コングロマリットとは? 手法やメリット・デメリット、具体的な事例を解説

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VUCA時代といわれる経営環境の変化が著しい近年では、「コングロマリット」と呼ばれる経営形態が注目されています。コングロマリットは、多角化経営とも称される経営手法の一つです。
本記事では、コングロマリットとは、どのような経営形態を指すのか、コングロマリットによる影響、メリットやデメリット、他の企業形態との違いについて、わかりやすく解説します。

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1. コングロマリットとは

コングロマリットとは、分野の異なるさまざまな業種や事業展開を行う企業や企業グループのことをいいます。日本企業の例でいうと、エレクトロニクス・金融・エンタメと幅広く事業展開する「ソニーグループ株式会社」や、ネット通販・金融・通信などに事業展開する「楽天グループ株式会社」などが挙げられます。
「楽天経済圏」のような数々の事業でシナジー効果を生み出すことや、複数の事業にリスクを分散させることが主な狙いです。なお、コングロマリットは、Conglomerate(集団になった)という英語が語源となっています。

1-1. コングロマリットが注目される背景

VUCA時代(Volatility 変動性・Uncertainty 不確実性・Complexity 複雑性・Ambiguity 曖昧性)と呼ばれる、先行きが不透明な昨今の経済環境において、企業グループとしてのリスクマネジメントに注目が集まっています。
いわゆる「多角化経営」であるコングロマリットは、リスクを分散させることで、変化の激しい経営環境に対応するだけでなく、複数事業のシナジー効果が経営にとって大きな強みを生み出すことが可能です。
そのため、リスクマネジメントや企業グループとしての競争力強化の観点から、近年では関心が向けられています。

1-2. コングロマリット型M&Aとは

コングロマリット型M&Aとは、既存事業と関連のない新規事業への参入を目的としたM&Aのことです。
既存事業の強化を図るために、同じ業種間で経営統合をする「水平型M&A」や、サプライチェーンマネジメントの観点から上流企業や下流企業を統合する「垂直型M&A」とは異なる、新たなM&Aとして注目を集めています。
また、大企業だけでなく、中小企業における後継者不足問題を解消するための手段として利用されるケースもあります。

2. コングロマリットによる影響

コングロマリットによる影響として、コングロマリット・プレミアムと、その逆であるコングロマリット・ディスカウントという2つの効果について解説します。

2-1. コングロマリット・プレミアム

「コングロマリット・プレミアム」とは、グループ企業・事業間のシナジー効果によって企業価値の向上が期待され、株価が向上することです。
事業同士のシナジーだけではなく、グループとしての経営管理や資金調達を行うことで、「コーポレートシナジー」を生み出すことも、コングロマリット・プレミアムにつながります。
コーポレートシナジーは、無駄な業務の削減や業務の重複排除といった、より効率的なグループ経営管理体制の構築によってもたらされます。特に、親会社側の経営ノウハウが充実している場合には、グループ企業へ展開することで大きなシナジー効果が期待できます。

2-2. コングロマリット・ディスカウント

コングロマリット・プレミアムとは逆の効果として、「コングロマリット・ディスカウント」が起こるケースもあります。
複数事業の展開により経営管理が複雑となって非効率化することや、グループとして想定していたシナジー効果が得られない場合には、株価が下落する要因となるでしょう。
また、事業が複雑化することによって、投資家サイドとしては企業の実体が見えづらくなり、保守的に企業価値を見積もる理由にもなります。

3. コングロマリットの手法

次に、コングロマリットの主な手法である、買収と資本提携について解説します。グループの一員となるのか、緩いつながりとなるのかといった点がそれぞれ異なりますので、正しく理解しましょう。

3-1. 買収

株式譲渡 イメージ画像
代表的なコングロマリットの手法として、売り手企業の株式を取得する「買収」が挙げられます。100%すべての株式を取得することで完全子会社化するケースや、過半数を取得することで子会社化するケースが考えられますが、よりガバナンスを効かせるためには、完全子会社化することが望ましいでしょう。
ただし、その分の多額な資金が必要となりますので、注意が必要です。買収のケースでは、買収先企業が自社グループの一員となるため、グループとしてのシナジー効果がより発揮しやすいだけでなく、ガバナンスの観点からも効果が期待できます。

