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退職所得は、退職金制度のある勤務先において、働いた報酬の一部として勤務先から退職時に支払われます。退職所得は大きな一時収入であり、生活設計や節税対策の一環としても重要です。退職所得は税制上特別な扱いがされ、所得税法上の取り扱いや計算方法について理解することが重要です。
本記事では、退職所得の基本的な概念から、具体的な計算例、実務での計算例、税務上の留意点まで、詳しく解説します。
このページのポイント
~退職所得とは?~
退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社または信託会社から受ける退職一時金なども退職所得と定義される。また、労働基準法第20条の規定により支払われる解雇予告手当や賃金の支払の確保等に関する法律第7条の規定により退職した労働者が弁済を受ける未払賃金も退職所得に該当する。
1. 退職所得の概要
1-1. 退職所得とは?
「退職所得」とは、国税庁のウェブサイトによると、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社または信託会社から受ける退職一時金なども退職所得とみなされます。
また、労働基準法第20条の規定により支払われる解雇予告手当や賃金の支払の確保等に関する法律第7条の規定により退職した労働者が弁済を受ける未払賃金も退職所得に該当します。
2. 実務での計算方法
2-1. 退職所得の計算表
退職所得の計算は複雑です。一般的に退職金の計算は、勤務年数や年齢、職種などに基づいて行われます。さらに、退職金の一部は税制上特別な控除があります。所得税法では、一定の条件を満たす場合、退職金の一部を退職所得控除として控除することが可能です。これにより、税負担を軽減することができます。
実際の計算例としては、国税庁のウェブサイトによると、退職所得の金額は、次のように計算します。
「(収入金額(源泉徴収される前の金額)- 退職所得控除額)× 1 /2 = 退職所得の金額」
また、退職所得控除額は、次のように計算します。
「勤続年数が20年以下の場合:40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には80万円)」
「勤続年数が20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)」
例えば、現時点において、退職金が1,800万円、勤続年数が25年の場合、退職所得控除は1,150万円(=800万円+70万円×(25年-20年))となり、退職所得は325万円(=(1,800万円-1,150万円)×1/2)となります。
3. 所得税額の計算
退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算します。
課税退職所得金額が決まると、これをもとに所得税を計算します。国税庁が公開している「所得税の速算表」によると、退職所得が325万円の場合、所得税率が10%、控除額が97,500円となり、所得税の計算式に当てはめると所得税額(復興特別所得税も含む)は、232,277円(=(325万円×10%-97,500円)×1.021)となります。
また、「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合、退職金等の支払者が所得税額および復興特別所得税額を計算し、その退職手当等の支払の際、退職所得の金額に応じた所得税等の額が源泉徴収されるため、原則として確定申告は必要ありません。ただし、医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合は、確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があります。
4. まとめ
退職所得は、働いた報酬の一部であり、大きな一時収入となります。その計算方法や税制上の取り扱いは複雑であり、専門家に確認するとともに、適切な理解と対策が求められます。また、退職所得の計算方法や退職所得控除の適用条件を理解することで、退職所得を最大限に活用し、税負担を軽減することも可能となります。