M&Aによる投資とは 投資の手法や成功のコツを解説

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「M&A」と「投資」という用語は別物であると思われがちですが、「M&Aは投資活動の一環である」という意味では共通点があります。
本記事では、M&Aと投資について、それぞれの言葉の定義や関連性、投資活動としてのM&Aの手法・スキームから、M&Aのメリット・デメリット、M&Aを成功させるためのポイントまで徹底解説します。
M&Aを活用した投資に興味がある方は、ぜひご覧ください。

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1. 投資とM&Aの違い

まずは、M&Aと投資の違いについて、それぞれの用語の定義とあわせて解説を進めていきます。「M&Aは投資活動の一環である」という言葉の意味を考えながら読み進めてください。

1-1. 投資とM&Aの定義

投資とM&Aの具体的な定義は次のとおりです。

投資の定義

投資は、「事業投資」と「金融投資」の2つに大きく分類できます。
事業投資とは、新規事業への参入や既存事業の強化によって中長期的に利益を獲得することを目的として、工場・設備などの購入や企業の買収・合併などを行うことをいいます。
将来の事業拡大のために優秀な人員を獲得することや、新たな技術の獲得のために投資を行うような投資も、事業投資に含まれます。
金融投資とは、配当金の受け取りや時価の変動によって利益を得ることを目的として、株式、債券、投資信託などの金融商品を購入することをいいます。
金融投資の代表例が「株式投資」で、配当金・株主優待を受け取ること(インカムゲイン)や売買によって時価の変動による差分の利益を獲得すること(キャピタルゲイン)を目的としています。

M&Aの定義

M&Aの定義画像

M&Aは、「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の頭文字を取ったものです。複数の会社が1つの会社になること(合併)や、ある会社が他の会社や事業を買い取ること(買収)などを指します。広義のM&Aとしては、資本提携や事業譲渡なども含まれます。
M&Aは、主に次のような目的で実施されます。

  • 業績の悪い事業の立て直し
  • 自社と相手の事業の相乗効果(シナジー効果)の獲得
  • 既に存在する事業を購入することによる自社の成長の時間短縮
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1-2. M&Aも投資の一つとしてとらえられる

自社が進出したい新規事業や既存事業と相乗効果があるような事業を行っている企業に対してM&Aを実行することは、中長期的に利益を獲得することを目的とした将来への投資になります。そのため、上記の定義で見てきたように、M&Aを実行することは買収する企業にとっての「事業投資」の1つであるといえます。
他社の株式を取得することによって、配当金の受け取りや株価の変動による利益を目的とするようなケースも想定されますが、このようなケースは「金融投資」に含まれます。

1-3. M&Aにおける投資ファンドとは?

投資ファンドとは、投資家から集めた資金を元手として、株式・債券・不動産などの金融商品を運用し、得られた利益を投資家に分配する仕組みのことをいいます。
投資ファンドにはさまざまな種類がありますが、M&Aによって企業を買収すると共に経営支援を行い、買収先の企業価値を向上させることを目的としているケースがあります。
このようなファンドでは、企業成長のパートナーとして経営支援を行った後に、最終的には友好的な第三者へ売却することによって利益を獲得することを目的とすることが多いのが特徴です。

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2. M&Aによる投資が株価に与える影響

M&Aによって企業規模の拡大が想定されるケースや、シナジー効果によりグループとしてのさらなる成長が見込まれるケースでは、買収側企業の株価の向上が期待できます。同時に、シナジー効果が思うように働かないと想定される場合には、株価が下落するリスクがあります。
また、買収金額が適切であるかという点も株価に大きな影響を与えます。買収金額が適切であると判断される場合には株価の向上が期待できますが、買収価額が高すぎると判断されるようなケースでは、株価が下落するリスクがあります。
このように、M&Aは進め方によって株価が上昇するケースと、下落するケースがあることを覚えておく必要があります。買収する側とされる側の双方にとってメリットが大きいと考えられるM&A先を選ぶことが重要です。

3. M&Aにおける投資の手法・スキーム

ここでは、M&Aにおける投資の手法・スキームとして、次の4つについて解説を進めていきます。

  • 事業譲渡
  • 株式取得
  • 合併
  • 会社分割

3-1. 事業譲渡

事業譲渡イメージ画像

事業譲渡とは、事業の全部または一部を買い手企業に譲渡するM&Aのスキームのことをいいます。
買い手企業は、売り手企業のすべての資産・負債を譲り受けるのではなく、事業単位で取得することから不要な資産・負債を抱え込む必要が無いという点がメリットの一つです。一方、個別資産の所有権や契約上の地位の移転手続きが必要となるため、コストがかかる点がデメリットといえるでしょう。