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3-2. 資本提携

資本業務提携 イメージ画像
一定の株式を取得することで、互いに業務面や資金面で協力し合う体制を構築する「資本提携」も、コングロマリットの手法として挙げられます。
資本提携の場合には、グループ企業の一員とはならずに緩いつながりとなるため、互いの独立性が保たれるというメリットがあります。また、買収と比べて、必要になる資金が少額となる点もメリットです。
一方、買収する場合よりも、グループとしてのシナジーやガバナンスが効かせづらいという点は、デメリットとなります。

4. コングロマリットのメリット

コングロマリットのメリットであるシナジー効果、リスク分散などの点について説明します。いずれも、コングロマリットの肝となるような重要な考え方ですので、正しく理解していきましょう。

4-1. シナジー効果が期待できる

コングロマリットにおける大きなメリットの一つが「シナジー効果」です。既存事業と新規事業間でノウハウやリソースを共有することによって、相乗効果(シナジー効果)を生み出すことが期待できます。
例えば、楽天グループでは、「楽天経済圏」に通販事業や金融事業を組み合わせるだけでなく、さらに通信事業も組み込むことで、グループ全体としてのシナジーを生み出すことを狙っています。
さまざまな事業がシナジー効果を生み出すことは、サービスの使い勝手向上という形で、ユーザーにとっても大きなメリットになるといえるでしょう。

4-2. リスク分散できる

VUCA時代と呼ばれる先行きが不透明な経済環境において、「リスク分散」ができるという点も、コングロマリットの大きなメリットです。
一つの事業が不調となっていても、グループ内の別の事業が好調であれば業績を維持することができるため、企業グループとしての競争力強化につながります。

4-3. 低リスクで新規事業参入ができる

一から新規事業を立ち上げるためには、時間を要するだけでなく、開発コストや採用コストなどの費用も多額に発生することが想定されます。また、開発の成果が思うように出ないケースでは、参入計画が失敗してしまうといったリスクも考えられるでしょう。
この点、コングロマリット型M&Aの場合には、既にできあがった事業を買収することになるため、新規事業を立ち上げる場合と比べて、各種リスクを抑えられるというメリットがあります。

4-4. 中長期的なビジョンを描ける

コングロマリット型のM&Aは、シナジー効果を狙うことから短期間では成果が得られないことが多い傾向にあります。シナジー効果を得るためには、中長期的な経営プランを練る必要があるため、結果的に中長期的な成長ビジョンを描きやすくなるといった点も、副次的なメリットといえるでしょう。

5. コングロマリットのデメリット

コングロマリット企業では、他業種に事業展開することから、経営が複雑になることやガバナンスを効かせづらくなるといったデメリットが生じます。

5-1. 経営が複雑化する

コングロマリット企業では、複数の事業を管理する必要があるため、業績管理が複雑化するデメリットがあります。
企業内部の経営者だけでなく、投資家の観点からも「結局、何をやっている会社なのかわからない」といった評価をされ、経営の実態がつかみづらくなることから、株価が過小評価されてしまう恐れがあります。
そのため、各事業をセグメント別に分けたうえで適切な経営管理を行うとともに、投資家に向けても適切な情報開示が必要です。

5-2. グループとしてのガバナンスが難しくなる

複数の事業を展開することで、さまざまな業界に関する規制を把握する必要があるなど、企業グループとしてガバナンスを効かせることが難しくなるデメリットも考えられます。
また、グループ間のコミュニケーション不足に陥り、企業グループとしてうまく機能しないといった事態に陥る可能性もあります。
そのため、各ビジネスの知見を有する専門家を配置することや、事業間のコミュニケーションルートを確立するといった施策を考える必要があり、経営者の手腕が試されるといえるでしょう。

5-3. 短期的には経営が悪化するリスクがある

他業種を買収するコングロマリット型M&Aでは、短期的にシナジー効果を生み出すことが難しいと言われています。技術や知見をうまく活かすような仕組みづくりが必要となるだけでなく、定着するまでに時間を要することが一般的なため、短期的な利益にマイナスの影響を与える可能性があります。

