組織再編とは? 定義や目的、各手法についてわかりやすく解説

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企業を取り巻く経営環境の変化が激しい現代において、M&Aの実施による事業拡大や、グループ経営体制を見直すといった情報が話題にあがることが増えています。本記事では、組織再編の手法や、各手法のメリット・デメリットなどについて解説を進めていきます。

このページのポイント

~組織再編とは?~

組織再編とは、合併や株式交換などを行うことにより、企業の組織や体制を見直すことをいう。組織再編とM&Aの違いとしては、会社法で定義されている合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付のことを指し、いわゆる狭義のM&Aのことだが、一般的に言われる「M&A」は、組織再編に加え、資本参加や合弁会社の設立等も含まれた広い意味で使われることが多い。

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1. 組織再編とは?

組織再編とは、合併や株式交換などを行うことにより、企業の組織や体制を見直すことをいいます。まずは、会社法における組織再編の定義や、組織再編の目的について見ていきましょう。

1-1. 会社法における組織再編の定義【図解】

組織再編 イメージ画像
※2024年5月30日(木)画像訂正更新

会社法の第743条において、組織再編における以下の定めがあります。
「会社は、組織変更をすることができる。この場合においては、組織変更計画を作成しなければならない」
なお、組織変更計画においては、組織再編後の会社形態、商号、本店の所在地、代表者の氏名などを記載することとされています。また、組織再編の具体的な手法としては、以下の5つが会社法において定められています。

  • 合併
  • 会社分割
  • 株式交換
  • 株式移転
  • 株式交付

1-2. 組織再編の目的

会社の規模が大きく変わることも多い組織再編は、経営において非常に重要な意思決定です。組織再編には多額なコストや労力がかかることも珍しくありませんが、それでもなぜ、組織再編を行うのでしょうか。ここでは、組織再編の目的について見ていきましょう。

事業の拡大・縮小による競争力の強化

組織再編における一つの目的は、事業の拡大・縮小による競争力の強化です。事業を拡大するにあたって自社のリソースに限りがある場合、他社の事業を取得することにより、追加的なリソース(主にヒト・モノ)の投入が可能となり、事業のさらなる成長が見込めます。また、既存事業と取得した事業のシナジー効果を生み出すことにより、加速的な事業の成長が期待できるといった狙いもあります。
一方、事業の縮小により、競争力の強化を図るケースもあります。例えば、不採算事業がある場合に他社へ譲渡することによって、自社における注力事業にリソースを集中することが可能となります。

グループ企業の体制変更による管理の効率化

組織再編によるグループ企業の体制変更により、グループ経営管理を効率化する効果も期待できます。具体的には、グループ内における同一事業の集約化、グループ全体としての経営体制・ガバナンスの強化、グループとしての資金調達の実施および資本構成の最適化といった観点での改善効果です。
また、効率的なグループ経営を行うために、持株会社(ホールディングス)としてグループ全体の経営管理・ガバナンスを担う会社を作ることも有用です。さらに、間接部門を統合することによってシェアードサービス化することや、グループ全体としてのKPI(重要業績評価指標)を設定するなどの施策により、さらなるグループ経営の効率化を図る選択肢もあります。

1-3. 組織再編とM&Aの違い

組織再編と同じような言葉として、「M&A」という用語を耳にすることも多いでしょう。これらは概ね同義で使われることもありますが、厳密な意味は異なります。

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上図のとおり、「組織再編」は、会社法で定義されている合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付のことを指します(狭義のM&A)。
一方「M&A」は、組織再編よりも広い意味で使われることが多く、具体的には、資本参加や合弁会社の設立等も含みます。

2. 組織再編の手法と種類ごとのメリット

前述のとおり、会社法で定められている組織再編の手法は、合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付の5つです。それぞれのメリット・デメリットについて見ていきましょう。

2-1. 合併のメリット・デメリット

合併は、2つ以上の企業が合体することにより、一つの企業となる組織再編の手法です。被取得会社が消滅し、取得会社だけが存続する「吸収合併」と、被取得会社と取得会社のいずれも消滅し、合併後の新たな法人を設立する「新設合併」の2つに分類されます。

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吸収合併

吸収合併 イメージ画像
吸収合併のメリット
  • 事業の拡大による競争力の強化
  • グループの体制変更による経営管理の効率化
  • 存続会社の許認可や免許の引継ができる
  • 新設合併よりも手続きが容易である
  • 合併の対価として株式を利用することが可能(資金調達が不要になる)
吸収合併のデメリット
  • 企業文化が異なる場合、社内ルールの統一に時間がかかる
  • 業務プロセス、取引先情報など、双方の企業で重複がある場合には整理が必要となる
  • 消滅会社の従業員のモチベーション維持が難しい
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新設合併

