更新日
株式譲渡の議事録について
株式譲渡の議事録とは、譲渡制限株式の譲渡承認決議の内容を記録し、承認を得た証明となる書類です。非公開会社では、定款や機関設計に応じて株主総会議事録や取締役会議事録を作成します。登記事項に変更が生じる場合の登記申請や株式譲渡契約の裏付け資料となるため、会社法や定款に沿った記載・押印・保管が重要です。
M&A手法の一つである株式譲渡を行う際、すべての株式に譲渡制限がある非公開会社では、原則として自由に株式を売買することができません。そのため、株主総会や取締役会で譲渡の承認を得る「譲渡承認決議」が必要です。そして、その決議の内容を正式に記録するのが「株式譲渡の議事録」です。議事録は、譲渡承認を得たことを示す証拠資料や、株式譲渡契約・株主名簿書換の確認資料として重要で、不備があると後続の手続きで確認や修正が必要になることもあります。
本記事では、株式譲渡に関する議事録の基本的な種類や記載すべき項目、作成時の注意点について詳しく解説します。
なお、株式譲渡の概要を確認したい方は、「株式譲渡とは?」の記事もあわせてご覧ください。
株式譲渡の議事録とは
会社法では、株式は自由に売買できるように定められているのが基本です。しかし、すべての株式が自由に売買できてしまっては、会社の経営上好ましくない人物が株主となり、経営が混乱してしまう恐れがあります。
そこで、会社法上、すべての株式に譲渡制限がある会社は非公開会社とされ、株式を譲渡する際には、原則として会社の承認が必要です。承認機関は、取締役会設置会社では取締役会、取締役会非設置会社では株主総会が原則ですが、定款に別段の定めがある場合はその内容に従います。
このように、譲渡制限株式の譲渡について会社の承認を得るために必要なのが、取締役会や株主総会での「譲渡承認決議」です。株式譲渡の議事録は、こうした譲渡承認を得た証明となる、非常に重要な書類といえます。
なお、非上場株式の譲渡方法や手続きの流れについては、「非上場株式を譲渡する方法は?」の記事もあわせてご覧ください。
株式譲渡の議事録の種類
株式譲渡の承認手続きで作成する議事録は、会社の機関設計や定款によって異なります。原則として、取締役会設置会社では取締役会議事録、取締役会非設置会社では株主総会議事録を作成します。
株主総会議事録
株主総会議事録とは、株主総会の決議事項を記録として残す重要な書類で、その作成は会社法第三百十八条で義務付けられています。ただし、作成にあたっては書面以外にも、電磁的記録として保存することが可能です。
また、作成した議事録の保存について、本店では「株主総会の日から10年間」議事録を、支店がある場合は「5年間」議事録の写しをそれぞれ備え置くように定められています。
ちなみに、押印に関しては法の定めがないため、定款に記載があればその内容に従います。
取締役会議事録
会社には、取締役会設置会社とそうでない会社があります。取締役会非設置会社であれば取締役会議事録の作成は必要ありませんが、取締役会設置会社で譲渡承認を取締役会で決議する場合は、取締役会議事録を作成します。
この取締役会議事録とは、株式譲渡を行う場合に取締役会が承認したことを証する書面です。会社法では、株主総会議事録と同様に作成が義務付けられています。
株主総会議事録では押印の定めがないのに対し、会社法第三百六十九条では、取締役会議事録を書面で作成する場合、出席した取締役および監査役が署名または記名押印をしなければならないと定めています。電磁的記録で作成する場合は、法務省令で定める署名または記名押印に代わる措置が必要です。
また、会社法第三百七十一条において、備置義務については本店で 「取締役会の日から10年間」と定められています。
株式譲渡の承認手続きにおいて議事録が必要な場面
次に、株式譲渡の承認手続きにあたり、議事録が必要な場面について解説します。株式譲渡の承認手続きで議事録が必要となるのは、主に以下の2つです。
登記申請が必要な変更を伴う場合の確認資料として
株式譲渡そのものについては、原則として法務局での登記申請は不要です。株主の氏名や住所は登記事項ではないため、株式譲渡によって株主が変わっただけで変更登記を行う必要はありません。
ただし、株式譲渡に伴って役員変更や商号変更、本店移転、定款変更など登記事項に変更が生じる場合には、別途、変更登記が必要となります。このような登記申請を行う際には、変更内容を証明する資料として、株主総会議事録や取締役会議事録の添付を求められることがあります。
