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中小企業のM&Aの現状

~中小企業のM&A事例~

更新日

少し前までは海外のみでメジャーでしたが、日本国内でもM&Aの数は年々増加してきています。どのように数字が推移しているのか、なぜ数字が増えていっているのか、そしてコロナ渦の現状を含めて今後どうなっていくのかなどについてまとめています。中小企業のM&Aにおける事例も併せてご紹介していますので、今後M&Aを行うことを検討している企業のトップの方や担当者の方はぜひ参考にしてみてください。

国内のM&Aの総件数の推移

グラフ

出典:MARR Online

日本のM&A草創期から国内外の数多くのM&Aを提案・実行してきた老舗のM&A仲介企業である株式会社レコフによると、日本企業のM&A市場は、1985年の統計開始以来、リーマンショックや東日本大震災などによる一時的な不況期を除けば一貫して増え続けている状況にあります。1996年の年間約600件から2019年の年間約4000件と、公表されている件数だけでこの20年間で6倍以上となっています。

また、1993年から2006年にかけては、大幅に増加しています。これは、バブル経済の崩壊によって引き起こされました。バブル崩壊後政府の規制緩和による恩恵を受けるためや、会社を成長させるためにM&Aを積極的に行ったのです。

そして2011年から2019年にかけても、大幅に増加しています。特に2017年からは3,000件を超えて、2019年には4,088件と過去最高を記録しました。その理由としてはまず東日本大震災からの復興のためにアベノミクスによって景気を向上させたということ、そしてもう1つは後継者難の中小企業が事業承継の手段としてM&Aを用いることが、増えたことにあります。

国内のM&Aが増えている要因

国内のM&Aが増えている理由としては、まず日本国内市場が縮小しているということが挙げられます。人口の減少は統計データからも明らかで、2003年には合計特殊出生率が1.29と過去最低を記録しました。また2016年では1.44とやや回復はしているものの、その世代の人口を維持できる基準である人口置換水準の2.08を割り込みました。このように1974年以降は、低下の一途にあるのです。

この市場の縮小を見越して、大企業は戦略として「集約化」と「グローバル化」の必要性を検討してきました。例えば小売であれば、百貨店は三越伊勢丹、大丸松坂屋、阪急阪神、高島屋の4つに大きく集約されました。そしてコンビニエンスストアもセブンイレブン、ローソン、そして、am/pmやサークルKサンクスを買収したファミリーマートに集約されつつあります。

グローバル化に関しても、医薬品メーカーでは武田薬品工業がミレニアム・ファーマシューティカルズを約8,800億円、ナイコメッドを約1兆2,000億円でそれぞれ買収しました。そしてソフトバンクがスプリントを約1兆5,700億円、アームを約3兆3,000億円でそれぞれ買収するなど、クロスボーダー型のM&Aによって自社の海外進出を加速させています。

別の調査からは後継者への事業承継の難しさが窺え、それも原因の1つとなっていると考えられます。中小企業庁委託「企業経営の継続に関するアンケート調査」(2016年11月、株式会社東京商工リサーチ)によると、中規模法人の後継者の選定状況は、後継者が決まっている(1369名)候補者はいるが、本人の了承を得ていない(950名)後継者候補を探しているが、まだ見つかっていない(453名)後継者を探す時期ではない(401名)後継者候補についてまだ考えたことがない(248名)という結果が出ています。

国内企業同士のM&Aの件数推移

M&Aにはパターンがいくつかあります。こちらでは国内企業同士つまりIN-INという形でのM&A件数は、どのように推移しているのかについて見ていきます。
国内企業同士のM&Aの件数は、増加傾向にあります。2020年では日本国内のM&Aの件数は全体の約79%と身近なものになってきており、具体的で現実的な経営戦略の1つの選択肢となっているということがよく分かります。

国内企業同士のM&Aの件数推移は、全体のM&A件数と同じように推移しており1993年から2006年にかけての大幅な増加と2019年にかけての増加が見られます。特に2017年から2018年にかけては非常に多くなっており、増加率は約29%です。

国内における中小企業のM&A件数が増加している理由としては事業規模を拡大するため、経営者が引退した際の後継者問題のため、経営の立て直しの必要性があるためという3つが考えられます。また国がM&Aを行うことを積極的に推進していることも、M&A件数が増加している要因の1つです。特に中小企業においては出来るだけ、廃業や倒産しないように事業承継補助金が受給できたり、税金面で優遇される事業承継優遇税制を利用することが出来るようになったりしています。