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3-2. 株式取得

株式取得は、次の3つに分類できます。それぞれ内容を見ていきましょう。

  • 株式譲渡
  • 株式交換、株式移転
  • 第三者割当増資

株式譲渡

株式譲渡イメージ画像

株式譲渡とは、買収先企業の支配権を取得するために、買収先企業の既存株主が保有する株式を取得することをいいます。
株式譲渡では、株主構成が変更されるというスキームのため、直接的には買い手企業がM&A対象会社の債務に対する責任を負うことがありません。また、会社法上の債権者保護手続きは要求されないこともメリットになります。
ただし、グループ企業として買収先企業の潜在的な簿外債務を引き継いでしまう可能性があるので注意が必要です。

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株式交換と株式移転

株式交換とは、買収対象会社の発行済株式を買収企業となる会社に取得させるスキームのことをいいます。また、株式移転は、2社以上の会社が発行済株式のすべてを親会社に取得させるスキームを指します。
株式の発行による買収のため、買収資金が不要である点、完全親子会社関係を作ることができるといった点がメリットとなります。一方、新規株式の発行により株価が下落するリスクや、株主構成が変化するといった点はデメリットといえます。

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第三者割当増資

第三者割当増資イメージ画像

第三者割当増資とは、特定の第三者に新株の引き受けの権利を付与する形で株式の増資を行うことをいいます。業務提携先の取引先との関係構築を目指す場合や経営悪化によって公募増資が難しい場合などに利用できます。
M&A対象会社が発行する新株または処分する自己株式を特定の第三者が引き受けるというスキームであり、手続きがシンプルである点はメリットといえます。一方、支配権を獲得するために必要となるコストが大きい点や、既存株主が不利益を被る可能性があるといった点はデメリットとなります。

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3-3. 合併

合併は、「吸収合併」と「新設合併」の2つに大きく分類されます。それぞれ詳しく説明します。

吸収合併

吸収合併

吸収合併は、消滅する会社の権利義務のすべてを存続会社が吸収して承継する合併の手法のことをいいます。
グループ内の再編に用いられることが多く、株式を対価として行われます。複数の会社の資産・負債、権利義務を1つの会社に統合することで事業間のシナジー効果を高めると共に、グループ内の権利関係を管理しやすいように再編することが可能です。

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新設合併

新設合併イメージ画像

新設合併は、複数の企業が合併する際にすべての会社を消滅すると共に新たな会社を設立し、新たな会社に既存企業のすべての権利義務を承継する方法のことをいいます。
吸収合併と異なり存続会社が無いため、対等な立場での合併となる点がメリットです。一方、許認可や事業に関連する免許等を取り直す必要があるため、手続きの手間がかかるという点がデメリットとなります。

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3-4. 会社分割

会社分割イメージ画像

会社分割は、会社が事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割し、他者に承継させるスキームです。
事業譲渡に比べて手続きがシンプルである点や、転籍させる従業員から個別に同意を得る必要が無い点はメリットとなります。
一方、システムの統合などによって現場に負荷がかかることがあり、経営統合がスムーズに進まない可能性など、デメリットもあるので注意が必要です。
会社分割は、「新設分割」と「吸収分割」の2つに分類されます。それぞれの内容を見ていきましょう。

新設分割

新設分割とは、既存の事業を新しく設立した会社へ承継させる会社分割の手法のことをいいます。
カーブアウトの1つの手法として行われ、当該事業のノウハウをそのまま新しく設立した会社に承継し、1つの新設法人として経営を行うことになります。
既存事業を新設会社へ移転させることによって経営の自由度が高まるといったメリットがある一方で、会社設立に手間がかかることがデメリットです。

吸収分割

吸収分割とは、既に設立されている他の法人へ事業を承継させる会社分割の手法のことをいいます。
売却する側の企業は、「選択と集中」の観点から、経営資源をコア事業に集中させることを目的として吸収分割を行います。一方、買収する側の企業は、新規事業への進出や既存事業の強化という観点から、グループとしての企業価値の向上を狙うなどの目的があります。

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4. M&Aによる投資のメリット

M&Aによる投資には、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に解説します。

4-1. ビジネスの拡大につながる

M&Aの実行により、グループとしてビジネスが拡大することは、M&Aによる投資を実施する大きなメリットとなります。
新規事業への進出を目的としたM&Aの場合には、自社が展開するビジネス領域が広がります。また、同一領域の事業を取得する場合には、既存事業との相乗効果によりビジネスを拡大させることが期待できるでしょう。

