親族内承継とは メリット・デメリットや流れ、成功のポイントを解説

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会社を経営者の子どもや兄弟、親族などに引き継ぐ「親族内承継」は、従来から行われている事業承継の方法として最も一般的といえるでしょう。
しかし、後継者が見つからずに廃業を考える中小企業の経営者は、近年、増加傾向にあります。また、後継者候補がいたとしても、事業承継が実現するかどうかはわかりません。
親族内承継を成功させるためには、十分な準備期間を確保し、適切な手順を踏んで実施する必要があります。
この記事では、親族内承継の概要やメリット・デメリット、進め方、成功のポイントをわかりやすく解説します。親族内承継に関心がある方は、ぜひご覧ください。

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1. 親族内承継とは

親族内承継とは、経営者の親族にあたる子どもや兄弟、孫などが会社の経営を引き継ぐことです。
経営者が親族の中から後継者を指名できるため、事業承継がスムーズに行えます。事業理念や文化を後継者が深く理解していることも多く、第三者への承継に比べて手間と時間を抑えられることもメリットといえるでしょう。
一方で事業承継には、人材教育や税制面の対策など、さまざまな課題があります。後継者候補がいるという理由で安心せず、経営者は早めに準備を進めなければなりません。

1-1. 親族内承継が選択される割合

中小企業の社長に事業承継の意向を聞いた調査では、「今は事業承継を考えていない」が41.3%を占め、次いで「親族内承継を考えている」が25.6%であることが明らかになりました。中小企業の約4社に1社は、親族内承継を検討していることになります。
また、親族内承継の次に多いのが「現在の事業を継続するつもりは無い」という回答になっているため、廃業の割合も増えることが予想できます。

出典:中小企業実態基本調査 調査の概況(主要項目の調査結果)14頁

1-2. 親族外承継との違い

親族外承継とは、自社の役員や従業員など、親族ではない人に事業承継をする方法です。
社内の優秀な人材を後継者にすることで、社内での信頼が得やすく、企業文化が大きく変わることが無いのもメリットといえるでしょう。
ただし、後継者となる第三者が、自社株式を取得するための資金を準備しなけばならないため、親族内承継に比べて株式を承継するハードルが高くなります。

2. 親族内承継のメリット

親族内承継には、次のようなメリットがあります。

2-1. 早めに事業承継の準備ができる

後継者候補が存在し、親族内承継を検討している場合は、第三者への事業承継と比較して早めに後継者を決定することが可能です。その分、事業承継の準備に時間をかけることができるのがメリットといえるでしょう。
後継者は、事業承継のために、他社や子会社で経営について学ぶ時間を確保できます。後継者が経営者としての能力を身につけることは、事業承継後の会社を将来的に発展させるうえで重要な意味を持ちます。

2-2. 従業員や取引先の理解を得やすい

親族内承継は、周りからの理解を得られる可能性が高い点もメリットです。
後継者を早めに周知させることが可能で、次の経営者として信頼されるでしょう。取引先にも早めに挨拶することで、今後も取引を継続してくれる可能性が高まります
承継前から事業に携わっている親族であれば、既に従業員や取引先、顧客との関係性が構築できているため、事業承継がスムーズに進みます。

2-3. 相続や贈与などで節税が可能

日本に存在する会社の多くは中小企業ですが、後継者が見つからないことを理由に廃業を考える経営者が増えています。
事業承継を推進することは、中小企業の廃業を防ぐうえで重要な意味を持つことから、国によって税制優遇措置が設けられています
税制優遇措置により、中小企業の事業承継時には、一定の条件のもとで贈与税や相続税の猶予や免除が適用されます。ただし、ほかの親族から理解を得る必要があり、後継者が周囲から認められていることが大切です。

3. 親族内承継のデメリット

メリットが多い親族内承継ですが、次のようなデメリットもあります。

3-1. 親族に後継者がいない

親族に後継者候補がいたとしても、その人物が経営に向いているとは限りません
後継者にしようとした親族が経営に関心が無いケースもあり、事業承継を断られる場合もあるでしょう。さらに、事業の将来性に不安を感じ、承継をためらう後継者も多く存在します。
株式会社帝国データバンクの2020年の発表によると、国内企業の3分の2にあたる65.1%が後継者不在ともいわれています。中小企業における後継者不足が、社会的な課題となっていることがわかるでしょう。

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3-2. 後継者以外の親族とのトラブルになる

法定相続人が複数いる場合、親族内承継によって事業用の資産や株式を一括で承継することに、反対する人物が出てくる可能性があります。
親族間でトラブルが発生し、事業用の資産や株式が分散する結果になると、その後の経営が安定して行えなくなるリスクが高まるので注意が必要です。
そのような場合は、後継者以外の親族との交渉が必要になりますが、交渉が難航することも考えられるでしょう。

3-3. 個人保証の引き継ぎ問題が生じる

中小企業では、経営者が債務の保証人になっているケースが数多く見られます。
現在の経営者から事業を引き継ぐ場合は、個人保証も同時に引き継がなければならないため、後継者への負担が大きくなります。
個人保証が事業承継の妨げになっている状況を受けて、平成26年に「経営者保証に関するガイドライン」の運用が開始されました。一定の条件を満たすことで、個人保証を引き継がなくても事業承継が行える環境が整いつつあります。

4. 親族内承継を実行する流れ

親族内承継を実行する一般的な流れは、次のとおりです。

4-1. 親族内から後継者を選んで教育する

親族内承継を考え始めたら、なるべく早期に親族内から後継者を選びましょう。ほかの親族にも納得してもらえるよう、事前に相談しておくことをおすすめします
後継者が決まったら、育成計画に沿ってトレーニングを実施し、後継者が経営のスキルを身につけられるようにします。

