事業承継ガイドラインとは? 策定の背景・目的からガイドラインの内容まで解説

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日本の全企業数の99.7%を占める中小企業において、経営者の高齢化や後継者不在などの課題が深刻化しています。中小企業庁では、このような状況を踏まえたうえで円滑な事業承継を推進するために「事業承継ガイドライン」を策定しています。
この記事では、事業承継ガイドラインの概要や策定の背景、2022年に実施された改訂の内容を解説します。事業承継ガイドラインを踏まえたM&Aのポイントも紹介していますので、参考資料にご活用ください。

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1. 事業承継ガイドラインとは

事業承継ガイドラインとは、中小企業や小規模事業者の経営者を対象として策定された、円滑な事業承継を実現するためのガイドラインのことです
多くの中小企業において課題となっている後継者不在問題や、それに伴う事業承継を円滑に進めるために、中小企業庁が2006年に策定しました。その後、2016年、2022年と2度にわたり改訂が行われています。

1-1. 事業承継ガイドライン策定の背景・目的

現在の日本において、中小企業は全企業数の99.7%を占め、社会において重要な役目を担っています。一方で多くの中小企業では、経営者の高齢化や後継者不在といった課題を抱えています。このような状況下で中小企業が将来にわたって活力を維持するためには、円滑な事業承継を行い事業を活性化させることが不可欠です
また、経営環境の変化により事業承継の形態が多様化しており、従来行われてきた親族内承継に限らず、従業員承継やM&A(第三者承継)が増加傾向にあります。
このような事業承継における状況を背景に、中小企業や小規模事業者の経営者に事業承継の課題を周知し、活用してもらうために本ガイドラインは策定されました。

1-2. 事業承継ガイドラインの改訂

事業承継ガイドラインは2006年に「事業承継ガイドライン ー中小企業の円滑な事業承継のための手引きー」として、策定されました。その10年後となる2016年、中小企業を取り巻く社会の変化を踏まえて改訂が行われました。
2022年には、前回の改訂以降の事業承継に関する変化や課題への対応策を反映させた改訂が行われ、現在は第3版が公開されています。
今回の主な改訂ポイントは、次の3点です。

  • 掲載データや施策情報の更新
  • 増加傾向にある従業員承継やM&Aの説明の拡充
  • 後継者目線での説明の追加

中小企業を取り巻く環境の変化に伴い、掲載情報が更新されました。また、近年増えつつある従業員承継やM&Aなどへの説明、経営者目線だけでなく後継者目線に立った説明も追加されています

1-3. 中小M&Aガイドラインとの違い

中小M&Aガイドラインは、2015年に中小企業庁が策定した「事業引継ぎガイドライン」を改訂したガイドラインです。後継者不在を課題とする中小企業・小規模事業者へ向けたM&Aの基本事項や、支援機関へ向けた行動指針が掲載されています。
事業承継ガイドラインはM&Aを包含する指針であるのに対して、中小M&AガイドラインはM&Aに絞り込んだ指針である点で違いがあります。

2. 事業承継ガイドラインの概要

事業承継ガイドラインの概要は次のとおりです。

  1. 事業承継の重要性
  2. 事業承継に向けた準備の進め方
  3. 事業承継の類型ごとの課題と対応策
  4. 事業承継の円滑化に資する手法
  5. 個人事業主の事業承継
  6. 中小企業の事業承継をサポートする仕組み

2-1. 事業承継の重要性

事業承継度ラインの冒頭部となる第一章では、中小企業を取り巻く現状と事業承継の基本事項を交えて、事業承継の重要性を解説しています。
中小企業は国内全企業数の99.7%を占め、地域経済や社会を支える役割を担っています。ただ、多くの中小企業では経営者の高齢化が進んでいるのが現状です。事業を将来にわたり引き継ぐためにも、早期に後継者を決定するなど円滑な事業承継の実施が求められます
そこで、紹介されているのが早期取り組みの重要性です。企業の更なる発展の機会としての事業承継も事例を交えて解説しています。また、親族内承継や従業員承継、M&Aなど、主な事業承継の類型における特徴や留意点も紹介されています。

2-2. 事業承継に向けた準備の進め方

第二章では、事業承継に向けた5つのステップの手順を解説しています。具体的には、次のステップに沿って進めていきます。

  1. 事業承継に向けた順位の必要性への理解
  2. 経営状況・課題の可視化
  3. 事業承継へ向けての経営改善
  4. 事業承継計画の立案・策定(親族内承継・従業員承継)
  5. 事業承継およびM&Aの実行

事業承継を円滑に行うためには、経営者や役員をはじめとする関係者に、その必要性を理解してもらうのが肝要です。続いて、経営状況を可視化し、どのように経営改善を図れば良いのかを検討します。
さらに、後継者が親族や従業員である場合、社外の第三者である場合(M&A)に分けた手続きの進め方が詳細に説明されています。第二章に目を通すことで、事業承継の流れを把握できるでしょう。また、将来へ向けた事業承継への期待と廃業を選択する場合のサポートにも触れられています。

