親族外承継とは? メリットや事業承継税制について解説

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親族外承継は、企業の継続経営を確保するための重要な選択肢の一つです。中小企業における親族外承継の割合が増えている背景、親族外承継と親族内承継、第三者承継の違い、親族外承継のメリットとデメリット、さらには成功に必要なポイントなどを本記事で詳しく解説します。

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1. 親族外承継とは

親族外承継とは
親族外承継とは「血縁や親族関係ではない第三者に事業を継がせること」です。

  • 社内の役員や従業員(内部昇格、MBO・EBO)
  • 社外人材の登用(外部招へい、M&A)

親族外承継の詳細については、後ほど解説します。

2. 中小企業における
親族外承継の割合増加と
その背景

日本での親族外承継は、2000年代以降上昇傾向にあります。
下記が考えられる原因です。

  • 経営者の高齢化
  • 職業の多様化
  • 経営の効率化

2018年に、日本政策金融公庫が発表したデータによると1990年から2016年の間で、年商1億円未満の企業を運営する経営者の平均年齢が、5.3歳上昇したと発表されています。
少子高齢化問題によって、経営者が子供を持つケースが少なくなっていることも一因です。
また、職業の多様化の影響もあり、子供が親の企業を引き継ぐことも少なくなっています。
参考:日本政策金融公庫 日本公庫総研レポート(2018年6月 親族外承継に取り組む中小企業の現状と課題~中規模企業の事例から~)

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3. 親族外承継と
第三者承継の違い

親族外承継と第三者承継の大きな違いは「赤の他人」かどうかです。
第三者承継とは、株式譲渡や事業譲渡によって「社外の第三者」へ会社を承継する方法のことです。M&A(Mergers and Acquisitions)とも呼ばれています。
親族外承継には、全く関係のない第三者も含まれますが、従業員や会社関係者などのいわゆる「身内」が承継する意味合いが強い言葉です。
しかし、第三者承継は、仲介業者や国の支援によりこれまで自社と全く関わりのなかった相手に引き継いでもらう方法です。
数多くの人間から後継者を選べるため、経営能力に長けた者を選べますが、これまで自社に関わったことのある人間ではないため、大きく事業が変わる可能性もあります。

4. 親族外承継と
親族内承継の違い

親族外承継との違いは「血縁、戸籍上で親族であるか」どうかです。
親族内承継とは、経営者の子供や親族などに事業を引き継がせる方法です。
親族内で事業を引き継ぐことは既定路線だと思われている場合も多く、取引先や従業員とのトラブルが生まれにくい承継方法といえます。
ただし、経営者の子どもや親族とはいえ、本当に経営能力を持っているかは別問題です。
承継後に経営が傾き事業を辞めなければならない可能性もあるため、本当に承継させるかは、冷静に判断する必要があります。

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5. 2種類の親族外承継

2種類の親族外承継
親族外承継には「自社に関係あるか」で判断し、大きく分けて下記の2種類が存在しています。

  • 幹部や社員への承継(内部昇格やMBO・EBO)
  • 社外人材への承継(外部招へいやM&A)

1つずつ詳しく解説します。

幹部や社員への承継(内部昇格やMBO・EBO)

自社に関係のある方へ承継させる方法が下記2つです。

  • 内部昇格
  • MBO

内部昇格は、社内の人間に承継させる方法です。
自社に関係の深い者のため、経営への強い意志を持っている場合が多くあります。
株式はオーナーが保有しつつ運営を承継させるため、権利ごと渡すわけではありません。
MBO(Manegment Buy Out)は、経営者が、EBO(Employee Buy Out)は従業員が、主体となり株式や資産を受け取る手法です。
どちらも長年会社に関わる人材への承継ですので、経営の一体性が持続できますが、後継者に大きな責任がのしかかったり、株式取得時の資金力が求められたりするため誰でも承継できるわけではありません。

社外人材への承継(外部招へい・M&A)

全く自社に関係のなかった方へ承継させる方法は下記の2つです。

  • 外部招へい
  • M&A

外部招へいは、取引先の企業や金融機関など外部から後継者を招く方法です。
社内での業務内容や状況を理解していない場合が多いため、従業員から支持されるような人物を選ぶ必要があります。
M&Aは先述のとおり第三者承継とも言われ、株式や事業を第三者へ譲渡する承継方法です。
社内外問わず後継者を広く探せるため、自社に最もマッチする人材に承継させることができます。

