エスクローとは? M&Aにおける仕組みやメリットと活用場面を解説

エスクローとは?M&Aにおける仕組みやメリットと活用場面を解説のメインビジュアルイメージ

更新日


エスクローについて

エスクローとは、売買契約時に買い手が代金を第三者に預け、商品の引き渡しや契約条件の達成を確認した後に、売り手へ支払う仕組みです。M&Aでは、株式や事業の譲渡に伴う代金の受け渡しに第三者を介在させることで、取引の安全性と信頼性を確保する場面で用いられます。

M&Aでは、譲渡代金の支払いと株式や事業の引き渡しをどのように安全に進めるかが重要な論点になります。特に、相手方との信頼関係だけでは履行の確実性に不安が残る場合、代金管理や支払い条件を適切に設計することが求められます。

本記事では、エスクローの仕組みや流れ、M&Aで活用される理由、メリット・デメリット、主な手法や活用場面について解説します。

また、M&Aの意味や基本知識について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

監修者情報

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 執行役員 コーポレートアドバイザリー部長 公認会計士 梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。 これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。


エスクローとは?

エスクロー(Escrow)とは、売買契約時に買い手が代金を信頼できる第三者に預け、商品の引き渡しを確認した後に売り手が第三者から代金を受け取る仕組みのことです。一般的に多額の資金移動が伴う取引において活用され、第三者を介在させることで取引の安全性・信頼性を担保します。

エスクロー イメージ画像

ここでは、エスクローの仕組みを説明すると共に、M&Aにおけるエスクローの意味を解説します。

エスクローの仕組みと流れ

エスクローの仕組みは、次の流れで成り立っています。

  1. 買い手と売り手が売買契約を締結する
  2. 買い手はエスクロー事業者(第三者)に商品の代金を引き渡す
  3. エスクロー事業者は、売り手に対し入金があったことを報告する
  4. 売り手が買い手に商品を引き渡す
  5. 買い手がエスクロー事業者に商品の受け取りを報告する
  6. エスクロー事業者が売り手に代金を支払う

通常、売買契約では財産権の移転と同時に相手方が代金を支払うこととされています。しかしながら、売買の対象たる財産権の性質によっては同時に行うことが現実的でなく、また、買い手と売り手との間に信頼関係が無い場合には取引成立も難しくなってしまいます。
エスクローを利用すれば、買い手から第三者への入金後に売り手は商品を引き渡し、代金を受け取れるため、取引の安全性・信頼性が高まります

M&Aにおけるエスクローの意味・活用される理由

M&Aでエスクローが実施される目的は、取引の信頼性・安全性確保のためです。

一般的に、M&Aでは株式や事業の譲渡契約を結びます。その際、第三者として銀行などの金融機関やエスクローを本業とする事業者などが介入することで、高い信頼性を担保することが可能です。

ただし、M&Aにおいてエスクローが活用されるのは限定的であり、例えば、次のような事例において活用されます。

  • 企業の子会社の切り離しなど、BtoB系のM&Aにおいて早急な売却を要し、デューデリジェンスなどの手続きを実施する余裕が無い場合
  • M&A実施後に不明株主が出てきた際の担保目的として、金融機関に代金を預ける場合

いずれの場合であっても、金融機関やエスクロー事業者に対して支払う手数料との兼ね合いから、相当な規模でのM&Aにおいてエスクローは検討されます

エスクローを使うメリット

エスクローを利用するメリットは主に次の2点です。

取引の安全性を確保

エスクローの主たるメリットは、取引の安全性の確保です。第三者が取引に介在して代金に関する保証を請け負うことで、M&Aにおける売り手・買い手の双方が次のように安全を確保しながら取引を行えます

売り手側のメリット
M&A実行後における入金の確実性を担保できる
買い手側のメリット
代金支払い後にM&Aが適切に実施されないリスクを排除し、契約が履行されなかった際の損害賠償の支払い確実性を担保できる

