更新日
関連会社とは、親会社が経営に関する事項に対して大きな影響を与えることができる他の会社のことです。
関連会社にあてはまるかどうかは、議決権の割合によって明確に定められています。議決権の割合を下回る場合は別途要件があるため、仕組みを正しく理解することが大切です。
この記事では、関連会社の意味や定義、メリット・デメリットなどについてわかりやすく解説します。「関係会社」や「子会社」との違いも、あわせて見ていきましょう。
このページのポイント
~関連会社とは?~
関連会社とは、議決権の20%以上を所有している親会社が、経営に関する事項に対して大きな影響を与えることのできる他の会社を指す。ただし、議決権の保有比率が15%以上、20%未満でも、条件を満たすことで関連会社として規定される。親会社が関連会社に対して与えるのは、あくまでも「大きな影響」であり、子会社として支配しているわけではない点に注意が必要。
1. 関連会社とは
まずは、関連会社の意味や定義を解説します。
1-1. 関連会社の意味
関連会社とは、議決権の20%以上を所有している親会社が、経営に関する事項に対して大きな影響を与えることのできる他の会社を指します。議決権とは、株主総会での決議に参加して、票を入れることができる権利のことです。
ただし、議決権の保有比率が15%以上、20%未満でも、条件を満たすことで関連会社として規定されます。
親会社が関連会社に対して与えるのは、あくまでも「大きな影響」であり、子会社として支配しているわけではない点に注意が必要です。
1-2. 関連会社の定義
関連会社は次のように定義されています。
- 関連会社とは(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第8条第5項)
~略~「関連会社」とは、会社等及び当該会社等の子会社が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の会社等をいう
出典:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
他の会社が議決権の20%以上を保有している場合は関連会社です。
ただし、議決権保有率20%未満であっても、15%以上で且つ次のいずれかに該当する場合は関連会社になります。
- 親会社の社員等が役員等に就任している
- 重要な融資を実施している
- 重要な技術を提供している
- 取引のなかで、重要な販売・仕入れなどが存在する
- その他、財務・事業の方針決定に対し重要な影響が推測される事実が存在する
議決権が15%未満の場合は、代表取締役など特定の者と合わせた議決権が20%以上で、前述した条件を満たせば関連会社となります。「特定の者」とは、議決権を行使する者のうち、親会社と同一の意思を持つ者という意味です。
1-3. 親・子会社の違い
子会社とは、親会社が50%を超える議決権を保有する会社のことです。親会社と子会社は支配関係にありますが、関連会社は「親会社から影響を受ける会社」と定義できます。
ただし、議決権が50%以下であっても、40%以上で且つ以下のいずれかに該当する場合は子会社になります。
- 役員等の数が50%を超える
- 重要な財務や事業の方針決定を支配する契約等が存在する
- 資金調達額総額の融資額が50%を超える
- その他、財務や事業の方針決定の支配が推測される事実が存在する
連結決算における会計処理の方法も、関連会社と子会社で異なります。
関連会社の会計処理は、「持分法」に基づいて行われ、親会社の連結財務諸表に反映されるのは、親会社の影響力に対応する部分のみです。
一方、子会社の会計処理は「連結法」に基づいて行われ、親会社と子会社をひとつの会社とみなし、財務諸表が統一されることになります。そのため、子会社の財務諸表は、親会社の連結財務諸表にそのまま反映されるのが特徴です。
1-4. グループ会社との違い
グループ会社とは、親会社・子会社・関連会社など、関係性のある会社をすべて含めた総称です。意味としては関係会社と同じになります。ただし、グループ会社という用語は法律では明確に定義されていないため、取引や契約の際には注意しましょう。
