事業承継型M&Aとは? 現状の動向・メリット/デメリットと成功のポイントを解説

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事業承継型M&Aについて

事業承継型M&Aとは、後継者不在や経営者の高齢化を背景に、株式売却や事業譲渡などのM&Aで事業承継を実現する手法です。事業継続と雇用維持、シナジー創出、創業者利益の確保などの利点がある一方、社内外の反発や方針変更、手続き負担などのリスクも伴うため、株主合意・時期判断・公的支援の活用が成功の鍵となります。

事業承継は成長と持続性を左右する経営課題ですが、後継者不在や高齢化など現実的な壁に直面します。こうした課題に対し、株式売却や事業譲渡を通じて承継を実現するのが「事業承継型M&A」です。事業の連続性を保ちながら雇用・取引を維持し、場合によってはシナジーで競争力を高められる一方、社内外の反発や方針変更、手続き負担といったリスクも存在します。

本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、事業承継型M&Aの現状をはじめ、メリット・デメリット、行うときの注意点について詳しく解説します。また、成功に導くためのポイントや公的支援の活用方法についても紹介します。事業承継を考えている経営者の方や、これから事業を始める方は、ぜひお役立てください。

事業承継について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。


事業承継型M&Aとは

事業承継型M&Aとは、企業の合併・買収であるM&Aを通じて事業承継を実現する手法です。後継者が不在であったり、従業員による承継が困難な場合に、社外への株式売却や事業譲渡を行うことで、事業の継続を実現します。
これにより、企業の価値を維持しつつ、経営に関する新たなチャレンジも可能です。また、事業承継型M&Aは企業の成長戦略の一環としても活用されています。

事業承継型M&Aの現状

事業承継型M&Aは、後継者問題の解決策として注目されています。件数の推移や増加の背景について下記に解説しますので、現状を把握していきましょう。

件数の推移

下表は、国内における「事業承継型M&A」件数の推移を示したものです。

国内における「事業承継型M&A」件数の推移

(出典)中小企業・小規模事業者における M&Aの現状と課題

新型コロナウイルス感染症の影響による一時的な落ち込みはあったものの、国内のM&A件数は過去最高を更新しました。なかでも事業承継型M&Aの動向は、2022年1月から12月までの累計で748件に達し、前年の642件から16.5%増加し、最多を更新しています。
この結果からも、事業承継の課題を解決するための有効な手段として、M&Aの活用が重要視されているとわかります。

増加の背景

事業承継型M&Aが増加する背景には、経営者の高齢化や後継者不在、政府の支援策などがあります。これらの要素が複合的に作用し、M&Aの活用が進んでいます。

一刻を争う後継者問題

  • 経営者の半数以上が60代以上で高齢化が進んでおり、後継者不在が深刻な問題
  • ピーク時の2017年から下がってはいるものの、2022年時点で後継者不在の経営者は60代、70代で3割以上、80代以上でも3割近い
  • 中小企業は事業承継型M&Aを通じて事業を譲渡し、新たな発展を図るように

経営者の高齢化は、日本の企業にとって深刻な問題です。例えば、経営者の半数以上が60代以上でありながら、後継者不在である点が挙げられます。
この問題は、ピーク時の2017年からは不在率が下がってきているものの、2022年時点でも後継者不在の経営者は60代で4割以上、70代で3割以上、80代以上でも3割近くです。
このような状況のなか、中小企業は事業承継型M&Aを通じて事業を譲渡し、事業継続と発展を検討しています。

政府の支援・後押し

  • 日本の国力の軸になっているのは中小企業。コロナウイルスの影響や後継者不在により中小企業が減少してしまっては、廃業者増加にもつながり、経済発展に影響が及ぶ。
  • そのため、中小企業庁は、事業承継税制の拡充や事業承継をサポートする事業引継ぎ支援センターを設置し、中小企業の事業承継を促進
  • また、M&Aによる経営資源の引継ぎ行う中小企業者を支援するものとして「事業承継・引継ぎ補助金」の制度もある

日本の国力の軸となっているのは中小企業です。新型コロナウイルス感染症の影響や後継者不在により、中小企業が減少してしまうと、廃業者が増加し経済発展に悪影響を与えるでしょう。
そのため中小企業庁は、事業承継税制の拡充や、事業承継をサポートする「事業承継・引継ぎ支援センター」を設置し、中小企業の事業承継を促進しています。また、M&Aによる経営資源の引継ぎを行う中小企業者を支援するものとして、「事業承継・引継ぎ補助金」の制度も設けています。
これらの支援により、中小企業の事業承継がスムーズに進むことで、経済の持続的な発展が期待できるでしょう。