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新設合併のメリット
  • 事業の拡大による競争力の強化
  • グループの体制変更による経営管理の効率化
  • 新会社の株式を対価として合併するため、資金調達が不要
  • 対等合併のイメージが与えられるため、PMI(M&A成立後の統合プロセス)が円滑に進みやすい
新設合併のデメリット
  • 企業文化が異なる場合、社内ルールの統一に時間がかかる
  • 業務プロセス、取引先情報など、双方の企業で重複がある場合には整理が必要となる
  • 消滅会社の許認可や免許の引継ができない
  • 新会社の設立手続きが必要となるため、吸収合併よりも手続きが煩雑となる
  • 新会社の設立にあたりコストがかかる
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2-2. 株式交換のメリット・デメリット

株式交換 イメージ画像 株式交換 イメージ画像
株式交換のメリット
  • 事業の拡大による競争力の強化
  • グループの体制変更による経営管理の効率化
  • 株式交換の対価として株式を利用することが可能(資金調達が不要になる)
  • 被取得会社の法人格が維持されるため、子会社の独立性が担保される
  • 完全親子会社関係となるため、少数株主から独立した経営が可能
株式交換のデメリット
  • 株主総会の特別決議が必要など、手続きが煩雑となる可能性がある
  • 親会社の発行済み株式数が増加するため、株主の持分比率が下がる(希薄化)
  • 完全親子会社関係を前提とするため、部分的な買収ができない
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2-3. 株式移転のメリット・デメリット

株式移転 イメージ画像
株式移転のメリット
  • 事業の拡大による競争力の強化
  • グループの体制変更による経営管理の効率化
  • 新設会社を持株会社とすることで、ホールディングス化への移行も可能
  • 新設会社における新株発行による買収のため、新たな資金調達がいらない
  • 被取得企業の法人格が維持されるため、子会社の独立性が担保される
  • 完全親子会社関係となるため、少数株主から独立した経営が可能
株式移転のデメリット
  • 株主総会の特別決議が必要など、手続きが煩雑となる可能性がある
  • 買い手企業の株価に影響を与える可能性がある
  • 新会社の設立にあたりコストがかかる
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2-4. 会社分割のメリット・デメリット

会社分割は、会社の事業のすべてまたは一部を、他の会社へ承継する組織再編の手法です。既存の会社に事業を承継させる「吸収分割」と、新たに設立する会社に事業を承継させる「新設分割」の2つに分類されます。

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吸収分割

吸収分割のメリット
  • 事業の拡大による競争力の強化(承継会社)
  • 包括的に事業承継できるため、事業譲渡などに比べると手続きがシンプル
  • 分割の対価として株式を利用することが可能(資金調達が不要)
  • 分割会社は不採算事業の切り離しができる
  • 承継会社は事業の取得によるシナジー効果を見込める
吸収分割のデメリット
  • 株主総会の特別決議が必要など、手続きが煩雑となる可能性がある
  • 対価として株式を利用する場合、承継会社側の株主構成が変わる可能性がある(希薄化)
  • 業務プロセス、取引先情報など、双方の企業で重複がある場合には整理が必要となる

新設分割

新設分割のメリット
  • グループの体制変更による経営管理の効率化
  • 包括的に事業承継できるため、事業譲渡などに比べると手続きがシンプル
  • 分割の対価として新設会社の株式を利用することが可能(資金調達が不要になる)
新設分割のデメリット
  • 新会社の設立にあたりコストがかかる
  • 組織構造が複雑化しやすい
  • 新設会社が非上場会社の場合、株式の現金化が難しくなる

2-5. 株式交付のメリット・デメリット

株式交付のメリット
  • 株式交換と異なり、完全子会社化する必要が無い
  • 株式交付の対価として株式を利用することが可能(資金調達が不要)
  • 株式交付の対価として株式を利用する場合に税制優遇が利用可能
株式交付のデメリット
  • 株式会社以外の組織(合同会社など)や外国法人の場合、子会社化することができない
  • 税制優遇を受けるためには、対価の8割以上を株式とする必要がある
  • 令和3年の税制改正で施行された新しい制度のため、情報が少ない
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3. 組織再編の事例

ここからは具体的な事例を見ながら、組織再編に対する理解を深めていきましょう。
3つの事例について、その目的や手法を紹介します。

3-1. メガネスーパー・ビジョナリーホールディングス(株式移転)

まず紹介するのは、単独の株式移転により純粋持株会社体制へ移行(ホールディングス化)した、メガネスーパーとビジョナリーホールディングスの事例です。

組織再編の目的

ビジョナリーホールディングスは、純粋持株会社へ移行するために、メガネスーパーによって新設された会社です。ビジョナリーホールディングスを純粋持株会社とする、グループ体制を構築することにより、グループ全体としての経営管理の効率化や、迅速な意思決定を行えるようにすることを目的としています。

組織再編の手法

株式移転により、ビジョナリーホールディングスがメガネスーパーの株式を取得することで、ビジョナリーホールディングスが親会社、メガネスーパーが子会社という資本関係となりました。また、元々メガネスーパーの子会社であったグループ会社についても、ビジョナリーホールディングスの傘下に入ることが決まり、ビジョナリーホールディングスを純粋持株会社とする新たなグループ経営体制となりました。

