事業承継を実施するタイミングは? 適した時期や検討の際のポイントを解説

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事業承継は、企業の存続と発展を左右するターニングポイントですが、実行する時期に悩まれている経営者は多いのではないでしょうか。
事業承継を成功させるためには、適切なタイミングでの検討と準備が必要です。特に、後継者の選任や長期的な計画の策定、税制の理解と活用、専門家への相談などがポイントになります。
本記事では、事業承継のタイミングと準備に重点を置きながら、成功に近づくための方法について、わかりやすく解説します。

このページのポイント

~事業承継の実施に適したタイミングとは?~

一般的に「経営状況が安定しているタイミング」「後継者の用意が整ったタイミング」「業績が好調なタイミング」「経営者の年齢が60歳前後のタイミング」があり、自社の状況を見極めて適切なタイミングで事業承継ができるように経営者の交代時期を考慮に入れた事業承継計画の立案が推奨される。事業承継は長期スパンで捉え、後継者候補の意思の確認をしつつ、早めの準備を心掛けることが重要である。

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1. 事業承継の実施に適したタイミングとは?

事業承継を実施するタイミングについて、次の4つの視点から解説します。

  • 経営状況が安定しているタイミング
  • 後継者の用意が整ったタイミング
  • 業績が好調なタイミング
  • 経営者の年齢が60歳前後のタイミング

一つずつ、詳細を確認していきましょう。

1-1. 経営状況が安定しているタイミング

事業承継は、経営者が変わることで社内に混乱をもたらし、業績が悪化する可能性があると言われています。そのため、経営が安定している時期に行うことが理想的です。
その時期であれば、社内の混乱を抑え、スムーズに事業承継を進められます。ただし、経営者の力不足により経営が悪化している場合は、早期の事業承継が業績改善につながることもあります。
したがって、自社の状況を見極め、適切なタイミングで行うことが重要です。交代時期を考慮に入れた、事業承継の計画立案が求められます。

1-2. 後継者の用意が整ったタイミング

後継者の用意が整ったタイミングを判断するには、以下の3つがポイントです。

  • 後継者の有無
  • 後継者の能力
  • 自社の状況

まず、後継者として適任者がいるかどうかを見極める必要があります。社内に適任者がいない場合、M&Aも選択肢に入れながら、後継者を見つけなければなりません。外部から探す際は、相応の時間がかかります。
次に、後継者がいる場合、当人の能力が充分かどうかの判断が不可欠です。合わせて、自社の状況も把握しておく必要があります。
後継者がいても、能力が不充分な場合には育成する必要があり、そのためには経営状態を含め、自社がどのような状況にあるか、把握しておかなければなりません。これらすべてを整理し、準備を済ませた段階で、後継者の用意が整ったと判断できるでしょう。

1-3. 業績が好調なタイミング

業績が好調なタイミングであれば、M&Aをはじめとする第三者承継が考えられます。相手探しには、自社が少しでも有利な条件で会社を譲渡することが重要です。
そのため、後継者が不在の場合など、状況によっては、適切な引継ぎ先を見つけることが最優先事項となり、条件交渉は二の次になることがあります。
親族や従業員の承継では、後継者の選定から了承までに長い期間が必要です。その間、自社を取り巻く環境は変化を続けます。承継が不可能になった場合、M&Aを検討するタイミングが重要で、適切な時期を逃すと良い相手を見つけられない可能性が生じます。

1-4. 経営者の年齢が60歳前後のタイミング

株式会社東京商工リサーチの調査によると、経営者の平均引退年齢は70歳前後であり、2022年に休廃業・解散した企業の社長の平均年齢は約72歳です。

また、社長が高齢であるほど増収率が下がり、業績が悪化する傾向にあります。これらの情報から、一般的な経営者の引退時期としては「70歳前後」と考えられます。

以上の結果より、事業承継は5~10年の長期計画が必要です。親族や自社の従業員が後継者となる場合は、遅くても現経営者の年齢が「60歳前後の時点」で事業承継を進め始めるのが理想的です。
事業承継を行う際は、後継者がスムーズに会社を経営できるまで、現経営者のサポートが欠かせません。

2. 事業承継のタイミングを間違えるとどうなる?

事業承継のタイミングを間違えると、主に以下のようなリスクが生じます。

【買い手が見つからない】

事業承継の準備が進まないうちに、現経営者が突然病気になり、後継者が見つからない場合、会社の存続が難しくなります。このため、後継者の選出や段取りを早めに決めておくことが重要です。

