M&Aと税金の関係とは? M&Aで株式譲渡をした際のポイント

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M&Aの取引の手法によって必要となる税金の種類や税率が変わってきます。

ですがM&Aの取引を円滑に進めるには、税金の理解をすることが必要不可欠です。

この記事ではM&Aの税務についてや個人株主と法人株主が株式譲渡をした際の税務上の違い等について解説しています。

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個人と法人の所得と税金

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個人の所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類に分かれます。

このうち配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、譲渡所得(ゴルフ会員権等の売却)、一時所得、雑所得については、毎年1月1日から12月31日までの歴年単位で各所得を合算し、各種所得の所得控除後の課税所得に一定の税率を乗じて税額を計算する総合課税となっています。

利子所得、退職所得、山林所得、譲渡所得(土地や建物の売却、株式の売却)については、他の所得とは分離して所得・税額を計算する分離課税となっています。

法人の所得には、法人税(地方法人税を含む)、法人住民税(都道府県民税、市町村民税)の法人税割・法人事業税の所得割(地方法人特別税を含む)が事業年度単位でかかります。法人税を算出する際は、法人税申告書の別表四で会計上の税引後当期純利益をスタートに、加算調整(損金不算入・益金算入)と減算調整(益金不算入・損金算入)を行い、税務上の所得金額を算出します。

法人の所得金額に対して合計何%の税額がかかるかという税率は法定実効税率と呼ばれ、M&Aを検討する際の企業評価や事業計画書を作成する際に必要となります。

オーナー経営者の株式譲渡で考えられるメリット

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オーナー経営者がM&Aで株式譲渡をした場合、つまり株主である個人が株式を譲渡した場合は、分離課税で株式譲渡所得に対して所得税、復興特別所得税、個人住民税の税金がかかります。2021年6月現在で、現行の税率は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+個人住民税5%)です。株式譲渡所得は「収入金額-取得費・譲渡費用」で計算されます。

総合課税の最高税率は約56%なので、役員報酬(給与所得)複数年分とM&Aの際の株式譲渡金額が仮に同額であった場合は、税率の差額分だけM&Aの方が多くの手取り金額を得られるということになります。

また、株主である個人が役員であれば、株式譲渡に役員退職金を組み合わせることにより、税負担を最小化させることができます。

役員退職金は、「最終報酬月額×勤続年数×役職に応じた功績倍率」で計算され、退職所得は(退職金-退職所得控除)×1/2で計算されます。役員退職金は、譲渡オーナーだけでなく、譲受企業にとってもメリットがあります。

株式譲渡でM&Aをした場合は、投資額について経費処理をすることができないものの、株式譲渡代金の一部を役員退職金として譲渡対象企業からオーナー経営者に支給することにより、対象企業に経費処理をすることができ、役員退職金の支給分だけ株式取得代金を圧縮できるメリットがあります。ただし、適正水準を超えた役員退職金の過大部分については税務調査で損金不算入となる可能性もありますので個別に専門家に相談の上、適正な水準に留めておいたほうがよいです。

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個人株主と法人株主が株式譲渡をした際の税務上の違い

個人株主と法人株主がM&Aで株式譲渡をした場合の主な違いとしては、税率、譲渡時の取得費、相続後3年10ヶ月以内の特例、他の所得との通算、繰越欠損金といった点が挙げられます。

税率について

まず、税率については、個人株主が20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+個人住民税5%)であるのに対して、資本金1億円以下の法人株主は約34%(法人税、地方法人税、都道府県民税、事業税、地方法人特別税)と異なります。

譲渡時の取得費については、個人株主が「譲渡収入×5%」が取得費として最低限認められるのに対して、法人株主は取得費が認められていません。

相続後3年10ヶ月以内の特例について

相続後3年10ヶ月以内の特例について、個人株主では株式譲渡所得の計算時に、株式譲渡に係る相続税を取得費に加算できるという特例と、非上場株式を発行会社に譲渡した場合にみなし課税の適用なく、通常の株式譲渡課税扱いという特例が使えるのに対して、法人株主はこの特例がありません。他の所得との通算について、個人株主の株式譲渡所得は分離課税のため他の所得とは分離して所得計算されます。

