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2020年現在、国内企業の3分の2にあたる企業が後継者不在の問題を抱えています。後継者不在が倒産などの原因の1つになっているケースも珍しくないほど問題は深刻化しているため、M&Aなどを活用しこの問題を解決しなければなりません。
この記事では、後継者不足の現状と、なぜ後継者不足問題が勃発しているのか解説していますので、この記事が後継者不足問題の解決の手助けになれば幸いです。
中小企業の後継者不足の現状
株式会社帝国データバンクが2020年に発表した「全国企業「後継者不在率」動向調査」によると国内企業の3分の2にあたる65.1%が後継者不在ということが分かりました。これは、同社が保有している調査データを基に2015年以降(2015年10月~2020年11月)の詳細な実態が判明している26万6000社(全国・全業種)を対象に、後継者の有無が集計され、9万6000社(構成比34.9%)が「後継者あり」となっている一方で、65.1%にあたる17万社が「後継者不在」という結果になりました。
後継者不足による事業承継問題が話題となり、政府で対策が検討される中で、事業承継に対する意識の高まりがみられますが、それでも「60歳代」では約半数、「80歳代」でも3社に1社は後継者が不在しています。同調査では社長の年齢が判明した26万6000社を対象に、社長年齢別の後継者不在率を前年(2019年)と比較すると、「30歳代未満」と「80歳以上」以外の年代で後継者不在率の低下が見られました。特に「40歳代」以降では、調査開始以降で最も低い不在率となっており、「50代」では初めて7割を下回る結果となりました。
社長年齢別 | |||
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2020年 | 2019年 | 2018年 | |
30歳未満 | 92.7% | 91.9% | 94.1% |
30歳代 | 91.1% | 91.2% | 92.7% |
40歳代 | 84.5% | 85.8% | 88.2% |
50歳代 | 69.4% | 71.6% | 74.8% |
60歳代 | 48.2% | 49.5% | 52.3% |
70歳代 | 38.6% | 39.9% | 42.0% |
80歳以上 | 31.8% | 31.8% | 33.2% |
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業種別では前年と比較すると、「小売」「製造」以外の5業種で不在率が下回る結果となりました。最も不在率が高いのは「建設業」の70.5%ですが、最も不在率の高い2018年からは低下しており、不在率に低下傾向が見られます。
業種別 | |||
---|---|---|---|
2020年 | 2019年 | 2018年 | |
建設業 | 70.5% | 70.6% | 71.4% |
製造業 | 57.9% | 57.9% | 59.0% |
卸売業 | 63.0% | 63.3% | 64.7% |
小売業 | 66.4% | 66.0% | 67.3% |
運輸・通信業 | 61.5% | 62.3% | 63.7% |
サービス業 | 69.7% | 70.2% | 71.6% |
不動産業 | 67.5% | 68.0% | 68.9% |
その他 | 54.4% | 54.0% | 56.1% |
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地域別に見ると、4地域で不在率が前回を下回る結果となりました。過去調査同様に「北海道」が不在率 72.4%(前回調査から 0.5pt 低い)となり、最も承継準備が進んでいない状況が続いていますが3年連続で不在率が下回っている結果となっています。また、全地域の中でも不在率の低い「四国」(不在率 55.5%)では、調査開始以降で最も高い不在率となりました。
地域別 | |||
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2020年 | 2019年 | 2018年 | |
北海道 | 72.4% | 72.9% | 73.5% |
東北 | 65.2% | 65.3% | 64.8% |
関東 | 65.2% | 65.9% | 67.8% |
北陸 | 57.7% | 57.4% | 58.2% |
中部 | 64.4% | 64.1% | 65.9% |
近畿 | 66.3% | 66.6% | 68.2% |
中国 | 70.8% | 70.6% | 70.4% |
四国 | 55.5% | 54.5% | 52.8% |
九州 | 62.7% | 62.2% | 61.2% |
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中小企業で後継者を決め、育てるのは簡単でない
別の調査からも、後継者への事業承継の難しさが窺えます。中小企業庁委託「企業経営の継続に関するアンケート調査」(2016年11月、株式会社東京商工リサーチ)によると、中規模法人の後継者の選定状況は、後継者が決まっている(1369名)候補者はいますが、本人の了承を得ていない(950名)後継者候補を探していますが、まだ見つかっていない(453名)後継者を探す時期ではない(401名)後継者候補についてまだ考えたことがない(248人)という結果が出ました。
このうち、「候補者はいますが、本人の了承を得ていない」「後継者候補を探していますが、まだ見つかっていない」という経営者にはさまざまな対処すべき課題があります。アンケートで挙げられた項目だけでも「後継者を選定し、本人や関係者の了承を得ること」をはじめ「社内の組織体制の整備」「後継者を補佐する人材の確保」「後継者への段階的な権限の委譲」「引継ぎ後の事業計画の策定」「経営者の個人保証の折衝」といった課題がありますが、いずれの項目に対しても対策・準備が具体的にとられていないことがわかります。
また事業承継のはじめの一歩となる後継者の決定も後継者の選定を始めてから本人の了承を得るまでに1年以内で決まるケースはわずかに20.5%であり、1年超3年以内が42.4%、3年超の割合が37.1%と、後継者の候補がいたとしても、決定までには相当な時間を要することがわかります。
また、「2018年度 中小企業白書」によると親族内承継(子供や一族への承継)、親族外承継(親族以外の従業員や社外の人材への承継)の際の資産の引継ぎとして挙げられる課題は、「自社株式や事業用資産のベストな移転方法の検討」「承継者が納税や自社株式、事業用資産を買い取る際の資金力」「自社株式や事業用資産の適切な評価」「自社株式や事業用資産の評価額が高く、贈与税・相続税の負担が大きい」「会社が自社株式や事業用資産を買い取る際の資金調達」といった課題がありますが、継がせる側にとって悩ましいのは自身が頑張って育ててきた優良な企業である程、後継者の資金力が足りないことや、贈与税や相続税の負担が大きくなることであり、対策や準備が容易でないことがわかります。