事業承継型M&Aのメリット

事業承継型M&Aには、後継者問題の解決、雇用の継続、シナジー効果の発生、創業者利益の確保など、多くのメリットがあります。

後継者問題を解決できる

M&Aを活用すれば、後継者不足や経営者の高齢化問題が解決できます。
親族や優秀な従業員への承継を検討していても、人選難や人材不在による廃業の危機も想定できるでしょう。そうした場合に、M&Aでは多くの企業が事業譲渡の選択肢を取り、複数の金融機関やM&Aの専門業者に相談することで買い手候補の拡大も期待できます。

雇用や取引先を継続できる

会社清算の場合、従業員は職を失う可能性がありますが、事業承継型M&Aなら従業員の雇用を維持しながら事業の譲渡も可能です。事業承継型M&Aの活用により、企業の人材とノウハウを保持できます。また、取引先との関係も継続できるでしょう。
ただし、取引先との契約でCOC(Change of Control)条項などを定めて取引している場合には、契約の見直しが必要になるケースがあるため注意が必要です。これらの点を考慮に入れ、適切な事業承継の方法を選択することが重要です。

シナジー効果の発生が期待できる

M&Aによる事業承継は、シナジー効果を生む可能性があります。異なる技術を導入することにより、事業を従来以上の規模に拡大できるかもしれません。
また、譲渡先が新たに投資を行うことで、自社だけでは実現できなかった成果を得られる可能性もあるでしょう。これにより、企業の競争力を高め、新たな価値を創出できます。

創業者利益の確保が望める

M&Aでは、自社の売却に伴い経営者が対価を得ることが一般的です。事業承継型M&Aを実施する場合、経営者が保持する自社株を売却することで利益を得られます。
得られた資金を活用して新たなビジネスを始めたり、セカンドライフを楽しむなど、将来の選択肢が広がるでしょう。それゆえ、経営者自身の生活設計もより豊かになります。

個人保証の責任が無くなる

金融機関からの借り入れにおいて、経営者が個人保証を負う場合があります。個人保証があるために、親族や社内従業員への承継を検討する妨げになることもあるでしょう。また、経営者が引退後も、個人保証の継続を命じられる場合もあります。
そうしたケースで事業承継型M&Aを活用すれば、譲渡企業に対し、個人保証を肩代わりしてくれるよう交渉することも可能です。これにより経営者の負担が軽減され、安心して事業承継を進められます。

事業承継型M&Aのデメリットやリスク

事業承継型M&Aには、従業員や取引先からの反発、経営方針の変更、時間と労力の必要性など、さまざまなデメリットやリスクが存在します。

従業員や取引先から反発されるリスクがある

事業承継型M&Aでは、新たな経営者の受け入れに反発が生じ、企業価値が損なわれるリスクが生じます。また、従業員や取引先からの反発により、離職や取引中止が生じる可能性もあります。
これらの問題を避けるためには、事業承継の計画と実施に際して、従業員や取引先への十分な説明と理解を得ることが欠かせません。

経営方針や待遇が変更になる可能性がある

M&Aによる事業承継では、経営陣や上司の変更、雇用条件の変更などが起こる可能性があります。その原因は、新たな経営者が経営方針の見直しや、組織体制を再編する必要があるためです。
したがって、原則として「雇用条件の維持」を、M&A成立の条件として交渉を進めることが求められます。これにより従業員の不安を軽減し、事業のスムーズな移行が実現できるでしょう。

多くの時間・労力が発生する

M&Aでは、希望する条件の買い手が必ず見つかるわけではありません。また、自分の力で条件や価値観の合う買い手を探すには、時間がかかります。
仮に買い手が見つかったとしても、事業承継型M&Aを行うためには「株主総会決議」が必要です。合併や株式交換のほか、会社分割では債権者保護手続き、事業承継の場合は債権債務移転手続きが必要になるため、多くの時間と費用を要します。
これらを実施するためには知識と経験が必須となるため、専門家によるアドバイスを受けることも検討しましょう。

