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株式分割とは、1つの株式を複数の株式に分割することをいいます。
1株あたりの株価が下がることで株式の流動性が高まり、株数も増えるため、企業と投資家の双方にメリットがあります。しかし、既存の株主が持っている株の安定性が低下するなどのデメリットがあり、会社法に則った事前の公告も必要です。
この記事では、株式分割の意味や実施目的、立場別のメリット・デメリットをわかりやすく解説します。株式分割を実施するとどうなるのかを正しく理解し、必要な手続きを行いましょう。
このページのポイント
~株式分割とは?~
1つの株式を複数の株式に分割すること。1株あたりの株価が下がることで株式の流動性が高まり、株数も増えるため、企業と投資家の双方にメリットがある一方で、既存の株主が持っている株の安定性が低下するなどのデメリットがあり、会社法に則った事前の公告も必要である。
目次
1. 株式分割とは?
株式分割とは、発行されている株式を複数に分割し、総数を増やすことをいいます。
1株を2分割すると株式の数は2倍になり、1株の価値は半分になります。計算方法としては、例えば現在3,000円の株価を2分割すると、理論上は半分の1,500円になるということです。
株主の持ち株数としては2倍になりますが、価値としては、もともと持っていた1株分の価値と同じということになります。株式分割の割合は、会社が自由に決めることができます。
2001年6月に実施された商法改正で、分割後の1株あたりの純資産の下限が撤廃されたことにより、大幅な株式分割が可能になりました。2023年に入ってからも、日本の多くの企業が株式分割を実施しています。
2. 株式分割の目的
株式分割は、なぜ実施されるのでしょうか。目的を具体的に見ていきましょう。
2-1. 株式の流動性の向上
株式分割を行うと1株あたりの価格が下がり、株数が増えることで流動性が向上します。
価格が下がることで投資がしやすくなり、出資への興味を持つ人が増えることが株式分割を行う理由の一つです。株式を購入する投資家が増えれば、その影響を受けて株価が上昇することも考えられます。
2-2. 上場市場を変更する準備
株式分割は、上場を目指す市場の基準を満たす狙いで行われることがあります。
東京証券取引所に設けられている市場区分は、プライム・スタンダード・グロースの3つです。最も上場が難しいのがプライム市場で、株主数800人以上、流通株式数20,000単位以上などの基準が設けられています。
株式分割によって株主数や流通株式数を増やすことで、目標達成に近付けることができます。
2-3. 配当・株主優待の方針の変更
株式を分割すると1株あたりの価格は下がりますが、1株あたりの配当を据え置いたままにすると、株主は増配と同じ効果を得ることができます。知名度が高い企業であれば、株式銘柄としての人気を高める要因にもなるため、株式分割をする理由の一つといえるでしょう。
3. 株式分割による株価への影響
株式分割によって、株価が上がる場合・下がる場合があります。
1株あたりの価格が下がると投資がしやすくなるため、購入する投資家が増える効果が期待できます。株式の数も増え、流動性が高まるでしょう。ただし、デイトレーダーなど短期で売買を繰り返す投資家の参入が増えた場合は、株価が乱高下する要因になります。
株式分割を発表した直後には投資家から注目され、一般的には株価が上がりやすくなるといわれています。しかし、市場の状況によっては必ずしも株価が上がるわけではない点に注意が必要です。
4. 株式分割のメリット・デメリット【企業側】
ここでは、企業側から見た株式分割のメリット・デメリットを解説します。
企業側のメリット | 企業側のデメリット |
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4-1. 株式分割のメリット
まずは、株式分割のメリットから見ていきましょう。
株価の安定
株式分割によって株式を購入する投資家が増えることは、株主の数が増えることを意味します。1人あたりの株主が保有している株式の数が多い場合、その株主が大量に株式を売却すると、株価への影響が大きくなりますが、株主の数が増えれば1人あたりの影響力が弱まり、株価の安定につながります。
配当の代替
株式分割を配当の代替とすることで、企業は増資を行うことなく株主に還元する利益を増やすことができます。
株式分割後、1株あたりの配当を据え置くと、株主が受け取る配当が増えることになります。例えば、株式を2分割した場合、もともと100株を保有していた株主は、分割によって200株を保有することになるでしょう。その際に、1株あたりの配当が据え置かれると、株主は200株分の配当を受け取れます。
信用性の向上
株式分割によって株式を多くの投資家に購入してもらうと、企業の信用性が向上する効果が期待できるでしょう。
株式分割後は注目が集まることで投資をする人が増え、一般的には株価が上がりやすくなるといわれています。株価の上昇によって時価総額が大きくなり、企業の信頼性が高まります。
4-2. 株式分割のデメリット
続いて、株式分割のデメリットも見ていきましょう。
信用度低下のリスク
株式分割によって株式の流動性が高まることはメリットですが、株価が大きく変動することは信用度の低下につながります。市場の状況によっては、株価が下がることもあるでしょう。
株主を管理する負担の増加
株式を購入する投資家が増えると、それに伴って株主の数も増えます。株主総会や配当に関する工数が増えるなど、株主の数が増える分だけ管理に手間がかかる点はデメリットになり得ます。
5. 株式分割のメリット・デメリット【投資家側】
株式分割を投資家側から見ると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。具体的に解説します。
投資家側のメリット | 投資家側のデメリット |
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5-1. 株式分割のメリット
まずは、株式分割のメリットから確認していきましょう。
株式の購入金額の低下
株式分割によって1株あたりの価格が下がり、投資家にとっては株式が購入しやすくなります。