第三者が介在するため、売り手と買い手それぞれの信頼性は問題になることはなく、双方とも安心して取引を行えます。また、M&Aでは、売り手企業と買い手企業が最終契約書を締結する際に、補償条項についても規定を盛り込みます。しかし、規定があったとしても、実際に損害賠償を請求する際に、売り手企業が賠償額を全額支払える保証はありません。買い手保護の意味からもエスクローが活用されるのです。

両者の認識相違を回避

エスクローの活用には、買い手と売り手の認識相違を回避するメリットもあります。M&A取引においては、手続きを進めるなかで両者に認識相違が生じることも考えられます。しかし、契約内容に相違が多いと信頼性が低下して取引の破綻を招くでしょう。

エスクローでは介在する第三者が契約内容を確認するため、取引の透明性を確保できます。売り手と買い手双方に公平な状況の提供が可能となるため、両者の認識相違を回避できるのです。

エスクローを使うデメリット

エスクローを利用することで生じる主なデメリットは次の2点です。

手数料の発生

エスクローを利用すると、第三者たるエスクロー事業者に対して手数料を支払わなければなりません。M&Aにおけるエスクローの手数料相場は、一般的に取引価格の1〜2%程度であり、契約書に記載されます

エスクロー手数料は、M&A取引の際に仲介会社に支払うサービス利用料と類似するものです。ただし、別途エスクロー事業者に対して支払わなければならない点で異なります。

手続きの負担

M&Aにおけるエスクローでは、手続きの負担が増加する点にも留意しなければなりません。高い信用性を持つエスクロー事業者による仲介を挟むことで、取引の安全性を確保できる一方で、手続きや支払条件の設定などの負担が生じます。スピーディな取引が難しくなる点もデメリットとなるでしょう。

エスクローの主な手法と特徴

日本でのエスクローの主な手法は、信託契約と銀行口座の2つです。ここからは、各手法の特徴と利点・欠点を解説します。

信託契約

信託契約は、買い手はエスクロー事業者に代金を預け、信託財産として管理してもらい、条件達成後に売り手に代金を支払わせる手法です。信託契約は次の流れで実施されます。

  1. 買い手は代金を信託財産としてエスクロー事業者に預託する
  2. 契約期間中、エスクロー事業者は信託財産を管理・運用する
  3. エスクロー契約を達成後、売り手企業に代金を引き渡す

M&Aにおいては、信託契約によって買収や合併の対価を信託できるほか、損害賠償金としても取り扱えます。信託契約では、資産をエスクロー事業者に運用管理してもらうため、倒産リスクを軽減できる倒産隔離の利点があります。
一方で、手続きが細かく、法定記載事項などの確認項目も多いため、信託契約の利用は長期間に及ぶことに留意しなければなりません。

銀行口座

M&Aにおける銀行口座を用いたエスクローは、譲渡代金を口座に送金し保管する手法です。銀行口座を用いるエスクローは次の流れで実施されます。

  1. エスクロー用の銀行口座を開設する
  2. 買い手企業は代金を該当口座に送金する
  3. エスクロー事業者が口座を管理・運用する
  4. エスクロー条件が達成されれば、売り手企業に代金を引き渡す

銀行口座の活用は、信託契約と異なり規約が少なく、透明性が高いのが特長です。金融機関を利用する手数料も低く、エスクロー事業者は連携が強固な企業から選ばれます。ただし、金融機関破綻時のリスクを伴う点に注意しなければなりません。

エスクローを活用したM&A例

M&Aにおいてエスクローを活用する2つの事例を紹介します。

例1:アーンアウト条項を締結する場合

M&Aでは、アーンアウト条項を締結する場合において、エスクローが活用されます。アーンアウトとは、M&Aの実行後に、事前に決めておいた条件(例えば、収益や利益が目標に達した場合)に応じて追加代金を支払う義務のことです。

具体的には、買い手は売り手に買収金額の一部を支払い、追加代金をエスクローとして入金しておきます。その後、条件が達成されればエスクローされていた代金を売り手が受け取る手法です。

