ノンコア事業とは? ノンコア事業を売却するメリットやスキームを解説

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ノンコア事業とは、コア事業以外の事業のことで、非中核事業とも呼ばれています。従来、多くの企業ではリスク分散を図る目的で事業の多角化を進め、ノンコア事業を広く手がけてきました。しかし、近年では、選択と集中により経営の効率化を図るため、ノンコア事業からの撤退やM&Aによる売却や撤退が増えつつあります。
この記事では、ノンコア事業の意味や定義の他、M&Aによってノンコア事業を売却するメリット、注意点を解説します。ノンコア事業を売却するスキームや事例も紹介しているので、M&Aをご検討の方はぜひ参考にご活用ください。

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1. ノンコア事業とは


近年、M&Aによるノンコア事業の売却が増えています。M&Aを成功させるにはノンコア事業に関する理解が不可欠です。ここでは、ノンコア事業の意味や定義、コア事業との違いの他、ノンコア事業の売却が増加している背景を解説します。

1-1. ノンコア事業の意味・定義

ノンコア事業とは、複数の事業を展開する企業において中核となるコア事業以外の事業を指し、非中核事業とも呼ばれています。
一般に、ノンコア事業はコア事業よりも収益力が低く、割かれているリソースが少ない傾向があります。ただし、経営の多角化やリスクヘッジを目的として、コア事業以外に複数のノンコア事業にリソースを振り分けている企業は少なくありません。
一方で、コア事業にリソースを集中させるためにノンコア事業から撤退、またはM&Aでノンコア事業を売却するケースが増えてきています。

1-2. コア事業との違い

ノンコア事業とコア事業との違いは、企業が手がける事業のうち中核的であるかどうかです。コア事業は、企業が行う事業のなかで中心的な存在を担う中核事業です。そのため、将来性を見込んでリソースが集中しやすく、ノンコア事業の切り離しや売却により確保されたリソースを投下するケースは少なくありません。
一方で、ノンコア事業は非中核事業であり、コア事業に比べて注力度は低くなります。収益性は低く投入されるリソースが少ない一方で、複数のノンコア事業を抱えることでリスク分散を行い経営基盤を安定させる企業もあります。

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1-3. ノンコア事業の売却が増加している背景

ノンコア事業の売却が増加している背景には、国内において多角化経営よりも経営効率が高く、業績が伸びやすい「選択と集中」を優先させる企業が増えていることが挙げられます。
1980年代以降、国内市場では既存事業に頼ることなく複数のノンコア事業を展開し、新規領域の開拓やリスク分散を目的とする経営の多角化が進められました。しかし、ノンコア事業は人件費や管理費などのコストを生じさせる一方で、収益性に乏しいものも少なくありません。また、近年問題となっている人材不足の観点からもノンコア事業にリソースを割けないケースが増えています。このような背景から、コスト削減やリソースをコア事業に投下させるためのノンコア事業の売却が増加しています。

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2. ノンコア事業をM&Aによって売却するメリット

ノンコア事業をM&Aによって売却するメリットは、次の3点です。

     
  • 経営の効率化が図れる
  • コア事業に人材を集中できる
  • コストカットになる

2-1. 経営の効率化が図れる

ノンコア事業をM&Aによって売却すれば経営の効率化が図れます。企業にとって不要となったノンコア事業を売却することで、従来はノンコア事業に割かれていたリソースをコア事業に投下できるようになるからです。
コア事業にリソースを集中させると、経営を効率化できるため結果的には利益の増加が見込めるでしょう。また、ノンコア事業の売却が高値となれば株主や投資家からの評価も上がり企業価値全体の向上が期待できます

2-2. コア事業に人材を集中できる

コア事業に人材を集中できるメリットもあります。近年では人材不足の影響もあり、たとえ優秀な人材を雇用したいと採用活動の計画を立てても採用しにくいケースが増えています。ノンコア事業を売却すれば、従来はノンコア事業に携わっていた人材をコア事業に振り分けることが可能です。
一般的に、コア事業に関する業務は企業の中核を担うため、自身の担当する業務が企業利益に貢献していることが業務に対するモチベーション向上にもつながります。また、優秀な人材をコア事業に集中させれば、新たな戦略やイノベーションが生まれる可能性も高まるでしょう。

2-3. コストカットになる

M&Aによる売却の対象とされるノンコア事業の多くは、収益性が低く将来性も見込めない事業であり、継続するほど人件費や管理費などのコストが伴います。このような事業を切り離すことはコストカットにつながります。
また、コア事業にコストやリソースを集約させ、売却によって得られた資金をコア事業に再投入すればより事業の成長を加速できるでしょう。

