更新日
後継者不足問題の現状について
後継者不足問題とは、中小企業で経営者の高齢化が進む一方、家族や従業員に後継者が見つからず、事業継続が困難となる状況を指します。2020年の調査で65.1%が不在、2023年も5割超が未選定。要因は少子高齢化、先行き不安、準備不足、親族の承継意欲低下で、解決には親族内外承継やM&A、公的支援の活用が有効です。
近年、多くの中小企業が、後継者が見つからず、事業継続が危うくなる「後継者不在問題」に直面しています。経営者の高齢化が進むなか、家族や従業員に後継者が見つからず、事業継続が困難になるケースが増えているのです。実際、2020年時点で後継者不在は65.1%、2023年でも5割超が未選定。近年は新型コロナの影響も重なり、黒字でも休廃業・解散を選ぶ企業が目立ちます。この傾向が続けば、優れた技術や知識、顧客基盤が途絶えてしまうおそれがあります。
本記事では、「M&Aとは?」の基本的な理解を踏まえたうえで、事業承継における後継者不足の実態を業種・地域別に確認し、少子高齢化や先行き不安、準備遅れ、親族の承継意欲低下といった原因を整理。さらに、親族内外承継、公的支援、M&Aの活用など、実行しやすい解決策を具体的に解説します。
事業承継について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
後継者不足問題の現状
現在、中小企業の多くで深刻な後継者不足が進行しており、これにより廃業を検討する企業も増加傾向です。また、後継者不在率は業種や地域によって異なり、各業種、各地域ごとに、特有の問題が存在しています。
以下では、中小企業の現状と廃業予定率を紹介したうえで、業種別、地域別の現状をそれぞれ明らかにしていきます。
中小企業の現状と廃業予定率
中小企業庁が発表した「2024年版 中小企業白書」によると、2000年には経営者年齢のピーク(かつ最も多い層)が「50~54歳」でしたが、2010年には60~64歳、2015年には65~69歳、2020年には70~74歳と推移しています。このことから、経営者が高齢化の傾向にあることがわかります。
直近の2023年には、経営者年齢の分布がゆるやかに平準化しつつあるものの、50%超の中小企業では未だ後継者は不在であり、事業継承の準備が進んでいる企業は多くありません。
また、近年は新型コロナウイルスの流行もあり、休廃業や解散を選択している中小企業の件数は増加しています。
また、休廃業・解散企業の損益別構成比を見てみると、中規模企業、小規模事業者共に半数近くが黒字でありながら、休廃業や解散を選択せざるを得ない状況であることがわかります。
なお、上図のように、2023年の廃業予定企業の廃業理由は、28.4%が後継者不在によるものでした。このことから、会社の業績が悪化した結果廃業を選択したというよりも、後継者不在が最終的な理由となり、休廃業や解散を選ばざるを得ない企業が多く存在していることがわかります。
業種別の後継者問題の現状
後継者不足の状況は業種ごとに異なりますが、建設業では特に深刻です。帝国データバンクが2023年に行った調査によると、建設業では約60.5%の企業が後継者不在という厳しい状況です。
建設業は、業界特有の技術や知識を引き継ぐのに多くの時間と手間を要するため、経営者交代がスムーズに進みにくい性質があります。しかし、このまま後継者不足による廃業が増えれば、地域のインフラ整備や公共事業を担う企業が不足し、地域社会にも悪影響が出ることが懸念されます。
また、業種をさらに細かく見ると、自動車関連(ディーラーや自動車小売業)や、医療業、専門工事業などでも後継者問題は深刻です。特に、医療や専門工事のような高度な技術が求められる職種では、技術を受け継ぐ後継者の不在が、福祉の質や競争力の低下につながるおそれがあります。
したがって、今後も後継者不足の状態が続けば、地域経済における産業の衰退や、技術の消失が進んでしまうリスクが、今以上に高まることになるでしょう。
地域別の後継者問題の現状
