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「株式譲渡にはどのような税金がかかるの?」
「税金の計算方法は?」
株式譲渡を行う際、税金に関して上記のような疑問を抱く方もいるでしょう。本記事では、株式譲渡における税金の仕組みについて説明したうえで、かかる税金の種類や計算方法、注意点などを紹介していきます。
目次
1. 株式譲渡にかかる税金の仕組み
株式譲渡によって利益を得た場合、各種税金が課せられます。この税金は譲渡価額ではなく、譲渡益にかかります。譲渡益とは、譲渡価額から取得費用や手数料などを差し引いた金額のことです。
相続によって得た株式を譲渡した際も同様で、被相続人が株式を取得した際の金額を譲渡価額から差し引いた譲渡益に対して、税金が課せられます。
2. 株式譲渡益にかかる税金の種類と税率【個人・法人】
株式譲渡にかかる税金は、以下のとおりです。
- 所得税(譲渡者が個人の場合)
- 住民税(譲渡者が個人の場合)
- 復興特別所得税(譲渡者が個人の場合)
- 法人税等(譲渡者が法人の場合)
- 相続税・贈与税(該当者のみ)
一つずつ見ていきましょう。
2-1. 所得税【個人】
所得税は、個人の所得に対して課せられる税金です。納税方法には、対象となる所得を合算して計算する総合所得と、総合所得の対象とならない所得を分離して計算する分離所得の2種類があります。
所得には10種類あり、株式譲渡によって得た所得は譲渡所得に分類されます。分離所得は総合所得の対象ではないため、分離所得として計算しなければなりません。
株式譲渡によって得た所得を分離課税する際、その税率は15%です。後述する復興特別所得税と合わせると15.315%になります。いずれも、確定申告によって納税します。
2-2. 住民税【個人】
株式譲渡で発生した譲渡益に対しては、住民税も課されます。所得税と同じく分離課税の対象となり、税率は一律で5%です。所得税・復興特越所得税とは別途の納税が必要です。
2-3. 復興特別所得税【個人】
復興特別所得税は、2011年に発生した東日本大震災の復興財源に充てるために創設された税金です。2013年から2037年まで課税されます。課税額は、所得税の2.1%です。株式譲渡の場合、所得税率は一律15%になるため、そこに2.1%を上乗せし、合計で15.315%を納税することになります。
2-4. 法人税等【法人】
法人が株式譲渡によって利益を得た場合、譲渡益を株式譲渡以外の利益と合算したうえで、法人税等(法人税・法人事業税・法人地方税)が課されます。個人で株式譲渡をする場合とは異なり、分離課税にはなりません。税率は30~35%程度で、個人よりも高めに設定されています。
2-5. 相続税・贈与税【該当者のみ】
株式譲渡を、本来の株価よりも低い価格で行った場合や、無償で行った場合は、贈与された側に贈与税が課せられることがあります。また、株式を相続した場合には、同様に相続税が課せられます。なお、相続税や贈与税は、高額な株式ほど税率が大きくなる点には留意しておきましょう。(著しく高額で株式を譲渡した場合は、贈与した側に贈与税がかかることがあります)
3. 株式譲渡にかかる税金の計算方法
株式譲渡における税金を計算する際には、まず譲渡価額から取得費や手数料などを差し引いて譲渡益を導き出します。次に、譲渡益に各種税金の税率をかけていきます。個人の場合、所得税と復興特別所得税を合わせた15.315%に、住民税の5%を足した、20.315%が、株式譲渡にかかる税金の合計額になります。計算の手順は、以下のとおりです。
- 譲渡益を計算する
譲渡価額-(取得価格+手数料など)=譲渡益 - 譲渡益に税率をかけて税額を計算する
譲渡益×20.315%=合計の税額
4. 株式譲渡の税金に関する特例制度
株式譲渡の税金には、以下のような特例制度があります。
- 事業承継税制
- 取得費加算の特例
事業承継税制とは、事業承継にあたって自社の株式を後継者に譲渡した場合、贈与税や相続税の納税に猶予が与えられる制度です。贈与税・相続税を理由に、事業承継が難しくなる事態を避けるために制定されました。
取得費加算の特例とは、相続した財産を3年10ヶ月以内に売却して譲渡所得を得た場合、納税した相続税額の一部を譲渡資産の取得費に加算できる制度です。あくまで相続した財産が対象の制度なので、生前贈与された株式などを売却した際には適用されません。
5. 株式譲渡の税金に関する注意点
株式譲渡の税金に関する注意点として、次の2点を確認していきましょう。
- 譲渡損失の繰越控除
- 海外株主(海外定住者など)
5-1. 譲渡損失の繰越控除
譲渡損失があった場合、つまり株式の譲渡価格が取得価格を下回って損失が出た場合には、その損失を最大で3年間繰り越すことができます。繰り越した譲渡損失は、翌年以降の譲渡益との相殺が可能です。
例えば、1年目の譲渡損失が300万円あり、2年目から4年目までは毎年100万円ずつ譲渡益を出した場合、2年目から4年目までの譲渡益は初年度の譲渡損失と相殺されて0円になるため、税金がかからなくなります。
ただし、譲渡損失を繰り越すためには、毎年確定申告を行う必要があります。
5-2. 海外株主(海外定住者など)
日本国籍を持ち、海外に定住している人が株式を売却した場合、定住している国のルールに基づいて課税されます。このケースでは、定住している国が租税条約を締結している国であれば、日本で課税されることはありません。
外国籍を持ち、日本に定住している人が株式を売却した場合も同様で、日本のルールに基づいて課税されます。国籍のある国が租税条約を締結していれば、その国で課税されることはありません。
6. まとめ
株式譲渡はM&Aの手法として用いられることもありますが、正確な知識に基づいて行わなければ、納める税金が多くなってしまうおそれもあります。
税金を最低限に抑えつつ、株式譲渡を用いてM&Aを実行するのであれば、専門家への相談がおすすめです。東証プライム上場のM&Aキャピタルパートナーズは、M&Aに関する実績が豊富にあるため、安心してご相談いただけます。株式譲渡についてお悩みの方はぜひご相談ください。
株式譲渡の税金 に関するよくある質問
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上場株式・非上場株式で税金の違いはある?
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株式譲渡の際にかかる税金(所得税・住民税・復興特別所得税)の合計は、上場・非上場共に、20.315%です。ただし、譲渡益ではなく配当金に対してかかる税金は、上場か非上場かで異なります。
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株式譲渡の税金を節税する方法はある?
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株式譲渡にかかる税金は、譲渡損が出た際に、それを翌年以降に繰り越すことで節税が可能です。繰り越した譲渡損は、翌年以降の譲渡益と相殺することができます。ただし、譲渡損を繰り越せる期間は最大3年までです。また、繰り越している期間は毎年、確定申告をしなければなりません。
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株式譲渡の税金はいつ払えば良い?
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株式譲渡の譲渡益にかかる税金のうち、所得税と復興特別所得税については、確定申告の際に納税します。住民税は年に4回、住んでいる地域の自治体から送付される納付書にしたがって納めます。
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株式譲渡の非課税枠はいくら?
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株式を無償で贈与した場合にかかる贈与税には、年間110万円の基礎控除があります。よって、年間110万円までであれば、贈与税を支払うことなく株式を譲渡することが可能です。
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20万円以下なら税金はかからない?
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株式譲渡の譲渡益など、給与外の所得は、その合計が年間20万円以下であれば確定申告が不要です。この場合、所得税と復興特別所得税を合わせた15.315%が免除されることになります。ただし、住民税の5%については、別途申告して納める必要があります。