投資ファンドとは? 代表的な種類やメリット・デメリットを解説

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「投資ファンド」という言葉を見聞きしたことがあるものの、実際にどのようなものなのか、自社にどう関係するのかと、正しく理解できていない方も多いのではないでしょうか。
投資ファンドは、適切に利用することで、共に事業運営を進めるパートナーとなりうる重要な存在です。
本記事では、投資ファンドの概要といった基本的な内容から、仕組みや種類、メリット・デメリット等についてもわかりやすく解説していきます。

このページのポイント

~投資ファンドとは?~

投資家から集めた資金を元手に投資対象で運用し、運用によって得られた利益を投資家へ還元する仕組みを指す。投資ファンドは、「公募型ファンド」と「私募型ファンド」に分類され、不特定多数(50人以上)の投資家に対して募集をかけることで資金を調達するファンドを公募型ファンドとよび、適格投資家や少数の投資家(49人以下)に限定して募集をかけることで資金を調達するファンドを私募型ファンドとよぶ。

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1. 投資ファンドとは

投資ファンド イメージ画像

投資ファンドは、上図のように投資家から集めた資金をもとに株式や債権などへ投資して運用することです。詳しい意味や仕組み、公募型・私募型の違いなどを解説します。

1-1. 投資ファンドの意味や概要

投資ファンドは、投資家から集めた資金を元手に投資対象で運用し、運用によって得られた利益を投資家へ還元する仕組みのことを指します。
投資ファンドには、ファンドマネージャーと呼ばれる運用のプロが在籍し、株式や債券だけでなく、デリバティブ商品、不動産などの幅広い金融商品によって資金を運用します。
投資対象となる事業会社側の視点では、投資ファンドから資金提供を得られるだけでなく、経営支援等のサポートを受けられるといった点がメリットです。

1-2. 投資ファンドの仕組み

投資ファンドは、大きく3つの活動に分類されます。

  • 投資家から資金を調達する(資金調達)
  • 資金を金融商品で運用する(投資活動)
  • 得られた収益を投資家へ分配する(資金分配)

投資ファンドでは、資金提供者と運用責任者が分離されているため、投資家にとっては、専門知識が無くても資産運用をプロに委託できるというメリットがあります。
一方、運用するファンド側としては、投資家から委託料を受け取るだけでなく、大規模な資金を元手に資産運用を行えるところがメリットです。

1-3. 公募型ファンドと私募型ファンドの違いは

投資ファンドは、「公募型ファンド」と「私募型ファンド」に分類されます。それぞれの内容・異なる点について、解説を進めていきます。

公募型ファンド

公募型ファンドとは、不特定多数(50人以上)の投資家に対して募集をかけることで資金を調達するファンドのことをいいます。
プロのファンドマネージャーにより資金が運用され、投資による運用成果が、資金提供した投資家へ分配されます。いわゆる「投資信託」は、公募型ファンドの一例です。

私募型ファンド

私募型ファンドは、適格投資家や少数の投資家(49人以下)に限定して募集をかけることで資金を調達するファンドを指します。
一般的に、ハイリスク・ハイリターンとなるような商品が対象となることが多く、いわゆる「プロ向け」のファンドというイメージを持つと良いでしょう。
私募型ファンドの例としては、ヘッジファンド、バイアウトファンド、ベンチャーキャピタルなどが挙げられます。

2. 投資ファンドの種類

投資ファンドの種類は、以下のように多岐にわたります。

  • ヘッジファンド
  • インデックスファンド
  • アクティビスト・ファンド
  • ベンチャーキャピタル(ベンチャーファンド)
  • バイアウトファンド
  • 再生ファンド
  • インフラファンド
  • 不動産ファンド
  • 商品ファンド

それぞれの内容や特徴について、説明を進めていきます。

2-1. ヘッジファンド

ヘッジファンドは、私募型ファンドの一つで、機関投資家や富裕層から資金調達を行うファンドのことをいいます。最低投資金額の目安が約1,000万円以上と言われることから俗に「お金持ち向けのファンド」と呼ばれることもあり、大口の投資家のみが購入できる商品です。
相場の上下に関わらず、利益を出すことをコンセプトとしており、ハイリターンが期待できるという特徴があります。
なお、ヘッジとは「避ける」という意味であり、複数の投資対象に資金を分散することでリスクヘッジを図るという点も特徴的です。

2-2. インデックスファンド

インデックスファンドとは、日経平均株価など特定の指数の動きに連動して運用されるファンドを指します。指数(インデックス)としては、日経平均のほか、TOPIX(東証株価指数)、NYダウ、S&P500、ナスダック指数などが代表的です。
多額の資金を保有していない投資家にとっては、インデックスファンドを買うことにより、少額で分散投資の実現が可能になるといったメリットがあります。
市場平均を超えるようなリターンは期待できませんが、分散投資による安定感があるところが特徴的です。