事業承継型M&Aを行うときのポイント・注意点

事業承継型M&Aを行う際には、株主の理解を得る、売却のタイミングを見極める、公的支援を活用するといったポイントと注意点があります。

株主からの理解を得る

事業承継型M&Aを実施する場合は、株主の理解を得ることが重要です。合意がなければ、M&Aが不成立となる恐れがあります。
また、役員や株主の情報漏洩リスクを避けるために、情報を伝える対象は最低限の関係者のみにとどめることが必要です。これにより、事業承継の透明性と信頼性を確保できます。

売却のタイミングを見極める

M&Aは、成立までに時間を要することが一般的です。経営者が引き継ぎを決断してから、5〜10年かかることもあります。
経営者が引退間近の廃業を迫られた状態では、高額な売却価格は見込めません。また、後継者の育成や引き継ぎが間に合わなくなるリスクもあります。
そのため、後継者を探し始めるタイミングを定めておき、早い段階から動き出すことが大切です。

公的支援を活用する

事業承継を進めるためには、公的支援を活用することが有効です。代表的な支援は、以下のとおりです。

  • 事業承継税制
  • 事業承継・引継ぎ補助金
  • 事業承継・引継ぎ支援センター
  • 会社法上の特例
  • 事業承継ファンド
  • 経営資源集約化税制
  • 特例的な税金など

これらの支援により、必要な費用の補助や融資、手続きに関するサポートが受けられるでしょう。
具体的な支援内容や申請方法については、中小企業庁のホームページで確認できます。これらの情報を活用し、適切な事業承継を進めることが大切です。

事業承継ガイドラインに則って進める

中小企業庁が公開している事業承継ガイドラインに則って進める方法があります。こちらは、中小企業がスムーズに事業承継を行うための指針です。
「事業承継診断シート」と「事業承継自己診断チェックシート」の質問に「はい/いいえ」で答えるだけで、事業承継の必要性が確認できます。事業承継計画の雛形もあるため、これらを参考にすることで、計画的に進められるでしょう。

専門家へ相談する

事業承継型M&Aは多くの項目が存在し、思わぬところでトラブルが発生する可能性があります。そのため、高度な知見を持つ専門家への相談が必要です。専門家の助言を得ながら計画をたてることで、安心して事業承継を進められるでしょう。
専門家は、事業承継のプロセスを理解しており、適切なアドバイスを提供できます。有効なアドバイスを参考にすることで、事業承継の成功確率が高まるでしょう。

まとめ

事業承継型M&Aは、後継者問題の解消と事業の継続・発展を両立し得る有力手段です。雇用維持やシナジー創出、創業者利益の確保、個人保証負担の軽減などの利点がある一方、反発や方針変更、手続き負担といったリスクも伴います。
成功の鍵は、①株主・主要関係者の合意形成、②売却タイミングの適切な見極め、③公的支援やガイドラインの活用、④専門家と連携した丁寧な手続き運営です。早期準備と計画的な進行により、価値の毀損を避けつつ、次の経営体制へ円滑に橋渡ししていきましょう。



よくある質問

  • 事業承継型M&Aとは?
  • M&A(株式売却・事業譲渡等)を通じて事業承継を実現する手法です。後継者不在や従業員承継が難しい場合の解決策として用いられます。
  • 国内M&Aの動向は?
  • 国内M&Aは過去最高水準。事業承継型M&Aも増加しており、事業承継課題への実務的な解となっています。
  • 事業承継型M&Aの主なメリットは?
  • 後継者問題の解決、雇用・取引の継続、シナジー創出、創業者利益の確保、個人保証負担の軽減交渉などが挙げられます。
  • 事業承継型M&Aにおいて想定されるデメリットやリスクは?
  • 従業員・取引先の反発、経営方針や待遇の変更可能性、相手探し・手続きに要する時間と労力などです。
  • 事業承継型M&A実行時の重要ポイントは?
  • 株主の理解・合意、情報管理、売却タイミングの見極め、公的支援の活用、ガイドラインに沿った進行、専門家への相談です。
  • 事業承継型M&Aにおいて公的支援には何がありますか?
  • 事業承継税制、事業承継・引継ぎ補助金、事業承継・引継ぎ支援センター、会社法上の特例、事業承継ファンド等が活用できます。
  • 事業承継型M&A後の雇用への配慮は?
  • 原則として雇用条件維持を条件に交渉し、従業員・取引先への説明と理解醸成を図ることが重要です。

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