2-3. 事業承継の類型ごとの課題と対応策

第三章には、親族内承継、従業員承継、M&Aの各手法における課題と対応策、留意点が記載されています。
親族内承継の課題は、後継者の選定・育成であり、将来を見越した計画が求められる点です。また、承継に伴い生じる税金も高額となるため、相続時精算課税贈与や暦歴課税贈与といった基本的な対応策も紹介されています。
従業員承継では、後継者となる従業員の意識改革や関係者へ理解を促す必要があること、承継後の資金調達が容易でない点が課題です。これらの対策として、候補者との対話や周囲の関係者の理解、資金調達法が記載されています。
M&Aにおける課題は、早期判断の重要性や秘密保持、承継後における経営統合の難しさが挙げられます。M&Aによる事業承継を選択する場合は、自社に最適な手法を選択し、支援機関への相談を有効活用するのが大切です。

2-4. 事業承継の円滑化に資する手法

第四章では、事業承継を円滑化するための手法として、種類株式、信託、生命保険、持株会社の4つが挙げられています。
種類株式とは、定款によって種類ごとに異なる内容を定めた株式のことです。議決権行使についても異なる内容を定められるため、株式譲渡による事業承継において、議決権の分散リスクを軽減する目的で活用可能です。
事業承継においては遺言代用信託が活用されます。先代経営者が亡くなった場合の株式の承継をあらかじめ定めておくもので、遺言に代替する手法として利用されています。また、死亡保険金には一定の非課税枠があるので、資産の承継に活用すれば相続税の税負担軽減が期待できるでしょう。
さらに、近年増えているのが持株会社を利用する事業承継です。後継者が持株会社を設立して金融機関から融資を獲得し、その資金を用いて現在の経営者より株式を買い取る手法です。
事業承継を円滑に進めるためには、これらの各手法を複合的に活用するのも効果的でしょう。

2-5. 個人事業主の事業承継

第五章では、個人事業主の事業承継について触れられています。個人事業主の事業承継における主な課題は、会社とほぼ同様であり、人(経営)の承継と資産の承継です。ただし、事業における意思決定、および資産の所有を個人事業主本人が行うことから、知的資産の承継が重要となります
例えば、事業前に取得していた許認可を事業承継後に再度取得し直したり、取引先との契約を引き継いだりしなければなりません。円滑に手続きを進めるためには、支援機関のアドバイスを受けながら入念に準備を進めることが大切です。

2-6.  中小企業の事業承継をサポートする仕組み

第六章では、中小企業の事業支援をサポートする仕組みが紹介されています。
中小企業の経営者には、金融機関や商工会議所・経営指導員、税理士や弁護士など身近な支援機関が整っています。経営者自ら積極的に支援機関に申し出ることで事業承継の伴走支援を受けられるでしょう。
支援機関が実施する事業承継診断も有効です。事業承継診断では、金融機関や商工会議所の担当者が経営者との対話を通じて事業承継の準備のきっかけを提供します。診断結果に応じて次の相談窓口を紹介するなど、経営者が行動する導線を整えておくのが肝要です。
また、全国47の都道府県に設置される事業承継・引き継ぎ支援センターでは、中小企業と買い手企業とのマッチングを展開しています。このような公的支援制度も積極的に活用すると良いでしょう。

3. 事業承継ガイドラインを踏まえたM&Aのポイント

事業承継ガイドラインには133頁以降に「事業承継診断シート」「事業承継自己診断チェックシート」が用意されています。設問に対して「はい」もしくは「いいえ」で回答することで事業承継の必要性が可視化できるでしょう。
セルフチェックを経たうえで疑問や相談ごとがあれば、125頁以降に掲載されている支援機関をご活用ください。なお、事業承継の手段としてM&Aを検討する場合は、M&Aに詳しい知見を有するM&Aの仲介会社やM&Aアドバイザーに相談するのがおすすめです。専門家の力を借りることで、自社の状況に応じた買い手候補が見つかりやすくなり、事業承継を成功に導けるでしょう。

4. まとめ

事業承継ガイドラインは、中小企業や小規模事業者の経営者向けに、円滑な事業承継を実現するためのガイドラインです。
本ガイドラインには、最新データや事例を交えて、事業承継の重要性や準備の仕方、最適な手法などの情報が掲載されています。
経営者の高齢化や後継者不在など、中小企業の存続が危ぶまれる昨今ですが、M&Aによる事業承継を活用すれば、現在の事業を第三者に承継して活性化させることも期待できます。
M&A仲介業界における実績が豊富で、多くの経営者様からのご相談をお受けしてきたM&Aキャピタルパートナーズでは、事業承継を専門的な知見からサポート可能です。事業承継をお考えの経営者様はぜひ一度ご相談ください。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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