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投資の評価や意思決定において、金融の専門知識は不可欠です。その中でも、買収ファンド等は投資判断する際や投資の収益性を評価するための重要な指標の一つとしてInternal Rate of Return(IRR)があります。
本記事では、IRRの基本的な概念から、具体的な計算例、判断基準、メリットとデメリットまで、詳しく解説します。
このページのポイント
~IRRとは?~
内部収益率といわれ、DCF法で投資判断する際にNPV(Net Present Value)と並んでよく使われる判断指標で、投資によって得られる将来のキャッシュフローと投資額の現在価値が等しくなる割引率をいう。
目次
1. Internal Rate of Return(IRR)の概要
1-1. IRRとは?
「IRR(Internal Rate of Return)」とは、内部収益率といわれ、DCF法で投資判断する際にNPV(Net Present Value)と並んでよく使われる判断指標で、投資によって得られる将来のキャッシュフローと投資額の現在価値が等しくなる割引率をいいます。つまり、IRRは投資の収益が元本を上回る割合を示し、この値が高いほど投資は有利とされます。
2. IRRの計算方法
2-1. 具体的なIRRの計算例
IRRを求めるためには、初期投資額と将来得られるキャッシュフローの推定が必要です。
IRRの計算式は、以下のとおりです。
「0 = ∑ CF_t/(1 + r)^t - 初期投資額」
※CF_t : t期目のキャッシュフロー, r:IRR, t:年数, ^:累乗, ∑:合計(シグマ)
具体的な数値例をあげてみると、1年後と2年後までの将来キャッシュフロー合計額が121万円、初期投資額が100万円とした場合は、IRRは10%と計算されます。つまり、年利10%で運用した場合、「現在の100万円」と「1年後と2年後までの合計121万円」は同じ価値ということになります。
なお、IRRの計算式は複雑で、手で計算するのは煩雑ですが、Excelの「IRR関数」を使うことで簡単にIRRを求めることができます。
3. IRRの判断基準
IRRの判断基準は、一般に割引率との比較によってその妥当性が評価されます。
例えば、割引率が7%の場合、IRRが7%を超えれば投資価値があると判断でき、割引率10%の場合、IRRが10%を超えれば投資価値があると判断できるとされています。
この割引率には、一般的に資本コストが用いられ、資本コストは一般的にWACC(加重平均資本コスト)が用いられます。
つまり、ファイナンス理論では一般的に、IRR>WACCとなっていれば、投資先の投資価値があると判断できることになると考えられます。
4. IRRのメリット/デメリット
4-1. IRRのメリット
IRRの主なメリットは、以下のとおりです。
- 投資の収益率を直感的に理解できる点にあります。IRRは投資の収益が元本を上回る割合を示し、この値が高いほど投資は有利とされます。これにより、投資家は複数の投資案件を比較し、最も収益性の高い案件を選択することができます。
- IRRを使うことで、複数の投資先間で収益化のタイミングが異なる場合でも、同じ指標で投資先の収益率を検討できるようになります。
- IRRは全てのキャッシュフローを考慮に入れるため、投資の全期間にわたる収益性を評価することができます。これは、初期投資だけでなく、将来の収益やコストも考慮に入れることを可能にします。
4-2. IRRのデメリット
IRRの主なデメリットは、以下のとおりです。
- IRRが複数存在する可能性があることです。これは、キャッシュフローが正から負に、または負から正に複数回変わる場合に起こります。このような場合、同じ投資でも異なるIRRが算出され、解釈が難しくなる可能性があります。
- IRRは将来キャッシュフローを現在価値に換算するため、将来予測が不確実な場合、IRRの信頼性は低下します。IRRは予測されたキャッシュフローに基づいて計算されるため、予測が外れるとIRRの信頼性は大きく低下します。
- IRRは投資の規模を考慮しないため、大きな投資と小さな投資が同じIRRを持つ場合でも、その絶対的な収益は異なります。このため、IRRだけを見て投資判断をすると、大きな機会コストを無視する可能性があります。
5. まとめ
IRRは投資の収益性を評価する有効な指標ですが、その利用には注意が必要です。将来予測や将来キャッシュフローの変動性を考慮に入れ、他の指標と組み合わせて使用することで、より正確な投資判断を下すことができると考えられます。