後継者不足は業種だけでなく地域によっても大きく異なっており、特に地方では深刻な状況です。帝国データバンクが2023年に実施した調査によると、後継者不在率が最も高いのは鳥取県で71.5%、次いで秋田県が70.0%、島根県が69.2%、北海道が66.5%となっています。
地方では若年層が都市部に流出し続けているため、事業を引き継ぐ人材が不足しており、今のところ多くの企業では、後継者不足を解決する目処が立っていません。この傾向が続いて廃業が進むと、地域経済にも悪影響が生じ、特に地方では雇用機会の減少や産業基盤の弱体化が懸念されています。
そのため、地域経済の活性化や地方創生の観点からも、地方の後継者不足への対策が急務とされており、地域ごとの事情を汲んだ支援策が求められています。
後継者不足を招く原因
後継者不足を招く主要な原因としては、以下の4つが挙げられます。
順番に解説していきます。
少子高齢化による後継者候補の減少
少子高齢化が進むことにより若い世代の人口は減少しており、その結果、必然的に後継者となる人材も不足しています。
特に地方では、多くの若者が都市部での仕事や生活を求めて転出していくため、若年層を中心に、地域全体の人口は減っていく一方です。こういった事情が、後継者問題を一層複雑にしています。
経営環境の変化に対する先行き不安
新型コロナウイルスによる長期的な経済的打撃などにより、多くの中小企業では、将来の見通しが立っていない状況です。また、グローバル化が進むなかで、国内外の競争はますます激しさを増しており、企業が安定して存続することも容易ではありません。
加えて、ITやデジタル技術の急速な普及を受け、事業のオンライン化や新しい技術の導入は生き残るための必須条件となっており、こうした時代の変化に迅速に対応する必要性が高まっています。
こうした複雑かつ困難な経営環境は、後継者候補にとって重い負担ととらえられやすい要素です。未来の不透明性が、事業継承に対する意欲の低下を招いています。
事業承継の準備が進まない
中小企業の経営者は、常に日々の業務に追われ、事業承継の準備を後回しにしがちです。そのため、後継者を選び、育成することの重要性は理解していても、計画的に進められていない企業が多い状況となっています。
また、中小企業では事業承継のための人材や資金が不足しがちという課題もあり、それが原因で事業承継に向けた準備や対策が十分に進まないケースも多く見られます。
親族による事業承継意欲の低下
これまでは、中小企業の経営者は、親族内で事業承継を行うことが一般的でした。後継者としてふさわしい候補が現れなかったとしても、自分の子供が後を継いでくれれば、事業を存続させることが可能だったのです。
しかし最近では、将来性への不安から、経営者の子供ですら、親の事業を継ぎたがらないケースが多くなっています。例えば、伝統的ないくつかの業種では、市場の縮小や技術革新の遅れが表面化しており、子供たちが家業に魅力を感じづらい状況です。
また、ワークライフバランスが重視され、経営者としての厳しい労働環境や長時間労働、責任の重さなどが敬遠されるようになったことも、若い世代が家業を継がなくなった一因といえるでしょう。
後継者不足問題の解決策
後継者不足問題は、事業の継続や地域経済の活性化にとって非常に重要な課題です。ここでは、後継者を確保し、円滑な事業承継を実現するための具体的な解決策を紹介します。
親族内承継を行う
後継者不足問題を解決する方法の第一選択肢として考えられるのは、従来から多くの中小企業で行われてきた「親族内承継」です。
親族内での承継であれば、既に信頼関係が成立しているため、価値観の共有が容易で、事業や経営方針などの引継ぎもスムーズに進めやすいという利点があります。また、親族が後継者になれば従業員や取引先にも安心感を与えられるため、事業の安定も期待できるでしょう。
ただし、親族内承継を行う場合には相続税や贈与税の負担が発生する可能性があるため、税務対策や資金調達といった事前準備が不可欠となります。
親族外承継を行う