なお、議事録に記載漏れや押印・署名の不備があると、登記手続きが必要な場面で訂正を求められる可能性があります。株式譲渡の承認内容だけでなく、登記が必要な変更事項の有無も確認したうえで、正確に作成しておきましょう。
株式譲渡の登記手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
株式譲渡契約を締結する際の証拠書類として
譲渡制限株式を譲渡する場合は、会社の承認が必要となるため、その承認を得たことを証明する資料として議事録を用いることがあります。
株式譲渡契約書には、譲渡制限株式を譲渡する場合に取締役会や株主総会で譲渡の承認が必要であることが記載されることがあります。契約締結時には、譲渡の承認を得たことを確認する書面として、議事録を作成・添付するケースもあります。
株式譲渡の議事録「株主総会議事録」の基本項目
次に、株式譲渡を行うための株主総会の議事録に関する、基本的な項目について解説します。株主総会議事録の細かい部分は会社ごとに異なりますが、ここでは概ねどの会社にも共通する項目を取り上げます。
株式譲渡に限らず、通常の株主総会議事録でも記載が求められる項目のため、この機会に理解を深めておくようにしましょう。
株主総会議事録の基本項目
株式譲渡を行う際に作成する株主総会議事録には、一般的に以下の5項目を記載します。
ここでは、項目ごとにどのような内容を記載すべきかを解説します。
株主総会の日時、開催場所
はじめに、株主総会の日時とその開催場所を記します。場所については、開催した部屋(ホテルであればホテル名や広間の名前など)を、日時については開催日と、開始時刻・終了時刻を分単位で詳細に明記します。
出席株主、議決権の状況
次に、総会に出席した株主の数と議決権の状況を記載します。また、発行済株式総数についても同様に記します。この部分は決議の裏付けとなる重要な項目のため、不備なく記載するようにしましょう。
出席役員の氏名または名称
続いて、株主総会に出席した役員の氏名や名称を記入します。「誰が総会に出席したか」は、重要な情報となる場合もあるため、出席したすべての役員の氏名と役職をもれなく記載しておかなければなりません。
議長および議事録作成者の氏名
議長および議事録作成者の氏名についても、出席役員とは別に当該役員の氏名と役職をそれぞれ明記します。
なお、「議事録作成者を誰にするのか」は法律で特段の定めがないため、株主総会開催時に取締役であれば、誰でも担当することが可能です。
議事の経過およびその結果
最後に、議事の経過とその結果を記載します。総会の開始から閉会に至るまでのおおまかな内容を簡潔にまとめ、それらの経過を記します。
ちなみに、株式譲渡を行う場合、総会での発言や経過をすべて記載する必要はありません。概要さえ押さえてあれば良いため、ここでは譲渡承認請求の内容と審議結果(承認可決)を記載します。
株主総会議事録のひな形
株式譲渡の議事録「取締役会議事録」の基本項目
次に、株式譲渡を行うにあたって開催される、取締役会の議事録に関する基本的な項目について解説します。取締役会議事録の細かい部分は会社ごとに異なりますが、ここでは概ね、どの会社にも共通する項目を取り上げます。
なお、これらの項目は株式譲渡に限らず通常の取締役会議事録でも記載が求められるため、株主総会議事録と同様に、こちらも理解を深めておくようにしましょう。
取締役会議事録の基本項目
株式譲渡を行う際に作成する取締役会議事録には、一般的に以下の4項目を記載します。
なお、決議事項について特別の利害関係を有する取締役がいる場合は、その取締役の氏名も記載する必要があります。株式譲渡では、譲渡当事者が取締役であるケースもあるため、該当する取締役の有無を確認しておきましょう。
取締役会の日時、開催場所
取締役会議事録でも、取締役会の開催日時および、その開催場所を記載します。場所については、開催した部屋(会議場であれば会議場名または部屋番号など)を、日時については開催日と、開始時刻・終了時刻を分単位で詳細に明記します。
出席役員の氏名や名称
取締役会に出席した役員の氏名や名称を記載します。株主総会議事録と同様に、「誰が取締役会に出席したか」は重要な情報となる場合もあるため、出席したすべての役員の氏名と役職をもれなく記載しておきましょう。