3. ノンコア事業を売却する際の注意点

ノンコア事業を売却する際の注意点は、次の3点です。

     
  • 特定事業に集中するリスクがある
  • 従業員や株主から反発される可能性がある
  • 取引先に説明する必要が生じる

3-1. 特定事業に集中するリスクがある

ノンコア事業を売却する際は、特定事業への依存度が高くなる点に留意が必要です。依存度が高まれば企業としての柔軟性が失われ、市場の変化に弱くなるリスクが生じます。また、特定の事業に対して資金やリソース、人材を集中的に投下すると、選択が不適切だった場合に損失が増す可能性もあるでしょう。
重要なのは、選択と集中における「選択」の見極めです。短期的に効果が期待される事業にリソースが集中し、長期的に成果を出すべき事業への投資が断たれると、将来の展望を描きづらくなることも懸念されます。

3-2. 従業員や株主から反発される可能性がある

事業売却に対して従業員や株主からの反発を招く可能性もあります。従業員にとって事業が残るかどうかは労働環境に関わる重要な問題です。たとえコア事業として残っても、ノンコア事業として切り離されたとしても、労働環境が大きく変動するため事前に丁寧な説明が必要です
また、企業の事業戦略への変化に不安を感じる株主のなかには、コア事業に専念することで生じるリスクや成長可能性の低下に不安や不満を抱く人が少なくありません。従業員と同様、なぜM&Aによる事業売却に至ったのか、将来的な収益性はどのように変動するのかなどを説明する機会が求められるでしょう。

3-3. 取引先に説明する必要が生じる

M&Aによるノンコア事業の売却後は事業の運営主体となる企業が変わるため、取引先への個別の説明が必要になります。なぜなら、運営主体が変わると場合によっては取引内容や条件も異なる可能性があり、取引先は不安を感じるからです。
特に、経営者との関係性によって取引が継続している場合には、事業売却前に取引先への説明の機会を設け、引き継ぎに応じてもらえるかなどの確認をするのが肝要です。

4. ノンコア事業を売却するスキーム

ノンコア事業を売却する代表的なスキームに「カーブアウト型M&A」があります。カーブアウトM&Aとは、自社の行う複数の事業からノンコア事業を切り離し、独立させた事業を売却する手法です
カーブアウトにおいて事業の一部を譲渡する場合には、一般に事業譲渡や会社分割のスキームが用いられます。事業譲渡では、事業の売り手企業が有するリソースを買い手企業に個別に承継しなければなりません。一方、会社分割では、企業の有する権利義務の一部もしくはすべてを買い手企業に承継させます。
カーブアウトにより、売り手企業はコア事業にリソースを集中投下でき、切り離した事業も譲渡先で発展する可能性が見込めます。ただし、買い手企業では売り手企業から引き継いだリソースをうまく活用できないなど、事業がうまくいかないケースもあるので注意が必要です。

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5. ノンコア事業売却の例

ノンコア事業売却の成功例として、武田薬品工業の「シードラ(Xiidra)」「タコシール(TachoSil)」の事業譲渡、日立製作所のクラリオン売却の2件を解説します。

5-1. 武田薬品工業の「シードラ(Xiidra)」「タコシール(TachoSil)」の事業譲渡

2019年1月にアイルランドの製薬メーカーであるシャイアーを買収した武田薬品工業株式会社は、同年5月にドライアイ治療用の点眼薬「シードラ(Xiidra)」と手術用パッチ剤「タコシール(TachoSil)」の事業譲渡を発表しました。
これらの事業はシャイアーに由来する製品であり、事業譲渡によりシードラは53億ドル、タコシールは4億ドルで、それぞれ別の企業に売却されました。
この事業譲渡により、武田薬品工業は買収で抱えた巨額な有利子負債の削減とコア事業である疾患領域への特化を実現しています

5-2. 日立製作所のクラリオン売却

2018年10月、株式会社日立製作所は、連結子会社であり車載情報機器などを扱うクラリオンをフランスの大手自動車関連技術メーカーのフォルシアに総額899億円で売却すると発表しました。
この背景には、自動車業界においてグローバル競争が加速するなか、フォルシアの有する事業基盤や顧客基盤、技術力をクラリオンに活用させ、企業価値の向上と成長加速を促す目的がありました。
日立製作所は売却益を制御技術を備えた自動運転などのモビリティ分野を包含した、社会イノベーション事業の強化に役立て、その成長を加速させています。

6. まとめ

ノンコア事業とは、コア事業に比べて収益性が低く、注力されるリソースも少ない非中核的事業です。近年、選択と集中により、リソースをコア事業に集中させて経営効率や企業価値を向上させたい企業によってM&Aによるノンコア事業の売却が進んでいます。
売却スキームにはカーブアウト型M&Aが採用されるのが一般的であり、事業譲渡や会社分割、株式譲渡などの手法がとられます。ただし、M&Aの実施には高度な知識を要します。そのため、ノンコア事業の見極めや売却は専門家のサポートを受けて進めるのが肝要です。
M&A業界において豊富な実績と東証プライム上場の信頼をもつM&Aキャピタルパートナーズでは、M&Aに関する相談を広くお受けしております。ノンコア事業の売却をご検討されている経営者様はお気軽にご相談ください。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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