中小企業におけるM&Aの現状 統計データから見る動向・背景・今後の予測まで解説

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中小企業のM&Aの現状について

中小企業におけるM&Aは、後継者不在への対応だけでなく、成長戦略の一環としても活用が広がっています。現状を把握するには、国内M&A市場全体の動きに加え、支援機関への相談件数や成約件数、活用されるスキーム、業種ごとの傾向、実施時の課題などをあわせて見ることが重要です。

経営者の高齢化や後継者不在を背景に、親族内承継や社内承継だけでなく、第三者への承継としてM&Aを選ぶ中小企業が増えています。また、近年は技術、人材、販路を取り込む手段として、成長を目的にM&Aを活用する動きも広がっています。

一方で、「本当に買い手が見つかるのか」「市場はどのように変化しているのか」といった疑問を持つ方も少なくないでしょう。

本記事では、統計データをもとに中小企業M&Aの現状や増加の背景、最新動向、今後の見通しを解説します。

また、M&Aの意味と基本知識について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。


統計からみる中小企業におけるM&Aの現状

近年、国内のM&A件数は増加傾向にあり、こうした動きは大企業だけでなく、中小企業にも広がっています。中小企業の事業承継を支援する「事業承継・引継ぎ支援センター」への相談社数は、2015年度の4,924社から2025年度には16,045社へと約3.25倍に増加しました。

統計からみる中小企業におけるM&Aの現状
画像出典:令和 6 年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績について|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

成約件数も2015年度の209件から2025年度には2,132件へと、この10年で約10倍に伸びています。こうした統計からも、中小企業M&Aが広がりつつあることがわかります。

中小企業のM&Aが増加している背景

中小企業のM&Aが増加している主な背景としては、以下が挙げられます。

後継者不在の深刻化

日本では、中小企業の経営者の高齢化が進んでおり、後継者が見つからない企業が増えています。従来は同族承継(親族内承継)が主要な方法でしたが、近年は社内の内部昇格による承継が増加し、2024年にはその割合が親族内承継を上回りました。

後継者不在の深刻化
画像出典:親族内承継に関する現状分析と 今後の検討の方向性について

さらに、M&Aによる第三者承継の割合も緩やかに拡大しています。こうした変化の背景には、親族のなかに適任の後継者が見つからないケースが増えていることがあります。承継が進まないまま経営者の高齢化が進み、廃業か第三者への承継かという選択を迫られる企業も少なくありません。

そういった状況のなか、事業や雇用を維持する手段として、中小企業M&Aが現実的な選択肢として位置づけられるようになっています。

成長戦略としての活用

国内市場の成熟や競争の激化を背景に、事業規模を拡大し、競争力を高める手段として、M&Aを活用する企業が増えています

買い手・売り手の双方にとって、新たな技術や人材、販路を自社だけで一から構築するのは容易ではありません。そのため、既に強みを持つ企業と統合することで成長を加速させるという発想が広がっています。

成長戦略としての活用
画像出典:中小企業白書2025年版

実際に企業規模別のデータを見ると、規模が大きい企業ほどM&Aの実施割合は高く、売上規模10億円未満では1割未満にとどまる一方、100億円以上では約3割と高い水準です。

成長戦略としての活用
画像出典:中小企業白書2025年版

さらに一定規模以上の企業では、M&A実施後に売上が伸長しているケースも確認されています。このように、M&Aは後継者対策にとどまらず、企業の成長戦略の一つとして選択されています。

中小企業を含む日本国内のM&Aの事例について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

中小企業のM&Aの動向

近年の中小企業のM&Aは、件数の増加だけでなく、以下のような特徴が見られます。

スキーム別では株式譲渡が7割超を占める

中小企業のM&Aの動向
画像出典:登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果

中小企業のM&Aの現状を見ると、スキーム別では株式譲渡が7割超を占めており、最も多く活用されている手法となっています。一方、事業譲渡は約2割強にとどまり、合併や会社分割などその他の手法の割合は限定的です。

