アーリーリタイアとは? 必要資金のシミュレーション、メリットやリスクを解説

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近年、働き方改革や経済の低迷などの理由から、新しいライフスタイルとしてのアーリーリタイアが注目されています。事業により十分な資産を形成したうえで、アーリーリタイアを選択される経営者様も少なくありませんが、リスクも伴う点に注意が必要です。
この記事では、アーリーリタイアの定義や必要な資金、メリットやリスクについて説明します。納得のいくアーリーリタイアを実現させるためのポイントも紹介しますので、どうぞご活用ください。

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1. アーリーリタイアとは


アーリーリタイアとは、定年を迎えるよりも前に早期退職や引退することを意味します。早期リタイアとも呼ばれています。一般的な退職年齢に比べて、通常よりも早くリタイアし、貯蓄や早期退職金などの資産により余生を過ごすライフスタイルです。
価値観が多様化するなか、「人生において自分がしたい活動に時間を使いたい」との考えから、アーリーリタイアは注目されています。ただし、アーリーリタイアを実現するためには、その後の人生で必要となる資金を用意しなければならず、投資やM&Aにより数億円の資産を形成した人が持てる選択肢といえます。そのため、会社経営者が十分な資産を形成したあとに早期リタイアするケースが多いです。

1-1. セミリタイアとの違い

アーリーリタイアと混同されがちな言葉に「セミリタイア」がありますが、早期退職後の労働による収入の有無において区別されます。
セミリタイアは、早期退職後にアルバイトやパート、フリーランスとして働き、一定の収入を得ながら暮らすライフスタイルです。アーリーリタイアは、早期退職後に就労することはなく、資産をもとに生活を送る点でセミリタイアとは異なります

1-2. FIREとの違い

FIRE(ファイア)とは、「Financial Independence(経済的自立), Retire Early(早期退職)」の略語であり、アーリーリタイアへの関心の高まりと共に注目を集めている言葉です。
FIREも経済的自立や早期リタイアをする点では同じですが、資産運用(株式投資や不動産投資)により収入を得る点で、アーリーリタイアと異なります。
アーリーリタイアほどの資産形成を必要としませんが、高い投資スキルを必要とするライフスタイルです。一般に、資産を減らさず投資運用のみで生活するためには「年間支出の25倍の資産」「投資元本比で約4%の運用益」が必要だと言われています。

1-3. ハッピーリタイアとの違い

ハッピーリタイアとは、企業の経営状況が好調な時期に、豊かな老後生活を送るための資金を確保したうえで、引退生活に入るライフスタイルです。
アーリーリタイアは、その後の余生で必要な資金を用意したうえで早期退職や引退することを意味しますが、ハッピーリタイアでは、企業の経営状況が順調なときに引退を決断し、一般的に50歳前後を目安に行われる点で異なります。

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2. アーリーリタイアをするために必要な資金

アーリーリタイアを実行するには、必要となる資金を把握しておくことが大切です。一般的な計算方法は、次の通りです。

  • 必要な資金=1ヶ月の支出×12ヶ月×リタイア後の期間

なお、2022年に厚生労働省が発表した「令和3年簡易生命表の概況」によると、日本人男性の平均寿命は81.47歳、女性は87.57歳となっているため、ここでは平均寿命を85歳と仮定します。また、1ヶ月の支出については、総務省統計局発表の「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)」における「総世帯」の月平均額、および、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の月平均額によるものとします。
また、本記事でのシミュレーションは次の前提条件をもとにしているため、実際に必要となる資金には個人差が生じる点にご留意ください。

  • 税金などの支出は考慮していない
  • 家庭ごとの世帯人数・ライフスタイル・生活水準について考慮していない(平均値を採用)
  • リタイア後の活動資金などは考慮していない

2-1. 30歳でリタイア

必要な資金:約1億6,000万円
計算式
  • 30~65歳までの35年間で必要となる資金:244,231円×12ヶ月×35年=102,577,020円
  • 65~85歳までの20年間で必要となる資金:236,696円×12ヶ月×20年=56,807,040円

2-2. 35歳でリタイア

必要な資金:約1億4,500万円
計算式
  • 35~65歳までの30年間で必要となる資金:244,231円×12ヶ月×30年=87,923,160円
  • 65~85歳までの20年間で必要となる資金:236,696円×12ヶ月×20年=56,807,040円

