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会社の「解散」は、会社が事業を廃止することを意味する法的な用語です。
解散には3つの種類があり、会社が自主的に事業を廃止する場合もあれば、破産や法的な理由から解散に至ることもあります。また、解散の要件は会社法で定められているため、要件を満たしていない場合、自由に会社を解散させることはできません。
この記事では、「会社の解散とは?」といった基礎知識から、解散の要件や清算までの手続きの流れといった具体的な進め方、費用、注意点などをわかりやすく解説します。会社の解散について理解を深めるために、本記事をお役立てください。
このページのポイント
~会社の解散とは?~
法的に会社を消滅させることで、具体的には法人格の消滅を意味する。解散は株主総会で決議され、債権者保護手続きや債務整理、清算結了登記といった清算手続きが行われる。会社解散の種類は主に3つで、「任意解散」「強制解散」「みなし解散」となる。
目次
1. 会社の解散とは?
会社の解散とは、法的に会社を消滅させることで、具体的には法人格の消滅を意味します。解散は株主総会で決議され、債権者保護手続きや債務整理、清算結了登記といった清算手続きが行われます。
会社が解散すると、融資を行っている銀行や取引先に影響を与えることがあるでしょう。法的に利害関係者を守ることを目的として、清算手続きの実施が定められています。
解散と似た言葉に「休眠」がありますが、解散は会社自体が消滅することを意味する一方、休眠は、事業活動をストップするという違いがあります。休眠の場合、会社自体は存続するため、活動を再開しようと思えば再開できる点が特徴です。
1-1. 会社解散の種類は主に3つ
会社の解散には、3つの主要な種類があります。
- 任意解散
- 強制解散
- みなし解散
「任意解散」とは、企業が自主的に解散することです。任意解散の代表的な例として、あらかじめ決まっていた会社の存続期間が満了した場合や、株主総会で解散決議が通ったことによる解散があげられます。
それに対して、自主的かどうかを問わず、破産や法的な理由から解散に至ることを「強制解散」といいます。強制解散は、裁判所から解散を命じられた場合や、破産手続きが開始された場合に行われます。
また、登記手続きがなされないまま長期間放置されている休眠会社を、強制的に清算することも解散の一つです。このことを、休眠会社の「みなし解散」といいます。
事業活動を停止している状態の会社であっても、取締役の任期が過ぎた場合は役員変更登記を行う必要があります。最後の登記から12年以上経過すると、事業を廃止していない旨を届け出るよう登記所から通知されますが、それでも届出がない場合は、みなし解散の手続きが行われます。
1-2. 会社解散後の「清算」とは?
会社解散後の「清算」とは、会社の解散後、会社が所有する資産や負債を処分する法的な手続きのことです。
会社の事業活動が停止しても、法律上、会社は残った状態になります。清算をすべて完了すると、会社は法的に消滅します。
清算には、契約解除・債権回収・財産処分・債務弁済・残余財産の分配が含まれます。また、「通常清算」と「特別清算」があり、債務状況に応じて選択可能です。特別清算や破産手続きは債務超過時に行われ、裁判所の監督下で進められます。
2. 会社を解散させるメリット
解散によって会社が消滅することについて、一般的にはネガティブなイメージがあるかもしれません。しかし、次のように、会社を解散させることによるメリットもいくつかあります。
2-1. 税金負担の軽減
事業活動を行っているかどうかに関わらず、会社には法人税を支払う義務があります。
業務を行っている実態がなく、収益も発生していない会社は、休眠させておくことがデメリットになります。税金負担を軽減するという意味で、会社を解散させることはメリットといえるでしょう。
会社の解散には、専門家に手続きを依頼するための費用などがかかりますが、中長期的には、休眠状態の会社の法人税を払い続けるよりも、コストを抑えられる可能性があります。