議長の役職および氏名
次に、取締役会の際に議長となった人物の役職および氏名を記します。ただし、議長を置かなかった場合は、この部分を記載する必要はありません。
議案の経過およびその結果
最後に、議案の経過と取締役会で話し合った結果を明記します。株式譲渡を行う場合、譲渡承認請求の内容と審議結果(承認可決)が必要となるため、この部分は必ず記載しなければなりません。
なお、こちらも株主総会議事録と同様に、開催から閉会までの要点がわかれば十分であり、すべてを詳細に記す必要はありません。
取締役会議事録のひな形
株式譲渡の議事録を作成する際のポイント・注意点
最後に、株式譲渡の議事録を作成する際に重要なポイントや注意点について解説します。作成時に大切なことや気を付けるべきことは、主に以下の2点です。
会社法や定款に沿って正確に作成すること
議事録を作成する際に最も重要なのは、間違いのない正確な内容を記載することです。虚偽記載がないか、内容に間違いがないかを何度もチェックしなければなりません。
また、議事録の内容に不備があると、譲渡承認を得た事実を十分に証明できなかったり、登記などの後続手続きで確認や修正が必要になったりする可能性があります。記載内容だけでなく「押印」や「署名」についても、会社法や定款の定めに沿っているかチェックしておきましょう。
ひな形を参考にしつつ、自社の状況に合わせて確認すること
株主総会議事録や取締役会議事録は、記載項目がある程度定型化されているため、ひな形を参考にしながら作成できます。ただし、譲渡承認を行う機関や必要な決議内容は、会社の機関設計や定款の定め、譲渡する株式の内容によって異なります。
そのため、ひな形をそのまま流用するのではなく、自社の状況に合わせて内容を確認・修正することが大切です。特に、取締役会設置会社かどうか、定款で承認機関がどのように定められているか、議事録に署名・記名押印が必要かといった点は、事前に確認しておきましょう。
議事録の内容に不備があると、譲渡承認を得た事実を十分に証明できなかったり、後続の手続きで確認や修正が必要になったりする可能性があります。不慣れな場合や判断に迷う場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談し、内容を確認してもらうと安心です。
まとめ
株式譲渡に関する議事録は、譲渡承認決議の内容を記録し、承認を得たことを示す資料として、契約や登記など後続の法的手続を円滑に進めるうえで重要な書類です。株主総会議事録と取締役会議事録では、記載項目や押印・署名、保管義務に違いがあります。作成時は、会社法や定款に沿って、開催日時・場所・出席者・議案内容・決議結果などを正確に記載することが大切です。不慣れな場合には、司法書士や弁護士など専門家への相談も検討しましょう。
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はお気軽にご相談ください。
よくある質問
- 株式譲渡の議事録は何のために作成しますか?
- 株式譲渡の議事録は、譲渡承認決議の内容を記録し、承認を得たことを証明するために作成します。登記事項に変更が生じる場合の登記申請時の添付書類や、株式譲渡契約を締結する際の証拠書類として使われます。
- 株主総会議事録と取締役会議事録はどう違いますか?
- 株主総会議事録は株主総会での決議内容を記録する書類で、取締役会議事録は取締役会での決議内容を記録する書類です。株式譲渡では、会社の機関設計や定款に応じて必要な議事録が異なります。
- 取締役会議事録は必ず作成する必要がありますか?
- 取締役会設置会社では、株式譲渡の承認にあたり取締役会議事録の作成が必要です。一方、取締役会非設置会社であれば、取締役会議事録の作成は不要です。
- 株式譲渡の議事録には何を記載すべきですか?
- 開催日時、開催場所、出席者、議長、議事録作成者、議案の経過、決議結果などを記載します。株式譲渡では、譲渡承認請求の内容と承認可決の結果を正確に記載することが重要です。
- 株式譲渡の議事録はどこに保管しますか?
- 株主総会議事録は、本店に10年間、支店がある場合は写しを5年間備え置く必要があります。一方、取締役会議事録は、取締役会の日から10年間、本店に備え置く必要があります。
- 株式譲渡の議事録を作成する際の注意点は何ですか?
