債務超過とは? 貸借対照表の見方・債務超過の定義をわかりやすく解説【図解】

更新日

倒産のニュースなどでよく耳にする単語が「債務超過」です。「聞いたことはあるけれど、定義や原因はあまり理解できていない」「貸借対照表のどこを見るのかがわからない」。そんな方も多いのではないでしょうか。
同様に、よく聞く「赤字」「資金ショート」「債務不履行」と、債務超過との違いを知りたいという方もいるでしょう。
本記事では、債務超過の意味から原因、貸借対照表の見方、解決法まで、ていねいに説明しています。ぜひ最後までお読みください。

まずはお気軽にご相談ください。
秘密厳守にてご対応いたします。

1. 債務超過とは

まずは、債務超過の意味・定義を解説します。あわせて、「赤字」「資金ショート」「債務不履行」との違い、それぞれの倒産リスクについてもみていきましょう。

1-1. 【図解】債務超過の意味・定義

債務超過とは
まずは「債務」の言葉の定義から説明します。
債務とは、特定の人(債務者)がほかの人(債権者)に対して、なんらかの行為を履行する義務のことです。金銭の貸し借りを例に挙げると、金銭を借りた人が債務者、金銭を貸した人が債権者となります。債務者は、債権者に金銭を返還する義務があります。これが「債務」です。
一方、企業の借金を「負債」といいます。債務超過とは、文字通り、債務が超過している状態です。つまり、企業が所有している資産より負債のほうが多いことを意味します
債務超過の状態を貸借対照表(バランスシート/BS)で表すと、上の図のようになります。
貸借対照表は、企業の財政状態を示す資料です。企業の財務状態に問題がなければ、左側の資産と、右側の負債・純資産は釣り合います。なお、純資産とは返済義務が無い資産のことです。
しかし、債務超過の場合は、上の図のように純資産がマイナスとなります。これは、資産をすべて費やしても、負債を返せない状態であることを意味します。
債務超過だからといってすぐに倒産するとは限らないものの、その状態が続けば会社の存続は困難だといわざるをえません。

1-2. 債務超過と赤字・資金ショート・債務不履行の違い

債務超過と赤字、資金ショート、債務不履行はどのように違うのか、また倒産リスクがもっとも高いのはどれなのか、順に解説します。

債務超過と赤字の違い

債務超過とは
債務超過とは、前述の通り、企業が所有している資産よりも、負債のほうが多い状態のことです。一方、赤字とは支出が収入を上回る状態をいい、損益計算書で判断します
債務超過と赤字は、次の点が大きく異なります。

  • 判断の基準となる資料
    ・債務超過...貸借対照表
    ・赤字...損益計算書
  • 期間と意味
    ・債務超過…負債の残高が資産の残高よりも多い状態を示す
    ・赤字...一定期間において、かかった費用に対して収益の方が少なく、損失(赤字)が出ていることを示す

債務超過と資金ショートの違い

「ショート」は、英語で「不足した」という意味を持ちます。つまり「資金ショート」とは、現在手もとにある現金や預金といった資金が足りず、各種の支払いが困難な状況のことです
債務超過の場合、純資産はマイナスになってはいるものの、資金そのものは残っている可能性があります。したがって支払いは可能です。
いっぽう、資金ショートに陥ると、従業員への給与や取引先への支払いができません。経営が維持できずに倒産してしまうおそれが、非常に高いといえるでしょう。

債務超過と債務不履行の違い

債務超過と混同されやすいのが「債務不履行(デフォルト)」です。
債務不履行は、債務者が債権者への義務を果たさない状況を指します。具体的には、債務者の都合で、約束した支払いをおこなわなかったり、借金の返済をしなかったりすることです
債務超過が原因で経営が困難となり、債務不履行となるケースは珍しくありません。しかし、債務超過であっても、約束どおり支払いなどをしていれば、債務不履行には該当しません。

1-3. 倒産リスクは「資金ショート>債務超過>赤字」

ここまでに説明した債務超過、赤字、資金ショートを倒産リスクが高い順に並べると、次のようになります。

  • 資金ショート>債務超過>赤字

資金ショートは、手持ちの資金が足りなくなり各種の支払いが滞った状態のため、倒産リスクは非常に高いといえます。
債務超過も赤字も油断は禁物です。例えば、債務超過の状態が続くと、「金融機関から融資が受けにくくなる」「補助金や助成金などが利用できなくなる」などの事態が想定され、結果として経営が立ち行かなくなるかもしれません。
東京商工リサーチが発表した、2022年「倒産企業の財務データ分析」調査 によると、2022年(1~12月)に倒産した企業のうち約7割が債務超過でした。また、赤字企業率は約6割におよびました

1-4. 債務超過のデメリット

前節で触れたように、債務超過に陥ると「金融機関から融資が受けにくくなる」「補助金や助成金などが利用できなくなる」といった、マイナスの影響が想定されます。また、他にも次のようなデメリットがあります。