6. 他の企業形態との違い

他の企業形態との違いとして、トラスト、コンビナート、カルテル、コンツェルンとの違いについて見ていきましょう。

6-1. トラスト

トラストとは、同一の事業を行う企業が集まった企業グループのことをいいます。
水平的統合のようなイメージであり、異なる事業へ展開するコングロマリットとは異なります。過度なトラストは、市場を独占する状態となってしまうリスクがあるため、独占禁止法違反の判定に注意が必要です。
なお、後述するカルテルでは資本提携が無いのに対して、トラストは資本関係を構築するという点で異なります。

6-2. コンビナート

コンビナートとは、生産の効率化を目的として、サプライチェーンの上流から下流までの企業が集中した集団のことをいいます。垂直的統合のようなイメージであり、異なる事業へ展開するコングロマリットとは異なります。
例えば、石油コンビナートという言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。石油コンビナートは、石油関連企業が互いの生産性を高めるために、一定の地域に集中している工業地帯のことを指します。
なお、コンビナートは、ロシア語で「結合」を意味する言葉が由来です。

6-3. カルテル

カルテルは、同一の事業を行う企業同士が連携し、価格や市場分配などを合意することによって、相互に利益を確保しようとする協定のことをいいます。前述のトラストと違い資本関係は無く、異なる企業間における「取り決め」であるという点が特徴的です。
なお、トラスト同様に市場を独占する状態となってしまうリスクがあるため、独占禁止法違反の判定を受けないように注意する必要があります。

6-4. コンツェルン

コンツェルンとは、持ち株会社を設立し、子会社群や孫会社群を形成することで市場の独占を目的とする企業グループのことをいいます。市場における独占を目指す点が、コングロマリットとの違いです。
日本の戦前における財閥がコンツェルンの代表例ですが、GHQによって既に解体されています。

7. 具体的な企業事例

最後に、日本企業におけるコングロマリットの事例として、ソニーグループ、楽天グループ、三菱商事の経営形態を説明します。

7-1. ソニーグループ

ソニーグループ株式会社は、日本を代表するコングロマリット企業です。
ソニーグループの有価証券報告書における「セグメント情報」を見ると、ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エンタテインメント・テクノロジー&サービス、イメージング&センシング・ソリューション、金融という、大きく6つの事業セグメントを展開していることがわかります。
各セグメントの売上収益の規模は、それぞれ1兆円を超える大規模なビジネスとなっており、営業利益も1,000~3,000億円近い数字となっています。

7-2. 楽天グループ

楽天グループ株式会社の有価証券報告書における「セグメント情報」を見ると、インターネットサービス、フィンテック、モバイルという、大きく3つの事業セグメントを展開していることがわかります。
各事業の決算数値を見ると、インターネットサービス事業、フィンテック事業が好調な一方で、モバイル事業は大幅な赤字です。モバイル事業は、新規事業のため投資フェーズとなっており、中長期的なシナジー効果の発揮を見据えてグループとしての経営を行っていると考えられます。
ただし、赤字幅が継続して拡大していることから、コングロマリット企業としてうまくシナジー効果を発揮できるのか、引き続き市場からの注目を集めるでしょう。

7-3. 三菱商事

日本を代表する総合商社である三菱商事株式会社も、コングロマリット企業といえます。資源系の事業だけでなく、自動車や食品、都市開発関連といった、多角的な事業展開です。
有価証券報告書における「セグメント情報」を見ると、天然ガス、総合素材、化学ソリューション、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発という10グループに区分されています。
各事業における売上総利益は、百億~数千億円規模であり、事業を幅広い領域に展開していることがわかります。

8. まとめ

コングロマリットとは、分野の異なるさまざまな業種や事業展開を行う企業や企業グループのことをいい、昨今の経済環境を背景として注目が集まっています。
コングロマリット型M&Aによって、シナジー効果やリスク分散を図ることで「コングロマリット・プレミアム」が得られるといった点が、大きなメリットです。
ただし、シナジー効果を生み出せない場合には、新規参入が失敗に終わるリスクも想定されます。M&Aの実行には専門性を伴うだけでなく、中長期的な経営プランとの整合も求められるため、M&Aの専門家へ相談しながら進めることが推奨されます。
M&Aキャピタルパートナーズは、実績に基づく信頼できる専門家として、コングロマリットM&Aの良き相談相手となるでしょう。M&Aをご検討の際は、M&Aキャピタルパートナーズへぜひご相談ください。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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