2-3. アクティビスト・ファンド

アクティビスト・ファンドは、先述したファンドの3つの活動(資金調達・投資活動・資金分配)に加えて、投資先の経営に積極的に働きかけることで、企業価値を高めることを目的とするファンドです。
いわゆる「物言う株主」と呼ばれるもので、生産的でない経営を行っている企業を投資対象とし、企業価値の向上を狙います。
企業側からは煙たがられることも多いですが、投資家のための利益を最優先するため、非効率な経営や事業に対して、徹底的に切り込んでいくところが特徴的です。

2-4. ベンチャーキャピタル(ベンチャーファンド)

ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業に対して出資を行うファンドのことをいいます。実績がない未上場の新興企業に対して資金提供を行うことで支援するだけでなく、経営支援や提携先の紹介を行うことで、将来的なキャピタルゲインの獲得を狙います。
IPO(新規上場)が一つのゴールとなる場合が多く、IPOを達成したタイミングで、イグジット(株式を売却)するケースが一般的です。

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2-5. バイアウトファンド

バイアウトファンドとは、非上場会社や企業価値が低下している会社を投資対象として、企業価値を高めたあとに売却することによってキャピタルゲインを狙うファンドを指します。
売却によるキャピタルゲインを主たる目的とする場合には、PEファンド、MBOファンド、企業再生ファンド、ベンチャーキャピタルなども、「バイアウトファンド」と呼ばれることがあります。
投資期間が比較的短期間である場合が多く、キャピタルゲインが得られるタイミングで株式を売却するケースが典型的です。

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2-6. 再生ファンド

再生ファンドは、業績が低調な企業や事業経営に関与することでその価値を向上させ、将来的に売却することでキャピタルゲインの獲得を目的としたファンドのことをいいます。
バイアウトファンドのなかでも、「企業再生」にフォーカスしている点が特徴的です。
業績不振の企業へ投資をすることになるため、投資ファンドの中でもハイリスク・ハイリターンな案件を取り扱うケースが一般的です。

2-7. インフラファンド

インフラファンドとは、社会基盤(インフラストラクチャー)へ投資を行い、そこから得られる収益の獲得を主な目的とするファンドのことです。
太陽光発電所、再生可能エネルギー発電設備、空港、道路、鉄道、ガス・石油など、公共性の高い事業へ投資を行うことで、収益の確保を目指します。
昨今では、ESG投資への注目が集まっていることから、インフラファンドへの注目度も高まっています。

2-8. 不動産ファンド

不動産ファンドは、マンション・アパート・オフィス・ホテルといった不動産を対象として資金運用を行うファンドのことを指します。
REIT(リート:Real Estate Investment Trust)とも呼ばれ、不動産を購入できない投資家であっても、少額から投資が可能になるところがメリットです。
不動産投資のリターンは、家賃収入などの運用益(インカムゲイン)と、不動産の売却益(キャピタルゲイン)から構成されます。キャピタルゲインは不動産相場によって大きく左右される一方、インカムゲインについては着実な収入が見込めるため、安定した利回りが期待できるという点もメリットの一つです。

2-9. 商品ファンド

商品ファンドとは、貴金属・穀物・農作物・原油などの現物商品に関する先物取引で運用するファンドのことをいいます。
複数の商品先物市場へ投資を行うことから、単一商品に投資を行う場合と比べて、リスクを分散することが可能です。
また、株式市場や債券市場と異なる価格変動になることから、他の商品と合わせて持つことで、リスクヘッジの手段として利用されるケースも多いです。

3. 投資ファンドを活用するメリット

ここからは、資金提供を受ける事業会社の視点から、投資ファンドを活用するメリットについて、解説を続けます。主なメリットは、以下の4点です。

  • 資金を調達できる
  • 経営ノウハウを獲得できる
  • 会社の承継問題を解決することができる
  • 事業提携でシナジー効果も期待できる

企業側にとって有益になる内容を、一つずつ確認していきましょう。

3-1. 資金を調達できる

新興企業のため実績が無い場合や、業績不振に陥っている企業では、なかなか銀行からの融資が受けられないといった事態が想定されます。
投資ファンドから出資を受けることにより、事業運営のための資金を調達できるという点は、事業会社にとって大きなメリットです。
また、豊富な資金を有するファンドから出資を受けることで、企業のキャッシュフローが安定し、事業基盤が盤石になるといったケースも考えられます。

3-2. 経営ノウハウを獲得できる

経営ノウハウを得られる点も、ファンドからの出資を受ける事業会社にとって充分なメリットです。
投資ファンドには、経営スキルを有する人材が多く在籍しているため、プロの経営ノウハウを提供してくれるだけでなく、提携先やプロ経営者の紹介といったことも想定されます。
そのため、経営を活性化してくれる人物から従来と異なる視点で専門的な知識を享受でき、短期間での成長が見込まれるでしょう。