  • 取引先からの信用を損ねる
  • 人材確保のハードルが上がる
  • 事業承継が難しくなる
  • 上場企業の場合は、債務超過の状態が1年間続くと上場廃止基準に該当してしまう(日本取引所グループの定めによる)

上記のようなデメリットを避けるには、債務超過の原因を突き止め、経営状態を一刻も早く健全化しなければなりません。

2. 債務超過の主な原因・理由

この章では、債務超過に至る原因・理由を取り上げます。債務超過を解消したいと考えているのであれば、まずは原因・理由をしっかり把握しましょう。

2-1. 赤字の常態化

赤字と債務超過は異なる財政状態を示していますが、この2つは密接な関係にあります。
先述の通り、赤字とは支出が収入より多くなっている状態のことです。赤字が続けば利益は減るいっぽうとなり、いずれ債務超過に陥ってしまいます
また、創業直後は赤字になりやすく、一時的に債務超過になるのは、実はそれほど珍しくありません。黒字化が見通せている限りは、あまり心配する必要は無いでしょう。
ただ実際は、ターゲット設定や販路、在庫管理など、ビジネスモデルに何かしらの問題がある可能性が高く、早急な見直しが必要です。金融機関に融資困難と判断されるリスクも考えられます。

2-2. 投資による負債の増加

事業を継続あるいは拡大するために、借入して資金を調達し、設備や人材確保などに投資することもあるでしょう。しかし、思うような利益を上げられなければ、負債だけが残ってしまいます
借入自体は、悪いことではありません。ただ、投資をする際はその効果だけでなく、リスクについても入念に検討することが大切です。

2-3. 資産の評価損や特別損失

資産の評価損や特別損失が原因となって、債務超過になるケースもあります。
評価損とは、会社が所有している商品や有価証券が、購入・取得時よりも値下がりしてしまった場合に発生する損失です。会社が持っている有価証券の時価が大幅に下落してしまうと、債務超過に陥るリスクが大きくなります
特別損失とは、通常の事業活動とは関係ない特別な要因で、一時的に発生した損失を指します。具体的には、地震や火災といった災害による損失、労働争議や訴訟によって発生する損失などが挙げられます。特別損失によって利益がマイナスになれば、債務超過に陥るかもしれません

3. 債務超過はどこを見る?

債務超過は、決算書の貸借対照表と計算式によって確認できます。あわせて、純資産の減少具合も確認しましょう。白色申告の個人事業主は、まずは、貸借対照表を作成します。

3-1. 決算書・貸借対照表(バランスシート)を見る

債務超過時の貸借対照表
債務超過時の貸借対照表
自社もしくは他社が債務超過になっているかどうかは、決算書の貸借対照表が判断基準となります。次の手順で確認してみましょう。なお、債務超過の計算方法(計算式)は「資産合計-負債合計」となります。

  1. 貸借対照表を見て、売上・売掛金などの「資産合計」と、借入金・買掛金などの「負債合計」をチェックする
  2. 「資産合計」から「負債合計」を差し引く

上記の結果、資産>負債なら、債務超過ではありません。反対に、負債>資産なら、債務超過と判断できます
ただし、貸借対照表上で債務超過ではないと判断できたとしても、経営状態が良好だとは限りません。資産に現金化できないものや、実質回収ができないもの、取得時よりも価値が下がっているものが含まれている場合、帳簿上は黒字であってもキャッシュが足りずに倒産する場合があるからです。これを「黒字倒産」といいます。
黒字倒産については、下記の記事でくわしく説明しています。あわせてお読みください。

関連記事
黒字倒産とは?なぜ起こるのか、原因や仕組み・回避する方法を解説

3-2. 個人事業主は貸借対照表を作成しよう

スモールビジネスを手がける個人事業主やフリーランスも、自らの事業が債務超過になっていないか、定期的に確認することが大切です。
青色申告をしている場合は、確定申告時に作成した貸借対照表を確認しましょう。債務超過かどうか、おおよその判断ができるはずです。
白色申告の場合は、貸借対照表を作成しましょう。面倒に感じる方も多いかもしれませんが、スモールビジネスは資本金が少ないケースが多く、債務超過になりやすいものです。決算書類はしっかり作成しておくことをおすすめします。
また、決算書を作成して青色申告をすれば、最大で65万円控除の優遇措置を受けることが可能です。

4. 債務超過の経営を脱却する方法

債務超過の経営を脱却する方法には、利益の向上、債務免除、増資、DES(債務の株式化)、M&Aなどがあります。この章では、それぞれの具体的な方法を説明します。早めに対策して、債務超過による倒産を回避しましょう。

4-1. 利益を上げる

債務超過を解消するもっとも効果的な方法は、事業の利益を高めることです。コスト削減、売上の改善によって利益が上がり、資産が増えれば、債務超過を圧縮あるいは解消できます