M&A件数の統計から見るとIT業界、ソフトウェア業界、食品業界、調剤薬局やドラッグストア業界、建設業界、製造業界、運送業界の7つの業界において特に件数が増加しているということが分かります。その中でも国内企業同士のM&Aが多くなっているのは、医療業界です。有名なものとしては、キャノンによる東芝メディカルシステムズの買収や、富士フイルムによる和光純薬工業の買収があります。また近年ではベンチャー企業のM&Aも、盛んとなってきています。

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国内企業から海外企業へのM&Aの件数推移

次に国内企業から海外企業へのM&AつまりIN-OUT型の件数の推移について、見ていきます。
日本の企業が海外企業を買収するIN-OUT型のM&Aも、件数は増加傾向にあります。金額という点から見ると2017年には減少していますが、2018年にはそれ以上に著しく増加しています。IN-OUT型M&Aの特徴となっているのは、成立金額が非常に高額であるということです。

2018年のデータで見てみると、件数は国内企業同士つまりIN-IN型M&Aの約4分の1程度しかありません。しかし金額を見てみるとその約6.75倍の高さとなっているのです。この理由としてはIN-OUT型M&Aの場合にはほとんどの場合国内の大手企業がM&Aを行い、買収先も海外でそれなりの規模の大きさである企業を買収することが挙げられます。

日本国内の市場は飽和状態にあり拡大が見込めなくなってしまっており、少子高齢化によって市場規模が縮小しているのは明らかです。そのため国内の大手企業は事業拡大と世界規模での市場進出を目指してIN-OUT型のクロスボーダーM&Aを実施しています。

また2011年ごろからの国内企業から海外企業へのM&A件数増加は、通常とは全く違った金融緩和による円安が大きな要因です。これによって、積極的に海外企業とM&Aを行おうとする日本企業が増え始めました。

国内企業から海外企業へのM&Aの代表的な例としては、ソフトバンクグループによるイギリスの半導体開発大手であるアーム・ホールディングスの買収、アサヒグループホールディングスによるベルギーのビール事業最大手であるアンハイザー・ブッシュ・インベブのビール事業の買収、三菱UFJフィナンシャル・グループによるタイのアユタヤ銀行の買収などがあります。

海外企業から国内企業へのM&Aの件数推移

そして海外企業から国内企業へのM&AつまりOUT-IN型の件数の推移について、見ていきます。
海外企業から国内企業へのM&A件数も、上の2つと同様に増加傾向にあります。件数としては他の2つのパターンと比較するとそこまで多くはなく2020年では全体の約6%程ですが、年によっては10%前後まで増加している時もあります。1985年から1990年にかけては、海外企業から国内企業へのM&Aはほとんどありませんでした。しかし1991年からは徐々に増加していきました。

この件数の増加の背景には、日本国内でバブルが崩壊したことがあります。バブルが崩壊して不景気になってしまったことで、技術力や実力があるにも関わらず経営不振に陥る企業が多くなってしまいました。そこに海外企業が目を付けて買収を考えたことから、海外企業から国内企業へのM&Aの件数が増加しました。

その後2016年から2017年にかけてはあまり大幅に件数は変わりませんでしたが、2018年には前年比でみると約1.3倍と大きく増加しています。件数だけでなく、金額においても約2.2倍になっています。

このような増加傾向になっている理由には、まず国内大手企業の業績不振があります。そして海外企業が日本企業の買収を積極的に行うようになったということもあります。さらに日本の企業が独自の技術や高い開発力、ノウハウを保有していることからも世界的に注目されており、大手企業だけでなく中小企業もM&Aの対象となっていることも理由の1つといえるでしょう。この流れは今後も続いていき、件数は増加していくと考えられます。

コロナ渦のM&Aの件数推移

日本だけでなく世界中で新型コロナウイルス感染症の影響は、非常に大きなものとなっています。現段階では終息の気配はまったく見えてはおらず、今後どうなっていくのかということも予測が出来ない状態です。ではコロナ禍となっている現在の世界情勢の中で、M&Aの件数はどのように推移しているのでしょうか?