2-3. 40歳でリタイア

必要な資金:約1億3,000万円
計算式
  • 40~65歳までの25年間で必要となる資金:244,231円×12ヶ月×25年=73,269,300円
  • 65~85歳までの20年間で必要となる資金:236,696円×12ヶ月×20年=56,807,040円

2-4. 45歳でリタイア

必要な資金:約1億1,600万円
計算式
  • 45~65歳までの20年間で必要となる資金:244,231円×12ヶ月×20年=58,615,440円
  • 65~85歳までの20年間で必要となる資金:236,696円×12ヶ月×20年=56,807,040円

2-5. 50歳でリタイア

必要な資金:約1億100万円
計算式
  • 50~65歳までの15年間で必要となる資金:244,231円×12ヶ月×15年=43,961,580円
  • 65~85歳までの20年間で必要となる資金:236,696円×12ヶ月×20年=56,807,040円

3. アーリーリタイアのメリット

アーリーリタイアのメリットは、次の通りです。

  • 仕事のストレスやプレッシャーから解放される
  • 時間的な余裕ができる
  • 居住地が自由になる

3-1. 仕事のストレスやプレッシャーから解放される

経営者という立場上、仕事自体や人間関係のストレス、課される責任によるプレッシャーは避けられないものです。アーリーリタイアを実現すれば、これらの重圧から解放され、ストレスや責任、金銭的な問題にとらわれることなく、心穏やかに自分らしく生活できるでしょう。

3-2. 時間的な余裕ができる

アーリーリタイアでは、仕事から完全に引退するため、時間的な余裕が増えます。旅行や食事など、これまで以上に家族と過ごす時間を作ることも可能です。また、自分磨きや語学、学び直しや趣味など、仕事以外の新たなチャレンジに時間を費やすこともできます。

3-3. 居住地が自由になる

アーリーリタイアによって経営から離れると、通勤の必要性や活動拠点の制限がなくなるため、居住地を自由に選択できるメリットもあります。例えば、これまで都会で仕事に没頭していたため、リタイア後は自然が豊かな場所で暮らしたい、生まれ育ったところで生活したいといった希望も叶えられるでしょう。

4. アーリーリタイアのリスク

アーリーリタイアのリスクは、次の通りです。

  • 時間の経過と共に資産が減っていく
  • 暇を持て余す可能性がある
  • 社会から隔絶された孤独感を感じる
  • キャリアが途絶えてしまう
  • 社会的な信用を得られにくくなる
  • 事業継続に支障を来す可能性がある

4-1. 時間の経過とともに資産が減っていく

アーリーリタイアは早期に引退し、貯蓄などの資産のみで生活を送るライフスタイルです。そのため、時間の経過による資産の減少は避けられません。また、アーリーリタイアにより「老齢厚生年金」を納める期間が短縮されます。引退後に国民年金保険料を支払わない場合は、将来受け取れる年金額が減る点にも注意しなければなりません。
引退後の人生を楽しむためにも、必要となる資金を入念にシミュレーションし、綿密な計画を立てて実行しましょう。

4-2. 暇を持て余す可能性がある

引退後は、時間的な自由が大きく増えますが、一方で、何をしたいのかが決まっていないと暇を持て余してしまう可能性があります。時間が余ったために、再び事業を始める経営者が少なからず存在します。
アーリーリタイア後に何をしたいか、どう生きたいかなどの理想を明確にし、プランニングすることが大切です。

4-3. 社会から隔絶された孤独感を感じる

会社経営においては多くの人との関わりが生じ、社会と自分との接点になります。引退後に人と関わる機会が減ると、孤独感に苛まれる可能性があるので注意しなければなりません。
例えば、趣味やボランティアなど、アーリーリタイア後の活動において社会との接点を持つことは可能でしょう。一方で、自ら活動的ではない場合には承認欲求を満たせず、成長の実感を得られないために、社会から隔絶されたような気持ちになるかもしれません。

4-4. キャリアが途絶えてしまう

働いている間はキャリアが継続しますが、アーリーリタイアを実行すれば、これまで積み上げてきたキャリアは途絶えてしまいます。再就職を検討する際に、選択肢が限られる可能性があるため注意が必要です。
仮に、再度事業を立ち上げたいと考えても、ブランクが空くとビジネスの勘が鈍くなる、キャリアが絶たれるといったデメリットが生じることも考慮しておきましょう。

