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日本の企業間におけるM&A(Mergers and Acquisitions、合併・買収)の動きは、近年、増加しています。M&Aは企業の成長戦略の一環として行われる一方、敵対的な買収として進められる場合も存在します。企業が敵対的な買収から身を守るための手段の一つとして、スーパー・マジョリティ条項(Super Majority Provisions)というものがあります。
スーパー・マジョリティ条項は、ポイズンピル、黄金株、スコーチドアースディフェンスなどと同様に敵対的買収の防衛策のひとつです。
今回は、スーパー・マジョリティ条項の概要、M&Aにおけるスーパー・マジョリティ条項の活用方法、メリットとデメリット及び導入方法について、詳しく説明します。
目次
1. スーパー・マジョリティ条項の概要
1-1. スーパー・マジョリティ条項とは?
スーパー・マジョリティ条項は、絶対的多数条項とも呼ばれることもあり、企業の株主や役員、または法律の制定・変更において、特定の重要な決定を行うために必要な議決権の割合を通常の必要議決権数以上に設定する条項をいいます。
例えば、企業の定款変更や合併、買収等の重要な決定において、決議要件を厳しくして、スーパー・マジョリティの承認(通常は2/3以上の賛成)を必要とすることができます。
2. M&Aにおけるスーパー・マジョリティ条項の活用方法
M&Aにおけるスーパー・マジョリティ条項の活用方法としては、株式会社の株主総会での議決要件を厳しくすることで買収意欲を削ぐ方法が挙げられます。
一般的に敵対的買収を行う際、株式を買い占めてから現経営陣を退職させて買収を行います。取締役などを解任するためには株主総会の定款に基づく賛成を得なければなりませんが、通常は法定定足数に過半数の賛成を得られれば解任することが可能です。
スーパー・マジョリティ条項では、例えば、議決要件に90%以上の賛成を必要とするなど、より厳しい条件を設けることができます。これにより敵対的買収の場合、100%近くの株式を取得するにはさらに多額の資金が必要になるため、絶対的多数条項のある企業は買収しにくくすることが可能になります。
3. スーパー・マジョリティ条項のメリットとデメリット
3-1. スーパー・マジョリティ条項のメリット
まず、スーパー・マジョリティ条項を導入する主なメリットは以下のとおりです。
- 敵対的買収を防ぐことができる。
- 企業の安定経営を支えることが期待できる。
- 株主総会での重要な決定事項について、広範な合意を求めることができる。
3-2. スーパー・マジョリティ条項のデメリット
次にスーパー・マジョリティ条項を導入する主なデメリットは以下のとおりです。
- 少数の反対者が決定を妨げる可能性がある。
- 企業経営の柔軟性が低くなる可能性がある。
4. スーパー・マジョリティ条項の具体的な導入方法
敵対的買収を防ぐ場合の手段として、スーパー・マジョリティ条項を導入する場合の具体的な導入方法を説明します。
通常、会社法の規定では、合併や買収するには、株主総会で3分の2以上の賛成が必要となりますが、この要件よりも厳しい条項(例えば、3分に2以上ではなく、90%以上の賛成が必要)を定款に定めることになります。
なお、定款の変更手続は以下の流れで行う必要があります。
- 株主総会での特別決議を行う
- 議事録を作成する
- 法務局で登記する
- 税務署への届け出
- 議事録の保管
5. まとめ
スーパー・マジョリティ条項は、企業の重要な決定に対する広範な合意を求めるための重要な法的・契約上の仕組みであり、敵対的買収の対応策として、企業の安定経営やM&Aにおいて重要な役割を果たします。しかし、スーパー・マジョリティ条項を導入することによるデメリットもあるため、その導入には慎重な検討が必要と考えます。
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