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6. 親族外承継のメリット

親族外承継は親族内でのもめ事を避けられるなど、メリットが多くあります。特に実感できる親族外承継のメリットは以下の2つです。

  • 後継者選択が自由になる
  • 経営の一体性を確保できる

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

後継者選択が自由になる

親族内承継では、自社を良く知っている人材に承継できる反面、子どもや親族内の狭い範囲で後継者を選ばなければならないため、適任者が見つけられない可能性があります。
しかし、親族外承継は、社内社外問わず多くの人材を後継者候補として選べるため、本当に自社に合った人材へ承継させられます。
また、ヘッドハンティングという形で優秀な人材に承継できれば、業績や会社の規模を拡大することができるでしょう。

経営の一体性を確保できる

自社で勤務したことのない子供や親族が承継する場合、経営の方針や理念が大きく変わり、業務内容や進め方が大きく変わる可能性があります。
一方、親族外承継を行い、社内の幹部や長期間勤務している従業員に引き継ぐことができれば、事業の方向性が大きく変わる可能性は低いといえます。
また、これまで全く自社に関係ない場合でも、現経営者や会社の理念に共感できる人材を選ぶことで、従業員や幹部からの反発も抑えられます。

7. 親族外承継のデメリット

親族外承継のデメリットは下記の2つです。

  • 後継者の資金負担が大きい
  • 個人保証の引き継ぎに多くのコストがかかる

デメリットを把握した上で、自社に適しているか判断しましょう。

後継者の資金負担が大きい

中小企業の多くは、融資の対象が経営者個人になっていたり、担保を差し入れていたりする場合も多くあります。
そのため、後継者は現経営者からのすべての債務を引き継がなければなりません。

また、自社株式の相続・贈与する際に税金がかかることが多く、後継者に引き継ぐだけの視力があるかが問題になります。
経営力や業務遂行能力などはもちろん重要になりますが、後継者の資金問題を解決できるかも重要なポイントです。

個人保証の引き継ぎに多くのコストがかかる

現経営者の個人保証を後継者が引き継ぐ場合は、金融機関からの借入や事務所の賃貸契約など、後継者が会社の債務を全て引き受ける形になります。
また、後継者の保有資産状況が少なく、経営の実績が乏しい場合は、債務者からの信用が得られないケースもあります。
実際に承継するまでに解決しなければならない問題が数多くあるため、後継者探しはできるだけ早めに動かなければなりません。

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8. 株式を譲渡する場合の
親族外承継の流れ

実際に承継を行う場合、どのように進めていくのでしょうか。
株式を譲渡する親族外承継の場合、下記のような流れで進んでいきます。

  1. 後継者の選定
  2. 株式譲渡の交渉
  3. 株式譲渡契約の締結
  4. 株式譲渡、株主名簿の書き換え

1.後継者の選定

安定した会社経営ができる優秀な後継者を探すことが最も重要です。
MBOであれば、後継者の人柄や能力を十分に把握している上で、自社に理解もある人材を選ぶことができるため、安心して事業を任せられるでしょう。
一方、外部招へいの場合には、これまでの自社になかった新しいビジネスが生まれるかもしれません。
これからの自社に何を期待するのか、どういう未来を描いているのかを明確にして後継者選びを行いましょう。

2.株式譲渡の交渉

後継者候補との株式譲渡の交渉です。
一般的に株式の譲渡価格は、貸借対照表や損益計算書やキャッシュフローの状況など、企業価値の客観的な評価によって決定されます。
企業価値の客観的な評価は、会計事務所が専門的に行っているため、スムーズな承継のためには、会計事務所との円滑な連携が必要です。
また、主な議題は株式の譲渡価格になりますが、従業員の雇用維持や会社経営の方針などが条件として付与されるケースもあります。