4-2. 時間やコストの節約につながる

通常、新規事業の立案や既存事業の拡大には、多くの時間を要します。また、事業を進めるうえで、さまざまなコストが発生することが見込まれます。
M&Aにより既にできあがった事業を自社グループに取り込むことで、一から事業を立ち上げる場合に比べて、スピード感をもって企業の競争力を向上させることが期待できます
また、買収価額を抑えることによって、相対的にコストを削減できる可能性があるといった点もメリットといえるでしょう。

4-3. シナジー効果が生まれる

シナジー効果(相乗効果)とは、複数の要素が混ざり合うことによって、それぞれの要素が個々に存在するよりも大きな成果が発生することをいいます。
M&Aによるシナジー効果は、既存事業と新規事業に関連性が生まれることで、個々に事業を進めるよりも高い価値を生み出すことです。各企業が保有する取引先や人材といった経営資源を統合することによって、シナジー効果が期待できます。

4-4. 資金の回収が早くできる

上記の3つの効果によって、結果的に資金の回収が早くなることが見込まれる点もM&Aによる投資のメリットとなるでしょう。具体的には、ビジネスの拡大によって事業の収益性が高まることで、投下した資金を「利益」として早期に回収することが見込めます
また、既に形になっている事業を買収することで短期間で成果に結び付くことも、資金回収の早期化につながるといえるでしょう。

5. M&Aによる投資のデメリット

M&Aによる投資はメリットが多い手法ですが、一方で次のようなデメリットもあります。

5-1. 投資のための資金が必要

M&A投資を行うためには、ある程度まとまった資金が必要です。
少額からでも実行できる株式投資とは異なり、事業自体を購入することになるため、M&A投資に必要となる資金は大きくなることが一般的です。小規模なM&Aの場合でも、数百万円程度の資金が必要となることが想定されます。

5-2. 利益を出せない場合もある

M&Aを実行したとしても、思うようにシナジー効果が生み出せない場合や、買収価額が高すぎる場合には、結果的に利益を生み出せない可能性があります
投資である以上、リスクを負うのは当然であるため、時間をかけて投資先を吟味する必要があるといえるでしょう。

5-3. 従業員の離職リスクがある

M&A実施後のリスクとして、社風や労働環境が変わってしまうことで、従業員が離職する可能性が否めない点が挙げられます。
M&A前にデューデリジェンスや従業員説明を行うことによって離職するリスクを低減することはできますが、買収後に想定と異なるようなケースでは離職につながることもあるでしょう。優秀な人材が退職することによって事業に関連するノウハウを失い、結果的にM&A投資の効果が低減してしまう可能性があります。
時間をかけながら従業員と丁寧に会話をするなど、PMI(M&A後の統合プロセス)を十分に行うことで離職リスクを下げることが、M&Aの成功のための重要なポイントです。

6. M&Aによる投資を成功させるためのポイント

最後に、M&Aによる投資を成功させるためのポイントを解説します。

6-1. M&Aの基本的な知識を身につける

M&Aの実行においては法律や会計に関する専門知識が必要となるだけでなく、M&Aによっていかにシナジー効果を生み出すかといった、ビジネス観点における知見や経験も必要となります。
過去のM&Aの事例を収集すると共に、専門家への相談や勉強会への出席などを通じてM&Aに関する基本的な知識を身につけておきましょう。

6-2. 無理のない規模で投資を行う

M&Aの実行にはある程度まとまった資金が必要で、失敗するリスクもあります。まずは小規模なM&A案件から始めることで、リスクを最小限に抑えることが可能です。
M&Aに関する経験を積み、ビジネスが軌道に乗ってきたタイミングから徐々に大規模なM&A投資案件を進めることが重要です。

6-3. 専門家に相談する

M&Aには専門的な知見が必要となるため、早いタイミングで専門家への相談を行い、協力しながら進めることが重要です。
専門家から過去の事例に関する知見を得られるだけでなく、法律や会計といった専門領域のサポートも受けることができます。M&Aのパートナーとして良い専門家を見つけることが、M&Aの成否を分けるポイントとなります。

7. まとめ

M&Aは、新規事業への進出や既存事業の強化のために行われる将来への投資活動の一つです。
投資活動としてM&Aを活用することで、既存事業とのシナジー効果を生み出すだけでなく、短期間でビジネスを加速させることが期待できるでしょう。一方で、M&Aを実行するためには、ある程度まとまった資金が必要であり、投資リスクも伴います。そのため、投資額に見合う成果が得られるかどうかを入念に検討する必要があります。
M&Aを実行するにあたっては、基本的な知識を身につけ、無理のない範囲で実行することが重要です。専門的な知見が必要となる場面も多いため、実績のあるM&Aの専門家と協力しながら進めていきましょう。
M&Aキャピタルパートナーズは、東証プライム上場の信頼と実績があるM&Aの支援機関です。M&Aに関する疑問・質問がありましたら、お気軽にご連絡ください。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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