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日本の税金制度の中に所得税があります。所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。所得はその性質によって次の10種類に分かれそれぞれの所得について、収入や必要経費の範囲あるいは所得の計算方法などが定められています。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
今回はこの所得の中にある譲渡所得の中の配当所得について詳しく説明します。
このページのポイント
~配当所得とは?~
配当所得とは、株式の配当金や投資信託の収益分配金などで得られる所得を指す。配当所得は原則として総合課税が採用されるが、一定の内容については例外もあるため、事前に配当所得の性質を確認するように注意が必要である。
目次
1. 配当所得の概要
1-1. 配当所得とは?
配当所得とは、株式の配当金や投資信託の収益分配金などで得られる所得をいいます。企業や投資信託によっては、投資した見返りとして定期的に稼いだ利益の一部を投資家に配ります。このときに配っている利益は配当金と呼ばれ、配当金として受け取った利益は配当所得と呼ばれます。その一方で、保有する株式の売却時に得られる利益は株式譲渡所得といいます。
また、配当所得の具体例としては、主に以下のような項目が挙げられます。
- 法人から受ける剰余金の配当(株式会社の剰余金の配当など)
- 法人から受ける利益の配当 (合同会社・合名会社・合資会社の利益の配当など)
- 投資法人から受ける金銭の分配
- 特定受益証券発行信託の収益の分配
2. 配当所得の課税方法
配当所得は原則として総合課税が採用されます。
しかし、一定の内容については「確定申告せずに源泉徴収のみで課税を完了させる方法」や「申告分離課税」を選択できる場合も存在するため、事前に配当所得の性質を確認するように注意が必要です。
3. 配当所得における申告不要制度と課税方式
配当所得を確定申告する場合、原則として以下の3つの課税方法があり、自由に選択できます。
3-1. 総合課税方式
配当所得を他の所得と合算したうえで税額を計算する方法です。この所得には配当所得以外にも給与所得・譲渡所得・事業所得などさまざまな種類が挙げられますが、総合課税方式を選択した場合は法人(あるいは個人)が年間で獲得した所得をすべて合算したうえで所得税・住民税を計算します。
3-2. 申告分離課税方式
配当所得を他の所得と分離したうえで個別に税額を計算する方法です。つまり、「配当所得は配当所得・譲渡所得は譲渡所得」のもとで、それぞれ個別的に所得税・住民税を計算します。なお、非上場株式の配当は申告分離課税方式を利用できないため、注意が必要です。
3-3. 申告不要制度
自身で確定申告を行わずとも自動的に課税(源泉徴収)される制度をいいます。
4. 配当所得の税率
配当所得の税率は、採用する確定申告方法ごとに異なります。「総合課税方式」、「申告分離課税方式」及び「申告不要制度」について、それぞれの税率を以下のとおりです。
4-1. 総合課税方式
- 所得税率→5.105~45.945%
- 住民税率→10%
総合課税方式の住民税率は、所得金額に関係なく一律で10%です。その一方で、所得税率には所得金額が多くなるほど税率が高くなる累進課税制度の累進税率が適用されます。
4-2. 申告分離課税方式
- 所得税率→15.315%
- 住民税率→5%
申告分離課税方式では、配当所得の金額に関係なく一律で上記の税率が適用されます。住民税率は総合所得よりも低いため、申告分離課税方式を選択すると有利になります。その一方で、所得税は、他の所得も考慮したうえで納税額を抑えられる方法を選択することが多いです。
4-3. 申告不要制度
- 所得税率→15.315%
- 住民税率→5%
申告不要制度では、申告分離課税方式と同様の税率が適用されます。
5. まとめ
株式等を保有したことにより配当所得を得た場合、所得税や住民税が課税されます。株式等から配当所得を得たら、納税を忘れずに行うことが必要です。しかし、配当所得の申告には選択肢の多さや計算方法、手続き面などで大きな手間・労力がかかります。また、経営者であれば、配当所得について理解し、必要に応じて税務の専門家である税理士に相談することが望まれます。