1-5. 業務提携・資本提携との違い
業務提携とは、企業が共同で事業を行い、経営資源を提供し合ってシナジー効果を得ることで、事業競争力を強化することです。
業務提携の場合、資本の移動は伴いませんが、資本提携の場合は支配権の取得を求める点が業務提携と異なります。なお、業務提携の場合、双方の独立性は保持されます。
他社と共同で事業を行う方法には、ほかにも業務提携と資本提携を組み合わせた「資本業務提携」や「技術提携」などがあります。それぞれの詳細は、こちらの記事で解説しています。
2. 関連会社と関係会社の違い
関係会社とは、親会社・子会社・関連会社の総称です。
「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の第8条第8項で、関連会社は次のように定められています。
- 「関係会社」とは、財務諸表提出会社の親会社、子会社及び関連会社並びに財務諸表提出会社が他の会社等の関連会社である場合における当該他の会社等をいう
出典:関係会社とは(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則第8条8項)|e-Govポータル
関係会社のなかで、親会社と資本的な関係がある場合は、出資額に応じて親会社の単体貸借対照表上に「関係会社株式」という勘定科目で計上されることになります。
「子会社株式」と「関連会社株式」は、出資比率や条件によって区別されます。また、会計処理の方法も異なる点を押さえておきましょう。
3. 関連会社とその他間違えられやすい会社との違い
ここでは、「持株会社」や「兄弟会社」など、関連会社と間違えられやすいその他の会社との違いを見ていきましょう。
3-1. 持株会社
持株会社とは、子会社の事業支配を目的に株式を保有する会社のことです。「純粋持株会社」と「事業持株会社」に大別できます。
純粋持株会社は、事業は行わず、株式を保有する子会社の経営管理だけを行います。一方の事業持株会社は、株式保有で他社を支配しつつ自社でも事業を行うのが特徴です。
持株会社は、1997年の独占禁止法改正によって解禁され、翌年には金融持株会社に関する法的整備も行われました。そのため、事業会社による多数の持株会社だけでなく、メガバンクを中心とした金融持株会社も多く設立されるようになります。
3-2. 兄弟会社
兄弟会社は、「同一の親会社を持つ子会社同士」という意味で用いられるのが一般的です。兄弟会社が連結子会社になることもありますが、兄弟会社は法的に定められた言葉ではないため、使用する際には注意が必要です。
4. 関連会社のメリット
関連会社には、次のようなメリットがあります。
4-1. 経営の効率化につながる
自社だけでは取り組みが難しい新規事業について、知見を持つパートナーとの間でジョイントベンチャーとして関連会社を立ち上げて、一緒に推進することができます。
自社に十分なリソースがなかったり知見が足りない場合には、自社で内製化するよりも、関連会社を通じてパートナーとの知見を借りることによって経営の効率化やスピード感をもった事業の展開が可能です。
ただし、親会社との関係で、「関連会社だけでどこまで意思決定できるのか」という範囲を決めておかなければなりません。
4-2. 関連会社を任せることで後継者の育成につながる
関連会社を立ち上げ、後継者候補にも株式のマジョリティを保有してもらい経営を任せると、後継者の育成が可能になります。
兄弟など、後継者候補が複数いる場合は、それぞれに関連会社を任せる方法もあります。複数の後継者候補が同時に経営の経験を積めるのは、関連会社ならではのメリットです。実際に後継者としての適性があるかどうかを見る、良い機会となるでしょう。
兄弟それぞれに、親会社と関連会社の経営を任せるという選択肢もあります。
4-3. 節税効果がある
会社の利益を分散させると、法人税の軽減税率が適用されるため、節税効果につながります。
子会社の場合には、出資比率にもよりますが、優遇措置を受けられない可能性もあります。一方、関連会社にとどまる場合には、法人税や地方法人税が軽減されたり、消費税の免除期間を利用できる可能性も増えるでしょう。組織として法人税の負担が減ることは、全体的な財務状況の改善に役立ちます。