3-2. ソフトバンク・U-NEXT(吸収分割)

次に紹介するのは、ソフトバンクが「アニメ専門コンテンツ配信サービス」を、U-NEXTへ吸収分割により事業譲渡した事例です。

組織再編の目的

譲渡企業であるソフトバンクは、他の事業への経営資源の集中・効率化を目的として、「アニメ専門コンテンツ配信サービス」の譲渡を決定しました。一方、譲受企業であるU-NEXTは、既存の動画配信サービスとの統合により、事業拡大および顧客への提供価値の拡大を目的として吸収分割を決定しました。

組織再編の手法

ソフトバンクが保有していた「アニメ専門コンテンツ配信サービス」を事業として切り離し、U-NEXTに譲渡する形となっており、会社法上の吸収分割による組織再編の手法がとられました。

3-3. LINE・Zホールディングス(複数の手法)

最後に、LINEとZホールディングスによる組織再編の事例を紹介します。本事例は、複数の手法を組み合わせることによって実現した組織再編です。

組織再編の目的

ヤフーを傘下に持つZホールディングスと、LINEを経営統合することによって、各事業間のシナジー効果の実現、柔軟かつ機動的な経営の意思決定、最適な経営資源の配分が可能な体制を実現することを目的としています。

組織再編の手法

LINEとZホールディングスの経営統合は、以下の複数の手法によるスキームにて実現しました。

  1. LINE株式等の共同公開買付
  2. 上記スクイーズアウト手続き
  3. Zホールディングス株式公開買付
  4. LINEによる社債の発行
  5. 汐留ZホールディングスとLINEの合併
  6. JV化取引(ソフトバンクおよびNAVERらのLINEの議決権割合を50:50とする調整取引)
  7. 会社分割(LINEによる全事業のLINE承継会社への分割)
  8. 株式交換(ZホールディングスとLINE承継会社の株式交換)

4. 組織再編の注意点

組織再編を行う場合には、各種コストの増大や、社内風土の変化といった注意点があります。具体的な内容について見ていきましょう。

4-1. 組織再編のコスト増大

組織再編を行うためには専門的な知見が必要となるため、コンサルティング費用等の外部専門家への支払が発生することが多いです。また、新設合併、新設分割、株式移転など、組織再編によって新たに会社を設立する場合には、登録免許税などの会社設立のためのコストが発生します。さらに、業務プロセス、取引先情報など、組織再編の対象企業間で重複がある場合には整理が必要となり、これらの統合コストの発生も見込まれます。
これらのコストを抑えるためには、複数のサービスを提供してくれる専門家等を利用することが考えられます。できる限り一元化して業務を依頼することで、コスト削減が可能か検討すると良いでしょう。

4-2. 一時的な人件費のコスト増大

組織再編を行う際は、業務プロセスの統合によって無駄を排除することにより、さらなる効率的な経営体制を目指すことが一般的です。そのため、組織再編により従業員の重複が発生する場合には、リストラクチャリング(リストラ)が必要になる可能性があります。
配置転換等によって既存の従業員を活かしながら、新体制を構築することも可能ですが、仮にリストラを行う場合には、退職者に対して再就職支援や退職割増金の支給といった措置を検討する必要があります。そのため、組織再編を行う際には、事前に組織再編後の人員計画や人件費予算などを検討しておくと良いでしょう。

4-3. 社内風土や制度統合時のストレス

組織再編を行うことにより、社内風土や各種制度(人事制度等)が大きく変化する可能性があります。特に吸収合併のようなケースでは、消滅会社の伝統が失われる可能性があり、従業員のモチベーションが低下するリスクが想定されます。優秀な従業員の退職は企業にとって大きな損失となるため、PMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合プロセス)を丁寧に進めることが重要です。専門家の意見も聞きながら、慎重にPMIの計画を策定すると良いでしょう。

5. まとめ

企業を巡る経営環境が激しく変化する現代において、組織再編によって企業の組織や体制を見直すことは、事業の拡大やグループ経営体制の強化を進めるために非常に有効な施策です。
ただし、組織再編の実行には専門性が伴うだけでなく、社内風土の統合といった難易度の高い課題をクリアする必要が出てきます。そのため、組織再編をご検討の際には、M&Aの専門家へご相談のうえ、慎重に実施されることを推奨します。


よくある質問

  • 組織改編と組織再編の違いは?
  • 組織改編とは、新たな部署を設立する、部署間の統合を行うといった既存の企業内の組織変更のことをいいます。いずれも、組織体制を変更するといった点では共通ですが、組織改編は社内における組織変更を指すのに対し、組織再編は会社法上の法人格の変更を伴うような変更を指すことが多いです。
  • 事業再編と組織再編の違いは?
  • 事業再編と組織再編は概ね、同義で使用されることが多いです。ただし、組織再編は会社法において定義された用語であるのに対して、事業再編は会社法において定義された用語ではない、といった点が異なります。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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