総合課税と分離課税の違いとは? 各観点からの比較をわかりやすく解説

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所得税の対象となる所得を意味する「課税所得」の計算方法には、総合課税と分離課税の2種類があります。
総合課税と分離課税の違いは、課税所得を計算する際にすべての所得を合算するか分離するかで、所得の種類によって分けられています。
この記事では、総合課税と分離課税の違いをわかりやすく解説します。確定申告の有無にも関わってくるため、正しく理解しておきましょう。

このページのポイント

~総合課税と分離課税の違いとは?~

総合課税とは、課税所得を計算する際に、納税者の所得を合算して計算する税制のことであり、分離課税とは、特定の収益や所得を一般的な所得と合算せずに課税する税制のことである。総合課税は累進課税となり、分離課税は累進課税ではないため税金を抑えやすいが、一部所得を除いて損益通算ができないというデメリットがある。

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1. 総合課税・分離課税とは

総合課税・分離課税とは イメージ画像

所得税の税額計算に用いられる方式には、総合課税・分離課税の2つがあります。まずは、それぞれの特徴を解説します。

1-1. 総合課税とは

総合課税とは、課税所得を計算する際に、納税者の所得を合算して計算する税制のことです。
給与所得や不動産所得など所得税の対象となる所得から、山林所得や退職所得などの分離課税分を引いた合計所得に税が課せられる仕組みです。
所得そのものは、その性質などによって10種類に分類されており、それを総合課税と分離課税に分けることになります。

1-2. 分離課税とは

分離課税とは、特定の収益や所得を一般的な所得と合算せずに課税する税制のことです。
所得税の課税は総合課税が原則ですが、例外的に特定の所得を単独で税額計算することがあります。分離課税は、さらに「源泉分離課税」と「申告分離課税」に分類できます。

源泉分離課税とは

個人の所得の状況を考えずに、支払う側が先に所得税を控除したうえで支払う方法です。
所得税については、支払いを受けた時点で納付済みとなるため、確定申告は必要ありません。所得税・復興特別所得税の合計15.315%と、住民税5%を合わせた20.315%が源泉徴収によって天引きされる仕組みです。
源泉分離課税制度は、預貯金の利子所得について税金の申告漏れや脱税があったことを背景として制定されました。預金の利子は、あらかじめ源泉徴収された状態で支払われています。

申告分離課税とは

所得を得た人が、自分で所得に関する計算を行って確定申告する方法です。
所得の種類に応じて定められた税率で所得税を計算し、確定申告を行うことで納税する仕組みになっています。
税額の計算は個人の状況を踏まえて行われるため、非常に複雑です。また、源泉分離課税とは異なり、確定申告が必須となります。

2. 総合課税と分離課税の違い

ここでは、総合課税と分離課税の違いを詳しく見ていきましょう。

2-1. 対象となる所得の違い

総合課税と分離課税は、所得の種類によって明確に分けられています。

所得の区分 課税方法

事業所得

株式は申告分離課税、その他は総合課税

不動産所得

総合課税

利子所得

総合課税または源泉分離課税

配当所得

総合課税または源泉分離課税

給与所得

総合課税

譲渡所得

土地・建物・株式などは申告分離課税、その他は総合課税

一時所得

総合課税または源泉分離課税

山林所得

申告分離課税

退職所得

源泉分離課税

雑所得

FX取引などは申告分離課税、その他は総合課税

総合課税の対象となる所得

総合課税の対象となる所得は、次のとおりです。

  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 利子所得
  • 配当所得
  • 給与所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得
  • 雑所得

給与所得と不動産所得は、すべての所得が総合課税の対象となります。それ以外の所得は、種類によって分離課税になるため注意しましょう。
事業所得と一時所得、雑所得は、ほとんどが総合課税の対象ですが、一部対象外となっています。利子所得は、基本的に源泉分離課税で、国外の銀行口座の利子などは総合課税となります。
譲渡所得については、ゴルフ会員権や金地金(金塊)などを譲渡した場合は総合課税の対象です。配当所得は基本的に総合課税ですが、上場株式などの配当に関しては、申告分離課税の選択も可能です。また、配当所得を源泉徴収する制度も活用できます。