コスト削減

利益を上げるために、まずはコストカットできる部分が無いかを調べてみましょう。具体的には、次のような方法が考えられます。

  • 売上原価の引き下げ
  • 販売管理費の削減
  • 人件費の見直し
  • 仕入れ先の相見積もりの徹底
  • 赤字受注している案件の見直し

売上の改善

コストカットと同時に、売上高を上げるための対処法を考えましょう。重要なのは、マーケティング戦略の見直しです。
複雑化する市場環境を生き抜くには、市場環境の分析が欠かせません。市場環境を分析して明確化できれば、自社の商品やサービスに不足している部分あるいは強みが、おのずと見えてきます。
不足している部分は補う方法を考え、他社と差別化できる強みは徹底的に伸ばしましょう。付加価値を向上できれば、売上の改善につながるはずです

4-2. 債務免除を依頼する

既に債務超過に陥っているのであれば、ビジネスモデルに根本的な問題がある可能性があり、利益を上げるのは容易ではないかもしれません。こうした場合においては、債務免除の検討も選択肢の一つになり得ます。
債務免除とは、債権者が無償で債権を完全に放棄する行為をいいます。債務免除が成立するパターンとしては、次の二つが代表的です。

  • 債務者が破産手続きをし、破産宣告を受けることで債務免除が成立する
  • 債権者と債務者で交渉を行い、両者の合意によって債務免除が成立する

債務免除が成立すれば、その分だけ債務超過を縮小・解消できます。しかし、債務免除は、債務者にとっては「債権者の資産を譲り受けた」ことになり、債務免除益が発生して法人税などの課税対象となります。

4-3. 資本・株式の観点から債務超過を解消する

債務超過の解決法としては、新株発行による増資、DESによる債務の株式化、M&Aによる事業の売却もあります。利益を上げるだけでは対処が難しい場合は、検討してみると良いでしょう。

第三者出資や増資

資本金を増加させる行為を「増資」といいます。増資の方法としては、新株を発行して投資家から出資を募る「有償増資」が一般的ですが、事業主が自己資金を投入する方法もあります。
増資は債務超過の改善に役立つため、利益を上げるのが難しい場合は検討してみるのも手です。ただし、ビジネスモデルが抱えている問題そのものが解決されるわけではありません。増資は、経営状態の根本的な立て直しにはつながらない可能性が高いことを覚えておきましょう。

DES(デッド・エクイティ・スワップ)

DESは「Debt Equity Swap(デッド・エクイティ・スワップ)」の略で、「債務の株式化」という意味です。
DESを採用した場合、債務者は、債権者に債務を免除してもらう代わりに自社の株式を与えます。そうすることで、負債が資本に変わって債務超過を縮小・解消できます
資金の負担無く負債を圧縮できるのは、債務者である企業にとっては大きなメリットといえるでしょう。しかし、自社の株式を与えれば、経営の主導権が損なわれるおそれがあります。DESを検討する際は、メリット・デメリットの両方をしっかりと吟味しましょう。

関連記事
DESとは?M&A用語集

M&Aによる売却

M&Aによる事業の売却も、債務超過の解決策の一つです。
事業などに魅力があって将来性が見込めれば、債務超過でも売上を伸ばせる可能性はあります。売却できれば、それによって得た利益で負債や借入を返済できます。従業員の雇用を守れるのも、M&Aによる事業売却の大きなメリットといえるでしょう。
ただし、M&Aは実施までにかなりの時間を要します。検討中に資金ショートして倒産してしまうケースも珍しくありません。M&Aを視野に入れている場合は、早めの検討をおすすめします。

5. まとめ

債務超過は、貸借対照表において負債が資産を上回っている状況です。債務超過を脱却するには、コストカットや売上の改善による利益の向上、債務免除、増資、DESなどの方法が考えられます。
M&Aも債務超過の解消に有効です。しかしながら、債務超過であっても買収を希望する企業を探して選定し、実行するには、専門知識と豊富な経験が欠かせません。M&Aを視野に入れている場合は、まずは信頼できる専門家に相談することをおすすめします。
弊社では、グループ会社にて、債務超過企業のM&A戦略の策定から対象企業の選定、対象先との交渉や実行が可能です。M&Aをお考えの方は、ぜひご相談ください。

外部リンク
みらいエフピー株式会社
まずはお気軽にご相談ください。
秘密厳守にてご対応いたします。
監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

詳細プロフィールはこちら
キーワードから探す
カテゴリから探す
事業承継
M&A基礎知識
M&Aを検討するために
M&Aの手法
M&Aの流れ
M&A用語集

M&Aキャピタル
パートナーズが

選ばれる理由

私たちには、オーナー経営者様の
決心にこたえられる理由があります

納得の料金体系

着手金や月額報酬を
いただくことなく、
お相手企業と基本合意にいたるまで、無料で支援いたします。

着手金無料の報酬体系 M&Aとは
安心の専任担当制

検討初期から成約まで
オーナー経営者様専任の
アドバイザーが
寄り添います。

M&Aへの想い アドバイザー紹介 M&Aストーリー
信頼の東証プライム上場

東証プライム上場の信頼性と、
独自のデータ基盤の
活用により、ベストな
マッチングをご提供します。

M&A成約実績 メディア掲載実績 セミナー実績

M&Aご成約事例
“それぞれの選択”