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企業同士が、お互いの強みを活かして協力し合う「アライアンス」は、昨今の市場でよく見られる経営手法の一つです。
双方の目的が合致し、協業がスムーズに進めば、期待以上の成果を得られる可能性があります。しかし、機密情報が漏えいするリスクがあることや、組織再編といった手間がかかるなど、デメリットもあることを理解しておく必要があるでしょう。
この記事では、ビジネスにおけるアライアンスの意味や種類、メリット・デメリットを解説します。アライアンスと混同されやすい「M&A」の定義もあわせて紹介します。
目次
1. アライアンスとは
まずは、アライアンスの定義や、M&Aとの違いを説明します。
1-1. アライアンスの概要
アライアンス(alliance)は、日本語で「同盟」「連携」などを意味する言葉で、2つ以上の独立した組織が特定の目的や利益の達成のために協力することを意味します。
ビジネスにおいては、資本提携や業務提携、技術提携など、いくつかのパターンのアライアンスが考えられます。アライアンスを実施する企業同士が、それぞれの強みを活かして価値を高めることを目的としています。
アライアンスは、市場での優位性や競争力の向上、新しい市場や業種への拡大などを目指す手段として用いられるのが一般的です。
1-2. アライアンスとM&Aとの違い
アライアンスと混同されがちな言葉に、M&Aがあります。
M&Aは、企業の合併や吸収を意味し、企業同士が協力するアライアンスとは意味が大きく異なるので注意が必要です。
それぞれの違いを表にまとめました。
アライアンス | M&A | |
---|---|---|
経営権の譲渡 | 経営権の譲渡は必要ない | 経営権の譲渡が必要 |
目的 | 連携企業全体の利益や企業成長 | 買い手と売り手それぞれの利益のため |
スキーム | (マイノリティ出資を前提とした)第三者割当増資や合弁企業設立など | 株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割など |
2. アライアンスの種類
アライアンスは、ビジネスで「協業」や「協同」という意味で用いられます。協業や協同にもさまざまな形があるため、ここで主要な方法を解説します。
2-1. 資本提携
資本提携とは、資金面で協力関係を築くことです。2社もしくは複数社で株式を持ち合うパターンか、どちらか一方が株式を取得するパターンがあります。
M&Aのように、対象企業の経営権あるいは拒否権を獲得することが目的である場合を除き、資本提携では株式持分の比率を3分の1未満にするのが一般的です。
2-2. 業務提携
業務提携とは、2社または複数社が経営リソースを提供し合い、商品開発や共同販売などで売上アップや市場シェアの拡大を狙うことです。
複数の企業が持つ技術やノウハウを合わせることで競争力が向上し、双方の企業にとってメリットが生まれます。
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2-3. 技術提携
技術提携とは、企業同士が技術やノウハウを提供し合い、さらなる研究開発などによって商品の実用化を目指すことです。
自社の新商品を開発する際に、他社が持つ特許技術を必要とする場合は「ライセンス契約」を締結することがありますが、「ライセンス契約」も技術提携の一種といえるでしょう。新しい技術や商品を協力して開発する「共同研究開発契約」も、技術提携に該当します。
2-4. 産学官の連携
民間企業、大学などの学術団体、自治体の連携を「産学官の連携」といいます。
教育機関や研究機関が培ってきた技術や知見を企業が活用し、実用化や産業化へとつなげる形です。特に、大学や自治体との連携はスケールアップや権威性の向上につながりやすく、企業にとって大きなメリットになります。
2-5. オープンイノベーション
オープンイノベーションとは、他企業や外部の研究機関などが持つ知見や財産を活用し、まったく新しい革新的な製品やサービスを生み出すことをいいます。
自社のリソースのみで革新的な製品やサービスを生み出そうとすると、世の中が変化するスピードに追い付けない可能性があります。外部が持つリソースを有効活用し、革新的な製品やサービスをいかに早く生み出すかという視点は、経営上、重要な意味を持つでしょう。
3. アライアンスのメリット
アライアンスによって、次のようなシナジー効果を得られます。
3-1. 企業としての競争力を高められる
自社には無い経営資源(技術・資金・人材など)を共有することで、効率的な経営が可能となり、企業としての競争力を高められる点がアライアンスの大きなメリットです。
アライアンスを行う企業同士が異なる得意分野を持っている場合は、それぞれの強みを活かして弱みを補完することも可能でしょう。製品やサービスの開発もスピーディに行えるため、市場で優位性を高めることにもつながります。
3-2. 時間・コストを削減できる
すでに市場へ参入している企業と連携できれば、その企業が持つ経営資源を有効活用できます。自社でイチから参入する場合に比べて時間を短縮でき、コストも削減可能です。
また、アライアンスは比較的、M&Aよりも手続きや事前準備の手間が少ないため、実施までの時間やコストを抑えやすい点もメリットといえるでしょう。
4. アライアンスのデメリット
アライアンスには、いくつかデメリットもあります。メリットとあわせて確認しておきましょう。
4-1. 効果が得られないこともある
アライアンスは、うまくシナジー効果が働けば大きな成果を上げることが望めますが、必ずしも期待したような効果が得られるとは限りません。
対象となる企業同士で目的やビジョンが一致していないと、アライアンス後に摩擦や対立が生じやすくなります。また、M&Aにおいては、デューデリジェンス(企業監査)と呼ばれる事前調査が必ず行われます。アライアンスではM&Aほどではないにしても、ある程度は事前調査を行い、実効性の有無や不調に終わるリスク、影響度を把握することが重要です。
4-2. 機密情報が流出するリスクがある
アライアンスでは、企業同士が自社の技術やノウハウを持ち寄るため、一定のレベルで自社の機密情報の開示が必要になります。
機密情報の開示にあたっては、秘密保持契約を締結するのが一般的ですが、それでも漏えいのリスクがゼロになるわけではありません。
開示した情報が第三者に流出するリスクが生じることは、アライアンスのデメリットといえます。
4-3. 運営・管理が複雑になる可能性がある
複数の組織が協力するアライアンスでは、単一の組織が動くよりも運営が複雑になり、管理コストが増大する可能性があります。
既存の業務フローを変更するなど準備に手間もかかるため、調整に一定の期間が必要になることは想定しておくべきといえるでしょう。
5. まとめ
アライアンスは既存事業の拡大や新市場の開拓に大きく貢献する可能性がありますが、進め方には注意が必要です。
お互いの利益を尊重し、契約内容を細かいところまでチェックするなど、トラブルを未然に防止するための取り組みが欠かせません。また、アライアンス後の実行責任についても明確化が求められます。
アライアンスのメリットとデメリットを考慮しつつ、M&Aを含めた可能性も探ってみてください。
M&Aキャピタルパートナーズは、M&Aの経験が豊富なアドバイザーが多数在籍しています。専門家だからこそサポートできることがありますので、ぜひお気軽にご相談ください。
アライアンスに関してよくある質問
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アライアンスパートナーとはどういう意味ですか?
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アライアンス(alliance)は、日本語で「同盟」「連携」などを意味する言葉で、2つ以上の独立した組織がパートナーとなり、特定の目的や利益の達成のために協力することを意味します。
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アライアンスでは、どのような契約を結ぶのですか?
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アライアンスでは、ライセンス契約や共同研究開発契約といった契約を締結するのが一般的です。お互いの利益を尊重し、契約内容を細かいところまでチェックしたうえで締結することが、トラブルの未然防止につながります。