3.株式譲渡契約の締結

後継者と株式譲渡の条件が合致すれば、内容を株式譲渡契約にまとめて、経営者と後継者の間で契約を締結させます。
株式譲渡契約書は、契約条件を網羅的にわかりやすく記載することが重要です。
双方での認識が変わる記載をしてしまうと、締結後にトラブルになる可能性があります。
トラブルを防ぐために、株式譲渡契約の作成、締結の際は、専門家である弁護士への相談がおすすめです。

4.株式譲渡、株主名簿の書き換え

契約締結後、前提条件が満たされたことを確認してから、株式譲渡を行います。
株式譲渡の実行は、下記のように会社によって各種「会社法」で定められている手続きを行う必要があります。

  • 株式会社の場合:株式譲渡について対抗要件を用いるために、名義変更(株主名簿の書き換え)が必要【会社法 第130条 第1項】
  • 非公開会社の場合、株式譲渡を行うこと自体に、原則株主総会決議での承認が必要。【会社法 第139条 第1項・第309条 第2項】

ただし、取締役会を設置している企業の場合、取締役会決議の決定で承認を行えます。

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9. 親族外承継に役立つ制度
「事業承継税制」

事業承継税制とは、非上場企業や中小企業の後継者が株式を相続した場合、株式にかかる贈与税や相続税を猶予や免除される制度です。
ただし、実際に適用されるためには、対象株数や承継パターンに制限があるため、公的に発表されているマニュアルを確認してください。
中小企業経営者の平均年齢の上昇や後継者不在による廃業数の高さといった課題が注目されていることが制度創設の背景として挙げられます。
優秀な人材への承継を資金面のみの課題で諦めることがないよう、利用できる制度はきちんと使用しましょう。
税理士や専門家に相談することで漏れなく制度を利用できるので非常におすすめです。
参考:経営承継円滑化法申請マニュアル|経済産業省

10. 親族外承継を
成功させるためのポイント

親族外承継を成功させるためのポイントは下記の3つです。

  • 計画的な後継者育成
  • 事業関係者への説明
  • 専門家への相談

親族外承継は、事前準備が重要です。
ポイントを押さえてスムーズに承継できるようにしましょう。

計画的な後継者育成

親族外承継では、後継者を社内、社外問わず多くの人材から選択できます。
そのため自社へのマッチ度や熱意の見極めや後継者としての育成も必要になるため、多くの時間がかかります。
計画的に後継者を探して育成している方が、事業を続けていく上で心理的に安心です。
また、後継者に経営だけでなく事務や営業、製造といった多様な学びの機会を与えることで、業務遂行能力以外に経営能力をさらに向上させられます。
「まだ早い」と思わず、自社を継続して発展させていきたいと考える場合は、できるだけ早い内から後継者候補を探して、育成しておきましょう。

事業関係者への説明

親族内承継に比べて、親族外承継は事業関係者に理解してもらうのに時間がかかる場合があります。
例えば、取引先の金融機関への説明を怠ると、新たな借入ができなくなる可能性もあります。
一般的に、金融機関が中小企業に借入を実行する場合は経営者が個人保証を立てます。
これは、担当者と経営者の信頼関係があってこその承認に繋がる場合もあるため、無断で承継を行うと信頼関係が崩れてしまいます。
事業関係者への説明は必ず行いましょう。

専門家への相談

会社によって抱える悩みや課題は異なります。
そのため、インターネット検索で表示される情報ではカバーしきれず、詳細がわからないケースが多くあります。
自社が抱える疑問を完全に解決したい場合は、専門家への相談がベストです。
事業承継の中でもM&Aを検討されている方は、ぜひ弊社へご相談ください。
経営者様へ寄り添い抱えている課題の解決をサポートいたします。

11. まとめ

経営者の高齢化や少子化問題などによって、親族外承継のケースの増加が予想されます。
さらに、キャリア選択の幅が拡がったことにより、子供や親族がいても引き継ぐことを拒否される可能性もあります。
事業が忙しい場合、後継者探しは後回しになりがちですが、候補者を探したり育成したりするためには多くの時間が必要になるため、できるだけ早期から準備を行いましょう。
また、事業承継は難解でわかりにくく、個人で対応できないこともあるため、事業承継を考えている方は、一度専門家に相談することをおすすめします。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

詳細プロフィールはこちら
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