株式譲渡は会社を包括的に承継する手法であり、取引先との契約や従業員の雇用関係を原則として維持したまま経営権を移転できる点が特徴です。また、中小企業ではオーナー経営者が株式を集中して保有しているケースが多く、手続きの簡便さや事業継続性の観点から株式譲渡が選択されやすい傾向にあります。

一方で、特定の事業のみを切り出す場合には事業譲渡が活用されており、目的に応じて手法が使い分けられています。

業種別にM&Aの実施状況に差が見られる

業種別にM&Aの実施状況に差が見られる
画像出典:中小企業白書2025年版

2024年度のデータを見ると、中小企業のM&Aの実施割合は、業種によって差が見られます運送業郵便業、卸売業、不動産業、物品賃貸業では比較的実施割合が高い一方、宿泊業、飲食サービス業、建設業、製造業などにおける実施割合は、決して高くありません。

この背景にあるのは、業種ごとの構造的な課題です。実施割合が高い業種では、業界再編への対応や人手不足への対応が喫緊の課題となっています。こうした業種ごとの市場環境や競争状況の違いが、M&A活用の度合いにも影響を与えていることがうかがえます。

M&Aの実施にあたってはさまざまな課題も

中小企業のM&Aでは、実施にあたってさまざまな課題も指摘されています。

下記の表は、「中小企業白書2025年版」掲載の「M&A実施時の課題」、「M&A実施に当たっての障壁」の回答データのうち、それぞれ上位5項目をまとめたものです。

項目 M&A実施時の課題
(n=1,373)
M&A実施に当たっての障壁
(n=3,874)
買収判断に必要な情報収集・分析 41.9% 48.6%
買収先の発掘 19.8% 47.5%
買収資金の調達 22.5% 37.7%
買収先の経営陣・従業員の理解を得ること 34.0% 27.7%
仲介手数料の費用負担 25.1% 26.1%

「実施時の課題」「実施にあたっての障壁」共に最も多く挙げられているのが「買収判断に必要な情報収集・分析」であることから、適切な相手企業の状況を把握することの難しさがわかります

これに続くのが、「買収先の発掘」や「資金調達」です。特にM&Aをまだ実施していない企業では、相手探しや情報不足への不安が大きい傾向が見られます。さらに成約後の統合(PMI)では、買収先の経営陣や従業員との信頼関係の構築が重要視されており、制度や手続きだけでなく、人的な側面が成否を左右することも多いです。

なお、M&Aにおけるリスクや注意点については、下記の記事もご覧ください。

中小企業のM&Aを後押しする支援機関・取り組み

中小企業のM&Aを円滑に進めるため、近年は公的機関や民間企業による支援体制の整備が進んでいます。国の政策や相談窓口、仲介サービスの拡充により、これまでM&Aに踏み出しにくかった企業でも活用しやすい環境が広がりつつあります。

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業庁の事業として全国47都道府県に設置されている、公的な事業承継の相談窓口です。親族内承継だけでなく第三者承継(M&A)にも対応しており、相談受付から企業間マッチング、専門家の紹介までを一体的に支援しています。利用は原則無料で、地域の金融機関や商工団体と連携しながら運営されている点も特徴です。

中小企業が初めてM&Aを検討する際の相談窓口として活用されるケースも多く、事業承継や第三者承継を後押しする公的支援の中核的な存在となっています。

参考:静岡県事業承継・引継ぎ支援センター

M&A支援機関登録制度

M&A支援機関登録制度は、仲介業者アドバイザーといったM&Aの相談先を、中小企業が安心して利用できるようにするための制度です。中小企業庁が所管しています。

一定の要件を満たした支援機関を登録し、遵守事項や報告義務を定めることで、業界の透明性向上と利用者保護を図っています。登録状況は公開されており、企業は依頼先が登録機関かどうかを確認したうえで相談先を選ぶことが可能です。