分離課税の対象となる所得

分離課税の対象となる所得は、次のとおりです。

  • 退職所得
  • 山林所得
  • 利子所得
  • 譲渡所得
  • 配当所得
  • 事業所得
  • 一時所得
  • 雑所得

退職所得と山林所得については、すべてが分離課税の対象です。
利子所得は基本的に源泉分離課税ですが、一部は総合課税になるため注意しましょう。譲渡所得は、土地や建物、株式の譲渡については申告分離課税となります。
配当所得は、上場株式等の配当については申告分離課税を選択可能です。事業所得、一時所得、雑所得は、ほとんど総合課税ですが、事業として行う株式譲渡の所得などは事業所得にあたり申告分離課税となります。
また、保険期間5年以下の一時払い養老保険金なども源泉分離課税です。雑所得については、先物取引に係る所得については申告分離課税になります。

2-2. 確定申告の違い

課税の方式ごとに確定申告の有無をまとめると、次のようになります。
<総合課税>
確定申告が必要
<分離課税>
申告分離課税の場合は確定申告が必要
源泉分離課税の場合は不要
申告分離課税は、所得を得た人が自分で所得に関する計算を行って確定申告する方法であることから、確定申告が必須です。一方で、源泉分離課税の場合は、個人の所得の状況を考えずに、支払う側が先に所得税を控除するため、確定申告は不要になります。
また、確定申告書は、「第一表」と「第二表」の2枚で構成されているのが基本ですが、申告分離課税が必要になる場合は、「申告書第三表(分離課税用)」の作成も行います。

2-3. メリット・デメリットの違い

総合課税と分離課税は、それぞれ異なるメリット・デメリットがあります。
総合課税のメリットは、損益通算が可能となる所得の種類が多いことです。総合課税となる事業所得、不動産所得および譲渡所得は一部の例外を除き所得の損失を別の所得から控除することで、税負担が抑えられます。一方、1年間の所得を合算して課税される仕組みで、累進課税となる点がデメリットです。所得によって税率が変わり、所得が高くなるほど税率も上がります。

課税される所得金額 税率 控除額

1,000円 から 1,949,000円まで

5%

0円

1,950,000円 から 3,299,000円まで

10%

97,500円

3,300,000円 から 6,949,000円まで

20%

427,500円

6,950,000円 から 8,999,000円まで

23%

636,000円

9,000,000円 から 17,999,000円まで

33%

1,536,000円

18,000,000円 から 39,999,000円まで

40%

2,796,000円

40,000,000円 以上

45%

4,796,000円

出典:国税庁|所得税の税率

対して分離課税は、累進課税ではないため、所得が多くても税金を抑えやすいのがメリットです。ただし、山林所得を除き損益通算ができないというデメリットがあります。

3. まとめ

総合課税は、課税所得を計算する際に、納税者の所得を合算して計算する税制のことで、損益通算ができる所得の種類が多いことが最大のメリットです。一方で、累進課税であることから、所得が高くなるにつれて税率も上がります。
分離課税は、特定の収益や所得を一般的な所得と合算せずに課税する税制のことで、「源泉分離課税」と「申告分離課税」に分類できます。分離課税は累進課税ではないため、所得が多くても税金を抑えやすくなりますが、総合課税と異なり、山林所得を除き損益通算はできません。
総合課税と分離課税のどちらを採用するかは、所得の種類によって明確に分けられているため、ルールを理解しておくことが大切です。総合課税と、分離課税のうち「申告分離課税」に該当する所得がある場合は、確定申告が必要になるため、必ず行いましょう。


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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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