2-2. 役員登記が不要
会社が事業活動を行っておらず休眠状態だとしても、役員の任期が終了する際には役員重任登記が必要です。手続きを怠ると100万円以下の罰金が科される可能性があるので注意しましょう。
会社の解散には法的な手続きが必要ですが、罰金を支払うリスクを回避し、将来的な負担を減らすメリットがあります。
2-3. 決算申告の手間から解放
株式会社は、存続している限り、決算報告書の作成が法律で義務付けられています。また、法人税の申告も行わなければなりません。
事業を行っていない会社であっても法人住民税の均等割がかかり、所得がなかったとしても、決算申告を行う必要があります。
会社を解散させると、このような納税や申告は不要になります。
3. 会社の解散に必要となる7つの要件
会社の解散は、経営者の意志で自由に行えるわけではありません。会社法によって、解散の要件が次のように定められています。
- 定款で定めた存続期間の満了
- 定款で定めた解散事由の発生
- 株主総会の決議
- 合併による当該株式会社の消滅
- 破産手続き開始の決定
- 解散を命ずる裁判
また、12年以上登記がなされていない休眠会社に対する「みなし解散」も、要件の一つです。
ここでは、会社の解散に必要となる7つの要件について順番に解説します。
3-1. 定款で定めた存続期間の満了
定款とは、会社の活動目的や資本金、構成員など、会社の基本事項や規則を記したものです。
定款で存続期間が定められている場合、その期限が到来すると会社解散の手続きが始まります。ただし、存続期間があらかじめ定められている会社はほとんどないため、非常に珍しいケースだといえます。
3-2. 定款で定めた解散事由の発生
会社の解散事由は、定款で自由に設定できます。
解散事由としては、次のような内容が一般的です。
- 特定のプロジェクトが完了した場合
- 従業員が一定以下の人数になった場合
- 経営者の年齢が一定以上に達した場合
定められた解散事由が発生すると、会社は解散となります。
3-3. 株主総会の決議
株主総会の決議によって、会社を解散させるケースもあります。
具体的には、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、3分の2以上の賛成を得る「特別決議」によって会社の解散が可能です。特別決議は普通決議よりも条件が厳しくなりますが、この方法による解散は、一般的に行われています。
3-4. 合併による当該株式会社の消滅
合併とは、複数の会社が一つになることを意味し、「新設合併」と「吸収合併」の2種類があります。
新設合併では、新たな法人を立ち上げ、合併する会社がすべて消滅します。一方、吸収合併の場合は、吸収される会社のすべての権利を存続会社が引き継ぎ、吸収される会社は消滅することになります。
新設合併は手続きが煩雑になるため、合併の手法としてよく用いられるのは吸収合併です。
3-5. 破産手続き開始の決定
会社の負債が増え、維持が難しくなる場合には破産申し立てを行います。
破産申し立てが裁判所に受理されると、裁判所によって選任された「破産管財人」が解散手続きを行うことになります。破産管財人は、地域の弁護士が務めるのが通常です。
3-6. 解散を命ずる裁判
不当な目的で設立された会社や、公益に反する行動を取る会社に対して、解散を命じるための制度を「解散命令」といいます。法務大臣または利害関係人の請求に基づいて、裁判所が解散を命じます。
会社が業務の執行において深刻な問題に直面し、回復の難しい損害が発生した場合など、一定の事由が認められる場合に行われるものです。
3-7. 休眠会社のみなし解散
最後の登記から12年以上経過して活動を停止している株式会社を、「休眠会社」と呼びます。
休眠会社は法務局から通知を受けることになり、期限までに必要な登記申請を行うか、まだ事業を廃止していない旨を届け出なければなりません。期限内に届出がない場合、会社は解散したものとみなされ、清算手続きが行われます。
4. 会社の解散・清算の流れと手続き
