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企業が資金調達を行う際に、複数の金融機関から借入をすることはよくあります。
プロラタ方式は、複数の金融機関へ借入金を返済する際に用いられる手法の一つで、融資する側の金融機関と、融資される側の企業の双方にメリットがあります。ただし、注意点もあるため、仕組みをよく理解したうえで金融機関と交渉を進めることが大切です。
この記事では、プロラタ方式の種類やメリット、注意点をわかりやすく解説します。
このページのポイント
~プロラタ方式とは?~
プロラタ方式とは複数の金融機関から借入をしている企業が、借入額に比例する形で返済額を決定することを意味する。プロラタ方式では、すべての金融機関に対して一斉に返済が行われる。金融機関からすると返済を後回しにされることがなくなり、融資を行うハードルが下がるため、スムーズな資金調達や融資額の増加につながる可能性がある。
目次
1. プロラタ方式とは
プロラタ方式は、「比例して按分する」という意味の「pro rata」に由来した言葉です。複数の金融機関から借入をしている企業が、借入額に比例する形で返済額を決定することを意味します。
返済条件を変更することを「リスケジュール」といい、すべての金融機関に対して同時に返済を行っていくことで、不平等にならないようにすることが主な目的です。
2. 2種類のプロラタ方式と計算方法
プロラタ方式には、「残高プロラタ」と「信用プロラタ」の2種類があります。それぞれの違いを見ていきましょう。
2-1. 残高プロラタ
残高プロラタは、各金融機関からの借入残高をもとに返済額を決める方式のプロラタです。次の例のように、借入残高が多い金融機関の比率が最も高くなるため、返済の方法がイメージしやすいでしょう。プロラタを実行する場合は、一般的に残高プロラタが採用されます。
例)借入額が合計1,000万円、月々の返済額が20万円の場合
金融機関A | 金融機関B | 金融機関C | |
---|---|---|---|
借入額 |
500万円 |
300万円 |
200万円 |
借入残高に対する 比率 |
50% |
30% |
20% |
毎月の返済額 |
10万円 |
6万円 |
4万円 |
2-2. 信用プロラタ
信用プロラタは、各金融機関の借入残高のうち、無担保部分の返済を優先する方式のプロラタです。「無担保」とは、預金や不動産などの担保が提供されていないことで、債権回収の保証が無い状態を意味します。
例)借入額が合計1,000万円、月々の返済額が20万円の場合
金融機関A | 金融機関B | 金融機関C | |
---|---|---|---|
借入額 |
500万円 |
300万円 |
200万円 |
担保金額 |
200万円 |
担保なし |
担保なし |
無担保部分の 借入残高 |
300万円 |
300万円 |
200万円 |
無担保部分の 合計残高(800万円)に対する比率 |
37.5% |
37.5% |
25% |
毎月の返済額 |
7万5,000円 |
7万5,000円 |
5万円 |
担保が無い状態の借入は、担保の設定がある借入に比べて「信用度」が低くなるため、信用プロラタでは無担保部分を優先的に返済します。そのため、担保の設定がある融資を行っている金融機関は、残高プロラタのほうが有利になります。
一方で、担保の設定が無い融資を行っている金融機関にとっては、信用プロラタのほうが有利です。
3. プロラタ方式のメリット
プロラタ方式のメリットは、金融機関からの融資が受けやすくなることです。
プロラタ方式では、すべての金融機関に対して一斉に返済が行われます。金融機関の立場になると、返済を後回しにされることがなくなり、融資を行うハードルが下がります。結果的に、スムーズな資金調達や融資額の増加につながる可能性があるでしょう。
普段、取引を行っていない金融機関から信用を得やすくなるのもメリットです。
4. プロラタ方式のポイント・注意点
プロラタ方式による返済を実行するためには、各金融機関の協力が不可欠です。交渉がスムーズに進むよう、ポイントをしっかりと押さえておきましょう。
4-1. 不平等な返済に注意する
プロラタ方式の注意点として、不平等な返済条件にならないようにすることがあげられます。
返済割合が不平等な設定になっていると、金融機関の間でトラブルになる可能性があります。また、不平等感が残る条件では、そもそもプロラタ方式による返済を金融機関に受け入れてもらえないでしょう。公平性を保つには、税理士や会社の経理担当への相談・交渉が欠かせません。
また、残高プロラタ方式・信用プロラタ方式のどちらを選択しても、それ以降、すべての金融機関が足並みを揃える必要が出てくる点にも注意が必要です。例えば、追加融資が必要になった場合に、一部の金融機関が反対すると実現が難しくなります。
4-2. 全行一致で返済を開始する
プロラタ方式では「全行一致」が原則となり、すべての金融機関に対して同時に返済を終える必要があります。
弁護士やM&A仲介会社など専門家にアドバイスを受けながら、全行一致での返済を目指しましょう。足並みが揃わないと、不公平が生まれてしまいます。
5. プロラタ方式での返済を交渉する手順や流れ
プロラタ方式による返済を交渉する手順は、次のとおりです。借入先の金融機関と交渉を実施する際は、専門家に依頼したほうが有利に進められます。
- 税理士や公認会計士などに各金融機関の借入残高の確認を依頼
- 弁護士などの専門家同席のうえで、借入先の金融機関へプロラタ方式での返済を打診
- 各金融機関と相談しながら返済計画を調整
- すべての金融機関に対して一斉に返済を開始
まずは、現時点で各金融機関にどれだけの借入残高があるのかを確認します。税理士や公認会計士などの専門家に確認を依頼すると良いでしょう。
借入残高が確認できたら、専門家同席のもと、金融機関へプロラタ方式での返済に同意してもらうよう交渉を行います。その際、一度に複数の金融機関と協議することで公平性を保つことができます。
また、交渉時に専門家の同席を求めることには、経営者にとって次のようなメリットがあります。
- 交渉力が高まる
- 精神的な余裕が生まれる
- 本業に専念できる
金融機関にとっても、客観的な立場での意見を聞けることはメリットになるでしょう。
交渉が成立したら、各金融機関と個別に返済計画を調整し、全行一致での返済になるよう計画通りに返済を進めます。
6. まとめ
プロラタ方式には、「残高プロラタ」と「信用プロラタ」の2種類があり、一般的には残高プロラタ方式が採用されます。
プロラタは、すべての金融機関に対して一斉に返済を終える「全行一致」が原則となるため、不平等な条件にならないよう慎重に進めるのがポイントです。各金融機関に対して同時に交渉を行うと、公平性が保てます。
また、交渉の際は、弁護士など専門家の力を借りるとスムーズでしょう。
よくある質問
- プロラタ方式の按分とは何ですか?
- プロラタ方式とは、企業が複数の金融機関から借入をしている場合に、借入金額に応じた返済額を比例的に算出して返済することを意味します。「比例して按分する」という意味の「pro rata」が由来です。
- パリパスとプロラタの違いは何ですか?
- パリパスとは、ローン契約の返済順位に優先劣後がなく、同順位であることを定めた条項です。ラテン語の「Pari(同等の)」、「Passu(歩調)」が由来で、「足並みを揃えて」という意味になります。一方のプロラタは、借入金額に応じた返済額を比例的に算出して返済することを意味します。
- プロラタ方式での返済を交渉する際は、どのような専門家を頼るべきですか?
- 弁護士などに同席を依頼すると良いでしょう。専門家の同席によって、交渉が有利に進められる可能性が高まります。