例えば、1株あたり3,000円の株価が付いている株式を100株単位で購入するには、300万円が必要です。この株式を「1:3」で分割することになった場合、1株が3分割されて3株になるため、理論上は1株あたり1,000円となり、100株購入しても100万円で済みます。
売買自由度の上昇
株式分割によって保有株数が増えると、売買の自由度が高まります。
株式の売買単位は100株と決まっているため、株式を100株しか保有していない場合は、売却時に100株すべてを売らなければなりません。しかし、その株式が4分割されれば保有株数が400株となり、200株を売却して200株を持ち続けるといった選択が可能になります。
配当の増加
株式分割を行うと、配当金もそれに応じて低くなるのが一般的です。しかし、企業が株主に利益を還元する目的で1株あたりの配当金を据え置くことがあります。その場合には、株主がもらえる配当が増え、資産形成につながります。
5-2. 株式分割のデメリット
投資家側から見た株式分割のデメリットには、次のようなものがあります。
単元未満株の発生
株式分割の割合は企業が自由に決められるため、「1:1.1」のような割合で株式分割が行われることがあります。
保有していた100株が1:1.1で分割されると保有株式が110株になります。しかし、株式は100株単位で売買されることから、10株は単元未満株となりそのままでは売却できません。
株価の安定性の低下
株式分割によって株価が大きく変動すると安定性が低いとみなされ、長期で安定した投資を行いたい投資家にとってはデメリットとなります。株価の変動幅のことを「ボラティリティー」といい、投資家が投資先を選ぶ際の基準の一つになります。
6. 株式分割を実施する際の手続き手順
ここでは、株式分割を実施する際の手続き手順を紹介します。
6-1. 取締役会または株主総会での決議
株式分割は、会社法に則って次のように決議を行う必要があります。
- 取締役会設置会社の場合は取締役会の議決
- 取締役会非設置会社は株主総会の普通決議
決議では、株式分割の比率と基準日、効力発生日、分割する株式の種類が決定されます。
6-2. 株主への公告
株式分割をすると、設定された比率に応じて株主が保有する株数が増えることになり、分割した株式が割り当てられる日を「基準日」といいます。会社法に則って、株式分割の基準日の2週間前までに株主に対して公告しなければなりません。
6-3. 法務局への申請
最後に、法務局で登記手続きを行います。株式分割の登記手続きは、効力発生日から2週間以内に行う必要があるので注意しましょう。登記は、本社を管轄する法務局で行います。
7. 株式分割の具体例
株式分割は、実際にはどのような形で行われるのでしょうか。ここでは、企業の株式分割の具体例を紹介します。
7-1. ライブドア
インターネットサービスやブログのプラットフォームを提供していた株式会社ライブドアは、株式分割によって知られるようになった企業の一つです。
積極的に株式分割を行い、2003年12月には100分割を実施することで、10億を超える株式を発行しました。3年後には「ライブドア・ショック」によって大量の売り注文が発生し、市場が大混乱に陥ったことがニュースで大きく報じられました。
7-2. トヨタ自動車
自動車メーカー大手のトヨタ自動車は、2021年9月に30年ぶりとなる株式分割を実施しました。
トヨタ自動車の株式は2023年7月時点で、国内企業の時価総額ランキングでトップに位置していますが、株式を購入する場合は最低でも100万円が必要だったことから、購入できる投資家が限られていました。
株式分割の比率は1:5であったため、最低売買単位は100万円の5分の1(約20万円)に下がり、1年間で17万人以上の株主を増やすことに成功しています。
7-3. ガンホー
スマートフォンゲームを手掛けるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社は、パズル&ドラゴン(通常パズドラ)の爆発的ヒットで知られている企業です。
同社は2013年に大幅な株式分割を実施し、アプリ配信開始時点では17円だった株価を1,600円まで成長させました。しかし、その後は1株あたりの株価が徐々に下がっていったといいます。
東証一部が推奨する必要最低投資金額である「5万円以上50万円未満」と乖離が大きかったこともあり、その後、株式併合(複数の株式を1つに統合すること)を行うことを発表しています。
ガンホーのように、株価が大幅に下落した結果、株式併合を実施する企業も増えています。
8. まとめ
株式分割は、1株あたりの株価が下がることで流動性が高まり、投資家が買いやすくなるなどのメリットがあります。また、株式分割の直後は投資家から注目が集まることもあり、一般的には株価が上がるといわれていますが、必ず上がる保証はないため注意が必要です。
短期的に株価が大きく上下すると安定性に欠けると判断され、長期的に安定した投資を目指している投資家が離れていく懸念もあります。
メリットとデメリットを正しく理解したうえで実施を検討しましょう。
株式分割は、資金調達を行うことなく新株を発行できるため、敵対的買収(M&A)に対する防衛策として用いられることがあります。
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よくある質問
- 株式分割と会社分割の違いは?
- 株式分割とは、発行されている株式を分割し総数を増やすことをいいます。一方の会社分割は、会社が運営する事業のすべて、または一部をほかの企業に承継することです。
- 株式分割と増資の違いは?
- 増資は、新しく株式を発行して投資家から出資を受ける仕組みのことです。株式分割は、1つの株式を複数の株式に分け、資金調達を行わず株数を増やすことが可能です。
- 株式分割と株式無償割当てとの違いは?
- 株式無償割当てとは、既存の株主に対して新株を割り当てることです。株式分割の場合は、株数が増加するのみですが、株式無償割当ての場合は異なる種類の株式を割り当てることが可能です。
- 株式分割は非上場でもできる?
- 株式分割は、非上場企業でも可能ですが、上場企業とは決議のプロセスが異なります。上場企業の場合は、株主総会や取締役会で決議を取ります。非上場企業の場合は、オーナー経営者の意向や取締役会で決定される形です。