エスクローとアーンアウトを組み合わせることで、買い手と売り手双方の安心感を確保し、確実なM&Aを実現できる利点があります。

例2:買収対象が複数存在する場合

M&Aにおいて買収対象が複数存在する場合にもエスクローを活用できます。エスクロー口座を利用して支払う際は、一括だけでなく分割を選ぶこともできるため、買収の態様に応じた使い分けが可能です。

例えば、M&Aによってチェーン店などの複数店舗を買収する必要がある場合には、店舗ごとに交渉しなければなりません。このとき、一括払いを選択するケースでは、全店舗の同意が得られないと全額リリースできず、不都合が生じます。

一方、口座を分割していれば契約を済ませた店舗から順に代金を支払えるため、M&Aをスムーズに進められます。このような利点から、買収対象が複数存在する場合には、エスクローが活用されているのです。

まとめ

エスクローは、M&Aにおいて買い手と売り手の間に第三者を介在させ、代金の受け渡しを管理することで取引の安全性と信頼性を高める仕組みです。主な手法には信託契約と銀行口座があり、アーンアウト条項を伴う取引や買収対象が複数ある場面で活用されます。一方で、手数料の発生や手続き負担といったデメリットもあるため、導入の要否は取引規模や契約条件を踏まえて慎重に判断することが重要です。



よくある質問

  • エスクローとはどのような仕組みですか?
  • エスクローとは、買い手が代金を信頼できる第三者へ預け、商品の引き渡しや契約条件の達成を確認した後に、売り手へ代金を支払う仕組みです。多額の資金移動を伴う取引で、取引の安全性や信頼性を高める目的で用いられます。
  • M&Aでエスクローが使われるのはなぜですか?
  • M&Aでエスクローが使われる理由は、譲渡代金の支払いと株式・事業の引き渡しを安全に進めるためです。第三者が代金管理に介在することで、売り手と買い手の双方が履行の確実性を確認しやすくなります。
  • エスクローの基本的な流れはどのようになりますか?
  • まず買い手と売り手が売買契約を締結し、買い手がエスクロー事業者などの第三者へ代金を預けます。その後、売り手が対象を引き渡し、買い手が受け取りを確認すると、第三者から売り手へ代金が支払われます。
  • エスクローを利用するとどのような安全性を確保できますか?
  • エスクローを利用すると、売り手はM&A実行後の入金確実性を担保しやすくなり、買い手は代金支払い後に契約が適切に履行されないリスクを抑えやすくなります。第三者が介在することで、双方が安心して取引を進めやすくなります。
  • エスクローにはどのような費用や負担がありますか?
  • エスクローを利用する場合、エスクロー事業者への手数料が発生します。M&Aでは一般的に取引価格の1〜2%程度が手数料相場とされ、手続きや支払条件の設定に負担がかかる点にも留意が必要です。
  • エスクローの主な手法には何がありますか?
  • 日本でのエスクローの主な手法には、信託契約と銀行口座があります。信託契約は倒産隔離の利点があり、銀行口座は規約が比較的少なく透明性が高い一方で、金融機関破綻時のリスクがあります。
  • M&Aではどのような場面でエスクローが活用されますか?
  • M&Aでは、アーンアウト条項を締結する場合や、買収対象が複数存在する場合などにエスクローが活用されます。条件達成後の追加代金の支払いや、対象ごとの分割払いに対応しやすい点が特徴です。

ご納得いただくまで費用はいただきません。
まずはお気軽にご相談ください。


M&Aを流れから学ぶ
(解説記事&用語集)

M&A関連記事

M&Aキャピタルパートナーズが
選ばれる理由

創業以来、売り手・買い手双方のお客様から頂戴する手数料は同一で、
実際の株式の取引額をそのまま報酬基準とする「株価レーマン方式」を採用しております。
弊社の頂戴する成功報酬の報酬率(手数料率)は、
M&A仲介業界の中でも「支払手数料率の低さNo.1」を誇っております。