コロナウイルスにより世界中の株式市場が不安定な状況にありますので、当然M&Aの市場にも影響が出ています。異常事態とも言うことが出来る状況の中で、M&Aの件数は9年ぶりに減少傾向を見せています。特に感染予防のために渡航制限が世界中で広くしかれていることから、海外企業とのM&A件数が大きく減少しました。

しかし海外企業が関わるクロスボーダーM&Aと比較すると、国内企業同士のM&Aは前年比-1.9%ですのであまり大きく減少しているわけではありません。また全体のM&A件数は3,730件となっておりこれまでで3番目に多い数字となっています。

しかし件数だけでなくM&Aが成立した際の取引金額で見てみると、違う特徴も見えてきます。M&Aのパターン別に見てみると全体で14.7兆円で前年比-17.2%、国内企業同士のM&Aは3.3兆円で前年比-43.9%、国内企業から海外企業へのM&Aは4.4兆円で前年比-57.2%、海外企業から国内企業へのM&Aは6.9兆円で前年比4.8倍となっています。

この数字から考えるとコロナ渦であってもM&Aの成立件数はそこまで大きく減少しませんでしたが、1つ1つのM&Aの規模が小さくそれゆえに成立金額も低額のものが多かったということになります。

今後の予測

ここまでM&Aの現状や過去の件数などの状況について見てきましたが、それでは今後のM&Aはどのような動きを見せていくと考えられているのでしょうか?

まず全体的にみると、現状の増加傾向が今後も数年間は続いていくと考えられます。日本国内の市場規模が縮小することや人手不足などが問題となっていますので、それらの問題解決のために国内企業同士のM&Aは増加していくでしょう。

そして企業のグローバル化が当たり前になってきており海外への事業展開も盛んですので、海外に拠点を得るために国内企業から海外企業へのM&Aの利用が増えていくことが予想されます。また中小企業においては現在経営者の高齢化や後継者不足そして人材不足から、事業承継問題が深刻となっています。そして今後ますます深刻になっていくことが、容易に想像出来ます。これらの問題を解決するために事業承継を目的とするM&Aが活用されていくでしょう。

また事業承継のためのM&Aだけではなく、経営を始めるためのM&Aも増加していくと考えられます。全く何もないところから企業して事業を立ち上げるということは、リスクが非常に大きいものです。しかし既にある会社を買収して経営を始めることで、既にその会社が保有している技術力や顧客情報、取引先や人材などをそのまま引き継ぐことが出来るのです。そのため小規模のM&Aは増加していくでしょう。

その他に考えられる動向としては制度融資の返済が2021年4月頃から開始されるため融資によってなんとか経営を継続していた会社が再度、企業売却を検討するようになります。さらに業績が良い企業であっても、非中核事業の切り離しを行い、さらに業績を向上させようとします。このようなことから業界の再編がますます加速していくことが考えられますので、その手段としてM&Aは増加していくと考えられます。

中小企業M&Aの事例

大企業がこのような課題に直面する中で、中小企業のM&Aも年々増加してきています。前述した大企業のようにM&Aを成長するための手法として選択する場合だけでなく、中小企業特有の理由がそこにはあります。

その理由には大きく分けて「後継者問題(事業承継問題)」と「業界の先行き不安」の2つがあります。1つ目の「後継者問題(事業承継問題)」は、いうまでもなく大変深刻な問題です。後継者難から会社をたたむことになるケースが多く、廃業する会社のおよそ5割が経常黒字という異常な状況です。また2025年には6割以上の経営者が70歳を超えることになりますが、経済産業省の調査では現状で127万社の中小企業が「後継者は未定」の状態にあるということです。このままだと2025年には累計で650万人の従業員が職を失うことになり、約22兆円のGDPが喪失の危機にあるとも言われています。

(図2)社長平均年齢と交代率
社長平均年齢と交代率

(出典)帝国データバンク「全国社長分析」

また後継者問題に加えて業界の先行き不安という問題も、中小企業の経営者が抱える大きな悩みの1つです。大企業の再編に伴って中小企業もそのあおりを受けており、大企業の海外シフトによる空洞化で販売先を失ったり、集約化で大規模なリストラクチャリングの影響を受けたりと、これまでは堅調だった各業界で大きな変化が生じているためです。このようなケースでは、大手のグループ傘下に入って資本を増強し、経営基盤を強化する場合もあれば、逆に買い手となって同業他社を吸収合併して規模を拡大する場合もあります。このように、中小企業においてM&Aで解決できる経営課題は非常に広い範囲に及ぶと言えます。