3-3. 会社の承継問題を解決することができる

昨今では、後継者不足に悩まされる経営者の方も多いと思いますが、投資ファンドに買収してもらうことで、承継問題を解決できるといったメリットも考えられます。
投資ファンドには、経営ノウハウを有するメンバーが多数所属しているため、将来の経営をプロの経営者に託すことにより、事業の存続を図ることが可能です。
ただし、後継となる経営者が、自らの思いを継続してくれるような人物かを見極めることは重要です。投資ファンドの観点からは、短期的な利益の獲得を主要な目的としていることも多いため、自身のビジョンとの一致を確認してから承継するようにしましょう。

3-4. 事業提携でシナジー効果も期待できる

ファンドは、複数の事業に投資することが一般的であるため、さまざまな企業や人材とのつながりをもっています。
そのため、他の企業を提携先として紹介してくれることも多く、他事業との連携によるシナジー効果を期待できる点も、魅力的なメリットになります。

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4. 投資ファンドのデメリット

投資ファンドの活用には多くのメリットがある一方、デメリットがあることも理解しておく必要があります。主なデメリットは、次のとおりです。

  • リストラ実施の可能性が高まる
  • 企業文化が失われる可能性がある
  • 従業員の離職

企業側にとってマイナスになり得る内容のため、順番に確認していきましょう。

4-1. リストラ実施の可能性が高まる

投資ファンドの主たる目的は、企業価値を向上させることによって将来のキャピタルゲインを獲得することです。そのため、企業価値や短期的な利益を優先する傾向があり、経営の合理化に対するプレッシャーが強くなる可能性があります。
経営の合理化を目的として、人材のリストラや、不採算事業・ノンコア事業の縮小といった事業整理が行われるリスクがあるといった点は、デメリットといえるでしょう。

4-2. 企業文化が失われる可能性がある

前述のとおり、投資ファンドの主な目的により、企業が今までに醸成した文化や伝統を優先するのではなく、企業価値や短期的な利益を重点的に追求する可能性が生じます。
経営改善という意味では望ましいのですが、経営者が長年に渡り培ってきた企業文化が失われることには抵抗がある場合も多いと思いますので、この点もデメリットに該当するでしょう。

4-3. 従業員の離職

企業価値や短期的な利益を追求する経営を行った結果、従業員の離職率が高くなるおそれがあるというデメリットも挙げられます。
投資ファンドの要となる目的は、キャピタルゲインを獲得することであるため、将来的なイグジットのタイミングで経営者が変わるリスクがあるなど、不安定な経営環境が続くことが想定されます。
そのような不安定な環境に加え、従来の企業文化が失われることで従業員がストレスを感じ、離職率が高くなってしまう可能性は否定できません。

5. 投資ファンドによるM&Aを成功させるポイント

ここからは、投資ファンドによるM&Aを成功に導くポイントについて説明していきます。要点は、次のとおりです。

  • 自社の現状や企業価値を把握する
  • 条件を決めておく
  • 専門家に相談する

投資ファンド側に主導権を握られると、想定していたメリットが得られない恐れがあるため、内容を見極め、適切に対応しましょう。

5-1. 自社の現状や企業価値を把握する

会社としての軸をしっかり持っておくためには、自社の現状や企業価値を正しく把握することが重要です。
ファンド側との交渉場面において、自社の状況を正確に認識しておくことで、対等な議論が可能となるだけでなく、不利な交渉条件を突きつけられるリスクを軽減できます。
そのため、企業価値等の評価についても、第三者の客観的な判断を事前に入手するなど、事前に準備しておくと良いでしょう。

5-2. 条件を決めておく

自社の状態をきちんと理解することが大前提ですが、投資ファンドとの交渉に臨む際には、譲れない条件をあらかじめ決めておくことが肝要です。
ファンド側が提示した内容に流されてしまい、交渉が進んだあとになって後悔することがないように気を付けてください。
先述した、企業価値の客観的な評価を第三者から事前に入手することにより、条件面で妥協しないように準備を進めましょう。

5-3. 専門家に相談する

投資ファンドとの交渉には、M&Aに関する専門的な知識や複雑な手続きが必要となります。そのため、外部の専門家に相談することで、一方的に主導権を握られないようにすることが重要です。
なお、最終決定権はオーナー側にあるため、自社の現状を正しく把握したうえで交渉に臨むようにしましょう。

6. まとめ

投資ファンドは投資家にとってメリットがあるだけでなく、出資を受ける事業会社側にとっても大きなメリットがあり、事業を共に運営するビジネスパートナーとなり得る存在です。
資金提供だけでなく、経営支援や提携先の紹介を行ってくれることから、投資ファンドと協働することは、さらなる事業の成長に向けて有用となるでしょう。
ただし、プロ集団である投資ファンドとの交渉には専門性が伴いますので、外部の専門家をうまく活用しながら進めていくことを推奨します。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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