4-5. 社会的な信用を得られにくくなる

アーリーリタイアをすれば、無職の状態になるため、社会的な信用を得られにくくなる点にも留意が必要です。例えば、ローンやクレジットカードの新規審査に通りづらくなる可能性があります。
リタイアに際して、十分な資産形成ができており、今後のプランニングが万全であれば、大きな問題は起こらないでしょう。ただし、社会的な信用が低下するリスクがあることを認識しておいてください。なお、リタイア後の社会的信用を維持するために、個人事業主としての開業届を税務署に提出しておくのも一つの方法です。

4-6. 事業継続に支障を来す可能性がある

アーリーリタイアを目指すにあたって、資産形成を意識しすぎた結果、事業の継続に支障を来す可能性もあります。
例えば、中小企業の何パーセントかを所有していた株主が、企業の経営陣と株式売買で折り合いがつかないままに、自身の資産形成を優先して第三者機関に株式を売却したとします。そうなると、企業の株主とは当然疎遠になり、財政面が苦しくなった場合その企業の役員になるなどのセミリタイアへ移行することもできず、さらに最悪の場合、話が広まれば社会的信用も失う可能性もあります。
アーリーリタイアは資産形成が重視されがちですが、周囲の状況も考えなくてはいけません。特に、経営者でアーリーリタイアを検討中の方の場合、自身の勇退後、事業の継続に支障はないか、株の移動後に経営陣で争いが起きないかなどに気を配ることが重要です。

5. 納得のいくアーリーリタイアを実現するためのポイント

前章で挙げたように、綿密な計画を立てずにアーリーリタイアを目指すことには、さまざまなリスクが伴います。納得のいくアーリーリタイアを実現するために、次のポイントを押さえることが肝要です。

  • 財政状況のシミュレーションを徹底する
  • 入念な人生設計に基づいて判断する

5-1. 財政状況のシミュレーションを徹底する

納得のいくアーリーリタイアを実現するには、労働による収入が無くなっても生活できるだけの資産が必須です。
前述した必要資金のように、ある程度の目安を把握し、自分や家族のライフスタイル、リタイア後の活動内容、健康状態、社会情勢といった要素を多角的に考慮しましょう。そのうえで、問題なく生活を送れるかどうか、財政状況をシミュレーションすることが大切です。
具体的には、次のような項目を確認し、リスクと対策を洗い出してください。

  • 毎月の生活費や税金・保険料
  • 住宅の固定費や修繕費
  • リタイア後の趣味や活動の費用
  • 病気や怪我など健康状態のリスク
  • 緊急時の資金の確保
  • 将来的な物価や税制の変動

5-2. 入念な人生設計に基づいて判断する

リタイア後にどのような人生を送りたいか、そのためにはどの程度の資金が必要かを洗い出し、入念な人生設計を立てることが大切です。
アーリーリタイアのデメリットで解説したとおり、リタイア後にどのような生活を送りたいかというビジョンがないと、暇を持て余してしまったり、孤独感に苛まれたりと充実した人生を実現できません。また、リタイア後にどのように生活するかといった方針は、必要となる資金にも大きく影響します。
「リタイア後の人生は、そのときに決めれば良い」というスタンスでは取り返しが付かないリスクがあるため、十分な情報収集と人生設計に基づいて判断しましょう。
次の視点を総合的に検討することも必要です。

  • そもそも何のためにアーリーリタイアをしたいのか
  • 理想の人生を送るための選択肢として本当に適切なのか
  • リタイア後の生活は自分に合っているか

また、自身のリタイアは家族やパートナーにも影響を及ぼす選択であることを念頭に置き、事前の説明や相談も必ず行いましょう。

6. まとめ

アーリーリタイアは、定年を迎えるよりも前に早期退職や引退することを意味します。ただし、リタイア後に理想の人生を送るためには、十分な資産を形成したうえで実行する必要があります。
アーリーリタイアを実現すれば、仕事や人間関係のストレスとプレッシャーから解放され、時間的な余裕ができるでしょう。ただし、時間の経過と共に資産が減少したり、暇を持て余したりするなどデメリットも伴います。そのため、資金や人生設計を入念に立てることが大切です。
M&Aの実行により創業者利益を確保できれば、アーリーリタイアも選択肢となりえます。ただし、手続きを円滑に進め、M&Aを成功させるには、パートナー企業の調査や交渉において専門知識を有する仲介業者や専門家へ相談することが重要です。
東証プライム上場の信用と、豊富なM&A実績を有するM&Aキャピタルパートナーズでは、
アーリーリタイアを検討中の経営者様からの相談も承っております。アーリーリタイアを目的とするM&Aを検討されている経営者様は、ぜひ一度ご相談ください。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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