親族内に後継者が見つからない場合には、社内にいる有能な従業員を後継者に指名する「親族外承継」が効果的です。社内から次期社長を登用するのであれば、従業員や取引先からの信頼も得やすく、円滑な事業移行が期待できます。
ただし、後継者として十分な経営知識を持つためには、計画的な育成が欠かせません。また、株式の譲渡に際しては、資金調達の準備や法的な手続きのサポートを受けることも必要であることから、円滑な移行ができるような体制整備も必要です。
事業引継ぎ支援センターを利用する
後継者問題の解決策として、公的機関である「事業引継ぎ支援センター」を利用する方法もあります。この機関を利用すれば、事業承継の専門家による直接サポートを受けることが可能です。親族外や第三者への引継ぎを希望する場合には、後継者候補とのマッチングなども支援してもらえます。
事業引継ぎ支援センターは地域に密着した支援を行っているため、特に地方の企業には適したサービスといえるでしょう。また、補助金や税制優遇制度の利用方法についても助言を得られるので、スムーズで効率的な事業承継が期待できます。
専門家に相談のうえ第三者承継を行う(M&A)
親族や社内で適切な後継者が見つからない場合は、M&Aを活用して第三者に事業を引き継ぐ方法もあります。信頼できる企業に譲渡できれば、自社の価値向上が期待できるだけでなく、外部から新たな資本や技術、人材などのリソースが得られるため、事業が成長していく機会も大きく広がります。
また、雇用の維持も可能となることから、従業員に対して将来的な安心感を与えられることもメリットです。ただし、こうした理想的な後継先を、経営者が業務の合間に独力で見つけることは容易ではありません。
そのため、第三者への承継を真剣に考えるのであれば、M&Aに精通した仲介会社などの専門家に相談するのが理想的です。専門家のサポートを受ければ、幅広い候補の中から自社の条件に合った相手を紹介してもらえるだけでなく、手続きや交渉などの複雑なプロセスでも専門的なアドバイスを受けることができます。これにより、安心して事業を譲渡することが可能になります。
まとめ
後継者不足問題の解決には、親族内外での承継やM&Aなど、さまざまな選択肢を考慮することが重要です。
後継者不足は、経営者高齢化と候補者減少、先行き不安、準備不足、親族の意欲低下が重なって生じる構造問題です。2020年に65.1%が不在、2023年も5割超が未選定という実態の下、黒字でも廃業せざるを得ないケースが発生しています。業種では建設や医療・専門工事、地域では地方圏で深刻度が高く、地域経済への波及も大きいのが特徴です。対策は、親族内外承継の早期着手、公的機関の活用、専門家と連携した第三者承継(M&A)を軸に、税務・資金・人材育成を計画的に進めること。自社の現況と目標に合わせて手段を組み合わせ、タイムラインを明確化することが、承継成功と企業価値の維持に直結します。
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はお気軽にご相談ください。
よくある質問
- 後継者不足問題の傾向はどうなっていますか?
- 2020年の調査では中小企業の65.1%が後継者不在で、2023年時点でも5割超が未選定とされています。経営者の高齢化が続く一方で準備が進んでいない企業が多い状況です。
- 廃業に直結する主な要因は何ですか?
- 2023年の廃業予定企業では28.4%が後継者不在を理由に挙げており、黒字でも休廃業・解散に至るケースがある点が特徴です。
- 後継者不足問題における業種別の状況は?
- 建設業で不在率が約60.5%と深刻で、自動車関連、医療、専門工事業など技術継承を要する分野でも課題が顕在化しています。
- 後継者不足問題における地域別の状況は?
- 鳥取県71.5%、秋田県70.0%、島根県69.2%、北海道66.5%と、地方で不在率が高く、若年層の都市流出が背景にあります。
- 後継者不足を招く主因は?
- 少子高齢化による候補減、経営環境の不確実性、承継準備の遅れ、親族の承継意欲低下の4点が挙げられます。
- 後継者不足問題に対する有効な解決策は何ですか?
