割引現在価値とは? 計算方法や重要性、活用するメリットをわかりやすく解説

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M&Aでは、買収対象の企業や事業の価値をできる限り高い精度で評価し、適切な投資判断を行う必要があります。買収対象企業への投資が的確か否かを評価するために利用される重要な指標が、割引現在価値です。
この記事では、割引現在価値の基本的な意味や計算方法、メリット・デメリットなどについて詳しく解説します。

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1. 割引現在価値とは?


割引現在価値 イメージ画像
割引現在価値とは、将来得られる価値を現在の価値に換算した場合、どの程度の価値になるかを求めるための指標です。この考え方のベースには、「価値は時間の経過によって変化する」という考え方があります。将来的な価値に対するリスクと不確実性を反映することによって現在の価値を見積もるのが、割引現在価値です。

1-1. 現在価値

現在価値とは、将来受け取ると見込める資産の価値やキャッシュフローの総和を、現在の価値に換算した数値のことです。割引現在価値と、ほぼ同義として使われます。
例えば、年利10%で運用し、1年後に10,000円になっているお金の現在価値は約9,091円です(計算式については、のちほど説明します)。

1-2. 将来価値

将来価値とは、現時点で持っている資産の将来的な価値のことです。現在価値と対になる概念であり、先ほどの例でみると、現在価値で約9,091円を年利10%で運用した結果、1年後の将来価値は10,000円になる、という考え方になります。
将来価値は金利(割引率といいます)によって変わり、固定金利なら1年後に受け取る金額は決まっていますが、変動金利の場合は変化する可能性があります。

2. M&Aにおいて割引現在価値が持つ重要性

M&Aの主な目的は、企業の買収や売却によって新たな利益、あるいはキャッシュフローを生み出すことです。そのため、将来における企業価値の評価が重要になります。将来の企業価値を見積もり、現在の適正な買収価格を求めるために用いられるのが、割引現在価値です
買収対象企業の価値を見積もる場合、単純に資産と負債を時価ベースで引き直し、時価ベースの資産と負債の差から純資産を株式価値とする方法や、上場企業であれば、時価総額と純有利子負債を現在の企業価値とする方法があります。
しかし、これらの方法では、企業が中長期にわたって将来稼得する利益やキャッシュフローは考慮されていません(上場企業の場合は、半年から1年程度先を予測し株価が形成されており、短中期的な将来の業績についてはある程度織り込まれていることが多いです)。
M&Aでは、企業を買収し事業を拡大させることで利益やキャッシュフローを創出することが目的のため、将来的な利益も考える必要があります。
買収対象企業の将来的に見込める価値を割引現在価値に換算し、現在の価値とすることで、買収価格をより合理的に見積もることができます。

3. 割引現在価値の割引率

割引率とは、割引現在価値の算出にあたって、将来受け取る価値を現在価値に計算し直すときに用いる割合のことです。将来受け取る金額を現在価値に割り引く際に、割り引かれた金額を、1年あたりの割合で表したものになります。現在価値は、割引率の数値によって大きさが変動します。

4. 割引現在価値の計算方法と例を紹介

割引現在価値の公式や計算方法、例を紹介します。

4-1. 計算式

割引現在価値は、下記の計算式で求めることができます。

  • <(n年後の資産の価値(将来価値))÷(1+割引率)ⁿ>

計算式の中の変数は、「割引率」と時間経過の「n年後」ですが、後述のとおり、将来価値を見積もる予測計画の蓋然性がある程度担保されていることが前提です。割引率は、将来のリスクが高いほど大きい値に設定します。割引率が大きくなればなるほど、計算式の分母が大きくなり、その分の割引現在価値が下がります。
資産の割引現在価値について、1年後と2年後の場合はそれぞれ、以下のように求めます。

  • 1年後の資産の割引現在価値 →(1年後の資産の価値)÷(1+割引率)
  • 2年後の資産の割引現在価値 →(2年後の資産の価値)÷(1+割引率)²

4-2. 計算の例

実際に、例をもとに割引現在価値を計算してみましょう。下記の4つの例では、割引率と時間(経過年数)を変えています。

  • 例1:1年後の100万円の割引現在価値(割引率5%)
  • 1,000,000円 ÷ (1+0.05)= 約952,381円
  • 例2:1年後の100万円の割引現在価値(割引率10%)
  • 1,000,000円 ÷ (1+0.1)= 約909,091円
  • 例3:5年後の100万円の割引現在価値(割引率5%)
  • 1,000,000円 ÷ (1+0.05)⁵ = 約783,526円
  • 例4:5年後の100万円の割引現在価値(割引率10%)
  • 1,000,000円 ÷ (1+0.1)⁵ = 約620,921円

