経営者に対して個人保証や個人資産の提供を求めるなどの対策を講じます。

  • DDSと劣後ローンの違いは?
  • DDSは、会社の倒産など万が一のことがあった場合に、債務の返済順位を下げることをいいます。一方の劣後ローンは、銀行からの借入金を、それよりも返済の優先順位が劣後する借入金に変更することを意味し、DDSの一環として行われます。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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