会社の解散には、さまざまな手続きが必要です。ここでは、会社の解散・清算の流れと手続きについて解説します。いつまでに解散についての手続きを終える必要があるのかも、確認しておきましょう。
4-1. 株主総会による解散決議
会社の解散には、株主総会での特別決議が必要です。解散のような、経営に大きな影響を与える事項については、普通決議よりも条件が厳しい特別決議によって行われます。また、特別決議では、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、3分の2以上の賛成を得る必要があります。
4-2. 解散と清算人就任の登記
株主総会の決議によって会社が解散したら、2週間以内に解散の登記を行い、清算人と代表清算人を登記します。清算は法的な手続きであり、債権者保護や法的届出が必要です。
4-3. 各種機関へ解散の届出を提出
登記の完了後、「異動届出書」と「登記事項証明書」を作成し、税務署・都道府県税事務所・市区町村役場・社会保険事務所・ハローワーク・労働基準監督署などの公的機関に届出を行います。
4-4. 財産目録・貸借対照表の作成と承認
清算人は就任後、会社の財産を調査した上で財産目録と貸借対照表を作成し、株主総会の承認を受けます。財産目録と貸借対照表は、解散後の手続きを円滑に進めるうえで欠かせません。
4-5. 債権者保護手続き(官報公告・個別催告)
清算人は債権者を保護するため、解散のように会社の状況が大きく変わる場合は、債権者が異議を申し出ることが可能な期間を設けなければなりません。このことを、「債権者保護手続き」といいます。
清算人は、官報公告(国が発行する機関紙)と個別の催告を通じて会社が解散する事実を伝え、債権者保護手続きを行います。
4-6. 確定申告書の提出
清算手続きの対象となる「清算会社」は、解散日から2ヶ月以内に解散確定申告書を税務署に提出する必要があります。確定申告の期間は、事業年度開始日から解散日までとなり、手続きの流れは基本的に通常の確定申告と変わりません。
4-7. 資産の現金化・債務弁済・残余財産の確定等
清算人は、売掛金や未収入金の回収、資産の売却による現金化を行い、債権者に債務を弁済します。債務の支払いを終えて会社に残った「残余財産」は、株式持分に応じて株主に分配します。
4-8. 清算確定申告書の提出
会社の清算後、残余財産が確定したら、税務署に「清算確定申告書」を提出します。提出は、残余財産確定の翌日から1ヶ月以内に行わなければなりません。清算中は事業年度ごとに確定申告書を提出することになり、清算手続きで所得が生じた場合は納税の義務があります。
4-9. 決算報告書の作成
清算事務終了後、清算人によって決算報告書が作成されたら、株主総会で承認を受ける必要があります。具体的には、残余財産から株主への分配金額を算出し、承認を得ると会社の法人格が消滅することになります。
4-10. 清算結了の登記
最後に、法務局で清算結了の登記手続きを行い、同時に税務署や地方自治体の関連機関にも届出を済ませます。登記は、株主総会での承認後、2週間以内に行わなければなりません。
5. 会社の解散・清算にかかる期間
会社の解散から清算結了までは、少なくとも2ヶ月以上を要し、この期間のことを「清算期間」と呼びます。
会社が解散することが決まったら、その旨を官報公告で公示する必要がありますが、法律によって公告掲載から2ヶ月間は清算結了が実施できないと決められています。そのため、解散には、少なくとも2ヶ月以上かかることになります。
清算手続きに必要な期間は会社によって大きく異なり、事業規模が大きく、取引先や財産が多い会社ほど長くかかる傾向にあります。会社の財産が売却しきれないと清算結了はできず、不動産の売却が難航すると長期化しやすいので注意しましょう。
6. 会社の解散・清算にかかる費用
会社の解散・清算にかかる費用には、次のようなものがあります。
費用の内訳 | 金額の目安 |
---|---|
登録免許税 |
解散と清算人選任の登記費用:39,000円 |
官報公告費用 |
約32,000円 |
専門家への |