- 会社法や定款に沿って、記載内容、押印、署名に不備がないかを確認することが重要です。自社の状況に合わせた修正が必要な場合や不慣れな場合は、司法書士や弁護士への相談も検討しましょう。
M&Aを流れから学ぶ
(解説記事&用語集)
M&A関連記事
M&A基礎
目的別M&A
- 事業承継とは
- 事業承継とM&Aの違い
- 事業承継M&A
- 「事業承継」と「事業継承」の違い
- 事業承継問題
- 後継者不足の実態
- 事業承継における課題
- 事業承継対策の必要性
- 事業承継を実施するタイミング
- 事業承継の流れ
- 事業承継計画
- 事業承継計画書の記載項目
- 事業承継のチェックリスト
- 事業承継における後継者選定
- 事業承継における後継者育成
- 親族内承継
- 親族外承継
- 従業員への事業承継
- 第三者承継
- 親族内承継と第三者承継の比較
- 後継者のいない会社を買う
- 事業承継の主要スキーム比較
- 持株会社を活用した事業承継
- 事業承継信託
- 事業承継ファンド
- 医療法人の事業承継
- 事業承継に向けた資金調達方法
- 事業承継補助金
- 事業承継で活用できる融資
- 事業承継における生命保険
- 事業承継税制
- 事業承継の税務対策
- 事業承継と資産移転
- 事業承継時の消費税の取扱い
- 承継時の債権・債務の取扱い
- 地位承継
- 包括承継
- 許認可の承継
- 株式相続
- 株式の贈与
- 自社株贈与
- 事業承継士
- 事業承継の専門家
- 事業承継コンサルティング
- 事業承継特別保証制度
- 事業承継に潜むリスクと対策
- 事業承継に伴う労務管理リスク
- 会社売却と事業承継の違い
M&Aスキーム
M&Aプロセス
企業価値評価
M&Aリスク
デューデリジェンス
M&Aファイナンス
M&A税務
M&A法務
用語・その他
- バスケット条項
- 当期純利益
- 資産除去債務
- XBRL
- 特別決議
- 譲渡承認取締役会
- 大量保有報告
- 適時開示
- 法務のポイント
- インサイダー取引
- チャイニーズ・ウォール
- 匿名組合
- キラー・ビー
- クラウン・ジュエル
- グリーン・メール
- ゴールデンパラシュート
- ジューイッシュ・デンティスト
- スタッガード・ボード
- スケールメリット
- ストラクチャー
- 利益相反
- 源泉徴収
- プロキシー・ファイト
- パールハーバー・ファイル
- Qレシオ
- MSCB
- IFRS
- 現物出資
- コントロールプレミアム
- ゴーイング・プライベート(Going Private)
- バックエンド・ピル
- パックマン・ディフェンス
- EV(事業価値)
- 売渡請求
- 株主価値
- レバレッジ効果
- 減損価格
- アーンアウト
- シャーク・リペラント
- スーイサイド・ピル
- ティン・パラシュート
- 低廉譲渡
- 監査法人
- 相対取引
- 範囲の経済
- アナジー効果
- 債券
- 純有利子負債(ネット デット)
- ホールディングス
- COC条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)
- ディスクロージャー
- 会社法
- ROA(総資産利益率)
- 国際租税条約
- 役員報酬
- SWOT分析
- アンゾフの成長マトリクス
- サクセッションプラン
- ドラッグアロング
- 累進課税
- 総合課税と分離課税の違い
- キャピタルゲイン
- インカムゲイン
- 資本と負債の区分
- 益金不算入
- タックスシールド
- 繰越欠損金
- スタンドアローン・イシュー
- ロックド・ボックス方式
- 特定承継
- プットオプション
- 埋没費用(サンクコスト)
- マイノリティ出資
- 株式等保有特定会社
M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由
創業以来、売り手・買い手双方のお客様から頂戴する手数料は同一で、
実際の株式の取引額をそのまま報酬基準とする「株価レーマン方式」を採用しております。
弊社の頂戴する成功報酬の報酬率(手数料率)は、
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」を誇っております。
-
明瞭かつ納得の手数料体系
創業以来変わらない着手金無料などの報酬体系で、お相手企業と基本合意に至るまで無料で支援致します。
- 関連ページ -
-
豊富なM&A成約実績
創業以来、国内No.1の調剤薬局業界のM&A成約実績の他、多種多様な業界・業種において多くの実績がございます。
- 関連ページ -
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はお気軽にご相談ください。