ここからは実際に弊社で支援した中小企業におけるM&A(売却)事例を紐解いてみましょう。

後継者問題におけるM&A:原木屋産業株式会社 様

創業経緯

M&A後も代表取締役として会社の舵を取る大栗氏が1979年に創業。大栗氏と、妻・弟・母・妹2人と義兄が株主となり、コンクリート建材を中心として建設資材の商社としてスタートしました。

事業経緯

扱う品目を増やして経営の安定化を図るため、コンクリートのみならず鋳物やコンクリートの型枠の修理も手掛け、更に大手製鉄会社の特約店となり、側溝を塞ぐ鋼製蓋版やグレーチングまで扱うようになりました。品目が増えたため商品知識が必要になり、社員教育を徹底的に行い、特に金銭的な約束は絶対に破らないことを指導していました。結果として、「原木屋産業に販売しても間違いなく支払ってくれる」という認識が定着し、与信チェックが厳しいことから「原木屋が販売している会社に売っても大丈夫だ」と評判が同業社内で広がるほど信用を高めていきました。地域で確実に足場を築き、1999年には建築足場専門の関連会社である原木屋セーフティステップ株式会社を設立するなど、栃木県南部という商圏の中で順調に事業を拡大してきました。

M&A(売却)検討経緯

身内には後継者がおらず、土地や建物が家族の所有となっているため資産分与の面から考えても社員の中から後継者を選ぶことは現実的ではありませんでした。また、当時800社以上もあったお客様や300社ある仕入先、何より社員の雇用を考えた際に、原木屋を頼りにしてくださる方々の期待に応えなければと考え、検討をスタートしました。

検討結果

主に北海道~関東で建設資材の販売、工事の請負施工、資材運送を手掛けていた株式会社クワザワのグループの一員となりました。クワザワは、関東圏における商圏の拡大、また、原木屋セーフティステップがやっていた足場事業への進出を果たすことが狙いであり、原木屋としては逆に、クワザワの拠点がある茨城にも進出したいという狙いがあり、双方の想いが合致し、決断に至りました。

業界の先行き不安によるM&A:大阪エアコン株式会社 様

創業経緯

1970年、当時の三菱重工冷熱という会社が家庭用エアコンの販売会社を設立するというタイミングで、その技術部門として同社内に駐在しながら、現在も同社の会長として残っている若松氏が個人創業。翌年、大阪エアコン株式会社として法人登記し、大型エアコンの設置工事、およびメンテナンス事業に従事しました。

事業経緯

創業期は、まだ一般家庭にエアコンが普及し始めた時代で、技術者が不足していたため、近畿圏各地の特約店に出向き、技術的な説明や指導を行っていました。しかし、家庭用だけでは仕事の幅がなく、利幅も薄いため、付加価値を生む仕事としてビルや店舗向けの大型エアコンの設置工事も手がけるようになり、やがてゼネコンからの仕事を請け負い、工事だけでなくメンテナンスにも対応するようになりました。また、メンテナンスを手がけることで顧客との付き合いが長くなり、より広いニーズを拾えるようになり順調に事業を展開してきました。ですが、バブル期を経てゼネコンの倒産が相次ぎ、不渡りが出るなど業界にとっては厳しい状況を迎えることになり、経済環境が改善しても、再び不景気になると厳しいコストダウン要求を突きつけられることが目に見えており、業界全体としてゼネコンに依存する体質からの脱却が求められました。

M&A(売却)検討経緯

事業承継について悩んでいた訳ではないですが、業界の中で勝ち残っていくために、面白い会社と組んで面白い仕事をし、事業を拡大していきたいと考えるようになっていました。以前、弊社とは別のM&A仲介会社に相談していましたが、同業者の紹介ばかりで自社自体の事業拡大が見えないため検討を中断。改めて、同業者ではなく事業シナジーを生み出せるパートナーを見つけたいと考え、再度検討をスタートしました。

検討結果

厨房や店舗設備、内装、建物全体といった商空間づくりをトータルでプロデュースする株式会社ラックランドのグループの一員となりました。ラックランドとしては各分野における専門性を獲得するという成長戦略の中で、大阪エアコンが持つ空調に関する技術力や自社でメンテナンスを手がけることができる点に魅力を感じていました。また、大阪エアコンとしては、ラックランドのグループ内でM&Aによって既に加わっている各社が自由に事業を展開し、シナジーを発揮している点に魅力を感じ、決断に至りました。

このように、中小企業特有の理由により、M&Aを選択するケースが年々増加しており、経営戦略の一環として欠かせないものになってきています。

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