4-2. 会社の資産の承継準備をする

会社の資産である株式や事業資産などは、後継者に引き継ぐことになります。資産の割合などを事業承継の早い段階で明確にしておくことで、のちのトラブルを防止できます。
後継者が持つ自社株の割合が高いほど経営を安定化できますが、自社株の割合は株主総会での議決権に直結するため、親族内承継でトラブルになりやすい部分です。必要に応じて、ほかの法定相続人と調整を行いましょう。

4-3. 事業承継について関係者へ伝える

従業員や取引先に対しても、事業承継について早めに周知しましょう。
事業承継のプロセスを周囲に伝えることで、事業承継の混乱が生じにくくなります。また、早めの周知によって、取引先が取引を中止したり、従業員が離職したりするリスクを低減することも可能です。

4-4. 相続・生前贈与・遺言などの手続きをする

事業承継では、後継者へスムーズに事業を引き継ぐために遺言書が用いられることがあります。特に、親族内承継の場合、公的で証明性の高い「公正証書遺言」を作成することが一般的です。
この遺言によって、会社の重要な資産や株式を後継者に引き継ぐことが可能となります。生前贈与によって後継者に株式などを引き継がせる方法もありますが、税金対策という課題が別途生じます。

4-5. 個人保証の対応をする

事業承継に際しては、経営者の個人保証を後継者に変更することが一つの大きな課題です。
個人保証の変更を行うためには、金融機関との事前の交渉が必要ですが、場合によっては変更できない場合もあるので注意しましょう
一方で、事業承継で個人保証を引き継がずに済む方法もあるため、詳しくは専門家へ相談することをおすすめします。

5. 親族内承継における株式の引き継ぎ方法・税金について

ここでは、親族内承継における株式の引き継ぎ方法・税金について解説します。事業承継を検討中の方は、基礎知識として押さえておきましょう。

5-1. 相続

相続によって自社株を後継者に渡すことは可能ですが、ほかの相続人との調整をしておかないと遺留分を請求される可能性があります
遺留分とは、一定の割合の遺産を受け取る権利がある相続人に与えられる、法定の相続分です。遺言書を作成していても遺留分を請求する権利はあるため、法的手続きによって、自社株の価値を相続財産の評価に含めないようにする必要があります。
対策として、遺留分に関する民法特例の活用も検討しましょう。

5-2. 生前贈与

生前贈与とは、経営者が生きている間に自社株式を後継者に渡すことです。しかし、評価額の高い株式の場合は、贈与税が高額になる可能性があるので注意しましょう
「相続時精算課税制度」の活用や、役員退職金の支払い後の自社株評価が下がっているタイミングでの贈与など、税金面での対策が必要です。

5-3. 譲渡(売買)

自社株を後継者に売買する方法もあり、売買の場合は遺留分などの問題は生じません。ただし、後継者が自社株を買い取るだけの資金が必要です。
自社株の売買金額が評価額よりも安すぎると贈与税の対象になる可能性があるため、注意しなければなりません。

6. 親族内承継を成功させるためのポイント

親族内承継を成功させるためには、何よりも早めの準備が重要です。その他のポイントも、あわせて見ていきましょう。

6-1. 早めに準備をする

後継者の早期決定と適切な人材育成は、親族内承継を成功させるための重要なポイントです。
後継者候補となっていた親族が、後継者になることを拒否する可能性も考えなければなりません。また、後継者を早めに決めることは、人材育成のための時間を多く確保することにもつながるため、後継者自身にとってもメリットがあります。

6-2. 後継者以外への親族に配慮する

親族内承継の可能性がある場合は、後継者以外の親族に対しても、承継の仕方について報告しておく必要があります。事前に説明しておくことで、相続に関連するトラブルを回避できる可能性が高まります。
特に、社外の親族は、所有権の問題に加えて自社株の扱いにも関心があります。自社株の比率を決める話し合いでトラブルが生じると、自社株が分散してしまう恐れがあり、後継者が経営において決定権を持つことが難しくなるので注意が必要です。

6-3. 個人保証や税金への対応を行う

個人保証や税金の問題は、親族内承継をはじめとする事業承継を妨げる要因の一つです。
事業承継を推進するために、国がさまざまな制度を設けているため、積極的に活用しながら対応を行いましょう
例えば、新たな信用保証の制度である「事業承継特別保証」は、経営者保証を不要とすることを前提に、金融機関の融資のリスクを減らすことができるものです。一定の条件を満たせば、経営者の個人保証の解除が可能です。
また、事業承継税制や納税猶予制度を活用することで、生前贈与による株式の承継の負担も軽減できます。

7. まとめ

親族内承継は、親族が後継者となるため意思疎通がしやすく、事業承継がスムーズに行えることが大きなメリットです。また、早めに後継者が決まると、育成期間も長めに確保できます。
一方で、後継者候補や会社の株式の取扱いについて、ほかの親族との調整が行なわれていないと、トラブルになる可能性もあります。後継者自身が、事業承継を断るケースも考えられるでしょう。
親族内承継を成功させるためには、早めの準備と、ほかの親族への根回しが重要です。
事業承継には、親族内承継以外にも、親族外承継(社内事業承継)やM&Aなどの方法もあります。ほかの手法による承継も検討中の方は、ぜひM&Aキャピタルパートナーズへご相談ください。

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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズコーポレートアドバイザリー部長 梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ 
コーポレートアドバイザリー部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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