個人事業におけるM&Aとは? 個人のM&Aが増えている背景やメリットとは

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M&Aというと通常、大企業による大規模な取引が思い浮かびます。しかしながら実際は、個人事業主もM&Aの売り手、もしくは買い手となることが可能です。個人事業主が行うM&Aは、一般的に小規模な取引となるため「スモールM&A」と呼ばれています。
本記事では、個人事業によるM&Aの流れやメリットなどについて解説します。具体的な事例も紹介しますので、起業を検討中の方や個人事業のM&Aについて理解を深めたい方は、最後までご参照ください。

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1. 個人事業のM&Aとは

個人事業のM&Aとは、個人事業主が自身の事業を他の個人や企業に譲渡すること、または他の個人事業を買収することです。通常、100万円から1,000万円程度の小規模取引となることから「スモールM&A」と称されます。
スモールビジネスでは利害関係者が少ないこともあり、大規模なM&Aと比べると、事業承継がスムーズに行われやすい点が特徴です。なお、個人が行う、より小規模なM&Aは「マイクロM&A」と呼ばれています。

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2. 個人事業のM&Aが増えている背景

個人事業のM&Aが増加している背景には、後継者問題の深刻化と、インターネット・マッチングサイトの充実があります。

2-1. 後継者問題の深刻化

近年では価値観の多様化により、親族内への事業承継ができないケースが増えています。また社内への事業承継も難しいため、これらの問題を解決する方法の一つとして、M&Aが利用されています。M&Aを活用することで、事業の継続が可能となり、事業の価値を維持できます。

2-2. インターネット・マッチングサイトの充実

インターネットやマッチングサイトの充実により、M&Aが実施しやすい環境整備がなされています。買い手と売り手が集まり、譲渡先探しの手法として一般的です。
これらのサイトを利用することで、個人事業主は自身の事業を適切な価格で譲渡することが可能となり、新たな事業を探すことも容易です。

3. 個人事業のM&Aの流れ

個人事業のM&Aは、大企業の場合とは異なり、流れや手続きが特殊です。主な手順は、以下のとおりです。

  1. 仲介会社を選定する
  2. 候補企業を選ぶ
  3. 買い手側と売り手側の面談を実施する
  4. 基本合意書の締結
  5. デューデリジェンスの実施
  6. 最終合意

いずれも欠かせない工程ですので、詳細を順番に確認しましょう。

3-1. 仲介会社を選定する

個人事業M&Aは、専門性や過去の経験などの知見が必要となる場面が多いです。そのため、個人事業M&Aを得意とするアドバイザーが在籍する仲介会社の選定が、成功のための重要なポイントです。適切な仲介会社を選定することで、M&Aのプロセスがスムーズに進行し、成功につながります。

3-2. 候補企業を選ぶ

仲介会社から、譲渡候補の企業を紹介してもらいましょう。ノンネームシートの情報から、自社の譲渡先として適した企業を選びます。具体的な交渉に進む場合には、この段階でも相手との間でNDA(機密保持契約)を締結します。

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3-3. 買い手側と売り手側の面談を実施する

面談は、M&Aの具体的な条件交渉の場ではありません。双方のビジョンや価値観などを確認し、M&Aの相手として適しているかを判断する場です。
事業承継のケースでは、売り手側は「事業に対する思い」を伝えることが重要です。ビジネスの価値観が合わない場合は、承継先として望ましくないケースもあります。

3-4. 基本合意書の締結

双方の合意が得られた場合「基本合意書」を締結します。最終合意ではありませんが、従業員の取扱いやM&Aの基本的な内容、今後のスケジュールなどについて書面で同意します。基本合意書は基本的にノンバインディング(法的拘束力を有さない)となっています。

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3-5. デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスと呼ばれる企業調査を実施します。財務の観点だけでなく、法務・人事・税務といった、さまざまな角度から売り手企業が調査され、M&Aにおけるリスクを洗い出します。
スモールM&Aの場合には、買い手が自ら実施するケースもありますが、専門的な知見が必要なため、弁護士や公認会計士といった外部の専門家を利用するのが安全です。

3-6. 最終合意

M&Aに関する「最終契約書」を締結します。デューデリジェンスの結果に基づき決定された譲渡価格など、M&Aにまつわる条件が記載され、法的拘束力を有します。のちにトラブルとならないよう、弁護士などを交えて締結することが望ましいでしょう。
これでM&Aのプロセスは完了です。一連の流れを理解し、適切な準備と対応を行うことで、個人事業のM&Aは成功につながります。

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4. 個人事業でM&Aを利用するメリット

個人事業でM&Aを利用することには、「売却側」と「購入側」それぞれに大きなメリットがあります。ここからは、具体的な内容について解説しますので、理解を深めていきましょう。

4-1. 売却側のメリット

個人事業主が自身の事業をM&Aで売却すると、以下のようなメリットがあります。

後継者問題の解決策となる

株式会社帝国データバンクが、2018年11月に公表した「全国「後継者不在企業」動向調査(2018年)」によると、従業員数5人以下の企業においては、約75%の企業が後継者不在に直面しています。
親族や従業員への承継が難しくなっているなか、M&Aによって第三者へ事業を譲渡することで、廃業せず事業継続ができる点がメリットです。引継ぎ候補の範囲を広げることによって、自社の価値観を理解してくれる買い手と出会える可能性が高まります。

