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日本の税金制度の中に所得税があります。所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。所得はその性質によって次の10種類に分かれそれぞれの所得について、収入や必要経費の範囲あるいは所得の計算方法などが定められています。

- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
今回はこの所得の中にある譲渡所得の中の株式譲渡所得について詳しく説明します。
このページのポイント
~株式譲渡所得とは?~
株式譲渡所得とは、株式を譲渡することによって得られた所得をいい、譲渡所得税が課税される。譲渡所得税は、株式の譲渡価額から「株式の取得価額・取得にかかった費用」と「株式譲渡にかかった費用」を差し引いて算出される利益に対して課税され、所得税(法人が実施した場合は法人税)・住民税・復興特別所得税などにより構成される税金である。
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1. 株式譲渡所得の概要
1-1. 株式譲渡所得とは?
株式譲渡所得とは、株式を譲渡することによって得られた所得をいいます。
個人株主の場合は、定率(所得税15%+住民税5%)の分離課税となるため、配当所得等と比べて有利になる場合が多いと認識されています。
2. M&Aにおける株式譲渡
株式譲渡は中小企業のM&A(Mergers and Acquisitions、合併・買収)においても広く活用されている手法です。
譲受側が譲渡側の株式を買い取って、譲渡側の経営権を取得する取引をさします。株式譲渡を行うと、譲渡側では譲渡所得を得られるため、アーリーリタイアや別事業への投資などを目的に、株式譲渡を検討する経営者も多く存在しています。
特に上記の目的で株式譲渡を行う場合、課される税金の知識を知る必要があります。株式譲渡を行った人へ課せられる税金の概要を説明します。
3. M&Aにおける株式譲渡時の税金
M&A目的で株式譲渡を行う場合、課される税金については、以下のとおりです。
3-1. 譲渡所得税
株主が株式譲渡によって譲渡益を手に入れた場合、これに対して譲渡所得税と呼ばれる税金が課されます。譲渡益とは、株式の譲渡価額から「株式の取得価額・取得にかかった費用」と「株式譲渡にかかった費用」を差し引いて算出される利益です。
譲渡所得税は、所得税(法人が実施した場合は法人税)・住民税・復興特別所得税などにより構成される税金です。
3-2. 譲渡所得税の計算方法
次に株式譲渡にかかる譲渡所得税の計算方法についてです。以下の計算式を活用して、株式譲渡における譲渡所得の金額を求めます。

「譲渡所得=総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+M&A仲介手数料など)」
総収入金額とは、実際に株式の譲渡対価として手に入れた金額のことです。株式譲渡の当事者双方が協議したうえで決定されます。必要経費とは、譲渡を行う株式を取得した際に発生していた「取得費」およびM&A仲介会社などに支払う「委託手数料」などの総称をいいます。
株式譲渡にかかる税金は、譲渡所得の金額をもとに求めます。譲渡所得にかかる税金は譲渡所得に対して20.315%が課されるため、以下の計算式で求めることが可能です。
「譲渡所得税=譲渡所得✕20.315%」
4. M&Aにおける株式譲渡時の税金と取得価額の関係
株式の取得価額は、税金を納める際に必要となります。
株式の取得価額とは、株式を取得したときに支払った払込代金や購入代金、購入手数料、消費税、名義書換料など、株式取得の際に使った費用全てを指します。売却した際の譲渡所得額は、売却額から取得価額と売却手数料などを差し引いたうえで求めます。
取得価額以外に、時価というものがあります。上場株式は、市場の取引価格が時価です。非上場株式は、所得税法で定められている方法で時価が決まります。
また、1日のうちに売買を繰り返した場合、保有価格と買い戻し価格の平均で取得価額か決まります。売却額と平均額の差額分が課税となるので留意が必要です。
5. まとめ
株式譲渡は中小企業のM&A(Mergers and Acquisitions、合併・買収)においても広く活用されている手法です。この株式譲渡で発生する株式譲渡所得の知識を身につけておくことが重要です。また、経営者であれば、株式譲渡所得について理解し、必要に応じて税務の専門家である税理士に相談することが望まれます。