さらに、接待交際費には会社ごとに上限額が設定されるため、関連会社を立ち上げることでトータルの額を増やすことも可能です。
4-4. 財務リスクを分散できる
財務リスクがある事業を抱えている会社の場合は、その会社だけでなく、その会社を子会社として支配する親会社もリスクを抱えることになります。多額の投資を必要とする部門を別の関連会社として独立させれば、経営上のリスク分散が可能です。
また、関連会社があることによって、仮に親会社で不慮の事故や不祥事があったとしても、事業停止の影響を最小限に抑えられます。
4-5. ネームバリューを活用できる
グループ内の大手企業の「ネームバリュー」を活用することで、他の会社との連携がスムーズに行く可能性が高まります。
まったく名前が知られていない会社よりも、知名度のある大手企業のほうが、商談を進めやすいでしょう。
親会社の名前を使って、商品やサービスを提案することも可能です。自社の商品やサービスの信頼度も高まるため、ビジネスを進めるうえで有利になります。
5. 関連会社のデメリット
関連会社には、次のようなデメリットがあることも理解しておきましょう。
5-1. 時間やコストがかかる
関連会社が必要になった場合は、会社を設立することになるため、登記の申請など各種手続きに費用や時間がかかってしまいます。
また、親会社と関連会社が利益相反になる場合は、親会社を除いた、関連会社の株主の理解を得る必要がある点もデメリットといえるでしょう。
手続きに時間がかかるケースも見られ、経営上のリスクになり得ます。
5-2. 不祥事が起こった場合には関連会社全体に影響がある
関連会社があれば、親会社が不祥事を起こした場合でも事業を継続できる可能性はありますが、大きな影響を受けることは確かです。逆に、関連会社が不祥事を起こした場合も、親会社に影響を与えてしまいます。
親会社が起こした不祥事は、関連会社全体に影響を与えます。それに比べて、関連会社の不祥事の損害は限定的といえますが、当然のことながら影響はあるでしょう。
5-3. 税務調査で架空取引などを疑われる可能性がある
関連会社があると、その会社を使って架空取引をしていると疑われるケースがあります。
第三者との取引とは異なり、関連会社は「身内」のため、適正な取引が行われないことがあるのが理由です。
取引価格が相場から大きくかけ離れていたり、受け取るべき対価を受け取っていなかったりすると、税務調査で指摘されるかもしれません。否認金額も多くなるため、注意しましょう。
5-4. 親会社に依存してしまうと子会社独自の経営ができない
関連会社が親会社から仕事をもらってばかりになると、親会社に依存して独自の経営ができないことがあります。
関連会社の不振は親会社にも影響を及ぼす可能性があるため、親会社に依存した状態は好ましくありません。親会社の影響力を極力抑えるように、親会社側が経営戦略を立てることが大切です。
一方の関連会社側は、新しい営業先を探したり、仕事の効率を高めたりする取り組みを行うと良いでしょう。
5-5. 関連会社の経営に必ずしも親会社の意向を反映できるとは限らない
関連会社は子会社ではないため、親会社の意向のみで経営できるわけではありません。
親会社以外の株主による議決権比率の方が大きければ、その株主の意向を尊重しなければならない局面もあるでしょう。そのため、関連会社を立ち上げたり関連会社に新たに出資する際には、親会社の意向を反映できるように他の株主との間で株主間契約を締結して、親会社にとって必要不可欠な事項に対する同意権や拒否権等の権利を定めておくと良いでしょう。
6. まとめ
関連会社とは、議決権の20%以上を所有している親会社が、経営に関する事項に対して大きな影響を与えられる会社のことです。
子会社の場合は50%以上の議決権が必要になり、影響の大きさが異なるので注意が必要です。また、「関係会社」は、親会社・子会社・関連会社の総称なので、違いを正しく理解しておきましょう。
M&Aキャピタルパートナーズは、関連会社の設立やM&Aなど、多様な選択肢をもって企業の成長戦略を支援しています。どのようなお悩みでも、まずはお気軽にご相談ください。