創業者利益が獲得できる

事業を売却することにより、創業者利益の獲得が可能です。事業の将来性によって、譲渡価格は変動しますが、多額の資金が得られる場合には、引退後の生活資金としての活用が期待できます。また、譲渡対価を元手に、新たなビジネスをスタートさせることも可能です。

個人保証の解消が期待できる

M&Aで事業を譲渡すると共に、経営者の抱える個人保証も解消することが一般的です。債務に対して経営者が抱える、責任からの解放が期待できる点もメリットとなるでしょう。

4-2. 購入側のメリット

個人事業主が他の事業をM&Aで購入することには、以下のようなメリットがあります。

低リスクで事業をスタートできる

新たに事業を立ち上げる場合には、事業が途中で頓挫してしまうリスクがあります。また、新たな事業を起こすとかなりの時間を要するだけでなく、多額の人件費が生じる可能性もあります。
M&Aによる買収では、既に基盤ができあがっている事業を取得できるため、新規事業を立ち上げるのと比較すると低リスクで事業を立ち上げることが可能です。

既存事業とのシナジー効果を生み出せる

既にビジネスを展開している個人事業主が、M&Aにより他の事業を取得する場合、シナジー効果の創出が期待できます。単純に規模が大きくなることによるスケールメリットで、調達や生産などにかかる、さまざまなコストの削減も可能になります。

5. 個人事業でもM&Aができる小規模ビジネス

個人経営の店舗や、小さなスペースでも事業展開できる業種であれば、個人事業主でもM&Aが可能です。ただし、ゼロから始める場合には、多くの初期投資が必要です。
顧客獲得に苦労する業種も、既に基盤ができあがっている事業をM&Aによって獲得することで、円滑に事業をはじめられるでしょう。
なかでも、以下に挙げる業種は、個人事業M&Aで人気があります。

  • 飲食店
  • 学習塾などの各種スクール
  • エステサロン
  • フィットネスジム

これらの業種は、個人でも事業展開が可能であり、既存の基盤を活用してスムーズに事業をスタートできます。また民泊施設は、近年の新型コロナウイルス感染症の影響で売りに出される数が多く、それを狙ってM&Aをしかけるケースもあります。

6. 個人事業でもM&Aの事例

個人事業主でもM&Aは可能であり、その成功例は多岐にわたります。
ここでは、カフェ・学習塾・脱毛サロン・フィットネスジムといった、さまざまな業種でM&Aを活用し、新たなビジネスチャンスをつかんだ事例を紹介します。

6-1. 飲食店

大阪市の株式会社グローバルトレーディングが、老朽化したカフェをリノベーションし、射撃を楽しめるミリタリーカフェに変身させた事例があります。
同社は、サバイバルゲームグッズやミリタリーグッズの輸入販売を行っていました。飲食店の運営は未経験でしたが、娯楽施設との位置付けで「ミリタリースタイルのカフェ&バー」を開始しました
2023年3月に「SFBC Bar&Café」をオープンし、本業とのシナジー効果を高めるだけでなく、より多くのミリタリーファンを獲得することを目指しています。

6-2. 学習塾などの各種スクール

学習塾のM&Aを通じてキャリアアップを果たした事例があります。この事例では、教員の仕事をしていた方が学習塾オーナーへと転身し、個別指導塾を購入しました。立地や塾のコンセプト、30名を超える生徒数などに魅力を感じ、契約に至りました。
オーナーの方は、教育関係のキャリアを積み重ねていましたが、家族が増えたことを機に自身の働き方を見直し、学習塾のM&Aを検討し始めます。これは、教員として働くなかで見えた、課題解決を目指すための一歩でした。

6-3. エステサロン

福岡県在住で製薬メーカーに勤務するMさんが、社会課題の解決に貢献したいという志から、M&Aを活用して副業ビジネスを始めた事例があります。
Mさんは、博多の中心部にある脱毛サロンを購入しました。売上帳簿が無いなど不安要素はありましたが、既に運営している事業をそのまま引き継ぐことができるメリットがありました。「やりたいことをやって後悔しないようにしよう」と買収を決意し、現在は従業員と共に、店の改善に打ち込んでいます。

6-4. フィットネスジム

大阪に本社を置く株式会社グロウイングが、和歌山県にある女性専用フィットネスジムのM&Aに成功した事例があります。
同社はこれまでに6件ほどのM&Aを実施しており、今回の案件は譲渡金額190万円で、現地見学に足を運んだ日に即決しました。赤字が理由で売却に出された事業でしたが、ジムで働くスタッフが非常に優秀だったことから、購入を決意できたといいます。
地方企業や中小・零細企業においては、優秀な人材の確保が難しいため、従業員にポテンシャルを感じて勝算を見出した事例です。

7. まとめ

近年、個人事業のM&Aは人気を集めています。売り手にとっては、後継者問題の解決策になりえる一方、買い手にとっては、低リスクで新規事業を始められるなどのメリットがあります。小規模なM&Aとはいえ、一度に動く金額は大きく、手続きには専門的な知識が必要です。
そのため、個人事業のM&Aを成功させるには、マッチングサイトの活用を検討することが重要といえるでしょう。これらのポイントを押さえ、適切な準備と対応を行うことで、個人事業のM&Aは成功につながります。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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