・司法書士への登記手続きの依頼費用:7万円~12万円程度 |
その他諸費用 |
・登記事項証明書の取得費用など:数千円 |
解散を行うと、登録免許税や官報公告費用のほか、登記事項証明書の取得費用や株主総会を開催するための費用も発生します。専門家への依頼費用は、会社の規模によって大きく変動します。
7. 会社を解散・清算する前に知りたい注意点
会社の解散・清算をする際には、どのようなことに注意すべきなのか、以下を確認しましょう。
7-1. 早めの準備が必須
会社を解散するための手続きには時間がかかります。また、法務局で解散登記や清算結了登記の申請を行う際は、間違いのないように書類を作成する必要があります。
書類に不備があると関係各官庁で受理されず、修正して再度持参しなければなりません。
このような理由から、解散には早めの準備が必要です。余裕を持ってスケジュールを決めましょう。
7-2. 手続き内容が複雑
会社の解散と清算手続きは、専門家に依頼せずに自力で行うことも可能ですが、知識がない場合は必要書類を把握するだけでも時間がかかり、書類の誤りが受理を妨げることもあるでしょう。
また、会社を解散・清算する過程で登記申請が2回必要になり、作成した書類に不備があると受理されません。
清算手続きを確実に進めるためには、専門家への相談も選択肢の一つといえます。
8. 会社の解散・清算手続きにおすすめの相談先
会社の解散・清算手続きは複雑であることから、専門家のサポートを受けて進めると良いでしょう。ここでは、会社の解散・清算手続きにおすすめの相談先について解説します。
8-1. 税理士
会社に顧問税理士がいる場合は、解散手続きを依頼できます。顧問税理士は経営状況に詳しく、確定申告書や財務報告書を作成するうえで、適切なサポートが期待できるでしょう。
顧問税理士に解散手続きを依頼する場合、登記手続きは司法書士に別途依頼する必要がありますが、司法書士が税理士と連携している場合は、登記手続きも任せることが可能です。
8-2. 司法書士
債務超過でない会社が解散する場合は、司法書士に依頼すると良いでしょう。司法書士は登記申請の専門家で、手続きをスムーズに進めてくれます。
株主総会議事録や公告手続きも代行可能で、定款を紛失している場合は、司法書士に定款の復元や再作成を依頼できるというメリットがあります。
8-3. 弁護士
債務超過時には、特別清算や破産手続きが行われます。この場合は、裁判所の監督下で進められるため、法的な手続きや債権者との交渉は弁護士に依頼するのが賢明です。
弁護士の協力を得ることで適切なプロセスを確保でき、債権者との対話も円滑に進められるでしょう。
9. まとめ
会社の「解散」は、会社の法人格が消滅することを意味します。また、解散には、任意解散・強制解散・みなし解散の3種類があり、解散の要件は会社法によって定められていることも覚えておく必要があります。
経営者が会社の解散を考える理由として、経営状況の悪化や後継者が見つからないなどの状況がありますが、解散以外の方法も検討してみてはいかがでしょうか。M&Aなどの選択肢によって、活路を見出すことが可能になるかもしれません。
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よくある質問
- 会社の解散と廃業の違いは?
- 会社の解散とは、法的に会社を消滅させることです。一方、廃業とは経営者が自ら会社の経営を辞めることを意味します。会社を解散させるための要件は、会社法によって定められています。
- 会社の解散後、従業員はどうなる?
- 会社の解散が決まると、その法人格は従業員を雇用する基盤を失うため、清算手続きに先立って解雇が行われます。ただし、会社を清算すれば従業員を自由に解雇できるわけではなく、客観的に道理的かつ、社会通念上相当であると認められる場合のみに解雇が可能になります。
- 会社の解散後に残ったお金はどうなる?
- 会社の解散後に残ったお金を「残余財産」といい、残余財産をすべて分配しない限り、会社は清算できません。残余財産は、株数に応じて株主に分配されます。