【期待した金額で売れない】

M&Aは、売り手企業の希望価格で契約できるとは限りません。特に、業績が悪化傾向にある会社は企業価値も下がるため、売却額の低下は避けられないでしょう。

【経営が立ち行かなくなる】

経営者の急病や急逝により、会社の経営が立ち行かなくなる可能性があります。そのため、事業承継の準備や計画を前もって進めておくことが重要です。

【事業承継後の経営が悪化する】

後継者の選定や準備が甘いと、事業承継後の経営が悪化する恐れがあります。後継者への教育や指導を十分に行い、スムーズな事業承継を実現することが肝要です。

3. 事業承継の検討タイミングにおいて重要なポイント

事業承継を成功させるためには、適切なタイミングの検討と準備を要します。重要なポイントは、次のとおりです。

  • 事業承継は長期スパンで捉える
  • 後継者の意思を確認しておく
  • 早めの準備を心がける
  • 事業承継税制の活用を検討する
  • 第三者への事業承継の手法としてM&Aも検討する
  • 専門家に相談する

順番に、内容を理解していきましょう。

3-1. 事業承継は長期スパンで捉える

事業承継の成功には数年単位の長期計画が必要で、特に親族や従業員への承継であっても、後継者の育成に5年から10年かかることも珍しくありません。
事業の存続と成長を確実にするためには、早期からの慎重な準備と計画が求められ、その一環として「事業承継計画書」の作成が重要です。
この計画書は、何をどのように進めるのかを具体的に示し、現経営者と後継者が議論を重ねることで、目に見えない経営資源も後継者に共有できます。

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3-2. 後継者の意思を確認しておく

後継者自身が事業を引き継ぐことに対して、十分な覚悟を持っているかどうかは、事業の将来性に大きく影響します。
どのような状態でも会社を維持し、発展させるための強い意志を持っているか否かを確認することが、事業承継にとって重要です。
常に変化し続けている社会情勢のなかで、いかなる状況下でも会社を守る覚悟があるのか、後継者への意思確認が求められます。

3-3. 早めの準備を心がける

事業承継は、一度決めたからといって、すぐに実行できるものではありません。準備には時間がかかるため、現経営者が健康なうちに承継を完了させるためには、早めの行動が重要です。
たとえ、事業承継を行う意志がまだ固まっていない段階だとしても、前もって情報収集を積極的に行う必要があります。これにより、事業承継の具体的な計画に役立つ情報を得られるでしょう。
以上を心がけることで、スムーズな事業承継が実施でき、経営の維持が可能になります。

3-4. 事業承継税制の活用を検討する

事業承継には通常、相続税、贈与税や所得税などが課されます。これらの税金が負担となり、事業承継が困難になるケースもあるため、税金対策を考えておくことが大切です。
事業承継税制は、後継者に課される税金が一定の条件下で猶予もしくは免除される制度です。この制度を活用することで、後継者が事業承継時に納めるべき相続税や贈与税の猶予または免除が認められます。
なお、2018年度の税制改正により「10年間の限定措置」として要件が緩和され、より利用しやすい制度となりました。
特に親族内での事業承継は、法定相続人を考慮しなければならないため、後継者の議決権を守りつつ経営に集中できるよう、すべての株式を相続することが重要です。

3-5. 第三者への事業承継の手法としてM&Aも検討する

後継者が未定、または見つからない場合に、第三者への承継も有効な手段であり、その一つがM&A(合併・買収)です。M&Aを活用することで、幅広い後継者候補を見つけ出すことができ、自社に適した人材を見つけるチャンスが拡がります。
また、現経営者はM&Aにより創業者利益を得られます。創業者利益は、企業売却後に必要経費等を控除して残った金額で、セカンドライフのための資金にすることも可能です。

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3-6. 専門家に相談する

事業承継は、経験豊富な専門家からのサポートを受けることにより、スムーズに着手でき、成功の可能性が高まります。
また、事業承継に関わる税制や相続などの複雑な手続きも必要になるため、専門的な知識が欠かせません。そのため、専門家のサポートがあると安心して実施できます。
事業承継を行う際は、最適なタイミングをアドバイスできる専門家に相談すると良いでしょう。後継者が決まっていない場合でも、早期にアドバイスを得ておくことが必要です。

4. まとめ

事業承継は、後継者の選任から税制の理解、専門家への相談まで、企業の状況に関する多くの知見が必要です。特に、後継者問題や税金対策など、M&Aや事業承継税制の活用が有効な手段になるケースがあります。また、専門家へ早期に相談することは、事業承継の成功に向けた重要なステップです。
以上のことを踏まえ、事業承継を進める際は専門家をパートナーとして、経営者にとって有利な方法を選択することが不可欠です。
M&Aキャピタルパートナーズでは、事業承継の各ステップを専門的な視点からサポートし、事業の継続と発展を実現します。事業承継をご検討中の方は、ぜひお問い合わせください。


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監修者プロフィール
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社コーポレートアドバイザリー部 部長公認会計士梶 博義
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 コーポレートアドバイザリー部 部長
公認会計士梶 博義

大手監査法人、事業承継コンサルティング会社を経て、2015年に当社へ入社。
これまで、監査、IPO支援、財務DD、親族承継・役職員承継コンサル等を経験し、当社入社後はM&Aアドバイザーとして活躍。一貫して中小企業の支援に従事し、M&Aのみならず、事業承継全般を得意とする。

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