- 親族内承継、社内登用などの親族外承継、公的な事業引継ぎ支援センターの活用、専門家に相談した第三者承継(M&A)です。
M&Aを流れから学ぶ
(解説記事&用語集)
M&A関連記事
M&A基礎
目的別M&A
- 会社売却と事業承継の違い
- 事業承継とは
- 事業承継とM&Aの違い
- 事業承継M&A
- 「事業承継」と「事業継承」の違い
- 事業承継問題
- 後継者不足の実態【閲覧中】
- 事業承継における課題
- 事業承継対策の必要性
- 事業承継を実施するタイミング
- 事業承継の流れ
- 事業承継計画
- 事業承継計画書の記載項目
- 事業承継のチェックリスト
- 事業承継における後継者選定
- 事業承継における後継者育成
- 親族内承継
- 親族外承継
- 従業員への事業承継
- 第三者承継
- 親族内承継と第三者承継の比較
- 後継者のいない会社を買う
- 事業承継の主要スキーム比較
- 持株会社を活用した事業承継
- 事業承継信託
- 事業承継ファンド
- 医療法人の事業承継
- 事業承継に向けた資金調達方法
- 事業承継補助金
- 事業承継で活用できる融資
- 事業承継における生命保険
- 事業承継税制
- 事業承継の税務対策
- 事業承継と資産移転
- 事業承継時の消費税の取扱い
- 承継時の債権・債務の取扱い
- 地位承継
- 包括承継
- 許認可の承継
- 株式相続
- 株式の贈与
- 自社株贈与
- 事業承継士
- 事業承継の専門家
- 事業承継コンサルティング
- 事業承継特別保証制度
- 事業承継に潜むリスクと対策
- 事業承継に伴う労務管理リスク
M&Aスキーム
M&Aプロセス
企業価値評価
デューデリジェンス
M&Aファイナンス
M&A税務
M&A法務
用語・その他
- 当期純利益
- 資産除去債務
- バスケット条項
- XBRL
- 特別決議
- 譲渡承認取締役会
- 大量保有報告
- 適時開示
- 法務のポイント
- インサイダー取引
- チャイニーズ・ウォール
- 匿名組合
- キラー・ビー
- クラウン・ジュエル
- グリーン・メール
- ゴールデンパラシュート
- ジューイッシュ・デンティスト
- スタッガード・ボード
- スケールメリット
- ストラクチャー
- 利益相反
- 源泉徴収
- プロキシー・ファイト
- パールハーバー・ファイル
- Qレシオ
- MSCB
- IFRS
- 現物出資
- コントロールプレミアム
- ゴーイング・プライベート(Going Private)
- バックエンド・ピル
- パックマン・ディフェンス
- EV(事業価値)
- 売渡請求
- 株主価値
- レバレッジ効果
- 減損価格
- アーンアウト
- シャーク・リペラント
- スーイサイド・ピル
- ティン・パラシュート
- 低廉譲渡
- 監査法人
- 相対取引
- 範囲の経済
- アナジー効果
- 債券
- 純有利子負債(ネット デット)
- ホールディングス
- COC条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)
- ディスクロージャー
- 会社法
- ROA(総資産利益率)
- 国際租税条約
- 役員報酬
- SWOT分析
- アンゾフの成長マトリクス
- サクセッションプラン
- ドラッグアロング
- 累進課税
- 総合課税と分離課税の違い
- キャピタルゲイン
- インカムゲイン
- 資本と負債の区分
- 益金不算入
- タックスシールド
- 繰越欠損金
- スタンドアローン・イシュー
- ロックド・ボックス方式
- 特定承継
- プットオプション
- 埋没費用(サンクコスト)
M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由
創業以来、売り手・買い手双方のお客様から頂戴する手数料は同一で、
実際の株式の取引額をそのまま報酬基準とする「株価レーマン方式」を採用しております。
弊社の頂戴する成功報酬の報酬率(手数料率)は、
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」を誇っております。
-
明瞭かつ納得の手数料体系
創業以来変わらない着手金無料などの報酬体系で、お相手企業と基本合意に至るまで無料で支援致します。
- 関連ページ -
-
豊富なM&A成約実績
創業以来、国内No.1の調剤薬局業界のM&A成約実績の他、多種多様な業界・業種において多くの実績がございます。
- 関連ページ -
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はお気軽にご相談ください。