4-3. 割引現在価値を計算できるサイト

割引現在価値は自分で計算できますが、下記のような計算サイトを利用すれば、簡単に算出できます。

5. 割引現在価値を活用するメリット

M&Aを実行するにあたり、割引現在価値を算出して合理的に投資を行うことで、以下のようなメリットがあります。

5-1. 買収対象企業の将来価値を現在価値に換算できる

割引現在価値を使用することで、買収対象企業の将来のキャッシュフローの総和や資産価値を現在の価値に換算できます。より精度の高い正確な企業価値評価が行えることで、投資に対する合理的かつ適切な意思決定に役立ちます。

5-2. 企業内の個別の案件ごとに価値を計算できる

企業内の個別の事業やプロジェクトごとのリスクを割引率に反映できる点もメリットです。リスクの高い案件は割引率を高くすることで、どのような影響がありうるのか、またリスクを減らすためにはどういった施策を取れるのかなど、より的確な評価を行うことができます。

6. 割引現在価値を活用するデメリット

将来的な収益性をもとに現在価値を算出することは、本来の価値を知るうえで重要です。ただし、割引現在価値を活用する際には、以下のようなデメリットがあることも理解しておきましょう。

6-1. 不確実性が含まれる

割引現在価値は将来の価値を予測して算出する数値のため、不確実性が多分に含まれます。
将来価値は、企業側の主観に基づく評価です。企業価値はマクロな経済環境や市場の変化など、外部環境に依存する側面もあります。これらは不確定な要素のため、割引率を計算する以前に、そもそも将来価値の根拠が妥当かどうかを判断しなければなりません。

6-2. 恣意的な判断が介在する

割引現在価値は、M&Aにおける重要な判断要素の一つです。そのため、各々の立場が有利になるよう恣意的な判断が介在するケースもあり、利害対立ポイントにおいて客観性に乏しい側面があります。
割引現在価値を用いる際には、割引率の設定の適正性などを冷静に判断する能力が求められるでしょう。

7. まとめ

割引現在価値を活用することで、投資や資金調達を行う際に将来的なリターンを踏まえた適切な評価が可能となります。特にM&Aにおいては、割引現在価値は買収対象企業を評価する重要な指標です。精度の高い企業価値評価が行えることで、合理的に意思決定する際に役立ちます。ただし、将来価値はあくまでも主観に基づく評価であり、場合によっては、恣意的判断が介在するリスクがあることも理解しておきましょう。
M&Aに関するお悩みは、M&Aキャピタルパートナーズへご相談ください。貴社における割引現在価値の算出方法や、買収時における対象企業の現在価値の判断など、経験豊富なスタッフがアドバイスします。

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割引現在価値に関してよくある質問

割引現在価値に関連する用語の意味や、よくある質問に対する回答を以下にまとめました。
  • 割引現在価値と正味現在価値(NPV)の違いは何ですか?
  • 割引現在価値は、将来獲得しうる利益やキャッシュフローの総和を現時点における価値に引き直したものであるのに対し、正味現在価値(NPV)とは、投資によってどれだけ利益が得られるかを示す指標になります。正味現在価値は、投資の意思決定のために利用される指標です。

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  • 割引現在価値と金利の関係は?
  • 将来価値から金利などにより増加した分を割り引いた価値が、割引現在価値です。例えば、年利10%で運用し、1年後に10,000円の価値があるお金の現在価値は10,000円÷(1+10%)^1=約9,091円となります。

  • 割引現在価値と現在価値は同じですか?
  • 割引現在価値と現在価値は、ほぼ同義です。いずれも、将来価値から割引率を用いて現在の価値を算出した数値になります。

  • 割引現在価値と企業価値の関係はありますか?
  • 割引現在価値を利用することで、買収対象の企業価値を評価することができます。M&Aでは、将来価値を現在価値に引き直して、買収対象の企業価値を評価します。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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