こうした仕組みにより、情報格差や取引への不安が生じやすい中小企業でも、M&Aの相談先を選びやすくなっています。

参考:M&A支援機関登録制度

事業承継診断

事業承継診断は、金融機関や商工会議所などが経営者に対して行う簡易的なヒアリング制度です。後継者の有無や承継の予定時期、準備状況などを確認し、事業承継に関する課題を早期に可視化することが目的です。

また、診断結果をもとに、必要に応じて中小企業庁が推進する事業承継・引継ぎ支援センターや専門家へとつなぐ仕組みも整備されています。事業承継は後回しにされやすいテーマですが、こうした診断を通じて現状を整理し、早期に検討を始めるきっかけを作ります。

事業承継・M&A補助金

事業承継・M&A補助金は、事業承継やM&Aを進める際に必要となる専門家費用やデューデリジェンス費用などの一部を補助する制度です。中小企業庁が実施しており、中小企業がM&Aを実行する際に発生する仲介手数料や各種調査費用などの負担を軽減することを目的としています。

M&Aには一定のコストが伴うため、資金面のハードルが実行の妨げとなるケースも少なくありません。本制度は、一定の要件や審査を経て補助が行われる仕組みとなっており、補助金によって経済的負担を和らげることで、中小企業の円滑な事業承継や企業再編を後押しする役割を担っています。

中小企業におけるM&Aの今後の予測

日本では中小企業経営者の高齢化が進んでおり、後継者不在の問題は依然として大きな課題となっています。中小企業白書2025年版によれば、60歳以上の経営者は全体の過半数を占めています。後継者不在率はここ数年やや改善傾向が見られるものの、多くの企業が事業承継に関する課題を抱えている状況です。

こうした背景から、親族内承継や社内承継だけでなく、第三者への承継としてM&Aを選択肢とする企業も増えています。また、単なる承継手段にとどまらず、成長戦略としてM&Aを活用する動きも広がりつつあります。

人口動態の変化や経営環境の課題を踏まえると、後継者不在への対応や事業承継ニーズの高まりを背景に、中小企業におけるM&Aは今後も増加傾向が続く可能性が高いといえるでしょう。

まとめ

中小企業のM&Aは、後継者不足や市場環境の変化を背景に、事業承継や成長戦略の重要な手段として活用が広がっています。この成功の鍵を握っているのが、適切なパートナー選びや専門的な支援です。



よくある質問

  • なぜ中小企業でM&Aが増加しているのですか?
  • 主な背景は、経営者の高齢化による後継者不在の深刻化と、技術・人材・販路を取り込む成長戦略としての活用拡大です。事業承継だけでなく、競争力向上を目的にM&Aを選ぶ企業も増えています。
  • 中小企業ではどのM&Aスキームが多く使われていますか?
  • 中小企業のM&Aでは、株式譲渡が7割超を占め、最も多く活用されている手法です。契約関係や雇用を原則維持したまま経営権を移転しやすく、手続きの簡便さから選ばれやすい傾向があります。
  • 中小企業のM&Aは業種によって差がありますか?
  • はい、業種によって実施割合に差があります。運送業、郵便業、卸売業、不動産業、物品賃貸業では比較的高く、宿泊業、飲食サービス業、建設業、製造業では相対的に低い傾向があります。
  • 中小企業がM&Aを実施する際の主な課題は何ですか?
  • 買収判断に必要な情報収集・分析、買収先の発掘、買収資金の調達、買収先の経営陣や従業員の理解の確保、仲介手数料の費用負担などが主な課題です。制度面だけでなく人的な側面も成否に影響します。
  • 中小企業のM&Aを後押しする公的支援には何がありますか?
  • 事業承継・引継ぎ支援センター、M&A支援機関登録制度、事業承継診断、事業承継・M&A補助金などがあります。相談先の確保や費用負担の軽減を通じて、中小企業がM&Aに取り組みやすい環境づくりが進められています。

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