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家族・親族間の株式譲渡の方法
家族・親族間で株式を譲渡する際、多くの経営者が悩むのは「相続」「贈与」「売買」のどの手段を選ぶべきかです。節税を優先すべきか、それとも手続きの簡便さを重視すべきか。このトレードオフの判断を誤ると、思わぬ税負担や親族間トラブルに発展する可能性があります。
本記事では、家族や親族に株式を譲渡したいけれど、「相続」「贈与」「売買」のどれが適切なのか判断に迷っている方に向け、「株式譲渡とは?株式譲渡とは?|詳細記事へ」の基本的な理解を踏まえたうえで、各手法の違いやケース別の選択肢について比較していきます。
家族・親族間の株式譲渡に伴う手続きの具体的な流れや、税務上の留意点を中心に知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
- 親族内承継における譲渡続きの流れや税務上の留意点について
- 家族へ株式譲渡を行うには?
~発生する税金や譲渡手続きの流れを解説~
このページのポイント
~家族や親族に株式を譲渡する方法は?~
株式譲渡には、贈与・売買・相続の3つの手段があり、選択により税負担や親族間の調整方法が大きく異なります。各手法の特性とリスクを理解し、目的に応じて適切な手段を選ぶことが重要です。
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~その他 M&Aについて~
株式譲渡の3手法を比較
指標 | 相続 | 贈与 | 売買 |
---|---|---|---|
節税メリット | △(基礎控除のみ) | ◎(事業承継税制など) | ○(節税設計次第) |
手続きの簡単さ | ○ | △(契約書+評価が必要) | ◎(実務に馴染む) |
親族間トラブルのリスク | ×(遺留分請求あり) | ○ | ◎(対価支払いで明快) |
後継者に必要な資金 | 不要 | 不要 | 必要(調達課題あり) |
税務調査リスク | 中 | 高(評価や意図が問われる) | 中(価格の妥当性) |
そもそも株式譲渡とは、売り手企業(譲渡側)のオーナーが保有する株式を、買い手の企業または個人(譲受側)に譲渡する取引手法のことです。売り手と買い手で株式譲渡契約を締結し、売り手によって買い手に株式が譲渡されたと同時に、会社の経営権は買い手に承継されます。
また、株式には「上場株式」と「非上場株式」の2種類があります。上場株式は、株式市場や証券取引所において自由に取引できる一方で、非上場株式は市場に出回っていないため、第三者が自由に取引することができません。
株式譲渡はM&Aの実施時によく採用される手法です。株式を第三者が自由に取引できない非上場企業の株式譲渡は、同族経営企業や決まった後継者に経営権を承継する際に用いられることがほとんどです。
ケース別にみる選択肢
※以下の例はあくまで一般的な観点から見た際の推奨です。
ケース1:現金を渡さずに譲渡したい
贈与(相続時精算課税+事業承継税制)がおすすめ。
贈与がおすすめの理由
節税効果が高く、後継者への負担も少ない。
この選択をした場合の注意点
贈与後7年以内に経営者が死亡した場合の相続税再課税の可能性に注意。
ケース2:親族間で揉めたくない
売買がおすすめ。
売買がおすすめの理由
適正価格で譲渡すれば、対価が発生することで他の相続人の納得を得やすい。
この選択をした場合の注意点
買い手側に資金が必要なため、融資などの準備が必要。
ケース3:急な承継に備えたい
相続+遺言+民事信託の組み合わせがおすすめ。
相続+遺言+民事信託がおすすめの理由
遺言で後継者指定+信託で株式管理者を設定すればスムーズ。
この選択をした場合の注意点
遺留分侵害請求に対して対策を講じる必要あり。
よくある失敗とその対策
- 贈与で株価評価が甘かった
- 評価差分に対して贈与税課税のリスク。第三者評価機関の利用を検討すべきだった。
- 実質無償に近い価格設定で売買をしてしまった
- 「みなし贈与」として追加課税の恐れがあるため、売買をする際は市場価値との整合性を保つことが重要。
- 暦年贈与を毎年同じタイミングで実施してしまった
- 毎年同じ時期に贈与すると、定期贈与と認定されるリスクがある。贈与契約書を毎年作成し、日付や金額をずらす等の工夫が必要。
まとめ
株式譲渡には「節税」「手続きの簡便さ」「親族間の納得」など、複数の要素が絡み合います。重要なのは、自社の状況と後継者の状態に応じて最適な手法を選ぶことです。
家族・親族に株式譲渡をする際の方法には、主に「相続」「贈与」「売買」の3つがあり、それぞれメリット・デメリットがあることも覚えておきましょう。また、譲渡方法によって手続きの進め方や注意点も異なるため、慎重に検討した上で最適な手段を選択することが大切です。
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よくある質問
- 家族への株式譲渡にはどのような方法がありますか?
- 家族や親族への株式譲渡には「相続」「贈与」「売買」の3つの方法があり、それぞれ税負担や手続きの難易度が異なります。
- 贈与による株式譲渡の注意点は何ですか?
- 贈与は節税メリットがありますが、評価額の妥当性が問われ、贈与後に相続が発生すると再課税のリスクがあります。
- 売買で株式譲渡をする際に気をつけるべきことは?
- 実勢価格に見合った売買をしないと「みなし贈与」とされ追加課税のリスクがあるため、第三者評価の取得が重要です。
- 相続で株式を譲渡する場合、なぜ遺留分の問題が起こるのですか?
- 相続では遺言による指定があっても、他の相続人が遺留分侵害を主張できるため、相続人間でのトラブルに発展する可能性があります。
- 株式の贈与と売買では税務調査のリスクに違いはありますか?
- 贈与は意図や評価が問われやすく、税務調査リスクが高めです。一方、売買は価格の妥当性を保てば比較的リスクが低くなります。