非上場株式同士の譲渡損益については、同一年のみ通算できます。

法人株主については、譲渡損、譲渡益共に他の所得と通算することになります。

繰越欠損金について

繰越欠損金について、個人株主は非上場株式の譲渡損失は繰越できませんが、法人株主については、欠損金の繰越控除を利用することが可能です。

法人税の別表一(一)で翌期以後に繰り越す欠損金の総額を、法人税の別表七(一)(法人事業税では第六号様式別表九)により、各期に発生した欠損金の使用期限を確認することができます。繰越欠損金の充当については、資本金1億円以下の法人であれば全額を充当できますが、資本金1億円超の法人や、資本金5億円以上の法人による完全支配関係がある法人(100%子会社等)ついては一部しか充当できません。

M&Aの税務は専門家のアドバイスが必須

M&A譲渡時に特に話題に挙がる個人の所得税と法人税について、押さえておきたい税務のポイントをまとめました。

M&Aが行われた場合の税金について、各当事者で税務の取扱いが異なります。選択されるスキームや個別の事情により、タックスプランニングが異なりますので、個別の事例についてはM&Aアドバイザーや税理士・会計士に問い合わせいただき、確認していただくことをおすすめします。

M&A譲渡時における各当事者の税務のポイント

※スライドしてご覧ください

各当事者 税務取扱い
個人株主

「株式譲渡所得×20.315%」の所得税、復興特別所得税、個人住民税の税金がかかる。

上記の内訳は、所得税15%+復興特別所得税0.315%+個人住民税5%

→クロージング日の翌年2月16日~3月15日の期間で確定申告する。

→譲渡収入×5%を取得費とできる

→相続後3年10ヶ月以内であれば、相続で承継した株式にかかった相続税を上記の取得費に加算できる

いわゆる不動産M&Aは保有期間に注意(株式譲渡の対象企業の資産のうち、土地や借地権の保有割合が70%以上を占める場合、不動産の短期譲渡所得とみなされ、39.63%の課税となる可能性がある。)

配当金を受け取ったり、譲渡企業株式を譲渡企業に譲渡した場合、「配当所得×累進税率(最高約50%(配当控除後)」の所得税等がかかる。

→支払法人から「配当額×20.42%」の税金が差し引かれた額を受け取る形となり、一定額超の配当の場合は翌年に確定申告し精算する。

法人株主 株式譲渡所得は他の所得と通算され、法人税等の税金がかかる。
配当金を受け取ったり、譲渡企業株式を譲渡企業に譲渡した場合、一定額を非課税とでき、差し引かれた源泉徴収税額は法人税額から控除できる。
100%子会社から土地等の現物配当を受けた場合、全額が非課税。
役員(個人)

受け取った役員退職金に関し、「(退職金-退職所得控除)×1/2×累進税率(最高約56%)の所得税、復興特別所得税、個人住民税の税金がかかる。

→対象企業から税金が差し引かれた額を受け取る形となる

→勤続年数が5年以下の役員への退職金を支給する場合には、1/2できないので注意

不動産(建物、土地)の譲渡では、短期譲渡所得に39.63%、長期譲渡所得に20.315%の所得税等がかかる。

→譲渡年の1月1日時点で保有期間5年以下は短期譲渡所得、5年超は長期譲渡所得となる。

→譲渡日の翌年2月16日~3月15日の期間で確定申告する。

譲渡企業

役員退職金は適正額まで損金とできる税負担軽減効果あり。

役員退職金支給等による損金は、益金と通算しきれない場合、繰越欠損金として翌期以降9年(平成29年4月以後開始事業年度発生分からは10年)繰越できる。

退職金支給時に税金の源泉徴収を行い、役員に代わって翌月10日までに納付する。

配当金の支払や、自己株買いを行った場合、「配当額×20.42%」

の源泉徴収を行い、翌月10日までに納付する。

譲受企業が資本金1億円超、5億円以上の場合、適用できなくなる優遇措置がある。

課税は生じない。

→譲受企業が連結納税適用グループで100%株式譲渡の場合には、土地等の含み損益を実現させる必要がある。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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